StudyMed医師国家試験

直腸から途切れずに広がる炎症―内視鏡所見で潰瘍性大腸炎を見抜く

第104回医師国家試験 I問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第13問

潰瘍性大腸炎に特徴的な下部消化管内視鏡所見はどれか。2つ選べ。

  1. a.偽膜
  2. b.敷石像
  3. c.輪状潰瘍
  4. d.連続性炎症
  5. e.血管透見像消失

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、潰瘍性大腸炎の内視鏡所見を選ぶ問題だ。選択肢には、ほかの腸疾患を代表する所見も混ざっている。所見を暗記で選ぶのではなく、「炎症がどこから始まり、どの深さまで及ぶか」という病態から内視鏡像を予想してみよう。
医学生医学生
潰瘍性大腸炎は、直腸から始まる大腸の病気でしたよね。
ドクタードクター
その通り。炎症はほぼ例外なく直腸から始まり、口側へ途切れずに広がっていく。範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分けられる。そしてもう一つのポイントが深さで、炎症は基本的に粘膜から粘膜下層にとどまる浅いものなんだ。
医学生医学生
途切れずに広がるということは、連続性炎症が当てはまりますね。
ドクタードクター
そう、それが一つ目の正解だ。病変部と正常部の境界がはっきりしていて、病変の中に正常粘膜が飛び石状に残ることはない。もう一つは、粘膜が浅く広くむくんで赤くなると、内視鏡でどう見えるか考えてみよう。
医学生医学生
消化器内科の実習で、正常な大腸では細い血管が網目のように透けて見えていました。それが見えなくなるということでしょうか。
ドクタードクター
まさにそれだ。粘膜全体がびまん性にむくみ、充血すると、粘膜下の樹枝状の血管網が透けて見えなくなる。これが血管透見像の消失で、軽症例でも最初に現れる基本的な所見だ。Mayo内視鏡スコアでも軽症の指標の一つになっている。
医学生医学生
敷石像も炎症性腸疾患の所見だったので、少し迷いました。
ドクタードクター
そこは典型的な引っかけだね。敷石像は、縦走潰瘍などに囲まれた粘膜がむくんで盛り上がり、石畳のように見える所見で、Crohn病に特徴的だ。Crohn病は口から肛門までどこにでも起こる全層性の肉芽腫性炎症で、回腸末端から回盲部に多い。病変が正常粘膜をはさんで飛び飛びに分布するskip lesionも、連続性の潰瘍性大腸炎とは対照的なんだ。
医学生医学生
偽膜は、抗菌薬を使ったあとの下痢で出てくる所見ですよね。
ドクタードクター
そう、偽膜性腸炎に特徴的だ。抗菌薬で腸内細菌叢が乱れて、Clostridioides difficileが増え、その毒素で起こる。偽膜はフィブリンや好中球、壊死した上皮でできた黄白色の小さな膜様物だ。ただし、潰瘍性大腸炎の患者さんにC. difficile感染が合併して病状が悪くなることもあるから、増悪時には検査で確認する。
医学生医学生
輪状潰瘍は、腸結核だったと記憶しています。
ドクタードクター
よく覚えているね。結核菌は腸管のPeyer板などのリンパ装置に感染し、リンパ流が腸管を輪のように取り巻いているため、潰瘍も輪状や帯状に広がる。回盲部に多く、治る過程で萎縮瘢痕帯や回盲弁の変形を残す。NSAIDsによる腸病変でも輪状潰瘍がみられることがある。
医学生医学生
所見を、どの疾患を代表しているかとセットで覚えるのが大事ですね。
ドクタードクター
そうだね。潰瘍性大腸炎の内視鏡所見を、重症度の順に整理しておこう。軽度では血管透見像の消失、発赤、細かな顆粒状の粘膜。中等度では粗い粘膜、触れると出血する易出血性、びらん、膿性粘液の付着。高度になると自然出血や広い潰瘍が多発する。
医学生医学生
長く経過した例では、偽ポリポーシスやハウストラの消失も見られるんですよね。注腸造影の鉛管像はCBTでも出ました。
ドクタードクター
その通り。慢性期には腸管が短く、管腔が細くなる。病理では陰窩膿瘍と杯細胞の減少が特徴で、Crohn病の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と対比して覚えておくといい。
医学生医学生
連続性炎症なのに、例外はありますか。
ドクタードクター
いい疑問だ。ステロイドや注腸・坐剤で治療したあとは直腸の炎症が目立たなくなったり、虫垂開口部のまわりだけに離れた炎症を伴ったりする例がある。skip lesionのように見えても、すぐCrohn病と決めつけず治療歴を確認しよう。
医学生医学生
臨床で特に気をつけることは何でしょう。
ドクタードクター
重症例では中毒性巨大結腸症に注意が必要だし、長く経過した全大腸炎型では大腸癌、いわゆるcolitic cancerのリスクが高くなるから、定期的な内視鏡での監視が欠かせない。また、炎症が治まると血管透見像が戻ってくるので、粘膜治癒の評価にもこの所見が使われるんだ。

