StudyMed医師国家試験

その薬、本当にその病気のため?―呼吸器疾患と治療薬を「病態」で結びつける

第104回医師国家試験 I問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第12問

疾患と治療薬の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.肺血栓塞栓症 ―― マクロライド
  2. b.アスピリン喘息 ―― インドメタシン
  3. c.特発性間質性肺炎 ―― 副腎皮質ステロイド
  4. d.サルコイドーシス ―― 抗コリン吸入薬
  5. e.慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉 ―― ワルファリン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、呼吸器疾患とその治療薬の組合せを問う問題だ。薬の名前を丸暗記していると、別の疾患の薬や禁忌薬が紛れ込んだときに迷ってしまう。だから、それぞれの疾患について「病態の中心は血栓なのか、炎症なのか、気道閉塞なのか」を考え、その病態を狙う薬かどうかを確かめよう。
医学生医学生
どの選択肢も、どこかで見たことのある薬ばかりで、かえって迷いますね。
ドクタードクター
そこが出題者の狙いなんだ。誤りの選択肢には、別の疾患の治療薬が入れ替えて置かれていたり、禁忌の薬が置かれていたりする。まず肺血栓塞栓症から考えてみよう。病態の中心は何かな。
医学生医学生
下肢の深部静脈にできた血栓が飛んで、肺動脈に詰まる病気です。なので抗凝固薬が要ると思います。
ドクタードクター
その通り。急性期は未分画ヘパリンなどで抗凝固を始め、その後ワルファリンやDOACで維持する。ショックを伴う重症例では血栓溶解療法やカテーテル治療、外科的な血栓摘除も考える。マクロライドは抗菌薬で、血栓には作用しないね。
医学生医学生
ワルファリンはCOPDの組合せのほうに出てきました。ここで薬が入れ替わっているんですね。
ドクタードクター
よく気づいたね。COPDは主に喫煙で起こる、完全には元に戻らない気流閉塞が本体だ。だから治療の中心はLAMAやLABAといった吸入気管支拡張薬で、増悪を繰り返して血中好酸球が多い例では吸入ステロイドを加える。ワルファリンはCOPDそのものの治療薬ではない。
医学生医学生
抗コリン吸入薬は、サルコイドーシスではなくCOPDに使う薬ですね。
ドクタードクター
そう。サルコイドーシスは、肺やリンパ節、眼、皮膚、心臓などに乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫ができる全身性疾患だ。病態の中心は肉芽腫性の炎症だから、気管支拡張薬では治療にならない。
医学生医学生
病理実習で、非乾酪性肉芽腫の標本を見ました。じゃあ全例にステロイドを使うんですか。
ドクタードクター
いや、そこは大事な点だ。両側肺門リンパ節腫脹だけの例や無症状の例は自然に軽快することが多いから、経過観察にする。心病変、神経病変、局所治療で抑えられない眼病変、進行する肺病変や高カルシウム血症があるときに、ステロイドの全身投与を考える。
医学生医学生
アスピリン喘息とインドメタシンは、むしろ使ってはいけない組合せですよね。
ドクタードクター
そうだね。アスピリン喘息はアスピリンに限らず、COX-1を阻害する酸性NSAIDsで発作が起こる。COX-1が阻害されると、アラキドン酸の代謝がロイコトリエンを作る側に偏り、強い気道収縮が起こるんだ。インドメタシンは強力なCOX阻害薬なので禁忌になる。治療は通常の喘息と同じく吸入ステロイドが中心で、ロイコトリエン受容体拮抗薬も役に立つ。
医学生医学生
そうすると残るのは、特発性間質性肺炎とステロイドの組合せですね。
ドクタードクター
正解。特発性間質性肺炎は原因不明の間質性肺炎の総称で、特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎などの病型を含む。非特異性間質性肺炎や特発性器質化肺炎のように炎症が主体の病型ではステロイドがよく効き、免疫抑制薬を併用することもある。急性増悪のときはどの病型でもステロイドパルス療法を行う。
医学生医学生
でも、呼吸器内科の実習で特発性肺線維症の患者さんを担当したとき、ステロイドは使っていなかった気がします。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。最も多い病型の特発性肺線維症は線維化が主体で、ステロイドはあまり効かない。安定期にステロイドを単独で使うことは推奨されておらず、進行を抑えるためにピルフェニドンやニンテダニブといった抗線維化薬を使う。この問題の組合せは「特発性間質性肺炎全体としては、ステロイドが治療の柱になる病型が多い」という意味で正しいと理解しておこう。
医学生医学生
間質性肺炎とひとくくりにせず、炎症型か線維化型かで考えるんですね。
ドクタードクター
そう。最後に、紛れ込んでいた薬の本来の使い方も押さえておこう。マクロライド少量長期療法は、びまん性汎細気管支炎や副鼻腔気管支症候群、COPDの増悪予防に使う。これは抗菌作用ではなく、抗炎症作用や気道の分泌を抑える作用を利用したものだ。
医学生医学生
アスピリン喘息の患者さんに使える鎮痛薬も気になります。
ドクタードクター
選択的COX-2阻害薬や少量のアセトアミノフェンは比較的安全とされるけれど、慎重に使う。それから、発作のときにコハク酸エステル型ステロイドを急速に静注すると悪化することがあるので、リン酸エステル型を使うか、点滴でゆっくり投与する。鼻茸や好酸球性副鼻腔炎を合併した成人発症の喘息を見たら、この病気を思い出してほしい。

