StudyMed医師国家試験

「肺炎かも」と言われたら―検査より先に返すべきひと言

第104回医師国家試験 F問題 第27問(連問)

国試問題にチャレンジ

第104回 F問題 第27問

連問の共通文

 総合外来における医師と患者の会話を示す。 医師:「今日はどうされましたか」

患者:「咳が続くんです」 医師:「そうですか。では,症状について詳しく教えていただけますか」 患者:「5日前にのどが痛くて微熱があり,翌日から咳が出るようになりました。市販の風邪薬を飲んで様子をみていたら,2日後には熱も下がり,のどの痛みも治まったので昨日から仕事には出ているのですが,咳はずっと続いています」 医師:「なるほど。それでどうなりましたか」 患者:「昼はそれほどつらくはないのですが,夜になると少し咳が増える気がします。ちょっと長いので,もしかして肺炎にでもなっているのではないかと心配で今日病院にきました」  この後の医師の発言として最も適切なのはどれか。

  1. a.「その心配はありませんから安心してください」
  2. b.「現在は咳以外に何かお困りの症状はありませんか」
  3. c.「肺炎を起こしているのではないか心配なのですね」
  4. d.「では,さっそく胸部エックス線の検査をしましょう」
  5. e.「つらい中でよくここまで仕事を続けてこられましたね」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は総合外来の医療面接の問題だ。医学的な診断を問うのではなく、患者さんが最後に口にした言葉に医師がどう応じるか、が問われている。患者さんの最後の発言に何が含まれているかに注目してみよう。
医学生医学生
咳が長引いているので肺炎ではないかと心配している、という部分ですね。
ドクタードクター
そう。そこには患者さん自身が症状をどう捉えているかという「解釈」と、「心配」という感情の両方が入っている。医療面接ではこれを解釈モデルと呼ぶね。
医学生医学生
OSCEの医療面接で「解釈モデルを聞く」という項目がありました。でも聞いた後どうするかは、あまり意識していなかったかもしれません。
ドクタードクター
そこが大事なところだ。患者さんが解釈や感情を口にしたとき、まずすべきことは否定も話題転換もせずに「受け止めました」と言葉で返すこと。だから「肺炎を起こしているのではないか心配なのですね」と言い換えて返すのが最も適切なんだ。
医学生医学生
患者さんの言葉をそのまま繰り返しているだけなのに、それで十分なんですか。
ドクタードクター
繰り返し・言い換えは立派な技法だよ。自分の心配が正しく伝わったと感じると、患者さんは安心し、信頼関係ができて、その後の問診や診察にも協力しやすくなる。ここから診察や検査で確かめていこう、という流れにも自然につながるんだ。
医学生医学生
逆に「その心配はありませんから安心してください」と言ってあげるほうが、患者さんは安心しそうな気もしますが。
ドクタードクター
気持ちはわかるけど、まだ聴診も検査もしていない段階では肺炎を否定する根拠がない。これは根拠のない保証といって、間違っていれば医学的に無責任だし、患者さんには「話を聞いてもらえなかった」と映りやすい。
医学生医学生
咳以外の症状を尋ねる選択肢は、肺炎の鑑別に必要な質問ですよね。痰や息苦しさ、胸痛、また熱が出ていないかなど。
ドクタードクター
内容としては必ず聞くべきことだね。ただ、不安を打ち明けた直後に何も触れずに次の質問へ移ると、気持ちを受け流された印象を与える。まず受け止めて、その後に聞くのが正しい順序なんだ。
医学生医学生
すぐに胸部エックス線を撮りましょう、というのも、心配に応えているように見えます。
ドクタードクター
一見そうだけど、問診は途中で身体診察もまだだ。検査の必要性は病歴と身体所見から判断するもの。しかも気持ちを受け止める過程を飛ばしている。最後の「よくここまで仕事を続けてこられましたね」はどう思う?
医学生医学生
ねぎらいの言葉ですけど、出勤したのは昨日からで、昼はそれほどつらくないと言っているので、ちょっと大げさな気がします。
ドクタードクター
鋭いね。共感の言葉も、患者さんの実際の状況と、いちばんの関心事に即していないと焦点がずれてしまう。今回の中心は「肺炎ではないか」という心配だからね。
医学生医学生
臨床実習の総合診療科で、指導医の先生が患者さんの話を「〜ということがご心配なんですね」とまとめてから診察に入っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが実践だ。医療面接の技法には、開かれた質問、閉じた質問、促し、反復・言い換え、要約、共感などがある。この会話でも医師は「なるほど。それでどうなりましたか」と促しを使っているね。
医学生医学生
受け止めた後は、どう進めればいいですか。
ドクタードクター
随伴症状を確認し、聴診などの身体診察を行って、必要なら胸部エックス線を撮る。再発熱、膿性痰、呼吸困難、胸痛、頻呼吸、断続性ラ音などがあれば肺炎を疑う。経過からは感染後咳嗽や急性気管支炎も考えやすいけれど、最後は患者さんの「肺炎かどうか」という問いに根拠を示して答えることがゴールなんだ。
医学生医学生
解釈モデルは聞いて終わりではなく、最初に受け止めて、最後に答えるところまでがセットなんですね。
ドクタードクター
その通り。正しいかどうかに関係なく、まず受容する。それが患者中心の医療面接の基本だよ。