まとめ

潰瘍性大腸炎は、直腸から口側へ連続性・びまん性に広がる、粘膜を主座とした浅い炎症です。そのため内視鏡では、連続性炎症と血管透見像の消失が特徴的で、さらに粘膜の顆粒状変化、易出血性、びらん・潰瘍、慢性期の偽ポリポーシスやハウストラの消失がみられます。一方、敷石像や縦走潰瘍はCrohn病、偽膜は偽膜性腸炎、輪状潰瘍は腸結核を代表する所見です。治療後には直腸病変が目立たなくなる例もあるため、所見の判定には治療歴も考慮します。病態から内視鏡像を予想し、所見と疾患を対応させて理解しておくことが、炎症性腸疾患や感染性腸炎の鑑別と、粘膜治癒の評価に役立ちます。

解答・解説

正解はd, eです

潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis: UC)は、大腸の粘膜を主座とする原因不明の慢性炎症性腸疾患である。炎症はほぼ例外なく直腸から始まり、口側(盲腸側)へ途切れずに連続して広がる。病変の範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分けられる。炎症は基本的に粘膜(〜粘膜下層)にとどまる浅いものである。 この病態から内視鏡像を予想できる。粘膜全体がびまん性にむくみ、赤くなるため、正常なら透けて見える粘膜下の細かな血管網が見えなくなる(血管透見像の消失)。粘膜表面は細かな凹凸でざらざらした顆粒状となり、もろくなって接触で出血しやすく(易出血性)、膿性の粘液が付着する。重症になるとびらんや潰瘍が多発し、長く経過すると炎症性ポリープ(偽ポリポーシス)やハウストラの消失もみられる。そして正常粘膜と病変部の境界ははっきりしており、病変部の中に正常粘膜が飛び石状に残ることはない(連続性炎症)。 選択肢の残りの所見は、ほかの腸疾患を特徴づける所見である。各所見を「どの疾患の代表的な像か」と結びつけて覚えておくことが、炎症性腸疾患や感染性腸炎の鑑別に直結する。

選択肢考察

  1. ×a.  偽膜

    偽膜は、フィブリン・好中球・壊死した上皮などからなる黄白色の小さな隆起(膜様物)で、粘膜表面に多発する。偽膜性腸炎の特徴的な所見であり、多くは抗菌薬投与によって腸内細菌叢が乱れ、Clostridioides difficile(旧名 Clostridium difficile)が増殖して産生する毒素によって起こる。潰瘍性大腸炎の特徴的所見ではない。なお、潰瘍性大腸炎の患者にC. difficile感染が合併して病状が悪化することはある。

  2. ×b.  敷石像

    敷石像(cobblestone appearance)は、縦走潰瘍などに囲まれた粘膜が浮腫状に盛り上がり、石畳を敷き詰めたように見える所見で、Crohn病に特徴的である。Crohn病は口腔から肛門までの消化管のどこにでも起こり得る全層性の肉芽腫性炎症で、回腸末端〜回盲部に好発する。病変が正常粘膜を挟んで飛び飛びに分布する(区域性・非連続性病変、skip lesion)点も潰瘍性大腸炎と対照的である。

