StudyMed医師国家試験

かかとが語る「圧」と「骨」―褥瘡の好発部位は体位で読み解く

第118回医師国家試験 E問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第118回 E問題 第1問

褥瘡ができやすい部位はどこか。

  1. a.耳介
  2. b.手掌
  3. c.臍
  4. d.外陰部
  5. e.踵部

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は褥瘡ができやすい部位を問う問題だ。暗記で解くこともできるけれど、「なぜそこにできるのか」という仕組みから考えると、どんな部位を出されても迷わなくなる。まず、褥瘡とはそもそも何か説明できるかな。
医学生医学生
寝たきりの人にできる床ずれ、というイメージです。皮膚がこすれてできる傷でしょうか。
ドクタードクター
半分正解かな。こすれ(摩擦)も関係するけれど、本質は持続的な圧迫やずれ(剪断力)で皮膚や皮下組織の血流が途絶え、組織が阻血性に壊死することなんだ。つまり虚血による壊死だね。
医学生医学生
病理の講義で習った虚血性壊死と同じ理屈なんですね。だとすると、圧がかかり続ける場所ほど危ない、と。
ドクタードクター
その通り。そしてもう一つの条件が「骨突出部」であること。皮下脂肪や筋肉が薄く、骨が皮膚のすぐ下にある部位では、体重による圧が骨と寝具の間の狭い範囲に集中する。クッションがない分、血流が途絶えやすいんだ。
医学生医学生
「体重がかかる」と「骨が出ている」の2つがそろう場所を探せばいいわけですね。仰臥位で寝ている人を思い浮かべると、お尻の真ん中とかかとが当たります。
ドクタードクター
いいね。仰臥位では仙骨部が最多で、次いで踵部、さらに後頭部、肩甲骨部、肘頭部が圧迫を受ける。踵部は下肢の重みが踵骨の後面という狭い範囲に集中し、皮下組織も薄い。だから踵部が正解だ。では、ほかの選択肢を考えてみよう。耳介はどうかな。
医学生医学生
横向きに寝ると枕に耳が押しつけられそうなので、少し迷いました。
ドクタードクター
鋭いね。実際、側臥位では耳介が圧迫されることがあって、頭を自分で動かせない重症心身障害者などでは褥瘡を生じる例もある。ただ頻度は仙骨部や踵部、大転子部に比べると明らかに低く、一般に「好発部位」として挙げられる部位ではない。最も適切なものを選ぶなら踵部だね。
医学生医学生
手掌は皮膚が厚いし、寝ていても体重はかかりませんよね。
ドクタードクター
そう。手掌は荷重部でも骨突出部でもない。臍も同じで、体幹前面のくぼみだから、仰臥位・側臥位・座位のどれでも圧がかからないし、腹臥位でもくぼんでいる分だけ圧が集中しにくい。
医学生医学生
外陰部はどうでしょう。臨床実習で回った病棟で、おむつの患者さんの陰部が赤くただれているのを見たことがあります。
ドクタードクター
それは大事な観察だね。おむつ内の失禁で皮膚が湿潤・汚染されて起こるのは失禁関連皮膚炎、IADと呼ばれるもので、圧迫による阻血性壊死の褥瘡とは区別される。ただし湿潤は褥瘡のリスク因子でもあるから、仙骨部近くの皮膚トラブルとして両者が並存することはある。
医学生医学生
なるほど、見た目は似ていても成り立ちが違うんですね。体位ごとに当たる骨を思い浮かべれば、ほかの部位も整理できそうです。
ドクタードクター
そう、体位別に覚えるのがコツだ。側臥位なら大転子部、腸骨部、肩峰部、膝関節外側部、外果部、耳介。座位なら坐骨結節部と尾骨部。車椅子の患者さんでは坐骨結節部に注意が必要だよ。
医学生医学生
リスク評価にはブレーデンスケールを使う、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。知覚、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦とずれの6項目で評価する。全身要因としては、麻痺や鎮静による可動性低下、糖尿病性神経障害などの知覚障害、低栄養、るい痩による骨突出、浮腫などが重要だ。特に踵部は、下肢の動脈硬化や糖尿病がある人では血流が乏しく、さらにできやすい。
医学生医学生
予防はこまめな体位変換ですか。
ドクタードクター
それが基本で、加えて体圧分散寝具の使用、ベッドの頭側挙上を30度以下にとどめてずれを減らすこと、スキンケア、栄養管理を組み合わせる。踵は下腿全体をクッションで支えてかかとを寝具から浮かせると除圧できる。できてしまった褥瘡の評価には日本褥瘡学会のDESIGN-Rを用いる、というところまで押さえておこう。

