「油の中」のEと「水の中」のC―二人三脚で活性酸素と戦う抗酸化ビタミン
第101回医師国家試験 B問題 第46問
国試問題にチャレンジ
抗酸化作用の強いビタミンはどれか。2つ選べ。
- a.ビタミンA
- b.ビタミンB1
- c.ビタミンB2
- d.ビタミンC
- e.ビタミンE
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
抗酸化作用の強いビタミンの代表は、水溶性のビタミンC(アスコルビン酸)と脂溶性のビタミンE(トコフェロール)です。ビタミンEは細胞膜やリポ蛋白の脂質層で脂質過酸化の連鎖反応を断ち切り、ビタミンCは水相でラジカルを消去するとともに、酸化されたビタミンEを還元して再生させます。ビタミンB1・B2は補酵素として代謝反応を担い、ビタミンAは視覚と上皮分化が主作用で、前駆体のβ-カロテンに抗酸化作用はあるものの、強い抗酸化ビタミンとしては扱いません。欠乏症も、Eでは溶血性貧血や神経障害、Cでは壊血病と整理できます。ビタミンを「補酵素型」と「抗酸化型」に分けて理解しておくと、栄養障害の診断や補充療法を考えるときの土台になります。
解答・解説
正解はd, eです
問われていること
生体内で活性酸素やフリーラジカルを消去し、酸化ストレスから細胞を守る働き(抗酸化作用)が特に強いビタミンを選ぶ問題である。
考え方
ビタミンは機能の面から大きく二つに分けて整理すると解きやすい。 1. 補酵素として代謝反応を助けるもの: ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)が代表で、糖・脂質・アミノ酸代謝の酵素反応に組み込まれて働く。 2. 自らが酸化されることで他の分子の酸化を防ぐもの(抗酸化ビタミン): 水溶性のビタミンC(アスコルビン酸)と脂溶性のビタミンE(トコフェロール)が代表である。 ビタミンEは細胞膜やリポ蛋白の脂質の中に溶け込み、脂質過酸化の連鎖反応を止める。ビタミンCは細胞質や血漿などの水相で活性酸素を消去するとともに、酸化されたビタミンE(トコフェロキシルラジカル)を還元して再生させる。両者は「油の中」と「水の中」を分担し、協調して抗酸化防御を担っている。したがって正解はビタミンCとビタミンEである。
選択肢考察
- ×a. ビタミンA
ビタミンA(レチノール)の主な役割は、視覚と上皮の維持である。網膜の杆体細胞で11-cis-レチナールがオプシンと結合してロドプシンとなり、暗所での視覚に必須である。また、レチノイン酸は核内受容体を介して遺伝子発現を調節し、皮膚・粘膜などの上皮細胞の分化や生体膜の機能維持、免疫、成長に関わる。欠乏すると夜盲症、眼球乾燥症(角膜乾燥)、皮膚の角化亢進などを生じる。前駆体であるβ-カロテンなどのカロテノイドには一重項酸素を消去する作用があるが、ビタミンA自体の主作用は抗酸化ではなく、ビタミンC・Eと並べて「抗酸化作用の強いビタミン」として挙げるものではない。
- ×b. ビタミンB1
ビタミンB1(チアミン)は体内でチアミン二リン酸(TPP、チアミンピロリン酸)となり、補酵素として働く。ピルビン酸脱水素酵素やα-ケトグルタル酸脱水素酵素によるα-ケト酸の酸化的脱炭酸反応、ペントースリン酸経路のトランスケトラーゼによるケトール基転移反応に必要で、特に糖代謝の要となる。欠乏すると脚気(末梢神経障害、高拍出性心不全)やWernicke脳症を起こし、乳酸アシドーシスを伴うこともある。抗酸化ビタミンには分類されない。
- ×c. ビタミンB2
ビタミンB2(リボフラビン)は体内でフラビンモノヌクレオチド(FMN)やフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)となり、フラビン酵素の補酵素として酸化還元反応の電子の受け渡しを担う。電子伝達系、脂肪酸のβ酸化、クエン酸回路のコハク酸脱水素酵素などで働く。グルタチオン還元酵素の補酵素でもあるため抗酸化系を間接的に支えるが、それ自体が強力な抗酸化物質として働くわけではない。欠乏では口角炎、口唇炎、舌炎、脂漏性皮膚炎などがみられる。
- ○d. ビタミンC
ビタミンC(アスコルビン酸)は強い還元力をもつ水溶性の抗酸化物質である。血漿や細胞質などの水相でスーパーオキシドやヒドロキシルラジカルなどの活性酸素を消去し、さらに酸化されたビタミンEを還元して再生させる。抗酸化以外にも、プロリン・リシンの水酸化(コラーゲンの成熟に必須)、芳香族化合物の水酸化(カテコールアミン合成など)、腸管での非ヘム鉄の吸収促進などに関わる。欠乏するとコラーゲン合成が障害されて血管壁が脆弱化し、歯肉出血、皮下出血などの出血傾向や創傷治癒遅延を呈する壊血病となる。
- ○e. ビタミンE
ビタミンE(主にα-トコフェロール)は脂溶性の抗酸化物質で、細胞膜やLDLなどのリポ蛋白の脂質層に分布する。多価不飽和脂肪酸が酸化されて生じる脂質ペルオキシルラジカルに水素を与えて連鎖反応を断ち切り、過酸化脂質の生成を抑える(連鎖切断型抗酸化剤)。これにより生体膜が安定化し、赤血球膜の保護や末梢循環の改善にも寄与する。欠乏は脂肪吸収障害などでまれに起こり、溶血性貧血(特に未熟児)、脊髄小脳変性様の神経障害、網膜症などを生じる。
ビタミンの整理
脂溶性ビタミン(A、D、E、K): 脂肪とともに吸収され、体内に蓄積しやすく過剰症が問題となりうる。 ・A: 視覚・上皮分化。欠乏で夜盲症、角膜乾燥。 ・D: カルシウム・リン代謝。欠乏でくる病、骨軟化症。 ・E: 抗酸化。欠乏で溶血性貧血、神経障害。 ・K: 凝固因子(II、VII、IX、X)のγ-カルボキシ化。欠乏で出血傾向(新生児メレナなど)。 水溶性ビタミン(B群、C): 過剰分は尿中に排泄されやすい。 ・B1: 脚気、Wernicke脳症。 ・B2: 口角炎、舌炎。 ・ナイアシン: ペラグラ(皮膚炎、下痢、認知症)。 ・B6: 末梢神経障害、口内炎。 ・B12・葉酸: 巨赤芽球性貧血(B12では亜急性連合性脊髄変性症も)。 ・C: 壊血病。
生体の抗酸化防御
酵素系: スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ(セレンを含む)など。 非酵素系: ビタミンE(脂質相)、ビタミンC(水相)、グルタチオン、尿酸、カロテノイド、ユビキノールなど。 ビタミンCとビタミンEは互いに補い合い、酸化されたビタミンEはビタミンCによって還元され再利用される。
POINT
・抗酸化作用の代表的なビタミンはビタミンC(水溶性)とビタミンE(脂溶性)である。 ・ビタミンEは生体膜で脂質過酸化の連鎖を止め、ビタミンCは水相でラジカルを消去しつつビタミンEを再生する。 ・ビタミンB群は主に補酵素として代謝反応に働く(B1: TPP、B2: FAD・FMN)。 ・ビタミンAは視覚・上皮分化が主作用である(前駆体β-カロテンには抗酸化作用がある)。
