心臓をみたら染色体を思え―Down症候群と心内膜床欠損症の深い結びつき
第100回医師国家試験 G問題 第67問
国試問題にチャレンジ
心奇形の合併頻度が最も高いのはどれか。
- a.Down症候群
- b.Fanconi症候群
- c.Klinefelter症候群
- d.Potter症候群
- e.Turner症候群
対話形式の解説
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医学生まとめ
選択肢の中で心奇形の合併頻度が最も高いのはDown症候群(21トリソミー)で、約40〜50%に先天性心疾患を合併し、代表は心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)です。Turner症候群も大動脈二尖弁や大動脈縮窄症を合併しますが頻度はDown症候群ほど高くなく、Klinefelter症候群(47,XXY)、近位尿細管障害であるFanconi症候群、両側腎無形成に伴う羊水過少から肺低形成をきたすPotter症候群では、心奇形は特徴ではありません。Down症候群では肺高血圧をきたしやすいため出生後早期の心評価が重要で、消化管奇形、甲状腺機能低下症、白血病など多臓器の合併症にも注意が必要です。22q11.2欠失症候群、Williams症候群、Noonan症候群なども含め、症候群と特徴的な心疾患をペアで整理しておくことは、先天性心疾患の診療と試験対策の双方に役立ちます。
解答・解説
正解はaです
本問は、小児期に扱う代表的な症候群・疾患について、先天性心疾患(心奇形)をどの程度合併するかを比べる問題である。 選択肢は大きく 2 群に分けて考えるとよい。 1. 染色体異常症:Down 症候群(21 トリソミー)、Turner 症候群(X 染色体モノソミー)、Klinefelter 症候群(47,XXY)。このうち心奇形の合併が臨床上重要なのは Down 症候群と Turner 症候群である。 2. 染色体異常ではない疾患:Fanconi 症候群(近位尿細管の機能障害)と Potter 症候群(両側腎無形成などによる羊水過少の結果として生じる一連の異常)。いずれも心奇形を特徴としない。 残る Down 症候群と Turner 症候群を比べると、Down 症候群では約 40〜50% に先天性心疾患を合併し、染色体異常症の中でも心奇形との結びつきが特に強い。代表は心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)で、ほかに心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、Fallot 四徴症などがみられる。Turner 症候群も大動脈二尖弁や大動脈縮窄症を合併するが、頻度は Down 症候群ほど高くない。よって a が正解である。
選択肢考察
- ○a. Down症候群
Down 症候群は 21 番染色体のトリソミーによる疾患で、出生児約 600〜1,000 人に 1 人と、生産児にみられる染色体異常症として最も頻度が高い。先天性心疾患を約 40〜50% に合併する。最も特徴的なのは心内膜床欠損症(房室中隔欠損症:AVSD)で、Down 症候群の心疾患の中で最も多く、逆に AVSD の患児の多くは Down 症候群である。そのほか心室中隔欠損症(VSD)、心房中隔欠損症(ASD)、動脈管開存症(PDA)、Fallot 四徴症(TOF)もみられる。左右短絡による肺血流増加に加え、上気道の狭さなどもあって肺高血圧をきたしやすいため、出生後早期に心エコーで評価することが勧められる。
- ×b. Fanconi症候群
誤り。Fanconi 症候群は近位尿細管での再吸収が全般的に障害される病態で、ブドウ糖(血糖正常の腎性糖尿)、アミノ酸、リン酸、重炭酸、尿酸などが尿中に失われる。その結果、近位尿細管性アシドーシス(2 型)、低リン血症によるくる病・骨軟化症、低カリウム血症、多尿などをきたす。原因はシスチン症などの先天代謝異常や、薬剤・重金属などである。心奇形は本症候群の特徴ではない。なお、名称の似た Fanconi 貧血(先天性の再生不良性貧血で、母指・橈骨の異常などを伴う)とは別の疾患であり、混同しないよう注意する。
- ×c. Klinefelter症候群
誤り。Klinefelter 症候群は X 染色体が 1 本以上過剰な男性の染色体異常で、47,XXY が基本型である。精巣が小さく硬く、原発性性腺機能低下症(テストステロン低値、ゴナドトロピン高値)による無精子症・不妊、女性化乳房、高身長(長い四肢)などを示す。思春期以降に気づかれることが多く、先天性心疾患の合併は本症の特徴ではない。なお 47,XYY は Y 染色体が過剰な別の染色体異常であり、Klinefelter 症候群ではない。
- ×d. Potter症候群
誤り。Potter 症候群(Potter シークエンス)は、両側腎無形成などで胎児の尿が作られず、高度の羊水過少が生じた結果として起こる一連の異常である。子宮壁による圧迫で Potter 顔貌(眼間開離、鼻の平坦化、耳介の低位・変形、小顎)や四肢の変形が生じ、羊水不足によって肺低形成が起こる。典型的な両側腎無形成例は肺低形成による呼吸不全のため、出生後まもなく死亡する。病態の主体は腎と羊水過少・肺低形成であり、心奇形は特徴的な合併症ではない。
- ×e. Turner症候群
誤り。Turner 症候群は X 染色体の 1 本が欠失した(45,X が代表で、モザイクや X 構造異常もある)女性の疾患で、低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経を伴う性腺異形成(索状性腺)などを示す。心血管系では大動脈二尖弁と大動脈縮窄症が代表的で、成人期には大動脈拡張・大動脈解離のリスクもある。ほかに馬蹄腎などの腎奇形も多い。心奇形の合併は臨床上重要ではあるものの、その頻度は Down 症候群ほど高くない。
主な染色体異常症と心疾患
・Down 症候群(21 トリソミー):約 40〜50%。心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)が最も特徴的で、VSD、ASD、PDA、Fallot 四徴症も多い。 ・18 トリソミー(Edwards 症候群)、13 トリソミー(Patau 症候群):心疾患の合併がきわめて多い(VSD、PDA など)が、生命予後が不良である。 ・Turner 症候群:大動脈二尖弁、大動脈縮窄症。 ・22q11.2 欠失症候群:Fallot 四徴症、大動脈弓離断症、総動脈幹症などの円錐動脈幹異常。 ・Williams 症候群(7q11.23 欠失):大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄。 ・Noonan 症候群:肺動脈弁狭窄、肥大型心筋症(染色体異常ではなく遺伝子変異による)。 ・Marfan 症候群:大動脈基部拡張、僧帽弁逸脱(遺伝子変異による)。
Down 症候群のその他の合併症
十二指腸閉鎖・Hirschsprung 病などの消化管奇形、甲状腺機能低下症、急性白血病(新生児期の一過性骨髄異常増殖症を含む)、環軸椎不安定性、難聴・屈折異常、若年性の Alzheimer 型認知症などがある。
POINT
・Down 症候群は約 40〜50% に先天性心疾患を合併し、代表は心内膜床欠損症(房室中隔欠損症) ・Turner 症候群の心奇形は大動脈二尖弁・大動脈縮窄症(頻度は Down 症候群より低い) ・Klinefelter 症候群は 47,XXY(XYY ではない)で、心奇形は特徴ではない ・Fanconi 症候群は近位尿細管障害で、Fanconi 貧血とは別の疾患 ・Potter 症候群は両側腎無形成→羊水過少→肺低形成・Potter 顔貌
