巨大児の低血糖に何mL?―「mg/kg/分」を「mL/時」に変える輸液計算の型
第118回医師国家試験 D問題 第75問
国試問題にチャレンジ
生後1時間の男児。在胎37週,4,000gで出生した。巨大児のために血糖の測定をおこなった。血液生化学所見:血糖25mg/dL。10%ブドウ糖液を用いて末梢静脈より輸液を開始することとした。糖の投与速度を4mg/kg/分とする。 1時間あたりの10%ブドウ糖液投与量を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第2位を四捨五入すること。 解答:① . ② mL/時間
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
巨大児や糖尿病母体児は、胎児期からの高インスリン状態が出生後も続くため、生後早期に低血糖を起こしやすくなります。ブドウ糖輸液の計算は、GIR(mg/kg/分)×体重(kg)×60で1時間あたりのブドウ糖量(mg)を出し、10%ブドウ糖液が1mLあたり100mgを含むことから液量に換算します。本問では4×4×60=960mg/時、960÷100=9.6mL/時となり、検算には「輸液速度(mL/時)=GIR×6×体重÷濃度(%)」が使えます。持続輸液はおおむね新生児の肝糖産生量に相当するGIR 4〜8mg/kg/分から始め、末梢静脈からの濃度は12.5%程度までが目安です。単位を一つずつ揃えて考える習慣は、薬剤投与量や輸液管理など臨床のあらゆる計算ミスを防ぐ土台になります。
解答・解説
正解は9.6 mL/時間です
症例の整理
在胎37週(正期産)、出生体重4,000gの男児である。出生体重が4,000g以上の児は巨大児と呼ばれ、その背景には母体の糖尿病や妊娠糖尿病が隠れていることが多い。母体の高血糖は胎盤を通じて胎児に移行し、胎児の膵β細胞はインスリン分泌を増やして適応する。出生により母体からのブドウ糖供給が突然途絶えても、児の高インスリン状態はしばらく続くため、生後早期に低血糖を起こしやすい。このため本児では生後1時間で血糖が測定され、25mg/dLと明らかな新生児低血糖を認めた。経静脈的にブドウ糖を補う方針となり、その投与量を計算するのが本問である。
計算に必要な情報
・体重:4,000g=4kg ・目標とする糖の投与速度(GIR:glucose infusion rate、ブドウ糖静注速度):4mg/kg/分 ・使用する輸液:10%ブドウ糖液(100mL中にブドウ糖10g、すなわち1mL中に0.1g=100mg) 血糖値25mg/dLそのものは計算には使わない。
計算過程
(1) 1分あたりに必要なブドウ糖量を求める。 4mg/kg/分 × 4kg = 16mg/分 (2) 1時間(60分)あたりに換算する。 16mg/分 × 60分 = 960mg/時間 = 0.96g/時間 (3) 10%ブドウ糖液の量に換算する。10%液は1mLあたり100mgのブドウ糖を含むので、 960mg ÷ 100mg/mL = 9.6mL したがって、10%ブドウ糖液の投与速度は9.6mL/時間となる。小数第2位以下の端数は生じないため、四捨五入の操作は不要である。
検算のための公式
GIR(mg/kg/分)= ブドウ糖濃度(%)× 輸液速度(mL/時間)÷(6 × 体重kg) という関係式がよく用いられる。これを輸液速度について解くと、 輸液速度(mL/時間)= GIR × 6 × 体重 ÷ 濃度 = 4 × 6 × 4 ÷ 10 = 9.6 となり、上の計算結果と一致する。係数の6は、「%→mg/mL」への換算(×10)と「時間→分」への換算(÷60)をまとめたものである(10÷60=1/6)。 答え:9.6mL/時間(①=9、②=6)
新生児低血糖のリスク因子
・高インスリン血症によるもの:糖尿病母体児(母体の糖尿病・妊娠糖尿病)、巨大児、Beckwith-Wiedemann症候群など ・糖の貯蔵不足によるもの:早産児、低出生体重児、子宮内胎児発育不全(胎盤機能不全)など。肝グリコーゲンの蓄えが少ないため低血糖になりやすい ・糖の消費増大によるもの:新生児仮死、低体温、敗血症、呼吸障害など
症状
無症状のことも多いが、哺乳不良、活気低下・傾眠、易刺激性、振戦(ジッタリネス)、多呼吸・無呼吸、チアノーゼ、低体温、けいれんなどがみられる。症状が非特異的なため、リスクのある児では出生後に血糖を計画的に測定する。遷延・反復する重症低血糖は脳障害(特に後頭葉の障害)を残しうる。
対応の考え方
新生児低血糖の治療開始基準については世界的に統一されたものはないが、おおむね血糖40〜50mg/dL未満を一つの目安とし、症状の有無や日齢・時間齢を考慮して判断する。軽症で哺乳可能であれば早期の授乳を行い、哺乳で改善しない場合や症状がある場合、血糖が著しく低い場合にはブドウ糖の静脈内投与を行う。症候性低血糖では10%ブドウ糖液2mL/kg(200mg/kg)程度をボーラス投与した後、持続輸液に移行するのが一般的である。持続輸液のGIRはおおむね4〜8mg/kg/分から開始し、血糖をみながら調整する。新生児の肝臓が産生するブドウ糖量がおよそこの範囲に相当するためである。
末梢静脈から投与できるブドウ糖濃度
高濃度のブドウ糖液は浸透圧が高く静脈炎を起こしやすいため、新生児の末梢静脈からはおおむね12.5%程度までの濃度とするのが一般的である。より高いGIRが必要な場合は、中心静脈(臍静脈カテーテルなど)からの投与を検討する。高いGIRを要する持続性低血糖では、高インスリン性低血糖症などの精査も必要になる。
POINT
・GIR(mg/kg/分)×体重(kg)×60で1時間あたりのブドウ糖量(mg)が出る ・10%ブドウ糖液は1mLあたり100mg(0.1g)のブドウ糖を含む ・公式:輸液速度(mL/時)=GIR×6×体重÷ブドウ糖濃度(%) ・本問:4×4×60=960mg/時 → 960÷100=9.6mL/時 ・巨大児・糖尿病母体児は胎児期からの高インスリン血症により生後早期に低血糖を起こしやすい ・新生児の持続ブドウ糖輸液はGIR 4〜8mg/kg/分程度から開始する
