背が高いのに最終身長は低い?―骨年齢を早送りする「性ホルモン」の正体
第103回医師国家試験 G問題 第36問
国試問題にチャレンジ
骨年齢の促進を伴うのはどれか。
- a.Down症候群
- b.思春期遅発症
- c.Turner症候群
- d.下垂体性小人症
- e.ホルモン分泌性卵巣腫瘍
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
骨年齢は左手X線で骨化中心や骨端線の成熟度を評価し、骨の成熟度を暦年齢に換算したものです。骨成熟には成長ホルモン・甲状腺ホルモン・性ホルモンが関わり、これらの不足で骨年齢は遅れ、過剰で進みます。選択肢の中で骨年齢を促進させるのは、エストロゲンやアンドロゲンを過剰に分泌して末梢性思春期早発症を起こすホルモン分泌性卵巣腫瘍であり、思春期遅発症、Turner症候群、成長ホルモン分泌不全性低身長症は遅れの側、Down症候群は明らかな促進を示しません。性ホルモン過剰では一時的に背が伸びても骨端線が早く閉じ、最終身長は低くなる点が臨床上の要点です。骨年齢を「伸びしろの指標」として読む視点は、小児の成長障害や思春期異常を評価する基本となります。
解答・解説
正解はeです
骨年齢とは、骨の成熟度を暦年齢に換算して表したものである。通常は左手(手根骨・中手骨・指骨)のX線写真を撮影し、骨化中心の出現や骨端線(成長軟骨板)の閉鎖の程度を標準と比べて評価する(TW2法、Greulich-Pyle法など)。
骨成熟を左右するホルモン
骨の成熟に強く関わるのは、主に次の3つのホルモンである。 ・成長ホルモン(GH:growth hormone):軟骨の増殖を促して身長を伸ばし、骨の成熟にも関与する。 ・甲状腺ホルモン:骨の成熟に不可欠で、欠乏すると骨年齢は著しく遅れる。 ・性ホルモン(エストロゲン、アンドロゲン):思春期の成長加速をもたらすと同時に骨端線の閉鎖を強く進める。骨端線の閉鎖には、男女ともにエストロゲンの作用が中心的な役割を果たす。
考え方
これらのホルモンが不足する病態では骨年齢は遅延し、過剰となる病態では促進する。骨年齢の促進をきたす代表は、性ホルモンが年齢不相応に早く・多く分泌される病態、すなわち思春期早発症(性早熟症)である。選択肢の中で性ホルモンの過剰をもたらすのは、ホルモン分泌性卵巣腫瘍である。
選択肢考察
- ×a. Down症候群
Down症候群は21番染色体のトリソミーによる疾患で、低身長を伴うことが多いが、これは主に染色体異常そのものによる成長障害であり、性ホルモンの過剰はない。骨年齢に明らかな促進を示す疾患ではない。なお、合併しやすい甲状腺機能低下症があれば骨年齢はむしろ遅れる。
- ×b. 思春期遅発症
思春期遅発症は、思春期の発来(女子では乳房発育、男子では精巣容積の増大)が標準より明らかに遅れる状態である。性ホルモンの分泌開始が遅れるため骨端線の成熟も進まず、骨年齢は暦年齢より遅れる(あるいは正常範囲にとどまる)。体質性思春期遅発症では、骨年齢の遅れに応じて成長期間が長く続くため、最終身長はおおむね正常範囲に達する。
- ×c. Turner症候群
Turner症候群は X 染色体の全部または一部の欠失(45,X など)による疾患で、低身長と卵巣機能不全(性腺形成不全)を特徴とする。低身長は主に SHOX 遺伝子のハプロ不全による。小児期の骨年齢はおおむね正常だが、思春期になっても卵巣からのエストロゲン分泌が乏しいため、思春期年齢以降は骨年齢の進行が遅れる傾向にある。骨年齢が促進することはない。
- ×d. 下垂体性小人症
下垂体からの成長ホルモン分泌が不足する病態で、現在は成長ホルモン分泌不全性低身長症と呼ばれる。成長ホルモンの不足により成長速度が低下し、骨年齢は暦年齢より遅れる。ゴナドトロピンなど他の下垂体ホルモンの欠損を伴う場合は、思春期も発来しにくく骨年齢の遅れはさらに目立つ。
- ○e. ホルモン分泌性卵巣腫瘍
卵巣腫瘍の中には、エストロゲンを分泌するもの(顆粒膜細胞腫、莢膜細胞腫など)、アンドロゲンを分泌するもの(Sertoli-Leydig細胞腫など)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を産生する胚細胞腫瘍などがある。小児でこれらの腫瘍から性ホルモンが過剰に分泌されると、ゴナドトロピン非依存性(末梢性)の思春期早発症を呈し、一時的に身長の伸びが加速する一方で骨端線の成熟が早まり、骨年齢は促進する。骨端線が早く閉じるため、放置すると最終身長は低くなる。
骨年齢が遅延する主な病態
・甲状腺機能低下症(先天性・後天性):遅延が特に著明 ・成長ホルモン分泌不全性低身長症 ・性腺機能低下症、思春期遅発症(体質性を含む) ・Cushing症候群(グルココルチコイド過剰)、ステロイド長期投与 ・慢性疾患や栄養障害、愛情遮断症候群(心理社会的低身長)
骨年齢が促進する主な病態
・思春期早発症:ゴナドトロピン依存性(中枢性:特発性、視床下部過誤腫などの脳腫瘍)と、ゴナドトロピン非依存性(末梢性:性ホルモン産生腫瘍、McCune-Albright症候群など) ・先天性副腎過形成(21-水酸化酵素欠損症など):副腎アンドロゲンの過剰 ・甲状腺機能亢進症 ・単純性肥満(軽度の促進を示すことがある)
骨年齢の臨床的な意味
骨年齢は、低身長や高身長、思春期の異常を評価する際に、身長の伸びしろ(残された成長の余地)を推定する指標となる。性ホルモン過剰で骨年齢が促進している場合は、小児期には背が高くても、骨端線が早く閉鎖するため最終身長は低くなることに注意する。
POINT
・骨成熟に関わる主なホルモンは、成長ホルモン・甲状腺ホルモン・性ホルモンの3つ ・これらの不足で骨年齢は遅延、過剰で促進する ・骨年齢促進の代表は思春期早発症(性ホルモン産生腫瘍を含む)と先天性副腎過形成 ・性ホルモン過剰では骨端線が早期に閉鎖し、最終身長は低くなる
