StudyMed医師国家試験

唐辛子はセーフ?―高血圧の生活指導は「塩」と「煙」に注目せよ

第101回医師国家試験 B問題 第96問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第96問

高血圧症患者で制限する必要がないのはどれか。

  1. a.梅干
  2. b.漬物
  3. c.タバコ
  4. d.唐辛子
  5. e.味噌汁

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、高血圧症患者への生活指導で何を制限すべきかを問う問題だ。考える軸は2つ。「食塩を多く含むか」と「血圧や心血管リスクを高めるか」。この物差しで各選択肢を見ていこう。まず、高血圧の生活習慣修正の柱を挙げられるかな。
医学生医学生
減塩、減量、運動、節酒、禁煙だったと思います。公衆衛生の講義でも出てきました。
ドクタードクター
よく覚えているね。日本高血圧学会のガイドラインでは、食塩6g/日未満、野菜・果物の積極的摂取、適正体重としてBMI 25未満、有酸素運動中心の定期的な運動、節酒、そして受動喫煙の防止を含む禁煙が挙げられている。降圧薬を使うかどうかにかかわらず、これが治療の土台なんだ。
医学生医学生
そもそも、なぜ塩をとると血圧が上がるんでしょうか。
ドクタードクター
ナトリウムを過剰に摂ると体内に水分が保持されて循環血液量が増え、血圧が上がる。日本人は食塩摂取量が平均で1日10g前後と多く、食塩感受性の高い人も少なくないから、減塩は日本の高血圧対策の中心なんだ。
医学生医学生
そうすると、梅干や漬物は典型的な塩蔵食品なので制限ですね。
ドクタードクター
その通り。梅干は製品によっては1個で1〜2g程度に達するものもあって、6g未満という目標からすると影響が大きい。漬物も毎食添える習慣があると、それだけで摂取量がかなり増える。浅漬けにする、量を減らすといった工夫が勧められるよ。
医学生医学生
味噌汁は健康的なイメージがあって、ちょっと迷いました。
ドクタードクター
具だくさんの味噌汁は栄養面では優れているけれど、1杯でおおよそ1.5〜2g程度の食塩を摂ることになる。毎食飲めば、それだけで目標の大部分を占めてしまう。1日1杯程度にする、具を多くして汁を減らす、だしを効かせて味噌を控える、といった指導が現実的だ。
医学生医学生
タバコは塩とは関係ないですが、ニコチンで交感神経が刺激されて血圧が上がるからですよね。
ドクタードクター
そう。末梢血管が収縮して血管抵抗が上がり、心拍数も増えて、一時的に血圧が上がる。さらに重要なのは、喫煙が血管内皮を障害して動脈硬化を進め、高血圧とは独立した脳卒中や虚血性心疾患の強力な危険因子だという点だ。高血圧の人は心血管リスクがすでに高いから、禁煙は強く勧められる。
医学生医学生
残るは唐辛子ですね。辛いものを食べると顔が赤くなってドキドキするので、血圧も上がりそうな気がしていました。
ドクタードクター
その感覚はよくわかる。でも辛味成分のカプサイシンに血圧を上げる作用は知られておらず、唐辛子自体は食塩をほとんど含まない。だから制限する必要はなく、これが正解だ。むしろ香辛料、酢やレモンの酸味、香味野菜、だしのうま味を活用すると、薄味でも満足感が得られやすく、減塩の工夫として勧められるんだ。
医学生医学生
制限する食品というより、減塩を助ける味方なんですね。
ドクタードクター
その通り。ただし注意点もある。七味唐辛子入りの加工品や辛味調味料の中には、食塩を多く含むものもあるから、製品ごとに確認するように伝えるとよい。
医学生医学生
臨床実習の外来で、栄養指導の場面を見学したとき、麺類の汁を残すよう話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい場面を見ているね。麺類の汁は残す、醤油はかけずにつける、加工食品や練り製品、ハム・ソーセージに注意する、といった具体的な指導が患者さんには伝わりやすい。それから、野菜や果物に多いカリウムはナトリウムの排泄を促して降圧に働くけれど、腎機能障害がある人では高カリウム血症に注意が必要だ。飲酒もエタノール換算で男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下が目安になる。
医学生医学生
禁止の一覧を覚えるより、「塩分」と「心血管リスク」という理屈で考えれば応用が利きますね。
ドクタードクター
まさにそれ。生活指導は患者さんが続けられることが何より大切だから、代わりにできる工夫まで提案できる医師を目指そう。

まとめ

高血圧症の生活習慣修正では、減塩(食塩6g/日未満)、野菜・果物の摂取、適正体重の維持、運動、節酒、禁煙が柱となります。梅干・漬物・味噌汁は食塩を多く含むため制限の対象であり、タバコは交感神経刺激による昇圧に加えて動脈硬化を促進し、心血管病の独立した危険因子となるため禁煙が必要です。一方、唐辛子の辛味成分カプサイシンには昇圧作用が知られておらず食塩もほとんど含まないため制限は不要で、香辛料や酸味、だしのうま味はむしろ減塩の工夫として役立ちます。食品を「食塩量」と「心血管リスク」の観点で判断し、続けやすい代替策まで示すことが、実際の外来での効果的な生活指導につながります。