  3. ×c.  輪状潰瘍

    輪状潰瘍(腸管の短軸方向に沿って帯状・輪状に広がる潰瘍)は腸結核に特徴的な所見である。結核菌は腸管のリンパ装置(Peyer板など)に感染し、リンパ流が腸管を輪状に取り巻くように走るため、潰瘍も輪状・帯状に広がる。回盲部に好発し、治癒過程では萎縮瘢痕帯や回盲弁の変形・開大を残す。なお、NSAIDs起因性腸病変でも輪状潰瘍や膜様狭窄がみられることがある。潰瘍性大腸炎の特徴的所見ではない。

  4. ○d.  連続性炎症

    潰瘍性大腸炎の炎症は直腸から口側に向かって途切れることなく連続して広がり、病変部と正常部の境界が明瞭であることが最大の特徴である。これはCrohn病の区域性(非連続性)病変との重要な鑑別点となる。ただし、全身性ステロイドや局所治療(注腸・坐剤)の影響で直腸の炎症が目立たなくなったり、虫垂開口部周囲にだけ離れた炎症(skip lesionのように見える所見)を伴ったりする例もあり、判定には治療歴も考慮する。

  5. ○e.  血管透見像消失

    正常な大腸粘膜は薄く透明感があり、内視鏡で粘膜下の樹枝状の血管網が透けて見える(血管透見像)。潰瘍性大腸炎では粘膜全体がびまん性に浮腫・充血をきたすため、この血管網が見えなくなる。血管透見像の消失は、軽症例でも最初に現れる基本的な所見であり、Mayo内視鏡スコアでも軽症(スコア1)の指標の一つとされる。炎症が治まると血管透見像が回復するため、粘膜治癒の評価にも用いられる。

潰瘍性大腸炎の内視鏡所見(重症度に沿って)

・軽度: 血管透見像の消失、発赤、粘膜の細顆粒状変化 ・中等度: 粗糙な粘膜、易出血性(接触出血)、びらん、膿性粘液の付着 ・高度: 自然出血、多発する広範な潰瘍 ・慢性期: 炎症性ポリープ(偽ポリポーシス)、ハウストラの消失、腸管の短縮・管腔の狭小化(注腸造影での鉛管像)

潰瘍性大腸炎とCrohn病の比較

・病変部位: UCは大腸(直腸から連続)。Crohn病は全消化管(回盲部に好発)。 ・分布: UCは連続性・びまん性。Crohn病は区域性・非連続性(skip lesion)。 ・炎症の深さ: UCは粘膜〜粘膜下層(浅い)。Crohn病は全層性で、瘻孔・狭窄・膿瘍をつくる。 ・内視鏡像: UCは血管透見像消失、易出血性、びらん・潰瘍、偽ポリポーシス。Crohn病は縦走潰瘍、敷石像、アフタ様潰瘍。 ・病理: UCは陰窩膿瘍、杯細胞の減少。Crohn病は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫。 ・肛門病変: Crohn病で多い(痔瘻、肛門周囲膿瘍など)。 ・合併症: UCは中毒性巨大結腸症、長期経過例での大腸癌(colitic cancer)。

その他の腸疾患の特徴的内視鏡所見

・偽膜性腸炎: 黄白色の偽膜の多発 ・腸結核: 輪状・帯状潰瘍、萎縮瘢痕帯、回盲弁の変形(回盲部に好発) ・虚血性大腸炎: 縦走する発赤・びらん・潰瘍(左側結腸に好発、区域性) ・アメーバ赤痢: たこいぼ様のびらん・潰瘍(盲腸・直腸に好発)

POINT

・潰瘍性大腸炎は直腸から連続性・びまん性に広がる粘膜の炎症である。 ・特徴的内視鏡所見: 血管透見像の消失、粘膜の顆粒状変化、易出血性、びらん・潰瘍、偽ポリポーシス。 ・所見と疾患の対応: 偽膜=偽膜性腸炎、敷石像・縦走潰瘍=Crohn病、輪状潰瘍=腸結核。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。