StudyMed医師国家試験

見た目は似ていても原因は別物―性腺の病気を「染色体」と「遺伝子」で仕分ける

第105回医師国家試験 B問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第37問

染色体異常が原因なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.Kallmann症候群
  2. b.Klinefelter症候群
  3. c.Turner症候群
  4. d.先天性副腎皮質過形成
  5. e.男性ホルモン不応症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、性腺機能や性分化に異常をきたす疾患を、原因のレベルで分類できるかを問う問題だ。選択肢はどれも思春期の遅れや不妊、外性器の異常などで出会う病気で、症状だけ見ると区別しにくい。着眼点は「染色体そのものの数や形が変わっているのか、それとも一つの遺伝子に変異があるだけなのか」という一点だよ。
医学生医学生
遺伝の病気はどれも染色体の異常だと、なんとなくひとまとめにしていました。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。医学でいう染色体異常とは、顕微鏡で観察できるレベルの変化のこと。トリソミーやモノソミーといった数の異常と、欠失・転座・環状染色体・同腕染色体といった構造の異常に分けられる。一方、点変異や小さな欠失など一つの遺伝子の変化で起こるものは単一遺伝子疾患、いわゆるメンデル遺伝病と呼ばれ、核型を調べても本数や形は正常なんだ。
医学生医学生
基礎の遺伝医学の講義で、G分染法で核型を見る実習をしました。あれで見つかるのが染色体異常、見つからないのが遺伝子レベルの異常、という理解でいいですか。
ドクタードクター
その理解で大筋はいいよ。厳密には22q11.2欠失のようにFISHなどで調べる微細欠失もあるけれど、まずはその区別が土台になる。では選択肢を見ていこう。Klinefelter症候群の核型は言えるかな。
医学生医学生
47,XXYです。X染色体が1本多い、性染色体の数の異常ですね。
ドクタードクター
正解。48,XXXYのような型やモザイクもあるけれど、本質はX染色体の過剰だ。Y染色体上のSRY遺伝子が働くので精巣はでき、表現型は男性になる。ただ精細管が硝子化して精子がつくれず、テストステロンが低下する。するとフィードバックでLHとFSHが上がるから、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症になるんだ。
医学生医学生
小さく硬い精巣、高身長、女性化乳房でしたよね。泌尿器科の実習で、男性不妊の精査で見つかった患者さんがいました。
ドクタードクター
成人になって不妊外来で初めて診断されることも珍しくないね。次はTurner症候群。
医学生医学生
45,Xで、こちらはX染色体が1本足りない数の異常です。これも染色体異常ですね。
ドクタードクター
その通り。ただTurner症候群は45,Xだけではなく、45,X/46,XXのモザイクや、Xの長腕の同腕染色体、短腕の欠失、環状X染色体といった構造異常でも起こる。つまり数と構造、両方の異常がありうるんだ。低身長には短腕にあるSHOX遺伝子の不足が関わっていて、ほかに翼状頸、外反肘、大動脈縮窄症や大動脈二尖弁、馬蹄腎などがみられる。卵巣は索状性腺となり、原発性無月経と二次性徴の欠如をきたす。
医学生医学生
卵巣が働かないからエストロゲンが低くて、ゴナドトロピンは高い。Klinefelterと同じ高ゴナドトロピン性ですね。
ドクタードクター
よく整理できている。ここまでの2つが染色体異常だ。残りを確認しよう。Kallmann症候群はどうかな。
医学生医学生
性腺機能低下に嗅覚障害を伴う病気ですよね。症状が二つの系統にまたがるので、染色体の大きな異常かと思ってしまいました。
ドクタードクター
その発想は自然だけど、実は単一遺伝子疾患なんだ。胎生期にGnRHを産生するニューロンは、嗅プラコードから嗅神経に沿って視床下部へ移動する。この移動が障害されるので、GnRH欠乏と嗅球の低形成が同時に起こる。代表はX連鎖劣性のKAL1、いまはANOS1と呼ばれる遺伝子の変異だけれど、FGFR1などによる常染色体遺伝の型もあって、遺伝形式は一様ではない。核型は正常だよ。
医学生医学生
視床下部の障害なのでLHとFSHは低い、低ゴナドトロピン性ですね。ここでもKlinefelterやTurnerと区別できます。
ドクタードクター
その通り。次は先天性副腎皮質過形成。
医学生医学生
小児科の実習で新生児マススクリーニングの話を聞きました。17-OHPを測るんですよね。
ドクタードクター
そう。副腎のステロイド合成酵素の遺伝子変異による常染色体潜性遺伝疾患で、約9割がCYP21A2変異による21-水酸化酵素欠損症だ。コルチゾールがつくれずACTHが過剰になり副腎が過形成となる。行き場を失った前駆物質が副腎アンドロゲンに流れるので、女児では外性器が男性化する。塩喪失型では新生児期に低ナトリウム血症、高カリウム血症、脱水で発症するから要注意だ。これも染色体の数や形は正常だよ。
医学生医学生
最後の男性ホルモン不応症は、外見が女性なのに46,XYなので、染色体がおかしいと勘違いしそうです。
ドクタードクター
まさにそこがひっかけだね。46,XYは正常男性の核型で、原因はX染色体長腕にあるアンドロゲン受容体遺伝子の変異、X連鎖劣性遺伝だ。精巣がありテストステロンも出ているのに、受容体が働かないため男性化が起こらない。完全型では外性器が女性型で、原発性無月経をきっかけに見つかることが多い。抗ミュラー管ホルモンは効くので子宮はなく、腟は盲端に終わる。乳房はテストステロンが芳香化されてできるエストロゲンで発達する。
医学生医学生
核型と表現型が一致しないことと、核型が異常であることは別、ということですね。正解はKlinefelter症候群とTurner症候群です。
ドクタードクター
その通り。最後に発展知識を整理しておこう。染色体異常には、常染色体ならDown症候群や18トリソミー、13トリソミーといった数的異常、猫鳴き症候群やWolf-Hirschhorn症候群、22q11.2欠失症候群といった構造異常がある。性染色体ならKlinefelterとTurnerのほか、47,XXXや47,XYYもある。臨床では、原発性無月経や思春期遅発を診たら、まずLH・FSHが高いか低いかで性腺そのものの障害か中枢の障害かを分け、高ゴナドトロピン性なら核型検査を考える、という流れが実践的だよ。
医学生医学生
ホルモン値で障害部位を絞って、必要な検査を選ぶ。分類の知識がそのまま診断の手順になるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。Turner症候群では成長ホルモン療法や女性ホルモン補充、心血管合併症のフォロー、Klinefelter症候群ではテストステロン補充や不妊治療の相談など、診断後の長期的な支援も大切になる。原因をきちんと理解しておくことが、患者さんや家族への遺伝カウンセリングの基礎にもなるんだ。

