首が曲がらない、膝が伸びない―「髄膜が引っ張られる痛み」で読み解く髄膜刺激症候
第100回医師国家試験 G問題 第73問
国試問題にチャレンジ
髄膜刺激症候でないのはどれか。
- a.頭痛
- b.けいれん
- c.項部硬直
- d.Kernig徴候
- e.Brudzinski徴候
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
髄膜刺激症候は、髄膜炎やくも膜下出血などでくも膜下腔の髄膜・神経根が刺激されて生じる症状・徴候で、自覚症状として頭痛・悪心・嘔吐・羞明、他覚所見として項部硬直・Kernig徴候・Brudzinski徴候があります。他覚所見はいずれも、頸部や下肢の動きで髄膜・神経根が引き伸ばされる痛みと、それを避ける防御的な筋緊張・反射として理解できます。一方、けいれんは大脳皮質の神経細胞の異常興奮による脳実質の症状で、髄膜脳炎などで伴うことはあっても髄膜刺激症候には含めません。項部硬直は回旋が比較的保たれる点で筋強剛と区別でき、Kernig徴候・Brudzinski徴候は感度が低いため陰性でも髄膜炎を否定できない点が臨床上重要です。症状を発生機序で分類する視点は、意識障害やけいれんを伴う中枢神経感染症の評価にもそのまま役立ちます。
解答・解説
正解はbです
髄膜刺激症候とは、くも膜下腔に炎症(髄膜炎)や出血(くも膜下出血)などが起こり、髄膜やそこを走る神経根が刺激されることで現れる症状・徴候の総称である。自覚症状としては頭痛、悪心・嘔吐、羞明(まぶしさ)があり、他覚所見としては項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候が代表的である。他覚所見はいずれも、頸部や下肢を動かして髄膜・神経根が引き伸ばされたときに生じる痛みと、それを避けようとする防御的な筋緊張・反射によって説明できる。 一方、けいれんは大脳皮質の神経細胞が異常に同期して興奮することで起こる症状であり、脳実質の障害を示す所見である。髄膜炎の経過中に炎症が脳実質へ波及すれば(髄膜脳炎)けいれんを伴うことはあるが、髄膜への刺激そのものから生じる症候ではない。本問は「髄膜刺激症候でないもの」を問うているので、症状の発生機序が髄膜刺激によるものか、脳実質の障害によるものかを区別できるかがポイントである。
選択肢考察
- ×a. 頭痛
頭痛は髄膜刺激症候の代表的な自覚症状である。脳実質そのものには痛覚受容器がほとんどないが、硬膜や脳底部の血管周囲には痛覚線維が豊富に分布している。炎症や出血によってこれらが刺激されると頭痛が起こる。悪心・嘔吐や羞明を伴うことが多い。くも膜下出血では「突然の、人生で最悪の頭痛」として発症するのが典型である。
- ○b. けいれん
けいれんは、大脳皮質の神経細胞が過剰に興奮することで起こる症状であり、脳実質の障害(脳炎、脳梗塞、脳腫瘍、代謝異常など)を示唆する。髄膜炎で炎症が脳実質にまで及んだ場合や、くも膜下出血などで皮質が刺激された場合にけいれんを伴うことはあるが、それは髄膜が刺激された結果として起こる症候とは区別される。したがって、けいれんは髄膜刺激症候には含めない。
- ×c. 項部硬直
項部硬直は、仰臥位の患者の後頭部に手を添えて頭部を持ち上げ、頸部を前屈させたときに抵抗があって十分に曲がらない所見である。頸部の前屈で脊髄と髄膜が頭側へ引っ張られて痛みが生じ、それを防ごうとして項部の筋が反射的に緊張するために起こる。患者は痛みを訴えたり顔をしかめたりする。左右に回旋させる動きは比較的保たれることが多く、パーキンソン病などの筋強剛(前屈・回旋ともに抵抗がある)との区別に役立つ。
- ×d. Kernig徴候
Kernig徴候は、仰臥位で一側の股関節と膝関節をそれぞれ90度に曲げた状態から、膝を伸ばしていこうとすると、痛みと抵抗のために伸展が制限される所見である。一般に膝関節の角度が135度程度まで開く前に抵抗が生じる場合を陽性とする。膝の伸展により坐骨神経とその神経根が引き伸ばされ、炎症のある髄膜・神経根が刺激されるためと考えられている。
- ×e. Brudzinski徴候
Brudzinski徴候(項部徴候)は、仰臥位の患者の頸部を他動的に前屈させると、両側の股関節と膝関節が自然に屈曲する現象である。頸部前屈で脊髄・髄膜が頭側へ牽引されたとき、下肢を曲げることで神経根の緊張を和らげようとする反射的な動きと解釈される。
髄膜刺激症候の整理
・自覚症状: 頭痛、悪心・嘔吐、羞明 ・他覚所見: 項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候、jolt accentuation(頭を左右に1秒間に2〜3回振ると頭痛が強くなる所見)
髄膜刺激症候がみられる主な疾患
・髄膜炎(細菌性、ウイルス性、結核性、真菌性、癌性など) ・くも膜下出血
注意点
・乳幼児や高齢者、意識障害が深い患者では髄膜刺激症候がはっきりしないことがあるため、所見がないことだけで髄膜炎を否定しない。乳児では大泉門の膨隆が参考になる。 ・くも膜下出血では、発症直後には項部硬直がまだ目立たないことがある。 ・Kernig徴候とBrudzinski徴候は特異度は比較的高いが感度は低いとされ、陰性でも髄膜炎は除外できない。疑わしい場合は禁忌がないことを確認したうえで腰椎穿刺による髄液検査を行う。
意識障害・けいれんを伴う場合
髄膜刺激症候に加えて意識障害、けいれん、局所神経症状を伴う場合は、炎症が脳実質に及んだ髄膜脳炎や脳炎、あるいは脳膿瘍などの合併を考える。
POINT
・髄膜刺激症候: 頭痛、悪心・嘔吐、羞明、項部硬直、Kernig徴候、Brudzinski徴候。 ・けいれんは神経細胞の異常興奮による脳実質の症状であり、髄膜刺激症候には含めない。 ・項部硬直は前屈のみで抵抗があり、回旋は比較的保たれる点で筋強剛と区別する。 ・Kernig徴候: 股関節・膝関節を90度に曲げた状態から膝を伸ばせない。Brudzinski徴候: 頸部前屈で両下肢が屈曲する。
