StudyMed医師国家試験

5つ手をつなぐ最大の抗体―IgMの形から読み解く免疫グロブリン5兄弟

第101回医師国家試験 B問題 第47問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第47問

5量体の免疫グロブリンはどれか。

  1. a.IgA
  2. b.IgD
  3. c.IgE
  4. d.IgG
  5. e.IgM

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫グロブリンの構造を問う問題だ。5つのクラスがそれぞれ「何量体で存在するか」を整理できているかがポイントになる。まず、抗体の基本単位の形を思い出してみよう。
医学生医学生
重鎖2本と軽鎖2本がジスルフィド結合でつながったY字形ですよね。免疫学の講義で何度も描かされました。
ドクタードクター
そう、それが単量体だ。クラスは重鎖の定常部の種類、つまりγ、α、μ、δ、εで決まる。このうち単量体のまま働くクラスと、複数がつながって働くクラスがあるんだ。
医学生医学生
つながるのはIgAとIgMでしたっけ。どっちが5量体か一瞬迷います。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。どちらもJ鎖という小さなポリペプチドを介して重合する。血中のIgMは単量体5つがJ鎖で環状に結合した5量体で、分子量はおよそ90万と免疫グロブリンの中で最大だ。だから正解はIgMになる。
医学生医学生
IgAは2量体ですよね。
ドクタードクター
正確には、血清中では大部分が単量体で、唾液や涙液、母乳、腸管・気道の分泌液中では2量体として存在する。この2量体には分泌成分が付いていて、これを分泌型IgAと呼ぶ。分泌成分は上皮細胞の多量体免疫グロブリン受容体に由来し、IgAを粘膜の外へ運ぶとともに消化酵素から守っているんだ。
医学生医学生
小児科の実習で、初乳には分泌型IgAが豊富だから母乳栄養が感染予防になる、と教わりました。
ドクタードクター
まさにその話だね。粘膜免疫の主役がIgAだ。では、IgMが5量体であることにはどんな意味があると思う?
医学生医学生
抗原と結合する部位が10か所もある、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。ひとつひとつの結合力は弱くても、多くの部位で同時に結合するから全体の結合力、つまりアビディティが高い。細菌を凝集させたり、古典経路で補体を活性化したりする力が非常に強いんだ。感染の初期、一次免疫応答で最初につくられるのもIgMだよ。
医学生医学生
だから病原体特異的なIgMが陽性なら急性感染、と判断するんですね。
ドクタードクター
そう。さらにIgMは大きすぎて胎盤を通過しない。だから臍帯血や新生児の血液で特異的IgMが高ければ、母体由来ではなく胎児自身が作ったもの、つまり先天感染を示唆する。
医学生医学生
逆に胎盤を通るのはIgGだけでしたね。単量体のグループの話も確認させてください。
ドクタードクター
いいよ。IgGは単量体で血中に最も多く、全体の約7割を占め、半減期も約3週間と長い。二次免疫応答の主体で、胎盤のFcRnを介して胎児に移行し、新生児の受動免疫を担う。IgEも単量体で、血中濃度は最も低いけれど、肥満細胞や好塩基球の高親和性IgE受容体に結合していて、抗原で架橋されるとヒスタミンなどを放出してI型アレルギーを起こす。
医学生医学生
IgDはあまり印象がないです。
ドクタードクター
IgDも単量体で、血中にはごくわずか。主にナイーブB細胞の表面にIgMと一緒に抗原受容体として発現している。ちなみにIgMもB細胞表面では単量体として受容体の役割を果たしているよ。
医学生医学生
5量体はIgM、分泌型の2量体はIgA、残りは単量体、と整理すればよさそうです。
ドクタードクター
完璧だ。臨床とのつながりも押さえておこう。Waldenströmマクログロブリン血症では単クローン性のIgMが増え、分子が大きいため血液の粘稠度が上がって過粘稠度症候群を起こしやすい。頭痛や視力障害、出血傾向がみられたら要注意だ。
医学生医学生
血液内科で血漿交換をしている患者さんがいたのは、それが理由だったのかもしれません。
ドクタードクター
そういう場面もあるね。もう一つ、IgA欠損症は頻度の高い原発性免疫不全症のひとつで、輸血の際に抗IgA抗体によるアナフィラキシーを起こすことがある。構造の知識が、診断や安全な医療に直結しているんだ。

まとめ

免疫グロブリンの基本単位は重鎖2本・軽鎖2本からなるY字形の単量体で、IgG、IgD、IgEは単量体として働きます。IgMとIgAはJ鎖を介して重合し、血中のIgMは5量体で分子量約90万と最大、IgAは分泌液中で分泌成分を伴う2量体(分泌型IgA)として粘膜免疫を担います。IgMは抗原結合部位が10か所あるため凝集能・補体活性化能が強く、一次免疫応答で最初に出現し、胎盤を通過しないことから、特異的IgMは急性感染や先天感染の診断に用いられます。胎盤を通過するのはIgGのみであり、Waldenströmマクログロブリン血症の過粘稠度症候群やIgA欠損症の輸血時アナフィラキシーなど、各クラスの構造と性質は臨床像の理解に直結します。

