StudyMed医師国家試験

骨折線が見えなくても骨折はある―頭部CTで読む「直接所見」と「間接所見」

第103回医師国家試験 D問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第103回 D問題 第7問

頭部外傷患者5名の頭部単純CT(①~⑤)を別に示す。  頭蓋骨に骨折があるのはどれか。2つ選べ。

第103回 D問題 第7問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、頭部外傷のCT5枚から頭蓋骨骨折がある症例を選ぶ問題だ。ポイントは、骨折線そのものが見えるかどうかだけで判断しないこと。骨の連続性、頭蓋内の空気、そして血腫の形と部位という順で、骨折を示す証拠を探していこう。まず、頭蓋骨骨折を疑うCT所見にはどんなものがあるかな。
医学生医学生
骨が途切れている骨折線とか、骨がへこんでいる陥没骨折でしょうか。
ドクタードクター
それが直接所見だね。骨の途切れ、骨片のずれ、骨片の頭蓋内への落ち込み。ただ、脳を見やすい条件のCTでは骨折線は見落としやすい。そこで大事なのが間接所見だ。頭蓋内の空気、骨折部に接する頭皮の腫れ、そして骨折を伴うことが多い病変の存在の3つを覚えておこう。
医学生医学生
頭蓋内に空気があるのは、なぜ骨折の証拠になるんですか。
ドクタードクター
本来、頭蓋内は閉じた空間だから空気は入らない。空気があるということは、骨折によって副鼻腔や外界とつながった証拠なんだ。最初の画像では、頭頂後頭部で骨の連続性が途切れて骨片がずれていて、その近くに空気を示す黒い点状の低吸収域が散らばり、頭皮も腫れている。直接所見と間接所見がそろっているから、これは頭蓋骨骨折と診断できる。
医学生医学生
空気が入っているということは、開放骨折になっている可能性もありますよね。
ドクタードクター
鋭いね。外界と交通しているなら髄膜炎などの感染のリスクがあるから、抗菌薬投与や外科的処置の必要性を検討する。では、最後の画像はどうかな。骨に接して両側に凸のレンズ型をした均一な高吸収域がある。
医学生医学生
凸レンズ型なら急性硬膜外血腫ですね。でも、骨折線ははっきり見えないように思います。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だ。急性硬膜外血腫は、多くの場合、頭蓋骨骨折で骨の内側を走る中硬膜動脈などが傷ついて、骨と硬膜の間に血液がたまって起こる。成人ではその大部分に骨折を伴うんだ。だから1枚の画像で骨折線が見えなくても、この形の血腫があれば骨折の存在を強く推定できる。
医学生医学生
なるほど、血腫の形から骨折を逆算するんですね。そもそも、なぜ凸レンズ型になるんでしたっけ。
ドクタードクター
硬膜は頭蓋骨の縫合部に強く付着しているので、骨と硬膜の間にたまった血液は縫合線を越えて広がりにくい。そのため、限られた範囲で内側へ盛り上がってレンズ型になる。骨折の確認には、骨条件の画像や3D-CTで骨を見直すのが基本だよ。
医学生医学生
脳神経外科を回ったとき、意識清明期のあとに急に意識が悪くなるのが硬膜外血腫の怖いところだと教わりました。
ドクタードクター
そう、受傷直後は話せていたのに急変することがあるから要注意だ。血腫が大きければ緊急の開頭血腫除去術が必要になる。では、残りの画像も見ていこう。前頭葉の脳実質内に不規則な高吸収域がある画像は?
医学生医学生
脳実質内の出血なので脳挫傷でしょうか。前頭葉の下面は頭蓋底にぶつかりやすいと講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。前頭葉下面や側頭葉先端は挫傷が起こりやすく、衝撃の反対側にできるcontre-coup injuryも有名だ。脳挫傷は骨折を伴うこともあるけれど、この画像には骨のずれや頭蓋内の空気がないので、骨折があるとはいえない。次に、大脳半球表面の三日月形で、脳とほぼ同じ吸収値の血腫があり、正中線が偏位している画像はどうかな。
医学生医学生
三日月形は硬膜下血腫ですが、高吸収じゃないので慢性硬膜下血腫ですね。高齢者で物忘れが進んで見つかるケースを外来で見ました。
ドクタードクター
いいね。慢性硬膜下血腫は軽い外傷の3週〜3か月後に、架橋静脈からの少量の出血をきっかけにゆっくり大きくなる。原因となる外傷は軽いことが多く、通常は骨折を伴わない。穿頭洗浄術で治ることが多い疾患だ。最後に、Sylvius裂や脳溝に沿った線状の高吸収域の画像は?
医学生医学生
外傷性くも膜下出血ですね。動脈瘤破裂だと脳底槽中心に広がるのと違って、脳表の脳溝に限られることが多いと覚えています。
ドクタードクター
その区別ができていれば十分だ。これも骨折を伴うことはあるけれど、画像から骨折は読み取れない。つまり骨折ありと判断できるのは、骨のずれと空気がある症例と、急性硬膜外血腫の症例の2つになる。
医学生医学生
直接所見で決まるものと、病態から推定するものの2パターンがあるということですね。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。臨床での注意点も加えておこう。頭蓋底骨折はCTで見つけにくく、髄液鼻漏・耳漏、眼の周りの皮下出血であるパンダの眼徴候、耳の後ろのBattle徴候などの身体所見で疑うことが大切だ。また急性硬膜下血腫は縫合線を越える三日月形の高吸収域で、脳挫傷を合併しやすく予後不良という点で硬膜外血腫と対照的だから、セットで覚えておこう。

