StudyMed医師国家試験

卵管から子宮内膜への1週間の旅―受精卵はいつ、どの姿で着床するのか

第101回医師国家試験 B問題 第48問

国試問題にチャレンジ

第101回 B問題 第48問

正しいのはどれか。

  1. a.受精は第一減数分裂中期に起こる。
  2. b.卵細胞質内には複数の精子が進入する。
  3. c.受精後に認められる極体は1個である。
  4. d.着床は受精後3日目に成立する。
  5. e.初期胚は胚盤胞まで発育し着床する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、排卵から受精、初期胚の発生、そして着床までを問う問題だ。選択肢はどれも「いつ」「何個」「どの段階で」という時系列の知識を確かめている。だから、卵子の減数分裂の停止点から着床完了までを一本の時間軸に並べて考えるのがコツだよ。まず、排卵される卵子はどんな状態か覚えているかな。
医学生医学生
一次卵母細胞が第一減数分裂の前期で止まっている、と発生学の講義で習いました。だから排卵されるのも一次卵母細胞なのかなと……。
ドクタードクター
前半は正しいけれど、そこが引っかけポイントなんだ。一次卵母細胞は胎生期から第一減数分裂前期、ディプロテン期で長いあいだ停止している。でも排卵直前のLHサージを受けて第一減数分裂を完了し、第一極体を放出して二次卵母細胞になる。そのまま第二減数分裂に入って、中期で再び止まった状態で排卵されるんだ。
医学生医学生
停止点が2回あるんですね。ということは、受精が起こるのは第一減数分裂中期ではなく、第二減数分裂中期ということですか。
ドクタードクター
その通り。受精は卵管膨大部で、卵子が第二減数分裂中期にあるときに起こる。精子の進入が刺激になって第二減数分裂が再開・完了するんだ。逆にいえば、受精しなければ第二減数分裂は完了しない。
医学生医学生
精子が入ったときに減数分裂が完了するなら、そのとき第二極体が出てくるわけですね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。排卵時点ですでに第一極体があり、受精に伴って第二極体が新たに放出される。だから受精後の極体は少なくとも2個。第一極体がさらに分裂すれば3個になることもある。極体が1個という記述は誤りだ。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で生殖医療の見学をしたとき、胚培養士さんが「前核が2つ、極体が2つで正常受精」と顕微鏡を見ながら話していました。
ドクタードクター
まさにそれが臨床での判定基準だよ。体外受精では媒精の翌日に2個の前核と2個の極体を確認して正常受精と判定する。雌性前核と雄性前核の2つだね。では、もし前核が3つ見えたら何を考える?
医学生医学生
精子が2個入った……多精子受精でしょうか。でも、そもそも卵には複数の精子が入れるんですか。
ドクタードクター
原則として入るのは1個だけだ。最初の精子が卵細胞膜と融合すると、細胞内カルシウム濃度が上がって表層顆粒の内容物が放出される。これが表層反応で、透明帯の性質が変わって他の精子の結合・通過が阻止される透明帯反応につながる。多精子受精が起こると3倍体などの染色体異常胚になって正常には発生できないから、この防御機構はとても大事なんだ。
医学生医学生
なるほど、複数の精子が進入するというのは誤りですね。次は着床の時期ですが、受精後3日目というのは早すぎる気がします。
ドクタードクター
その感覚は正しい。受精卵は卵管を子宮方向に運ばれながら卵割を繰り返し、2細胞期、4細胞期、8細胞期を経て、受精後3日前後で桑実胚になる。この時点ではまだ卵管の中なんだ。子宮腔に届くのは受精後4〜5日ごろで、そのころには内部に胞胚腔をもつ胚盤胞になっている。
医学生医学生
胚盤胞になってから、すぐ内膜にくっつくんですか。
ドクタードクター
その前に透明帯から脱出するハッチングという段階がある。透明帯は着床を邪魔してしまうからね。ハッチング後、受精後6〜7日ごろから子宮内膜への接着・侵入が始まり、受精後12日前後に胚全体が内膜に埋没して着床が完了する。だから、初期胚が胚盤胞まで発育してから着床するという記述が正解だ。
医学生医学生
胚盤胞は内細胞塊と栄養膜からできていて、内細胞塊が胎児に、栄養膜が胎盤の絨毛になるんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。内細胞塊側の栄養膜が内膜に接着し、合胞体栄養膜細胞が内膜へ侵入していく。この合胞体栄養膜細胞からhCGが分泌されて黄体を維持するんだ。妊娠検査薬が検出しているのもこのhCGだよ。
医学生医学生
時系列をまとめると、第二減数分裂中期で受精、3日で桑実胚、4〜5日で胚盤胞として子宮へ、6〜7日で着床開始、12日ごろ完了、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点も押さえておこう。胚が子宮にたどり着く前に卵管などで着床してしまうのが異所性妊娠で、受精の場でもある卵管膨大部が最も多い。妊娠反応陽性なのに子宮内に胎嚢が見えない場合は、必ず異所性妊娠を念頭に置く必要がある。また生殖医療では、胚盤胞まで培養してから移植することも多い。受精から着床までの生理を理解していると、こうした臨床の判断がぐっと身近になるはずだよ。

まとめ

卵子は第一減数分裂前期で長期間停止したのち、LHサージで第一減数分裂を完了して第一極体を放出し、第二減数分裂中期で排卵されます。受精は卵管膨大部でこの第二減数分裂中期に起こり、精子進入を契機に第二極体が放出されるため、受精後の極体は2個以上となり、表層反応・透明帯反応によって進入する精子は原則1個に限られます。受精卵は卵割を重ねて受精後3日前後に桑実胚、4〜5日で胚盤胞となって子宮腔に達し、ハッチング後の6〜7日ごろに着床を開始、約12日で完了します。つまり初期胚は胚盤胞の段階で着床するのであり、体外受精での正常受精判定(2前核・2極体)や胚盤胞移植、異所性妊娠の理解にも直結する重要な基礎知識です。