解答・解説

正解はeです

問われていること

免疫グロブリン(Ig、抗体)の5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)のうち、基本単位が5つ結合した5量体として存在するものを選ぶ問題である。

考え方

抗体の基本単位は、重鎖(H鎖)2本と軽鎖(L鎖)2本がジスルフィド結合でY字形につながった構造で、これを単量体と呼ぶ。クラスは重鎖の定常部の種類(γ、α、μ、δ、ε)で決まる。 単量体の状態で働くのがIgG、IgD、IgEである。一方、J鎖(joining chain、結合鎖)というポリペプチドを介して複数の単位が重合するのがIgMとIgAである。血中のIgMは単量体5つがJ鎖で環状に結合した5量体であり、分子量約90万と最大の免疫グロブリンである。IgAは血清中では主に単量体、粘膜の分泌液中では2量体(分泌型IgA)として存在する。したがって正解はIgMである。

選択肢考察

  1. ×a.  IgA

    IgAは血清中では大部分が単量体で存在するが、唾液・涙液・母乳(特に初乳)・消化管や気道の分泌液中では、J鎖で2つの単位が結合した2量体に分泌成分(secretory component)が付加した分泌型IgAとして存在する。分泌成分は上皮細胞の多量体免疫グロブリン受容体(pIgR)に由来し、IgAを粘膜上皮の外へ輸送するとともに、消化酵素による分解から守る。3量体以上の重合体もわずかに存在するが、5量体を基本形とするものではない。粘膜免疫の主役である。

  2. ×b.  IgD

    IgDは単量体である。血清中の濃度はきわめて低く(全Igの1%未満)、主に成熟したナイーブB細胞の表面にIgMとともに抗原受容体(B細胞受容体)として発現している。B細胞の活性化や分化に関与すると考えられているが、血中での機能は十分に解明されていない。

  3. ×c.  IgE

    IgEは単量体である。血清中濃度は最も低いが、肥満細胞や好塩基球の高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合した状態で存在する。そこに抗原(アレルゲン)が結合して受容体どうしが架橋されると、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、I型(即時型)アレルギーを引き起こす。寄生虫感染の防御にも関与する。

  4. ×d.  IgG

    IgGは単量体で、免疫グロブリンの基本構造(H鎖2本・L鎖2本)の典型である。血清中で最も多く(全Igの約70〜75%)、半減期も約3週間と最長である。二次免疫応答の主体となり、オプソニン化、補体の活性化、抗体依存性細胞傷害(ADCC)などに働く。胎盤のFcRn(胎児性Fc受容体)を介して胎盤を通過できる唯一のクラスで、新生児の受動免疫を担う。IgG1〜IgG4のサブクラスがある。

  5. ○e.  IgM

    血清中のIgMは、単量体5つがJ鎖を介して結合した5量体であり、分子量約90万と免疫グロブリンの中で最大である(B細胞表面では単量体として抗原受容体の役割も果たす)。抗原結合部位を10か所もつため、個々の結合力は弱くても多価で結合することで全体の結合力(アビディティ)が高く、細菌の凝集や古典経路による補体の活性化作用が非常に強い。感染初期の一次免疫応答で最初に産生されるため、特異的IgM抗体の検出は急性感染(初感染)の診断に用いられる。分子が大きく胎盤を通過しないので、臍帯血や新生児血で特異的IgMが高値であれば、胎内での感染(先天感染)を示唆する。

免疫グロブリン各クラスの比較

・IgG: 単量体。血中で最多(約70〜75%)。胎盤通過性あり。二次応答の主体。半減期約3週間。 ・IgA: 血清では主に単量体、分泌液では2量体(J鎖+分泌成分をもつ分泌型IgA)。粘膜免疫。母乳(初乳)に豊富。 ・IgM: 5量体(J鎖を含む)。分子量最大。一次応答で最初に出現。補体活性化能・凝集能が強い。胎盤を通過しない。 ・IgD: 単量体。血中はごく微量。ナイーブB細胞表面の抗原受容体。 ・IgE: 単量体。血中で最少。肥満細胞・好塩基球に結合し、I型アレルギーと寄生虫防御に関与。

J鎖

IgMとIgAの重合体に含まれる小さなポリペプチドで、多量体の形成を助け、上皮のpIgRへの結合にも必要である。

臨床との関連

・原発性マクログロブリン血症(Waldenströmマクログロブリン血症)では単クローン性IgMが増加し、分子が大きいため過粘稠度症候群を起こしやすい。 ・IgA欠損症は最も頻度の高い原発性免疫不全症の一つで、輸血時に抗IgA抗体によるアナフィラキシーを起こすことがある。

POINT

・5量体はIgM、2量体(分泌型)はIgA、その他(IgG、IgD、IgE)は単量体である。 ・IgMとIgAの多量体はJ鎖で結合している。 ・IgMは最大の抗体で、一次免疫応答で最初に出現し、補体活性化能が強く、胎盤を通過しない。 ・胎盤を通過するのはIgGのみである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。