まとめ

褥瘡は、持続的な圧迫やずれによって皮膚・皮下組織の血流が途絶え、阻血性壊死に陥った状態で、体重がかかり、かつ骨が突出している部位に好発します。仰臥位では仙骨部が最多で、踵部・後頭部・肩甲骨部・肘頭部、側臥位では大転子部・腸骨部・外果部、座位では坐骨結節部が代表的です。手掌・臍・外陰部は荷重部でも骨突出部でもなく、外陰部のただれは多くが失禁関連皮膚炎として褥瘡とは区別されます。リスク評価にはブレーデンスケール、重症度評価にはDESIGN-Rが用いられ、予防の柱は体位変換、体圧分散寝具、ずれ対策、スキンケア、栄養管理です。「圧」と「骨」という仕組みから部位を考える習慣は、病棟で患者さんの皮膚を守る実践的な視点にそのまま結びつきます。

解答・解説

正解はeです

褥瘡(いわゆる床ずれ)は、身体の一部に持続的な圧迫やずれ(剪断力)が加わり、その部分の皮膚・皮下組織の血流が低下して組織が阻血性に壊死した状態である。とくに皮下脂肪や筋肉が薄く、骨が皮膚のすぐ下に張り出している部位(骨突出部)では、体重による圧が骨と寝具などの間で狭い範囲に集中するため、褥瘡が生じやすい。 したがって本問は、「体位をとったときに体重がかかる部位で、かつ骨が突出している部位はどこか」を考えればよい。仰臥位では後頭部、肩甲骨部、肘頭部、仙骨部、踵部が圧迫を受け、なかでも仙骨部と踵部が代表的な好発部位である。選択肢のうちこの条件を満たすのは踵部である。

選択肢考察

  1. ×a.  耳介

    耳介は側臥位をとったときに枕や寝具との間で圧迫されることがあり、長期臥床の患者、とくに頭部を自分で動かせない重症心身障害者などでは、頭部の重さや流涎による湿潤などが加わって褥瘡を生じる例もある。しかし発生頻度は仙骨部・坐骨結節部・踵部などに比べて明らかに低く、一般に「褥瘡の好発部位」として挙げられる部位ではないため、本問の解答としては適切でない。

  2. ×b.  手掌

    臥位や座位で体重がかかる部位ではなく、持続的な圧迫やずれを受けることが少ない。また手掌は皮膚が厚く、骨突出部でもないため、褥瘡の好発部位ではない。

  3. ×c.  臍

    臍は体幹前面の陥凹部であり、通常の仰臥位・側臥位・座位のいずれでも荷重がかからない。骨突出部でもなく、褥瘡はまず生じない。なお腹臥位では前面の骨突出部(前額部、肩峰部、肋骨部、膝部など)が圧迫を受けるが、陥凹した臍は圧が集中しにくい。

  4. ×d.  外陰部

    外陰部は荷重部でも骨突出部でもないため、褥瘡の好発部位ではない。おむつ使用中の失禁などで皮膚が湿潤・汚染されると、失禁関連皮膚炎(IAD:incontinence-associated dermatitis)やびらんを生じることはあるが、これは圧迫による阻血性壊死である褥瘡とは区別される。

  5. ○e.  踵部

    踵部(かかと)は仰臥位で下肢の重みが踵骨の後面という狭い範囲に集中する部位であり、皮下組織が薄く骨(踵骨)が突出しているため、持続的な圧迫とずれを受けやすい。仙骨部に次ぐ頻度の高い褥瘡好発部位であり、下肢の動脈硬化性疾患や糖尿病を合併する患者では血流が乏しくさらに生じやすい。予防として、踵を寝具から浮かせる(下腿全体をクッションで支える)などの除圧が行われる。

褥瘡の発生要因

・局所要因:持続的な圧迫、ずれ(剪断力)、摩擦、皮膚の湿潤(失禁・発汗) ・全身要因:活動性・可動性の低下(寝たきり、麻痺、脊髄損傷、鎮静下など)、知覚障害(脊髄損傷、糖尿病性神経障害など)、低栄養(低アルブミン血症)、るい痩による骨突出、浮腫、高齢など

体位別の好発部位

・仰臥位:仙骨部(最多)、踵部、後頭部、肩甲骨部、肘頭部 ・側臥位:大転子部、腸骨部、肩峰部、膝関節外側部、外果部、耳介 ・座位:坐骨結節部、尾骨部 ・腹臥位:前額部、頬部、肩峰前面、肋骨部、膝蓋部

評価と予防

発生リスクの評価にはブレーデンスケール(知覚、湿潤、活動性、可動性、栄養状態、摩擦とずれの6項目)などが用いられる。褥瘡の重症度・経過評価には日本褥瘡学会のDESIGN-R(深さ、滲出液、大きさ、炎症/感染、肉芽組織、壊死組織、ポケット)が用いられる。予防の基本は、体圧分散寝具の使用、定期的な体位変換、ベッドの頭側挙上を30度以下にとどめるなどのずれ対策、スキンケア、栄養管理である。

POINT

・褥瘡は圧迫・ずれによる阻血性壊死で、骨突出部かつ荷重部に好発する ・最多は仙骨部、次いで踵部・大転子部・坐骨結節部など ・仰臥位:仙骨部・踵部・後頭部・肩甲骨部・肘頭部/側臥位:大転子部・腸骨部・耳介など/座位:坐骨結節部 ・手掌・臍・外陰部は荷重も骨突出もなく、好発部位ではない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。