まとめ

呼吸器疾患の治療薬は、疾患ごとの病態の中心を考えると整理しやすくなります。肺血栓塞栓症には抗凝固療法、COPDにはLAMA・LABAなどの吸入気管支拡張薬、症状のある臓器病変を伴うサルコイドーシスにはステロイド全身投与を行います。アスピリン喘息ではインドメタシンなどの酸性NSAIDsが禁忌です。特発性間質性肺炎では、炎症主体の病型や急性増悪にステロイドが治療の柱となる一方、最も多い特発性肺線維症には抗線維化薬を使い、ステロイド単独は推奨されません。薬と病態を結びつけて理解しておくと、入れ替えや禁忌を含む選択肢にも惑わされにくくなり、実際の処方の安全にもつながります。

解答・解説

正解はcです

代表的な呼吸器疾患とその治療薬の対応を確認する基本問題である。各選択肢の組合せを見ると、誤りの肢は「別の疾患の治療薬」や「禁忌薬」をあてがっている構成になっている。例えば、マクロライドはびまん性汎細気管支炎(DPB)やCOPDの増悪予防に、抗コリン吸入薬はCOPDに、ワルファリンは肺血栓塞栓症に用いる薬であり、疾患と薬が入れ替えられている。インドメタシンはアスピリン喘息で禁忌となる薬の代表である。 したがって、各疾患について「病態の中心は何か(血栓か、炎症か、気道閉塞か、線維化か)」と「その病態を標的とする薬は何か」を結びつけて考えれば正解に至る。特発性間質性肺炎は肺の間質に炎症・線維化を生じる疾患群で、炎症が主体の病型では副腎皮質ステロイドが治療の中心となるため、c が正しい組合せである。

選択肢考察

  1. ×a.  肺血栓塞栓症 ―― マクロライド

    肺血栓塞栓症は、主に下肢や骨盤の深部静脈にできた血栓が遊離して肺動脈を閉塞する疾患である。治療の基本は抗凝固療法で、急性期は未分画ヘパリンなどで開始し、その後ワルファリンや直接経口抗凝固薬(DOAC)で維持する。ショックや低血圧を伴う重症例では血栓溶解療法(モンテプラーゼなど)、カテーテル治療や外科的血栓摘除を考慮する。マクロライドは抗菌薬であり、血栓に対する作用はないので誤りである。

  2. ×b.  アスピリン喘息 ―― インドメタシン

    アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息、NSAIDs-exacerbated respiratory disease: N-ERD)は、アスピリンに限らず、シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)を阻害する酸性の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で喘息発作が誘発される病態である。COX-1阻害によりアラキドン酸代謝がロイコトリエン産生側に偏り、システイニルロイコトリエンが過剰になって強い気道収縮を起こす。インドメタシンは強力なCOX阻害薬であり、アスピリン喘息では禁忌である。治療は通常の喘息と同様に吸入ステロイドを中心とし、ロイコトリエン受容体拮抗薬も有用である。

