StudyMed医師国家試験

レントゲンは全員じゃない―学校保健の「当たり前」を法律と統計で見直す

第104回医師国家試験 G問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第19問

学校保健について誤っているのはどれか。

  1. a.学校給食は教育の一環である。
  2. b.小学生で被患率が最も高いのはう歯である。
  3. c.小学校において胸部エックス線撮影は毎年全員に実施される。
  4. d.学校管理下における児童生徒の死因の第1位は突然死である。
  5. e.学校職員の健康診断は学校保健安全法に基づいて実施される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は学校保健の基本事項を横断的に問う問題だ。給食の位置づけ、子どもの病気の統計、健康診断の中身、学校での死亡、根拠になる法律。どれも「なんとなく知っている」で解きがちな分野だから、制度の理由とセットで整理していこう。誤っているものを1つ選ぶ形式だね。
医学生医学生
正直、全部正しそうに見えます。自分が小学生のとき、胸のレントゲンを撮った気がするんですが……。
ドクタードクター
そこがまさに今回の落とし穴なんだ。実はその記憶こそ、正誤を分けるポイントになる。小中学校の結核健診は、どんな仕組みで行われているか知っているかな。
医学生医学生
昔はツベルクリン反応とBCGをやっていたと公衆衛生の講義で聞きました。
ドクタードクター
よく覚えているね。それが2003年度に廃止されて、今は全員に問診を行い、結核患者との接触歴や高まん延国での居住歴、長引く咳などの症状がある子だけを精密検査に回す方式になった。胸部エックス線撮影はその必要と判断された子だけに行うんだ。だから小学校で毎年全員に撮影するという記述は誤り、これが正解になる。
医学生医学生
じゃあ、全員撮影するのはどこなんですか。
ドクタードクター
高等学校や高専、大学の第1学年、つまり入学時だ。小中学生は結核の発病率が低いから、全員に撮っても見つかる患者はごくわずかで、被曝という不利益のほうが目立ってしまう。検査は「やれば安心」ではなく、効率と害のバランスで決まるという考え方だね。
医学生医学生
スクリーニングの効率の話は、疫学の講義で事前確率と絡めて習いました。有病率が低い集団では効率が悪くなる、と。
ドクタードクター
その理解で十分だ。では残りも確認しよう。学校給食が教育の一環という記述はどう思う?
医学生医学生
給食はお昼ごはんの提供というイメージでしたが……教育なんですか。
ドクタードクター
学校給食法で、給食は学校教育の一環と位置づけられている。望ましい食習慣、協調性、食文化への理解を育てるのが目的なんだ。2005年には食育基本法ができて、栄養教諭制度も始まった。だからこの記述は正しい。
医学生医学生
小学生の被患率第1位がう歯というのは、実感としても納得です。小児科実習でも虫歯の多い子を見ました。
ドクタードクター
出題当時の学校保健統計ではう歯が長く第1位で、裸眼視力1.0未満、鼻・副鼻腔疾患が続いていた。ただ、う歯は年々減っていて、近年は視力低下とほぼ同程度になり、年度によっては順位が入れ替わることもある。中高生では裸眼視力1.0未満が第1位だという点も一緒に押さえておこう。
医学生医学生
学校管理下の死因第1位が突然死というのは少し意外でした。事故のほうが多いかと。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。日本スポーツ振興センターの統計では突然死が最も多く、頭部外傷や溺死が続く。突然死の多くは心臓が原因で、不整脈や心筋症、QT延長症候群などが背景にあり、運動中の発生が目立つんだ。
医学生医学生
だから小・中・高の第1学年で心電図検査をしているんですね。BLSの実習でAEDの使い方を何度も練習したのも、そういう背景があるのか。
ドクタードクター
まさにそうだ。学校心臓検診とAEDの設置、教職員の心肺蘇生訓練が対策の柱になっている。最後に、職員の健康診断の根拠法はどうかな。
医学生医学生
働く人の健診だから労働安全衛生法かと思いましたが、学校職員は違うんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。学校保健安全法は児童生徒だけでなく職員の健康診断も定めていて、学校の設置者が毎学年定期に実施する義務がある。職員の健康は子どもへの感染症の広がりにも関わるからね。一般企業の労働者は労働安全衛生法、学校職員は学校保健安全法と区別しておこう。
医学生医学生
根拠法、検査対象、統計の順位をそれぞれ理由と一緒に覚えると、ひっかけにも強くなりそうです。
ドクタードクター
その通り。発展として、出席停止と臨時休業の違いも覚えておくといい。感染症による出席停止は校長が、学級閉鎖などの臨時休業は学校の設置者が行う。また学校医・学校歯科医に加えて学校薬剤師が置かれ、教室の空気や水質などの環境衛生検査を担っている。将来、学校医を頼まれたり、地域で感染症の相談を受けたりするときに、この枠組みの知識はそのまま役立つよ。

まとめ

小・中学校の結核健診は全員への問診が基本で、胸部エックス線撮影は必要と認められた者に限られ、全員撮影は高校・大学などの第1学年で行われます。学校給食は学校給食法で教育の一環とされ、小学生の被患率は長くう歯が第1位(近年は視力低下と拮抗)、学校管理下の死因第1位は心臓系を中心とする突然死です。職員の健康診断も学校保健安全法に基づき、一般企業の労働安全衛生法とは根拠法が異なります。検査の対象範囲は有病率と被曝などの不利益のバランスで決まるという視点を持つと、制度の暗記が理解に変わります。学校保健は小児の健康を地域で守る仕組みであり、学校医や地域医療に関わる医師にとって基本となる知識です。

解答・解説

正解はcです

問われていること

学校保健に関する基本事項(学校給食の位置づけ、児童生徒の疾病・異常の状況、健康診断の内容、学校管理下の死亡、根拠法)を問う問題であり、「誤っているもの」を1つ選ぶ。

