StudyMed医師国家試験

好きな酒の「強さ」は関係ない―CAGEで見抜くアルコール依存症のサイン

第103回医師国家試験 H問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第103回 H問題 第13問

アルコール依存症のスクリーニングの質問として有効でないのはどれか。

  1. a.「朝一番に飲酒をすることがありますか」
  2. b.「アルコール度数の高いお酒が好きですか」
  3. c.「飲酒に対して罪悪感を持ったことがありますか」
  4. d.「他人から飲酒に対して注意されたことがありますか」
  5. e.「飲酒を控えなければならないと感じたことがありますか」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、アルコール依存症を拾い上げるための問診として「有効でないもの」を選ぶ問題だ。否定型の設問なので注意してほしい。カギになるのは、代表的なスクリーニング質問票であるCAGEの4項目を正確に覚えているかどうかだよ。
医学生医学生
CAGEは聞いたことがあります。たしか頭文字をとった名前でしたよね。
ドクタードクター
そう。Cut down、Annoyed by criticism、Guilty feeling、Eye-openerの4つだ。順に、飲酒量を減らさなければと感じたことがあるか、他人から飲酒を非難されて気にさわったことがあるか、自分の飲酒に罪悪感を持ったことがあるか、朝に迎え酒をしたことがあるか、を尋ねる。4項目中2項目以上当てはまれば依存症を強く疑うんだ。
医学生医学生
なぜスクリーニングに質問票が重視されるんですか。普通に飲酒量を聞けばよさそうに思えます。
ドクタードクター
いい疑問だね。アルコール依存症は本人が問題を否認しやすく、外来では飲酒量を少なめに申告しがちなんだ。だから、答えやすく短時間でできる質問で、依存の本質的な特徴を間接的に探る工夫が必要になる。では選択肢を見ていこう。朝一番に飲酒するかどうかを聞く質問はどうかな。
医学生医学生
これはEye-openerですね。でも、朝からお酒を飲むことがなぜそこまで重要なのかはよく分かっていません。
ドクタードクター
依存が進むと、夜間から朝にかけて血中アルコール濃度が下がることで、手指のふるえ、発汗、不安、いらいらといった離脱症状が出てくる。それを抑えるために朝から飲むようになるんだ。だから朝の飲酒は身体依存の存在を示唆する重要なサインになる。
医学生医学生
精神科の実習で、入院直後に手がふるえて汗をかいていた患者さんがいました。指導医の先生が離脱症状だと説明してくれました。
ドクタードクター
まさにそれだね。重症例では痙攣発作や、2〜3日後に幻視や意識障害を伴う振戦せん妄を起こすこともあるから、入院時の離脱管理はとても大事なんだ。次に、罪悪感、他人からの注意、飲酒を控えるべきと感じるかを尋ねる質問はどうだろう。
医学生医学生
それぞれGuilty、Annoyed、Cut downに対応していますね。罪悪感は本人が問題に気づき始めている表れ、他人からの注意は周囲との関係に影響が出ている証拠、控えるべきと感じるのはコントロールの障害を反映している、という理解でいいですか。
ドクタードクター
完璧だ。本人が否認していても、家族や職場の人は問題に気づいていることが多い。だから他人からの注意は有用な手がかりになる。では残る、アルコール度数の高いお酒が好きかどうかの質問は?
医学生医学生
強いお酒が好きな人のほうが依存症になりやすそうな気もして、最初は迷いました。
ドクタードクター
直感的にはそう思えるよね。でも度数の高い酒を好むかどうかは単なる嗜好で、依存の有無とは直接結びつかない。ビールやワインのように度数の低いお酒でも、大量に飲み続ければ依存症になる。大事なのは酒の種類ではなく、摂取した純アルコール量と、飲酒のコントロール喪失や飲酒に伴う問題があるかどうかなんだ。
医学生医学生
なるほど。だからこれがCAGEのどこにも当てはまらず、スクリーニングとして有効でない質問なんですね。
ドクタードクター
その通り。診断基準の考え方とも一致しているよ。ICDやDSMでは、飲酒への強い渇望、飲酒の開始・終了・量のコントロール障害、離脱症状、耐性の形成、飲酒以外の楽しみや責任の放棄、有害な結果があっても飲み続けることなどが重視される。どれも「何を飲むか」ではなく「飲酒をどう制御できなくなっているか」に注目しているんだ。
医学生医学生
CAGE以外のスクリーニングテストも覚えておいたほうがいいですか。
ドクタードクター
WHOが作ったAUDITは押さえておきたい。10項目40点満点で、飲酒量や頻度、依存の症状、飲酒による問題を評価する。依存症に至る前の危険な飲酒の段階から拾い上げられるのが強みで、一般に8点以上で問題飲酒が疑われ、わが国では15点以上で依存症を疑う基準が使われている。最初の3項目だけの短縮版AUDIT-Cもあるし、日本で開発されたKASTという質問票もある。
医学生医学生
OSCEの医療面接で生活歴を聞くとき、飲酒量だけでなくCAGEの質問も意識して入れてみます。
ドクタードクター
ぜひそうしてほしい。責めるような口調にならず、自然に尋ねるのがコツだよ。肝障害や外傷、不眠などで受診した人の背景に依存症が隠れていることは珍しくないから、どの科に進んでも役立つスキルになる。

