合流の「場所」が運命を分ける―膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症
第103回医師国家試験 D問題 第6問
国試問題にチャレンジ
膵管胆道合流異常に合併しやすいのはどれか。
- a.Meckel憩室
- b.腸回転異常症
- c.肥厚性幽門狭窄
- d.横隔膜ヘルニア
- e.先天性胆道拡張症
対話形式の解説
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ドクターまとめ
膵・胆管合流異常は、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流するためOddi括約筋の調節が及ばず、主に膵液が胆道へ逆流する先天異常です。逆流した膵酵素が胆道粘膜を傷つけ、胆道の拡張、胆管炎、胆道癌(とくに胆嚢癌)、膵炎を引き起こします。先天性胆道拡張症ではほぼ全例に合流異常を伴い、治療は拡張胆管と胆嚢を切除して肝管空腸吻合を行う分流手術、胆管非拡張型では予防的胆嚢摘出が一般的です。Meckel憩室、腸回転異常症、肥厚性幽門狭窄、横隔膜ヘルニアは消化管や横隔膜の発生異常であり、合流異常とは関連しません。解剖と病態から合併症を逆算する考え方は、若年者の胆嚢癌や原因不明の膵炎の背景を見抜く臨床力にもつながります。
解答・解説
正解はeです
膵・胆管合流異常とは、膵管と胆管が十二指腸の壁の外(十二指腸壁外)で合流してしまう先天的な形成異常である。通常、両者は十二指腸の壁の中で合流し、その部分をOddi括約筋が取り囲んでいる。このため膵液と胆汁は、括約筋によって互いに逆流しないよう調節されている。 合流異常では、合流部が括約筋より上流にある。そのため括約筋の働きが合流部に及ばず、膵液と胆汁が互いに逆流する。膵液の圧は胆汁の圧より高いため、主に起こるのは膵液が胆道へ逆流する現象である。胆道の中では、トリプシンなどの膵酵素が活性化されて胆道の粘膜を傷つける。これが胆管炎、胆道の拡張、胆道癌(とくに胆嚢癌)の原因になる。逆に胆汁が膵管へ流れ込んで膵炎を起こすこともある。 合流異常は、胆管が拡張するタイプ(先天性胆道拡張症)と、胆管が拡張しないタイプに分けられる。先天性胆道拡張症では、ほぼ全例に合流異常が伴う。本問は、合流異常と病態として直接つながる疾患を選ぶ問題であり、胆道の病気を選べばよい。そのほかの選択肢は、消化管や横隔膜の発生異常であり、合流異常との関連はない。
選択肢考察
- ×a. Meckel憩室
Meckel憩室は、胎生期に中腸と卵黄嚢をつないでいた卵黄腸管(臍腸管)が、閉じずに回腸側に残ったものである。消化管の先天異常の中で最も多い。回腸末端から口側にある、腸間膜付着部の反対側にできる真性憩室(腸管の壁の全層からなる憩室)である。異所性胃粘膜から出血して下血を起こしたり、腸閉塞・腸重積・憩室炎の原因になったりする。診断には99mTc(テクネチウム)シンチグラフィが用いられる。胆道の形成異常とは関係ない。
- ×b. 腸回転異常症
胎生期の中腸は、上腸間膜動脈を軸に反時計回りに計270°回転して正常な位置に固定される。この回転や固定がうまくいかない状態が腸回転異常症である。Ladd靱帯による十二指腸の圧迫や中腸軸捻転を起こし、新生児期に胆汁性嘔吐で発症することが多い。軸捻転は腸管壊死につながるため、緊急手術が必要な病態である。膵・胆管合流異常との関連はない。
- ×c. 肥厚性幽門狭窄
幽門の輪状筋が厚くなり、胃の出口が狭くなる疾患である。男児、とくに第1子に多い。生後2〜3週ごろから、胆汁を含まない噴水状の嘔吐がみられる。嘔吐によって胃酸が失われるため、低クロール性代謝性アルカローシスになる。上腹部にオリーブ状の腫瘤を触れ、診断には超音波検査が有用である。治療は幽門筋切開術(Ramstedt手術)である。原因ははっきりしておらず、遺伝と環境の両方が関わると考えられている。膵・胆管合流異常とは関係ない。
- ×d. 横隔膜ヘルニア
先天性横隔膜ヘルニアは、横隔膜がうまく形成されずに腹部の臓器が胸腔へ脱出する疾患である。後外側のBochdalek孔ヘルニアが最も多く、左側に多い。新生児期に呼吸困難やチアノーゼで発症し、肺低形成と肺高血圧の程度が予後を左右する。前方のMorgagni孔ヘルニアは比較的まれで、症状が出ないことも多い。いずれも膵・胆管合流異常とは関係ない。
- ○e. 先天性胆道拡張症
先天性胆道拡張症は、総胆管を含む肝外胆管が嚢状または紡錘状に拡張する先天異常である。ほぼ全例に膵・胆管合流異常が伴い、合流異常が主な原因と考えられている。膵液が逆流して胆管壁を傷つけ、胆管炎、胆道癌、膵炎を起こす。腹痛・黄疸・腹部腫瘤が古典的な三主徴だが、三つがそろう例は多くない。東洋人の女性に多い。合流異常に合併する代表的な疾患として正しい。
膵・胆管合流異常の分類
・胆管拡張型(先天性胆道拡張症): 小児期に腹痛・黄疸・腹部腫瘤などで見つかることが多い。胆管癌と胆嚢癌の両方に注意する。 ・胆管非拡張型: 症状が出にくく、成人になってから見つかることが多い。胆嚢癌の合併が特に多い。
発癌の機序
膵液が胆道へ逆流すると胆道の粘膜が慢性的に傷つき、過形成や化生を経て癌が発生すると考えられている。合流異常のある例では胆道癌の頻度が高く、若い年齢でも発癌する。
診断
・画像検査: MRCP(MR胆管膵管撮影)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、超音波内視鏡、3D-DIC-CTなどで、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流していること、または共通管が異常に長いことを確かめる。 ・胆汁中のアミラーゼ高値は、膵液が逆流していることを示す補助的な所見である。
治療
・胆管拡張型: 拡張した肝外胆管と胆嚢を切除し、肝管と空腸をつなぐ胆道再建(肝管空腸吻合)を行う。これにより膵液と胆汁の流れを分ける(分流手術)。 ・胆管非拡張型: 胆嚢癌の危険が高いため、予防的に胆嚢を切除するのが一般的である。
戸谷分類
先天性胆道拡張症の病型分類である。Ⅰ型(総胆管の嚢腫状または紡錘状の拡張)が最も多い。そのほか、Ⅱ型(憩室型)、Ⅲ型(総胆管瘤=choledochocele)、Ⅳ型(肝内胆管にも拡張がある型など)、Ⅴ型(肝内胆管だけの拡張=Caroli病)がある。
POINT
・膵・胆管合流異常は、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し、Oddi括約筋の調節が及ばない先天異常である。 ・膵液が胆道へ逆流することで、胆道の拡張、胆管炎、胆道癌(とくに胆嚢癌)、膵炎が起こる。 ・先天性胆道拡張症には、ほぼ全例で合流異常が伴う。 ・治療は、胆管拡張型では拡張胆管と胆嚢の切除および胆道再建(分流手術)、非拡張型では予防的胆嚢摘出である。