まとめ

医療面接で患者が「肺炎ではないか」といった解釈モデルや不安を口にしたら、まずそれを否定せず、言い換えや反復で受け止めて返すことが基本です。診察前の根拠のない保証、不安に触れないままの話題転換や検査への直行、状況にそぐわないねぎらいは、いずれも患者の中心的な関心を受け流すことになります。受け止めた後に随伴症状の確認、身体診察、必要に応じた検査へと進み、最終的には患者の心配に根拠を示して答える流れが望まれます。開かれた質問、促し、反復、要約、共感といった技法を意識して使い分けることが、信頼関係の構築と正確な診療の両方につながります。

解答・解説

正解はcです

会話の整理

患者は5日前に咽頭痛と微熱で発症し、翌日から咳が出現した。市販の風邪薬で2日後には解熱・咽頭痛消失となり昨日から出勤しているが、咳が続き、夜間にやや増える。最後に「長引いているので肺炎になっているのではないかと心配で受診した」と述べている。経過からは上気道炎後の感染後咳嗽や急性気管支炎が考えやすいが、肺炎を含めて、身体診察や必要な検査を経なければ判断はできない段階である。

この場面で求められていること

患者は最後の発言で、自分の症状に対する解釈(肺炎ではないか)と不安という感情を初めて口にしている。医療面接では、患者が解釈や感情を表出したとき、それを否定したり話題を変えたりせず、まず「受け止めたこと」を言葉で返すことが基本である。患者の言葉を要約・反復して返す技法は、患者に「理解してもらえた」という安心感を与え、信頼関係(ラポール)を築き、その後の問診・診察・検査への協力も得やすくする。 したがって、この直後の医師の発言としては、患者の心配の内容を自分の言葉で言い換えて確認する応答が最も適切である。その後に、随伴症状の確認や身体診察、必要に応じた胸部エックス線検査などへ進み、最終的に患者の心配(肺炎かどうか)に対して根拠を示して答える流れとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  「その心配はありませんから安心してください」

    まだ聴診などの身体診察も検査も行っておらず、肺炎を否定できる根拠はない。根拠のない保証(安易な保証)は誤りである可能性があり、医学的に無責任である。また患者の不安を一方的に打ち消すことになり、患者は「話を聞いてもらえなかった」と感じやすく、信頼関係を損なう。

  2. ×b.  「現在は咳以外に何かお困りの症状はありませんか」

    随伴症状(喀痰、呼吸困難、胸痛、再発熱など)の確認は肺炎などの鑑別に必要で、いずれ必ず尋ねるべき内容である。しかし患者が不安を表出した直後にそれに触れずに次の質問へ移ると、患者の気持ちを受け流した印象を与える。まず心配を受け止め、その後に聞くのが適切な順序である。

  3. ○c.  「肺炎を起こしているのではないか心配なのですね」

    患者が語った解釈(肺炎ではないか)と感情(心配)を、医師が言い換えて返している。これは要約・反復による受容・確認の応答であり、患者は自分の気持ちが正しく伝わったと感じられる。不安を受け止めたうえで、診察や検査で確かめていくという次のステップにも自然につながるため、この場面で最も適切である。

  4. ×d.  「では,さっそく胸部エックス線の検査をしましょう」

    肺炎が疑われれば胸部エックス線検査は選択肢となるが、問診が途中であり、聴診などの身体診察も行わずに直ちに検査へ進むのは早すぎる。検査の必要性は病歴と身体所見から判断すべきである。また患者の不安を言葉で受け止める過程を飛ばしており、この時点の発言としては適切ではない。

  5. ×e.  「つらい中でよくここまで仕事を続けてこられましたね」

    ねぎらい・共感を示そうとする発言ではあるが、患者が出勤しているのは昨日からで、日中はそれほどつらくないとも述べており、状況にそぐわない大げさな内容である。何より患者が今表出した「肺炎ではないか」という中心的な心配に応えておらず、この場面での応答としては焦点がずれている。

医療面接で用いる主なコミュニケーション技法

・開かれた質問(open-ended question):「どうされましたか」など、患者が自由に語れる質問。面接の初期に用いる。 ・閉じた質問(closed question):「はい/いいえ」や具体的な一語で答える質問。情報の確認や絞り込みに用いる。 ・促し(facilitation):「それで」「なるほど」などで話の続きを促す。本問の会話でも医師が用いている。 ・反復・言い換え(繰り返し):患者の言葉を繰り返したり言い換えたりして返し、理解を確認する。 ・要約(summarization):語られた内容をまとめて返し、誤解がないか確認する。 ・共感(empathy):患者の感情を理解し、それを言葉で伝える(例:「それはご心配でしたね」)。 ・正当化・支持:患者の感情や行動をもっともだと認める。

避けるべき応答

・根拠のない保証(「大丈夫ですよ」) ・患者の解釈や感情の否定、説教 ・患者の話をさえぎる、話題を急に変える ・専門用語の多用

解釈モデルを聴いた後の対応

患者の解釈モデルは、正しいかどうかにかかわらずまず受容する。そのうえで病歴聴取と身体診察を進め、必要な検査を行い、最終的には患者の心配(本問なら「肺炎かどうか」)に明確に答える形で説明する。本症例で肺炎を疑う所見としては、発熱の再燃、膿性痰、呼吸困難、胸痛、頻呼吸、聴診でのcrackles(断続性ラ音)などがあり、これらを確認することが次のステップとなる。

POINT

・患者が解釈モデルや不安を表出したら、まず否定せず受け止める ・患者の言葉を言い換えて返す(反復・要約)ことで受容と理解を示す ・根拠のない保証は不適切(診察・検査前に病気を否定しない) ・必要な質問・検査も、患者の気持ちを受け止めた後に行うのが適切な順序 ・共感の言葉も、患者の状況と中心的な関心に即したものであること

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。