  3. ○c.  特発性間質性肺炎 ―― 副腎皮質ステロイド

    特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias: IIPs)は原因不明の間質性肺炎の総称で、特発性肺線維症(IPF)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、特発性器質化肺炎(COP)などの病型を含む。炎症が主体の病型(NSIP、COPなど)では副腎皮質ステロイドがよく効き、免疫抑制薬を併用することもある。また、いずれの病型でも急性増悪時にはステロイドパルス療法が行われる。よって本組合せは正しい。ただし、IIPsの中で最も多いIPFは線維化が主体でステロイドの効果に乏しく、安定期のIPFにステロイドを単独で使うことは推奨されない。IPFの進行抑制には抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)を用いる。

  4. ×d.  サルコイドーシス ―― 抗コリン吸入薬

    サルコイドーシスは、肺・リンパ節・眼・皮膚・心臓などに乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を形成する原因不明の全身性疾患である。両側肺門リンパ節腫脹(BHL)のみの例や無症状例は自然軽快することが多く、経過観察とする。心病変、神経病変、局所治療でコントロールできない眼病変、進行する肺病変や高カルシウム血症などがあれば、副腎皮質ステロイドの全身投与を行う。抗コリン吸入薬は気管支拡張薬であり、肉芽腫性炎症の治療にはならないので誤りである。

  5. ×e.  慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉 ―― ワルファリン

    COPDは主に喫煙によって生じる、完全には可逆的でない気流閉塞を特徴とする疾患である。薬物療法の中心は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)や長時間作用性β2刺激薬(LABA)などの吸入気管支拡張薬で、症状に応じて単剤または併用とし、増悪を繰り返し血中好酸球が多い例などでは吸入ステロイドを加える。ワルファリンは抗凝固薬であり、COPDそのものの治療薬ではないので誤りである。

特発性間質性肺炎の主な病型と治療反応性

・特発性肺線維症(IPF): 最多の病型。病理は通常型間質性肺炎(UIP)パターンで、胸部CTで下葉・胸膜直下優位の蜂巣肺を示す。ステロイドの効果は乏しく、抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)で呼吸機能低下の進行を抑える。予後不良で、急性増悪が主な死因の一つである。 ・非特異性間質性肺炎(NSIP): 炎症細胞浸潤が主体の型ではステロイド・免疫抑制薬への反応がよく、IPFより予後がよい。膠原病に伴うことも多い。 ・特発性器質化肺炎(COP): 肺胞腔内に器質化した肉芽組織(Masson体)を形成する。ステロイドがよく効くが、減量中の再燃がある。

アスピリン喘息で使用できる薬

・COX-1阻害作用をもつNSAIDs(アスピリン、インドメタシン、ロキソプロフェン、ジクロフェナクなど)は注射・内服・坐剤・貼付剤を含めて避ける。 ・選択的COX-2阻害薬(セレコキシブなど)や少量のアセトアミノフェンは比較的安全とされるが、慎重に使う。 ・コハク酸エステル型ステロイド(ヒドロコルチゾンコハク酸エステルなど)の急速静注で発作が悪化することがあり、急性発作ではリン酸エステル型を用いるか、点滴でゆっくり投与する。 ・成人発症の喘息に好酸球性副鼻腔炎・鼻茸を合併することが多い。

本問に登場する薬の本来の適応

・マクロライド少量長期療法: びまん性汎細気管支炎(DPB)、副鼻腔気管支症候群、COPDの増悪予防など。抗菌作用とは別の抗炎症・気道分泌抑制作用による。 ・抗コリン吸入薬: COPDの第一選択の一つ。重症喘息でも追加される。 ・ワルファリン: 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症の再発予防、心房細動の塞栓予防など。

POINT

・特発性間質性肺炎: 炎症主体の病型(NSIP、COP)や急性増悪にはステロイド。IPFは抗線維化薬が中心で、ステロイド単独はすすめられない。 ・肺血栓塞栓症: 抗凝固療法(ヘパリン→ワルファリン/DOAC)、重症では血栓溶解療法。 ・アスピリン喘息: 酸性NSAIDs(インドメタシンなど)は禁忌。 ・サルコイドーシス: BHLのみは経過観察、心・眼・神経病変などはステロイド全身投与。 ・COPD: LAMA・LABAなどの吸入気管支拡張薬が中心。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。