まとめ

染色体異常とは顕微鏡で確認できる染色体の数や構造の変化を指し、一つの遺伝子の変異で生じる単一遺伝子疾患とは区別されます。性腺機能低下や性分化異常をきたす疾患のうち、Klinefelter症候群(47,XXY)とTurner症候群(45,Xやモザイク、構造異常)は性染色体異常であり、いずれも性腺自体の障害による高ゴナドトロピン性性腺機能低下症を示します。一方、Kallmann症候群(ANOS1、FGFR1など)、先天性副腎皮質過形成(CYP21A2など)、男性ホルモン不応症(アンドロゲン受容体遺伝子)は核型が正常な単一遺伝子疾患で、特に46,XYで女性型の外見を示す男性ホルモン不応症は染色体異常と誤解しやすい点に注意が必要です。原発性無月経や思春期遅発ではLH・FSHで障害部位を見極め、高ゴナドトロピン性なら核型検査を検討するという流れを押さえることで、分類の知識が診断と遺伝カウンセリングに直結します。

解答・解説

正解はb, cです

【テーマ】染色体異常と単一遺伝子疾患の区別 「染色体異常」とは、顕微鏡で観察できるレベルの染色体の変化を指し、数の異常(トリソミー、モノソミーなど)と構造の異常(欠失、転座、環状染色体、同腕染色体など)に分けられる。これに対して、一つの遺伝子の変異(点変異や小さな欠失など)で起こる病気は単一遺伝子疾患(メンデル遺伝病)と呼ばれ、染色体の本数や形は正常である。

選択肢の整理

選択肢はいずれも性腺機能や性分化の異常をきたす疾患であり、症状だけでは区別しにくい。原因のレベルで分けると次のようになる。 ・性染色体の数の異常:Klinefelter症候群(47,XXY)、Turner症候群(45,X) ・単一遺伝子の変異:Kallmann症候群(KAL1〈ANOS1〉、FGFR1 などの遺伝子)、先天性副腎皮質過形成(ステロイド合成酵素の遺伝子)、男性ホルモン不応症(アンドロゲン受容体遺伝子) したがって、染色体異常が原因なのはKlinefelter症候群とTurner症候群である。

選択肢考察

  1. ×a.  Kallmann症候群

    単一遺伝子疾患であり、染色体異常ではない。胎生期に、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を産生するニューロンは嗅プラコードから嗅神経に沿って視床下部へ移動する。この移動が障害されるため、GnRH欠乏による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と、嗅球の低形成による嗅覚低下・脱失をあわせもつ。代表的な原因はXp22.3にあるKAL1(ANOS1)遺伝子の変異によるX連鎖劣性遺伝の型であるが、FGFR1などの変異による常染色体顕性(優性)遺伝の型や常染色体潜性(劣性)遺伝の型もあり、遺伝形式は一様ではない。男性に多く、思春期が来ない、類宦官体型(手足が長い体型)、小陰茎などで気づかれる。女性では原発性無月経を呈する。