学校保健の枠組み

学校保健は、児童生徒と教職員の健康の保持増進を目的とし、主に次の法律に基づいて行われる。 ・学校保健安全法:児童生徒・就学時・職員の健康診断、感染症による出席停止、学校医などの配置、学校環境衛生、学校安全などを定める(2009年に学校保健法から改称・改正)。 ・学校給食法:学校給食を教育活動の一環として位置づける。

考え方

結核健診は、かつて小中学校でツベルクリン反応検査とBCG接種を行っていたが、2003年度に廃止され、現在は全員に問診を行い、必要と判断された者に限って胸部エックス線検査などを行う方式となった。全員に胸部エックス線撮影を行うのは高等学校・大学などの第1学年である。この点を押さえていれば、小学校で毎年全員に撮影するという選択肢が誤りだと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  学校給食は教育の一環である。

    記述は正しい。学校給食法は、学校給食が児童生徒の心身の健全な発達に役立ち、食に関する正しい理解と適切な判断力を養ううえで重要な役割を果たすとして、これを学校教育の一環に位置づけている。単なる栄養補給ではなく、望ましい食習慣、協調性や社交性、食文化や自然の恵みへの理解などを育てることが目標とされる。2005年の食育基本法の施行、同年の栄養教諭制度の開始により、給食を活用した食育の推進が一層重視されている。

  2. ×b.  小学生で被患率が最も高いのはう歯である。

    記述は正しい(出題当時の統計)。文部科学省の学校保健統計調査では、小学生の疾病・異常の被患率は長くう歯(むし歯)が第1位で、裸眼視力1.0未満、鼻・副鼻腔疾患がこれに続いていた。なお、う歯は年々減少しており、近年は裸眼視力1.0未満の者の割合とほぼ同程度となり、年度によっては視力低下が上回ることもある。中学・高校では裸眼視力1.0未満が第1位である点も併せて押さえておきたい。

  3. ○c.  小学校において胸部エックス線撮影は毎年全員に実施される。

    記述は誤りであり、これが正解である。小学校・中学校の結核健診では、全員に問診(結核患者との接触歴、高まん延国での居住歴、自覚症状など)を行い、その結果をもとに学校医が必要と認めた者、あるいは結核対策委員会などで精密検査が必要とされた者に対してのみ、胸部エックス線撮影、喀痰検査などを実施する。全員に胸部エックス線撮影を行うのは、高等学校・高等専門学校・大学の第1学年の入学時である。小中学生は結核発病率が低く、全員撮影は効率が悪いうえ放射線被曝の不利益もあるため、この方式がとられている。

  4. ×d.  学校管理下における児童生徒の死因の第1位は突然死である。

    記述は正しい。日本スポーツ振興センターの統計によると、学校管理下(授業中、部活動中、登下校中など)における児童生徒の死亡では突然死が最も多く、頭部外傷、溺死などがこれに続く。突然死の多くは心臓系の突然死(不整脈、心筋症、先天性心疾患、QT延長症候群など)であり、運動中の発生が目立つ。そのため学校心臓検診(小・中・高の第1学年での心電図検査)や、AED(自動体外式除細動器)の設置と教職員の心肺蘇生訓練が重視されている。

  5. ×e.  学校職員の健康診断は学校保健安全法に基づいて実施される。

    記述は正しい。学校保健安全法は児童生徒だけでなく職員の健康診断も定めており、学校の設置者は毎学年定期に学校の職員の健康診断を行わなければならないとされる(同法第15条)。職員の健康状態は児童生徒への感染症の伝播などにも影響するため、胸部エックス線検査を含む定期健康診断が義務づけられている。一般企業の労働者では労働安全衛生法が根拠となる点と区別しておくとよい。

学校保健安全法に基づく健康診断

・就学時健康診断:小学校入学前に市町村教育委員会が実施する。 ・児童生徒等の定期健康診断:毎学年6月30日までに実施する。身長・体重、栄養状態、脊柱・胸郭、視力・聴力、眼・耳鼻咽喉・皮膚疾患、歯・口腔、結核、心臓(第1学年では心電図)、尿(蛋白・糖)などを検査する。 ・職員の定期健康診断:学校の設置者が毎学年定期に実施する。 ・臨時の健康診断:感染症や食中毒の発生時などに必要に応じて実施する。

学校における結核対策

・小・中学校:全員に問診 → 必要な者に胸部エックス線撮影・喀痰検査など。2003年度にツベルクリン反応検査とBCG再接種は廃止された。 ・高等学校・大学など:第1学年で全員に胸部エックス線撮影。

学校保健統計(疾病・異常の被患率)の傾向

・小学生:長くう歯が第1位で、裸眼視力1.0未満、鼻・副鼻腔疾患が続く。う歯は減少傾向。 ・中学生・高校生:裸眼視力1.0未満が第1位。

学校管理下の死亡

・突然死が第1位(大半が心臓系)。学校心臓検診とAEDの普及が対策の柱である。

その他の関連事項

・学校医・学校歯科医・学校薬剤師の配置(学校薬剤師は環境衛生検査などを担う)。 ・学校感染症による出席停止は校長が行い、臨時休業(学級閉鎖など)は学校の設置者が行う。

POINT

・小・中学校の結核健診は問診が基本で、胸部エックス線撮影は必要と認められた者のみ。全員撮影は高校・大学の第1学年。 ・学校給食は学校給食法で教育の一環と位置づけられている。 ・小学生の被患率第1位はう歯(中高生は裸眼視力1.0未満)。 ・学校管理下の死因第1位は突然死(多くが心臓系)。 ・職員の健康診断も学校保健安全法に基づく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。