まとめ

アルコール依存症は本人が否認しやすく飲酒量を少なめに申告しがちなため、簡便な質問票によるスクリーニングが重視されます。代表的なCAGEは、Cut down(減酒の必要性)、Annoyed(他人からの非難)、Guilty(罪悪感)、Eye-opener(朝の迎え酒)の4項目からなり、2項目以上の該当で依存症を強く疑います。朝の迎え酒は離脱症状を抑える行動で身体依存を示唆する一方、アルコール度数の高い酒を好むかどうかは嗜好にすぎず、依存の評価項目にはなりません。依存の評価で重要なのは酒の種類ではなく純アルコール量と飲酒のコントロール喪失であり、WHOのAUDITやわが国のKASTも併せて知っておくとよいでしょう。日常の問診にこれらの視点を取り入れることで、さまざまな診療科で隠れた依存症を早期に見つけることにつながります。

解答・解説

正解はbです

本問は、アルコール依存症を拾い上げる(スクリーニングする)ための問診として、どの質問が有効でないかを問うている。「有効でないのはどれか」という否定型の設問であることに注意する。 アルコール依存症は、患者本人が問題を否認しやすく、また外来では飲酒量を少なめに申告しがちであるため、簡便で答えやすい質問票による拾い上げが重視される。その代表がCAGE質問票であり、次の4つの質問の頭文字をとって名付けられている。 ・C(Cut down):飲酒量を減らさなければならないと感じたことがあるか ・A(Annoyed by criticism):他人から飲酒を非難されて気にさわったことがあるか ・G(Guilty feeling):自分の飲酒について悪い、申し訳ないと感じたことがあるか ・E(Eye-opener):神経を落ち着かせたり二日酔いを治したりするために、朝に迎え酒をしたことがあるか これらは、飲酒のコントロールの障害、飲酒による対人関係上の問題、飲酒への罪悪感、離脱症状を酒で抑える行動といった、依存症の本質的な特徴を反映している。4項目のうち2項目以上が当てはまればアルコール依存症が強く疑われる。 一方、どのような種類の酒を好むか、とくにアルコール度数の高い酒が好きかどうかは個人の嗜好にすぎず、依存の有無とは直接結びつかない。依存の評価で重要なのは、酒の種類ではなく、摂取した純アルコール量と、飲酒に対する制御の喪失や飲酒に伴う問題の有無である。選択肢のうちCAGEの4項目に対応しないものを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  「朝一番に飲酒をすることがありますか」