  2. ○b.  Klinefelter症候群

    X染色体が1本以上多い、性染色体の数の異常である。最も多い核型は47,XXYで、48,XXXYなどの型や46,XY/47,XXYのモザイクもある。Y染色体上のSRY遺伝子が働くため精巣はつくられ、表現型は男性となる。しかし精細管が硝子化して精子形成が障害され、テストステロンが低下する。フィードバックでLH・FSHが上昇するため、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症となる。臨床的には小さく硬い精巣、無精子症による不妊、高身長・類宦官体型、女性化乳房などがみられる。主な原因は親の配偶子形成時の減数分裂での不分離である。

  3. ○c.  Turner症候群

    X染色体の全部または一部が欠ける性染色体異常である。核型は45,Xが最も多いが、45,X/46,XXなどのモザイク、Xの長腕の同腕染色体(46,X,i(Xq))、短腕の欠失(46,X,del(X)(p11)など)、環状X染色体(46,X,r(X))といった構造異常もある。低身長(短腕にあるSHOX遺伝子の不足が関係)、翼状頸、外反肘、盾状胸、後頭部の毛髪線が低いこと、大動脈縮窄症や大動脈二尖弁などの心血管異常、馬蹄腎などがみられる。卵巣は索状性腺となって機能不全に陥り、原発性無月経と二次性徴の欠如をきたす。検査ではエストロゲンが低く、LH・FSHは高い(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。

  4. ×d.  先天性副腎皮質過形成

    副腎皮質のステロイド合成酵素の遺伝子変異による常染色体潜性(劣性)遺伝疾患で、染色体の数や形は正常である。最も多いのはCYP21A2遺伝子の変異による21-水酸化酵素欠損症で、全体の約90%を占める。コルチゾールが作れないためフィードバックでACTHが過剰になり、副腎が過形成となる。合成経路で行き場を失った前駆物質が副腎アンドロゲンへ流れ込むため、女児では外性器の男性化がみられる。アルドステロンも不足する塩喪失型では、新生児期に低ナトリウム血症・高カリウム血症・脱水で発症する。日本では新生児マススクリーニングで17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)を測定して早期に発見している。

  5. ×e.  男性ホルモン不応症

    X染色体長腕(Xq11-q12)にあるアンドロゲン受容体遺伝子(AR)の変異によるX連鎖劣性遺伝疾患であり、核型は正常男性型の46,XYである。以前は精巣性女性化症候群と呼ばれた。精巣があり、テストステロンも正常から高値に分泌されるが、受容体が働かないため男性化が起こらない。完全型では外性器が女性型となり、女性として育てられて原発性無月経で見つかることが多い。精巣から出る抗ミュラー管ホルモンは正常に作用するため子宮と卵管はなく、腟は短く盲端に終わる。テストステロンが芳香化されてできるエストロゲンの作用で乳房は発達する。性染色体の本数や形は正常であり、単一遺伝子疾患に分類される。

染色体異常の分類

・常染色体の数的異常:Down症候群(21トリソミー)、18トリソミー(Edwards症候群)、13トリソミー(Patau症候群) ・常染色体の構造異常:猫鳴き症候群(5p-)、Wolf-Hirschhorn症候群(4p-)、転座型Down症候群、22q11.2欠失症候群(微細欠失) ・性染色体の数的異常:Klinefelter症候群(47,XXY)、Turner症候群(45,X)、トリプルX症候群(47,XXX)、47,XYY

性腺機能低下症の分類

・高ゴナドトロピン性(性腺そのものの障害):Klinefelter症候群、Turner症候群など。性ホルモンのフィードバックがなくなりLH・FSHが上昇する。 ・低ゴナドトロピン性(視床下部・下垂体の障害):Kallmann症候群、下垂体腫瘍など。LH・FSHが低い。

各疾患の遺伝形式のまとめ

・Kallmann症候群:X連鎖劣性(KAL1/ANOS1)が代表的だが、常染色体顕性・潜性の型もある ・先天性副腎皮質過形成:常染色体潜性(21-水酸化酵素欠損症ではCYP21A2) ・アンドロゲン不応症:X連鎖劣性(AR遺伝子)

Klinefelter症候群とTurner症候群の比較

・核型:47,XXY / 45,X ・表現型:男性 / 女性 ・身長:高身長 / 低身長 ・性腺:小さく硬い精巣、無精子症 / 索状性腺、原発性無月経 ・ホルモン:どちらもゴナドトロピンが高値

POINT

・染色体異常=顕微鏡で見える染色体の数や構造の異常。単一遺伝子の変異とは区別する。 ・Klinefelter症候群(47,XXY)とTurner症候群(45,X)は性染色体の数的異常で、どちらも高ゴナドトロピン性性腺機能低下症を示す。 ・Kallmann症候群(KAL1ほか)、先天性副腎皮質過形成(CYP21A2など)、アンドロゲン不応症(AR)は単一遺伝子疾患である。 ・Kallmann症候群=低ゴナドトロピン性性腺機能低下症+嗅覚障害。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。