解答・解説

正解はdです

高血圧症の生活習慣修正

高血圧症の治療では、降圧薬の有無にかかわらず生活習慣の修正が基本となる。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、主に次の項目が推奨されている。 ・減塩(食塩摂取量6g/日未満) ・野菜・果物の積極的摂取(重篤な腎障害がある場合を除く)、飽和脂肪酸・コレステロールの摂取を控える ・適正体重の維持(BMI 25未満) ・運動療法(有酸素運動を中心に、定期的に行う) ・節酒 ・禁煙(受動喫煙の防止を含む)

なぜ食塩を制限するのか

食塩(ナトリウム)を過剰に摂取すると、体内に水分が保持されて循環血液量が増え、血圧が上昇する。特に日本人は食塩摂取量が多く、食塩感受性の高い人も少なくないため、減塩は日本の高血圧対策の中心である。日本の食事では、漬物・梅干しなどの塩蔵品、味噌汁や麺類の汁、醤油などの調味料、加工食品が主な食塩の供給源となる。

設問へのアプローチ

各選択肢を「食塩を多く含むか」「血圧や心血管リスクを高めるか」の観点で判定する。梅干・漬物・味噌汁は食塩を多く含み、タバコは血圧上昇と動脈硬化を促進する。唐辛子の辛味成分であるカプサイシンには血圧を上げる作用はなく、食塩も含まないため、制限する必要はない。

選択肢考察

  1. ×a.  梅干

    梅干は梅を塩漬けにした塩蔵食品で、食塩含有量が非常に多い(一般的な梅干では1個で1〜2g程度に達するものもある)。1日6g未満という減塩目標からみると影響が大きく、制限すべき食品である。減塩タイプの製品もあるが、食べる量には注意が必要である。

  2. ×b.  漬物

    漬物は野菜を塩や醤油、味噌などで漬けた食品で、多くの食塩を含む。毎食添えて食べる習慣があると食塩摂取量が大きく増えるため、高血圧症患者では制限が必要である。浅漬けにする、量を減らすなどの工夫が勧められる。

  3. ×c.  タバコ

    喫煙するとニコチンの作用で交感神経が刺激され、末梢血管が収縮して末梢血管抵抗が上がり、心拍数も増加するため、血圧は一時的に上昇する。さらに喫煙は血管内皮を障害して動脈硬化を促進し、高血圧とは独立した心血管病(脳卒中、虚血性心疾患など)の強力な危険因子である。高血圧症患者では、心血管リスクを下げるため禁煙が強く推奨され、受動喫煙も避けるべきである。

  4. ○d.  唐辛子

    唐辛子の辛味成分であるカプサイシンには、血圧を上昇させる作用は知られておらず、唐辛子自体も食塩をほとんど含まない。したがって高血圧症患者で制限する必要はない。むしろ唐辛子などの香辛料、酢、柑橘類、香味野菜、だしのうま味などを活用すると、薄味でも満足感が得られやすく、減塩の工夫として推奨される。ただし、七味唐辛子入りの加工品や辛味調味料には食塩を多く含むものもあるので、製品ごとに確認するとよい。

  5. ×e.  味噌汁

    味噌汁は味噌に由来する食塩を多く含み、1杯でおおよそ1.5〜2g程度の食塩を摂ることになる。毎食飲むと、それだけで1日の減塩目標の大部分を占めてしまうため、高血圧症患者では制限が必要である。1日1杯程度にする、具を多くして汁を減らす、だしを効かせて味噌の量を控えるなどの工夫が勧められる。

減塩の実際

・日本人の平均食塩摂取量は1日10g前後であり、ガイドラインの目標(6g/日未満)との差は大きい。 ・食塩を多く含む食品:漬物、梅干、干物、練り製品(かまぼこ・ちくわ)、ハム・ソーセージ、味噌汁、麺類の汁、醤油・ソースなどの調味料、インスタント食品 ・減塩の工夫:香辛料(唐辛子・胡椒など)、酸味(酢・レモン)、香味野菜、だしのうま味を活用する。麺類の汁は残す。醤油はかけずにつける。

その他の生活習慣と血圧

・カリウム:野菜・果物に多く、ナトリウムの排泄を促して降圧に働く。ただし腎機能障害がある場合は高カリウム血症に注意する。 ・飲酒:過度の飲酒は血圧を上げるため節酒が勧められる(エタノール換算で男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下が目安)。 ・肥満:減量により血圧は低下する。 ・喫煙:一時的な昇圧に加え、動脈硬化を促進し心血管病のリスクを大きく高める。

POINT

・高血圧症の生活習慣修正の柱は減塩(6g/日未満)、適正体重、運動、節酒、禁煙である。 ・梅干・漬物・味噌汁は食塩を多く含み、制限の対象となる。 ・タバコは昇圧と動脈硬化促進により心血管リスクを高めるため禁煙が必要である。 ・唐辛子(カプサイシン)は血圧を上げず、香辛料はむしろ減塩の工夫に役立つ。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。