「24時間」を忘れるな―医師法第21条と異状死体の届出
第102回医師国家試験 C問題 第4問
国試問題にチャレンジ
異状死と認めた場合,いつまでに所轄警察署に届け出なければならないか。
- a.直ちに
- b.12時間以内
- c.24時間以内
- d.1週間以内
- e.翌月の10日まで
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
医師が死体または妊娠4月以上(満12週以降)の死産児を検案して異状を認めた場合、医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る義務があり、口頭での届出も可能で、違反には50万円以下の罰金が科されます。「異状」の定義は法律にはなく、外因死や診療関連の予期しない死亡、死因不明の死亡などを含むとする日本法医学会のガイドラインが実務の参考とされ、自ら診療していた患者でも異状を認めれば対象となります。感染症法の一類〜四類感染症や食中毒の保健所への届出は「直ちに」、死亡届・死産届は7日以内、出生届は14日以内と、届出ごとに期限と届出先が異なる点が頻出の引っかけです。法律と期限・届出先をセットで整理しておくことは、国家試験対策にとどまらず、救急や病棟で死亡に立ち会う医師としての責務を果たす基盤になります。
解答・解説
正解はcです
本問は、医師が死体の異状に気づいた際の警察への届出義務について、その期限を問う一般問題である。根拠となるのは医師法第21条であり、同条は、死体や妊娠4月以上の死産児を医師が検案し、そこに異状があると判断した場合、その医師に対して所轄の警察署への届出を義務づけている。期限は24時間以内と明記されている。 本条で整理すべき要素は次の4つである。 1. 義務を負う者:検案を行った医師 2. 対象:死体、および妊娠4月以上(妊娠満12週以降)の死産児 3. 届出先:所轄警察署(保健所や市町村長ではない) 4. 期限:24時間以内 届出の形式について法令上の定めはなく、書面でなく電話などの口頭による届出でも差し支えない。医療に関わる法定届出には「直ちに」「7日以内」「14日以内」などさまざまな期限があるため、どの法律のどの届出かと期限をセットで覚えることが、この種の問題を確実に解く鍵となる。
選択肢考察
- ×a. 直ちに
医師法第21条が定める期限は「直ちに」ではなく24時間以内である。「直ちに」という期限が設けられている代表例は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に基づく一類〜四類感染症の届出や、五類感染症のうち麻疹・風疹など一部の全数把握疾患の届出、食品衛生法に基づく食中毒の届出であり、これらと混同しないようにする。
- ×b. 12時間以内
異状死体の届出に関して12時間という期限を定めた規定はない。医師法第21条の期限は24時間以内である。
- ○c. 24時間以内
医師法第21条は、死体や妊娠4月以上の死産児について検案の結果異状ありと判断した医師に対し、その時点から24時間以内に管轄の警察署へ知らせることを求めている。犯罪や事故が関わっている可能性のある死を捜査機関がいち早く把握し、証拠の保全や死因の究明につなげることが目的である。届出は口頭でもよく、この義務に違反すると50万円以下の罰金の対象となる(医師法第33条の2)。
- ×d. 1週間以内
異状死体の届出は24時間以内に行う必要があり、1週間では遅すぎる。7日以内という期限が用いられているのは、戸籍法に基づく死亡届(届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内、国外での死亡は3か月以内)や、死産届(死産後7日以内)など、別の届出である。
- ×e. 翌月の10日まで
「翌月の10日まで」のように月単位で区切る期限は、定期的な集計報告などに見られる形式である。個々の事案ごとに迅速な対応が求められる異状死体の届出には当てはまらず、医師法第21条の期限は24時間以内である。
医師法第21条の解釈上のポイント
・「検案」とは、医師が死体の外表を調べて、死因、死亡時刻、異状の有無などを判断する行為をいう。厚生労働省は、自身が診療していた患者の死体であっても、外表を検案して異状を認めたときは届出の対象になるとの解釈を示している。 ・「異状」の範囲は法律で明確には定義されていない。実務では日本法医学会の「異状死ガイドライン」(1994年)が参考にされており、外因死(交通事故、転落、溺水、熱中症、中毒、自殺、他殺など)、外因による傷害の続発症や後遺障害による死亡、診療行為に関連した予期しない死亡、死因の分からない死亡などが異状死に含まれるとされる。 ・「妊娠4月以上」は妊娠満12週以降を意味し、死産届の対象となる死産児の範囲と一致する。 ・罰則:届出を怠った医師には50万円以下の罰金が科される(医師法第33条の2)。
関連する届出・手続きの期限
・死体解剖保存法第11条:解剖を行った者が、犯罪と関係のある異状をその死体に認めたときは、解剖地の警察署長へ24時間以内に届け出る。 ・死亡届(戸籍法):死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月以内)に、死亡診断書または死体検案書を添えて市町村長へ提出する。 ・死産届(死産の届出に関する規程):妊娠満12週以後の死産について、死産後7日以内に市町村長へ提出する。 ・出生届(戸籍法):出生日から14日以内(国外は3か月以内)。 ・感染症法:一類〜四類感染症と五類感染症の一部は直ちに、その他の五類全数把握疾患は7日以内に、保健所長を経由して都道府県知事へ届け出る。 ・食中毒(食品衛生法):患者またはその疑いのある者を診断した医師は、直ちに最寄りの保健所長へ届け出る。
死亡診断書と死体検案書の使い分け
診療中の患者がその傷病によって死亡した場合は死亡診断書を、それ以外(診療していなかった者の死亡、外因死、異状死など)では死体検案書を交付する。警察へ異状死として届け出た事例では、検視・検案を経て死体検案書が作成されるのが通常である。
POINT
・異状死体の届出の根拠は医師法第21条である。 ・対象は死体と妊娠4月以上(満12週以降)の死産児、届出先は所轄警察署、期限は24時間以内。 ・届出は口頭でも可能で、違反には50万円以下の罰金がある。 ・期限の混同に注意:感染症(一〜四類など)・食中毒は直ちに、死亡届・死産届は7日以内、出生届は14日以内。