    CAGEのE(Eye-opener:目覚めの一杯、迎え酒)に相当する質問である。依存が進むと、夜間から朝にかけて血中アルコール濃度が下がることで手指のふるえ、発汗、不安、いらいらなどの離脱症状が出現し、それを抑えるために朝から飲酒するようになる。朝の飲酒は身体依存の存在を示唆する重要な所見であり、スクリーニングの質問として有効である。

  2. ○b.  「アルコール度数の高いお酒が好きですか」

    CAGEのいずれの項目にも該当せず、スクリーニングの質問として有効でない。度数の高い酒を好むかどうかは嗜好の問題であり、ビールやワインなど度数の低い酒でも大量に飲み続ければ依存症になる。依存の評価に必要なのは、酒の種類ではなく飲酒量(純アルコール量)と、飲酒のコントロール喪失、離脱症状、飲酒による社会的・身体的問題の有無である。

  3. ×c.  「飲酒に対して罪悪感を持ったことがありますか」

    CAGEのG(Guilty feeling)に相当する質問である。自分の飲酒について後ろめたさや罪悪感を抱くのは、本人がどこかで飲酒が問題になっていると自覚している表れであり、問題飲酒・依存症の拾い上げに有効である。

  4. ×d.  「他人から飲酒に対して注意されたことがありますか」

    CAGEのA(Annoyed by criticism)に相当する質問である。家族や職場の人などから飲酒について注意・批判を受けることは、飲酒が周囲との関係に悪影響を与えていることを示す。本人は否認していても周囲が問題に気付いていることが多く、スクリーニングの質問として有効である。

  5. ×e.  「飲酒を控えなければならないと感じたことがありますか」

    CAGEのC(Cut down)に相当する質問である。飲酒量を減らすべきだと感じる、あるいは減らそうとしてもうまくいかないという経験は、飲酒のコントロールが障害されていることを反映しており、依存症のスクリーニングに有効である。

アルコール依存症の主なスクリーニングテスト

・CAGE:4項目の簡便な質問票。2項目以上の該当で依存症を疑う。短時間で施行でき、日常診療で使いやすい。 ・AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test):WHOが作成した10項目の質問票(40点満点)。飲酒量・頻度、依存の症状、飲酒による問題を評価し、依存症に至る前の危険な飲酒(ハイリスク飲酒)の段階から拾い上げることができる。一般に8点以上で問題飲酒が疑われ、わが国では15点以上でアルコール依存症が疑われるとする基準が用いられている。最初の3項目のみを用いた短縮版(AUDIT-C)もある。 ・KAST(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト):わが国で開発された質問票で、現在は男性版・女性版がある。

アルコール依存症の特徴(診断の考え方)

ICD(国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会の診断基準、DSM-5では「アルコール使用障害」)では、飲酒への強い欲求(渇望)、飲酒の開始・終了・量のコントロール障害、離脱症状、耐性の形成(同じ効果を得るのにより多くの量が必要になる)、飲酒以外の楽しみや責任の放棄、有害な結果が生じても飲み続けること、などが重視される。いずれも「どのような酒を飲むか」ではなく「飲酒をどう制御できなくなっているか」に着目している。

離脱症状

最終飲酒から数時間〜1日程度で手指振戦、発汗、頻脈、不安、不眠などが出現し、重症例では痙攣発作や、2〜3日後に振戦せん妄(幻視、意識障害、自律神経症状)を来す。朝の迎え酒はこの早期離脱症状を抑えるための行動である。

POINT

・アルコール依存症のスクリーニングにはCAGEが代表的である。 ・CAGE = Cut down(減酒の必要性)、Annoyed(他人からの非難)、Guilty(罪悪感)、Eye-opener(朝の迎え酒)。 ・4項目中2項目以上の該当で依存症を強く疑う。 ・酒の種類や度数の好みは依存の評価項目ではない。 ・ほかにWHOのAUDIT、わが国のKASTも知っておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。