まとめ

頭蓋骨骨折のCT診断では、骨の途切れや骨片のずれといった直接所見に加え、頭蓋内の空気(気脳症)、頭皮の腫れ、急性硬膜外血腫の存在といった間接所見にも注目します。急性硬膜外血腫は多くが骨折による中硬膜動脈損傷で生じ、縫合線を越えない凸レンズ型の高吸収域を示すため、骨折線が見えなくても骨折の存在を強く推定できます。一方、脳挫傷、慢性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血は、画像上骨折所見がなければ骨折ありとは判断できず、とくに慢性硬膜下血腫は軽微な外傷で生じ通常骨折を伴いません。脳条件のCTでは骨折線を見落としやすいため、骨条件や3D-CTでの確認、頭蓋底骨折を示す身体所見の評価を組み合わせることが重要です。病態から画像所見を読み解く姿勢は、救急外来での頭部外傷の初期対応にそのまま役立ちます。

解答・解説

正解はa, eです

頭部外傷のCTを読むときは、骨・頭皮と頭蓋内の病変を分けて評価する。頭蓋骨骨折を示す所見は、次の二つに分けられる。

直接所見

骨が途切れている(骨折線)、骨片がずれている、骨片が頭蓋内へ落ち込んでいる(陥没骨折)。

間接所見

・頭蓋内の空気(気脳症): 骨折によって副鼻腔や外界とつながったことを示す。 ・骨折部に接する頭皮の腫れ(帽状腱膜下血腫など)。 ・骨折を伴うことが多い病変の存在: 代表は急性硬膜外血腫である。 急性硬膜外血腫は、多くの場合、頭蓋骨の骨折によって、骨の内側を走る硬膜の動脈(主に中硬膜動脈)や静脈洞が傷つき、骨と硬膜の間に血液がたまって起こる。硬膜は頭蓋骨の縫合部に強く付着しているため、血腫は縫合線を越えて広がりにくい。その結果、CTでは両側に凸のレンズ型(凸レンズ型)の高吸収域になる。1枚のCT画像で骨折線がはっきり見えなくても、この形の血腫があれば頭蓋骨骨折の存在を強く推定できる。 5枚の画像を、骨の連続性・頭蓋内の空気・血腫の形と部位の順に見ていく。①は骨がずれていることと頭蓋内に空気があることから、骨折を直接確かめられる。⑤は凸レンズ型の急性硬膜外血腫で、骨折を伴っていると判断できる。②〜④は脳の実質やくも膜下腔、硬膜下腔の病変で、これらの画像から骨折を読み取ることはできない。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    左の頭頂後頭部で頭蓋骨の連続性が途切れ、骨片にずれがある(直接所見)。さらに、骨折部の近くの頭蓋内や軟部組織に、空気を示す黒い点状の低吸収域が散らばっている。同じ部位の頭皮も腫れている。骨がずれていることに加えて、空気が入り込んでいることは、骨折によって頭蓋の内と外がつながったことを示す。このため頭蓋骨骨折と診断できる。空気の混入があれば開放骨折や感染(髄膜炎など)の危険も考え、抗菌薬の投与や外科的処置の必要性を検討する。

  2. ×b.  ②

    左前頭葉の脳実質の中に、形の不規則な高吸収域(出血)がみられる。脳挫傷(挫傷性出血)の所見である。前頭葉の下面や側頭葉の先端は、頭蓋底の凹凸にぶつかりやすく、挫傷が起こりやすい部位である。衝撃を受けた側とは反対側にできる挫傷(contre-coup injury)もよく知られている。脳挫傷は骨折を伴うこともあるが、この画像には骨のずれや頭蓋内の空気などの所見はなく、骨折があるとはいえない。

