こする場所で結果が変わる―Babinski徴候は「外側縁からJ字」が鉄則
第102回医師国家試験 H問題 第9問
国試問題にチャレンジ
Babinski徴候を誘発する方法(①~⑤)を別に示す。 足底をこする方向で正しいのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
Babinski徴候は、先の鈍いもので足底の外側縁を踵から小趾の付け根までゆっくりこすり上げ、そこから母趾の付け根へ向けて内側に曲げる「J字型」の軌跡で誘発します。足底の中央や内側を刺激したり強くこすりすぎたりすると、把握反射様の屈曲反応や逃避反射が出て判定を誤りやすくなります。母趾のゆっくりとした持続的な背屈(開扇徴候を伴うこともある)が陽性で、錐体路障害を示しますが、1~2歳ごろまでの乳児では生理的にみられます。足底が過敏な場合はChaddock反射などの変法も有用で、腱反射亢進やクローヌスなどほかの錐体路徴候と合わせて評価することが、上位・下位運動ニューロン障害を見分ける神経診察の基本になります。
解答・解説
正解はcです
Babinski徴候は、足底をこすったときに母趾が背屈(伸展)する現象である。錐体路(皮質脊髄路)の障害、つまり上位運動ニューロン障害を示す病的反射のうち、最も重要なものである。健常な成人で同じ刺激を与えると、母趾を含む足趾は底屈する(正常な足底反射)。
正しい誘発方法
患者を仰臥位にし、下肢の力を抜かせて膝を軽く伸ばした状態にする。打腱器(ハンマー)の柄の先や鍵など、先の鈍いもので足底の外側縁をこする。踵の近くから始めて、小趾の付け根に向かってゆっくりこすり上げ、そこから中足骨頭の並ぶ母趾球のほうへ弧を描いて内側に曲げる。全体として、足底外側を上行してから内側へ向かう「J字型(逆L字型)」の軌跡になる。
外側縁を刺激する理由
足底の中央や内側を刺激すると、足趾が屈曲する把握反射(足底把握反射)などが出やすく、判定を誤りやすい。また、刺激が強すぎたり痛みを与えたりすると、下肢全体を引っ込める逃避反射が起こり、判定しにくくなる。外側縁を一定の強さで、ゆっくりこすることが大切である。 図の③は、踵のそばの外側縁から小趾側を上行し、母趾の付け根の方向へ内側に曲がる軌跡を示しており、これが正しい方法である。
選択肢考察
- ×a. ①
①は、踵から足底の中央をまっすぐ足趾のほうへこする方法である。足底の中央部は刺激に敏感で、足趾の屈曲(把握反射様の反応)や逃避反射が起こりやすく、母趾の背屈を正しく判定できない。Babinski徴候では外側縁をこするのが原則であり、①は誤りである。
- ×b. ②
②は、足底の中央やや内側をこすり上げ、足先で小趾側(外側)へ曲げる軌跡である。刺激する部位(外側縁ではなく中央~内側)も、最後に曲げる方向(母趾側ではなく小趾側)も、正しい方法とは逆である。内側を刺激すると足趾の屈曲反応が出やすく、判定を誤る原因になる。
- ○c. ③
③は、踵の近くから足底の外側縁(小趾側)に沿ってこすり上げ、中足骨頭の高さで母趾の付け根に向かって内側へ曲げる軌跡である。これがBabinski徴候を誘発する標準的な方法である。錐体路障害があると母趾がゆっくり背屈し、ほかの足趾が扇のように開く(開扇徴候)こともある。障害がなければ足趾は底屈する。
- ×d. ④
④は、足底の内側(母趾球の近く)から始めて踵側へ下り、外側へ回ってから外側縁を足先へ上がる軌跡である。刺激が内側から始まっており、足底の広い範囲をこするため、屈曲反応や逃避反射が起こりやすい。外側縁を踵から上行して母趾側へ曲げるという正しい順序になっていない。
- ×e. ⑤
⑤は、外側から上がって内側へ横切り、そのまま内側縁を踵のほうへ下りる軌跡である。最後は内側縁を足先から踵へ向かってこすっており、刺激の方向が正しい方法(踵から足先へ)とは逆である。内側を刺激するため屈曲反応が起こりやすく、正しい誘発方法ではない。
Babinski徴候の意義
・錐体路が障害されると、足底刺激に対する正常な屈曲反応が抑えられなくなり、母趾の背屈(伸展)が現れる。脳血管障害、脳腫瘍、多発性硬化症、脊髄障害(頸椎症性脊髄症など)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、上位運動ニューロンが障害される疾患でみられる。 ・錐体路はまだ髄鞘化が進んでいないため、乳児では生理的にみられる。一般に1~2歳ごろまでに消失し、それ以降にみられれば病的とする。 ・意識障害、てんかん発作の後、深い睡眠中、低血糖などで一時的に陽性になることがある。 ・下位運動ニューロン障害(末梢神経障害など)では出現しない。
Babinski徴候と同じ意義をもつ変法(母趾の背屈をみる)
・Chaddock反射: 外くるぶし(外果)の下を、後ろから前へこする。 ・Oppenheim反射: 脛骨の前内側縁を、上から下へ強くこすり下ろす。 ・Gordon反射: ふくらはぎ(腓腹筋)を強くつかむ。 ・Schaeffer反射: アキレス腱を強くつまむ。
その他の錐体路徴候
腱反射の亢進、クローヌス(足クローヌス・膝クローヌス)、Hoffmann反射・Trömner反射(手指の屈曲)、痙縮(折りたたみナイフ現象)、腹壁反射の消失など。
判定上の注意
・母趾がゆっくり持続的に背屈するものを陽性とする。刺激に驚いたり痛がったりして下肢全体を引っ込める逃避反射は、陽性と区別する。 ・刺激に足底が過敏な患者では、Chaddock反射のほうが評価しやすいことがある。
POINT
・Babinski徴候は、足底の外側縁を踵から足先へこすり上げ、母趾の付け根に向かって内側へ曲げて(J字型)誘発する。 ・陽性所見は母趾の背屈(ほかの足趾の開扇を伴うことがある)で、錐体路障害(上位運動ニューロン障害)を示す。 ・正常な成人では足趾が底屈する。乳児(1~2歳ごろまで)では生理的に陽性となる。 ・足底の中央や内側を刺激したり、強すぎる刺激を与えたりすると、屈曲反応や逃避反射で判定を誤りやすい。 ・同じ意義をもつ変法として、Chaddock反射、Oppenheim反射、Gordon反射、Schaeffer反射がある。
