「1回・短時間・左右対称」―単純型熱性けいれんを見極める3つの物差し
第105回医師国家試験 D問題 第3問
国試問題にチャレンジ
単純型熱性けいれんの特徴はどれか。
- a.好発年齢は1~2歳である。
- b.てんかんの家族歴がある。
- c.片側性のけいれんを呈する。
- d.24時間以内に反復する。
- e.けいれん後に運動麻痺を残す。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
熱性けいれんは生後6か月〜5歳の乳幼児に38℃以上の発熱に伴って起こる発作で、好発年齢は1〜2歳前後です。焦点性発作の要素(片側性けいれん、Todd麻痺など)、15分以上の持続、同一発熱機会の24時間以内の反復のいずれかがあれば複雑型、どれもなければ単純型と判定し、単純型は全身性・短時間・1回のみで後遺症を残しません。てんかんの家族歴は単純型・複雑型の判定項目ではなく、後のてんかん発症の危険因子として位置づけられます。再発は約30%、てんかん発症は2〜7.5%程度であり、これらの知識は家族への説明や、中枢神経感染症・急性脳症を見逃さないための初期対応に直結します。
解答・解説
正解はaです
熱性けいれん(現在のガイドラインでは「熱性発作」とも呼ぶ)は、主に生後6か月から5歳(60か月)までの乳幼児に、通常38℃以上の発熱に伴って起こる発作である。髄膜炎・脳炎などの中枢神経感染症、電解質異常や低血糖などの代謝異常、その他の明らかな原因がなく、てんかんの既往もないことが前提となる。日本では小児の7~11%程度が経験するとされ、欧米(2~5%)より多い。 熱性けいれんは「単純型」と「複雑型」に分けられる。次の3項目のうち一つでも当てはまれば複雑型、どれにも当てはまらなければ単純型と判定する。 (1) 焦点性(部分)発作の要素がある(片側性のけいれん、一側への眼球偏位、発作後の片麻痺など) (2) 発作が15分以上続く (3) 同じ発熱機会の24時間以内に発作を繰り返す つまり単純型とは「全身性・左右対称で、短時間(多くは数分以内)で止まり、1回の発熱で1回だけ起こり、発作後は神経学的な異常を残さずに回復する」発作である。本問では各選択肢が単純型の像に合うか、それとも複雑型の条件や別の病態を示唆するかを一つずつ判定すればよい。年齢に関する記述だけが単純型の典型像に当てはまる。
選択肢考察
- ○a. 好発年齢は1~2歳である。
熱性けいれんの発症はおおむね生後6か月から5歳に限られ、特に1~2歳前後(3歳頃まで)に集中する。この時期は脳が発達の途中にあり、発熱による神経細胞の興奮性の高まりに対して発作が起こりやすい。成長とともに発作閾値が上がるため、6歳以降にはほとんど起こらなくなる。単純型でもこの年齢分布は変わらず、単純型熱性けいれんの特徴として正しい。
- ×b. てんかんの家族歴がある。
熱性けいれんには遺伝的素因があり、両親や同胞に「熱性けいれん」の既往があることは多い。しかし、「てんかん」の家族歴は単純型の特徴ではない。単純型か複雑型かの判定は発作の性状(焦点性・持続時間・反復)だけで行い、家族歴は判定項目に含まれない。なお、両親・同胞のてんかん家族歴は、熱性けいれんの子どもが後にてんかんを発症する危険因子の一つとして扱われる(ほかに発症前からの神経学的異常・発達遅滞、複雑型の発作、発熱から発作までが1時間以内など)。
- ×c. 片側性のけいれんを呈する。
単純型の発作は全身性で、左右対称の強直間代けいれんとして現れることが多い。片側だけのけいれんや一側への眼球偏位は焦点性発作の要素であり、それだけで複雑型に分類される。片側性の発作をみた場合は、脳炎・脳症、脳血管障害、脳の構造異常など、脳の局所に原因がある病態がないかにも注意する。
- ×d. 24時間以内に反復する。
同じ発熱機会の24時間以内に発作を繰り返すことは、複雑型の条件の一つである。単純型の発作は1回の発熱に対して1回で終わる。発作の多くは発熱から24時間以内(特に熱の上がり始め)に起こるが、それは「発作が起こるタイミング」の話であり、「反復する」こととは異なるので混同しない。また、熱性けいれんを一度起こした子どものうち、将来の別の発熱時に再発するのは約30%程度で、半数以上は生涯に1回だけで終わる。短時間に発作を繰り返す場合は、中枢神経感染症や急性脳症の鑑別も必要になる。
- ×e. けいれん後に運動麻痺を残す。
単純型では発作後に麻痺などの神経学的異常を残さず、速やかに元の状態に戻る。発作後に一過性の片麻痺がみられるものをTodd麻痺といい、焦点性発作の後に起こることが多いため、複雑型を示唆する所見である。麻痺が長く続く場合は、急性脳症・脳炎、脳血管障害のほか、長いけいれん重積の後に片麻痺とてんかんを残すhemiconvulsion-hemiplegia-epilepsy(HHE)症候群(かつて急性小児片麻痺と呼ばれた病態を含む)なども考える。
熱性けいれんの概要
・発症年齢: 生後6か月~5歳(ピークは1~2歳前後) ・発熱: 通常38℃以上。熱の上がり始めに起こりやすい。 ・頻度: 日本の小児の7~11%程度 ・原因の除外: 髄膜炎・脳炎などの中枢神経感染症、代謝異常(低血糖、電解質異常など)、その他の明らかな発作の原因がないこと
単純型と複雑型
複雑型の条件(一つでも該当すれば複雑型) (1) 焦点性発作の要素(片側性発作、Todd麻痺など) (2) 15分以上の発作持続 (3) 同一発熱機会の24時間以内の反復 該当しないものが単純型である。単純型は脳波に異常を示さないことが多く、自然に治まる予後良好な病態である。
再発とてんかん発症
・熱性けいれんの再発は約30%にみられる。再発の危険因子: 両親いずれかの熱性けいれん家族歴、1歳未満での発症、発熱から発作までの時間が短い(おおむね1時間以内)、発作時の体温が39℃以下。 ・その後にてんかんを発症するのは2~7.5%程度で、一般人口より高い。危険因子: 発症前からの神経学的異常・発達遅滞、複雑型の発作、両親・同胞のてんかん家族歴、発熱から発作までが1時間以内。
熱性けいれん以外を考えるべき所見
15分以上の発作、24時間以内の反復、焦点性発作、発作後の長い意識障害、顔色不良、髄膜刺激症状(項部硬直など)、異常な姿勢や筋緊張、深部腱反射の亢進、頭位変換眼球反射(oculocephalic reflex)の消失などがあれば、中枢神経感染症・急性脳症・代謝異常などの鑑別を進める。
POINT
・熱性けいれんは生後6か月~5歳に起こり、好発年齢は1~2歳前後 ・複雑型の3条件: 焦点性発作の要素、15分以上の持続、24時間以内の反復 ・単純型は全身性・左右対称・短時間・1回のみで、発作後の後遺症を残さない ・てんかんの家族歴は単純型の特徴ではなく、後のてんかん発症の危険因子 ・Todd麻痺(発作後の一過性片麻痺)は焦点性発作を示唆し、複雑型に分類される