解答・解説

正解はeです

問われていること

排卵から受精、初期胚の発生、着床に至るまでの一連の過程について、正しい記述を選ぶ問題である。時系列に沿って整理しておくと各選択肢を判断しやすい。

受精から着床までの流れ

1. 卵母細胞の成熟: 一次卵母細胞は胎生期から第一減数分裂前期(ディプロテン期)で停止している。排卵直前のLHサージを受けて第一減数分裂を完了し、第一極体を放出して二次卵母細胞となる。続いて第二減数分裂に入り、中期(MII期)で再び停止した状態で排卵される。 2. 受精: 卵管膨大部で精子が透明帯を通過し、卵細胞膜と融合する。精子の進入が刺激となって第二減数分裂が再開・完了し、第二極体が放出される。卵側では表層反応(透明帯反応)が起こり、2個目以降の精子の進入(多精子受精)が防がれる。雌性前核と雄性前核が形成され(2前核期)、これらが合体して受精が完了する。 3. 初期発生と輸送: 受精卵は卵管を子宮方向へ運ばれながら卵割を繰り返し、2細胞期、4細胞期、8細胞期を経て受精後3日前後に桑実胚となる。受精後4〜5日ごろに子宮腔に達し、内部に腔(胞胚腔)をもつ胚盤胞となる。 4. 着床: 胚盤胞は透明帯から脱出(ハッチング)し、受精後6〜7日ごろから子宮内膜に接着・侵入を開始する。受精後12日前後に胚全体が内膜内に埋没して着床が完了する。 この流れから、初期胚は胚盤胞の段階まで発育してから着床するという記述が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  受精は第一減数分裂中期に起こる。

    排卵される卵子は、すでに第一減数分裂を終えて第一極体を放出した二次卵母細胞であり、第二減数分裂中期で停止している。受精はこの第二減数分裂中期の段階で起こり、精子進入をきっかけに第二減数分裂が完了する。第一減数分裂中期ではない。

  2. ×b.  卵細胞質内には複数の精子が進入する。

    卵細胞質内に進入する精子は原則として1個である。最初の精子が卵細胞膜と融合すると、細胞内カルシウム濃度の上昇を契機に表層顆粒の内容物が放出され(表層反応)、透明帯の性質が変化して他の精子の結合・通過が阻止される(透明帯反応)。複数の精子が進入する多精子受精では3倍体などの染色体異常胚となり、正常に発生できない。

  3. ×c.  受精後に認められる極体は1個である。

    排卵時点で第一極体がすでに存在し、受精に伴って第二減数分裂が完了すると第二極体が新たに放出される。したがって受精後には少なくとも2個の極体が認められ、第一極体がさらに分裂した場合は計3個となる。体外受精では、2個の前核と2個の極体の確認が正常受精の指標とされる。極体が1個とする記述は誤りである。

  4. ×d.  着床は受精後3日目に成立する。

    受精後3日目ごろの胚は、まだ桑実胚前後の段階で卵管内を移動中であり、子宮には到達していない。胚が子宮腔に入るのは受精後4〜5日ごろで、胚盤胞となりハッチングした後、受精後6〜7日ごろに子宮内膜への接着・侵入が始まり、受精後12日前後に着床が完了する。

  5. ○e.  初期胚は胚盤胞まで発育し着床する。

    受精卵は卵割を繰り返して桑実胚となり、その後、細胞間に液体がたまって胞胚腔が形成され、胚盤胞となる。胚盤胞は、将来胎児になる内細胞塊と、将来胎盤の一部(絨毛)を形成する栄養膜(トロホブラスト)からなる。胚盤胞は透明帯から脱出したのち、内細胞塊側の栄養膜が子宮内膜に接着し、合胞体栄養膜細胞が内膜へ侵入して着床する。すなわち着床するのは胚盤胞の段階であり、この記述は正しい。

卵子の減数分裂の停止点

・第一減数分裂前期(ディプロテン期): 胎生期から排卵直前まで長期間停止する。 ・第二減数分裂中期: 排卵後、受精まで停止する。受精しなければ第二減数分裂は完了しない。

受精から着床までのおおよその日程(受精日を0日とする)

・0日: 卵管膨大部で受精(排卵後およそ24時間以内) ・約1日: 2細胞期 ・約3日: 桑実胚(16細胞前後)、卵管内 ・4〜5日: 胚盤胞となり子宮腔に到達 ・6〜7日: ハッチング後、子宮内膜に接着し着床開始 ・約12日: 着床完了(胚が内膜内に完全に埋没)

関連事項

・着床後、合胞体栄養膜細胞からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌され、黄体を維持する。妊娠検査薬はこのhCGを検出する。 ・着床は通常子宮体部で起こる。卵管など子宮体部以外に着床したものが異所性妊娠であり、卵管膨大部が最も多い。 ・体外受精では、媒精(または顕微授精)翌日に2個の前核と2個の極体を確認して正常受精と判定し、胚盤胞まで培養してから移植することも多い。

POINT

・受精は卵管膨大部で、卵子が第二減数分裂中期のときに起こる。 ・表層反応・透明帯反応により、卵に進入する精子は原則1個である(多精子受精の防止)。 ・受精に伴い第二極体が放出されるため、受精後の極体は2個以上(第一極体が分裂すれば3個)である。 ・胚は桑実胚を経て胚盤胞となり、受精後6〜7日ごろに着床を開始し、約12日で完了する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。