  3. ×c.  ③

    左の大脳半球の表面に、三日月形の血腫がみられる。脳の表面の溝(脳溝)が見えにくくなり、正中線が右へずれている。血腫はほぼ脳と同じ程度の吸収値(等吸収〜低吸収)であり、慢性硬膜下血腫の所見である。慢性硬膜下血腫は、軽い頭部外傷の3週〜3か月後に、脳の表面と静脈洞をつなぐ静脈(架橋静脈)からの少量の出血をきっかけに、ゆっくり大きくなる。頭痛、認知機能の低下、片麻痺などで発症し、高齢者やアルコール多飲者に多い。原因となる外傷は軽いことが多く、頭蓋骨骨折は通常伴わない。

  4. ×d.  ④

    左のSylvius裂(大脳の外側溝)や脳溝に沿って、線状の高吸収域がみられる。外傷性くも膜下出血の所見である。脳表面の小さな血管が裂けて起こる。脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血は脳底槽を中心に広がるのに対し、外傷性のものは脳の表面(円蓋部)の脳溝やSylvius裂に限られることが多い。骨折を伴うこともあるが、この画像から骨折を読み取ることはできない。

  5. ○e.  ⑤

    左の頭頂部で、頭蓋骨の内側に接して、両側に凸のレンズ型をした均一な高吸収域がみられる。急性硬膜外血腫の典型像である。外側の頭皮も腫れている。この画像で骨折線そのものははっきりしないが、急性硬膜外血腫の多く(成人では大部分)は頭蓋骨の骨折を伴う。骨折で傷ついた中硬膜動脈などから出血するのが典型的な機序である。そのため、この患者には頭蓋骨の骨折があると判断できる。臨床的には、受傷直後に意識がはっきりしている時期(意識清明期)を経て急に意識が悪くなることがあり、血腫が大きい場合は緊急の開頭血腫除去術が必要である。

外傷性頭蓋内血腫のCT所見の比較

・急性硬膜外血腫: 骨と硬膜の間にできる。凸レンズ型の高吸収域で、縫合線を越えない。側頭部に多く、頭蓋骨骨折を伴うことが多い(中硬膜動脈の損傷)。意識清明期が特徴であり、脳そのものの損傷が軽ければ予後は比較的よい。 ・急性硬膜下血腫: 硬膜とくも膜の間にできる。三日月形の高吸収域で、縫合線を越えて広がる。架橋静脈の断裂や脳挫傷からの出血で生じ、脳挫傷を合併することが多い。予後は不良である。 ・慢性硬膜下血腫: 三日月形で、等吸収〜低吸収、ときに吸収値の異なる層がみられる。高齢者に多く、穿頭して血腫を洗い流す手術(穿頭洗浄術)で治ることが多い。 ・脳挫傷: 脳実質の中に高吸収域(出血)と低吸収域(浮腫)が混在する(salt and pepper様)。数日かけて大きくなることがある。 ・外傷性くも膜下出血: 脳表面の脳溝やSylvius裂の高吸収域である。

頭蓋骨骨折の種類

・線状骨折: 最も多い。硬膜の血管溝や静脈洞を横切る骨折は、硬膜外血腫の原因になる。 ・陥没骨折: 骨片が頭蓋骨の厚さ以上に陥没している場合や、開放性で汚染がある場合などは、手術で整復することを検討する。 ・頭蓋底骨折: 髄液が鼻や耳から漏れる(髄液鼻漏・耳漏)、眼の周りの皮下出血(パンダの眼徴候、raccoon eye)、耳の後ろの皮下出血(Battle徴候)などで疑う。CTで確かめるには、骨を見やすく表示する条件(骨条件)や薄いスライスが有用である。

読影のコツ

脳を見やすい条件(脳条件)のCTでは、骨折線を見落としやすい。骨条件の画像や3D-CTで骨を確認し、頭蓋内の空気や頭皮の腫れなどの間接所見にも注目する。

POINT

・頭蓋骨骨折の直接所見は骨の途切れやずれ、間接所見は頭蓋内の空気(気脳症)、頭皮の腫れ、急性硬膜外血腫の存在である。 ・急性硬膜外血腫は凸レンズ型の高吸収域で縫合線を越えず、多くは頭蓋骨骨折による中硬膜動脈の損傷で起こる。 ・急性硬膜下血腫は三日月形、慢性硬膜下血腫は三日月形の等吸収〜低吸収で、慢性硬膜下血腫は通常骨折を伴わない。 ・脳挫傷と外傷性くも膜下出血は、骨折の有無と直接の関係はない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。