小脳に潜む子どものがん―年齢と部位で見抜く髄芽腫
第100回医師国家試験 B問題 第51問
国試問題にチャレンジ
小児に好発する脳腫瘍はどれか。
- a.神経膠芽腫
- b.髄芽腫
- c.下垂体腺腫
- d.髄膜腫
- e.頭蓋咽頭腫
対話形式の解説
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ドクターまとめ
脳腫瘍は年齢によって好発する種類と部位が異なり、成人ではテント上の髄膜腫・神経膠芽腫・下垂体腺腫・神経鞘腫が、小児ではテント下や正中部の星細胞腫・胚細胞腫瘍・髄芽腫・頭蓋咽頭腫・上衣腫が多くなります。髄芽腫は小児の小脳虫部に発生する悪性の胎児性腫瘍で、第四脳室の閉塞による水頭症と体幹失調を起こし、髄腔内播種を来しやすいため、手術に全脳全脊髄照射と化学療法を組み合わせて治療します。頭蓋咽頭腫も小児に多いものの中高年との二峰性を示すため、小児好発の典型としては髄芽腫が挙げられます。朝の頭痛や嘔吐、ふらつきを訴える子どもで後頭蓋窩腫瘍を想起できることは、見逃しを防ぐうえで臨床的に大きな意味を持ちます。
解答・解説
正解はbです
脳腫瘍は、年齢によって発生しやすい種類と部位が大きく異なる。 成人では、髄膜腫・神経膠腫(グリオーマ、特に神経膠芽腫)・下垂体腺腫・神経鞘腫が多い。発生部位は小脳テントより上(大脳半球など)が中心である。 一方、小児では、星細胞腫(特に小脳や視神経などに発生する悪性度の低いもの)、胚細胞腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫などが多い。小児では小脳・脳幹などテントより下(後頭蓋窩)や正中部に発生する腫瘍の割合が高い。 この年齢ごとの違いを押さえておけば、選択肢のうち典型的な小児腫瘍を選べる。髄芽腫は小脳に発生する胎児性(未熟な細胞からなる)の悪性腫瘍で、患者の大部分が小児であり、小児腫瘍の代表である。頭蓋咽頭腫も小児期に多いが、成人にもう一つの発症ピークがある。そのため「小児に好発する」腫瘍として最も典型的なのは髄芽腫である。
選択肢考察
- ×a. 神経膠芽腫
神経膠芽腫(glioblastoma)は神経膠腫のなかで最も悪性度が高い(WHO分類でgrade 4)腫瘍である。主に中高年(50〜70歳代)の大脳半球に発生し、成人の悪性脳腫瘍の代表である。小児にはまれである。なお、小児の星細胞腫の多くは、悪性度の低い毛様細胞性星細胞腫である。
- ○b. 髄芽腫
髄芽腫(medulloblastoma)は小脳、特に正中の小脳虫部に発生する胎児性腫瘍で、WHO分類でgrade 4の悪性腫瘍である。患者の大部分は15歳未満の小児で、5〜10歳前後に多く、男児にやや多い。第四脳室を圧迫して閉塞性水頭症(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)を起こし、小脳虫部の障害で体幹失調(ふらついて歩けない)が現れる。髄液の流れに乗って脳や脊髄の表面に広がりやすい(髄腔内播種)のが特徴である。
- ×c. 下垂体腺腫
下垂体腺腫は20〜50歳代の成人に多く、小児ではまれである。ホルモンを過剰に分泌する機能性腺腫では、プロラクチン産生腫瘍による無月経・乳汁漏出、成長ホルモン産生腫瘍による先端巨大症、ACTH産生腫瘍によるクッシング病などが起こる。大きくなると視交叉を圧迫して両耳側半盲を起こす。
- ×d. 髄膜腫
髄膜腫は脳を包む髄膜(くも膜の細胞)から発生する多くは良性の腫瘍で、原発性脳腫瘍のなかで最も頻度が高い。中高年、特に50歳以降の女性に多く、小児ではまれである。小児期に頭部への放射線照射を受けた人や、神経線維腫症2型の患者では若年でも発生することがある。
- ×e. 頭蓋咽頭腫
頭蓋咽頭腫は、胎生期に下垂体を形成したラトケ嚢の遺残組織から、トルコ鞍の上(鞍上部)に発生する良性腫瘍である。小児期(5〜14歳頃)と中高年(50〜70歳代)の二つに発症のピークがあり、全体の約2割は15歳未満である。小児のトルコ鞍周辺の腫瘍としては重要で、低身長(成長ホルモン分泌不全)、尿崩症、視野障害を起こし、CTで石灰化を伴うのが特徴である。ただし成人発症も多いため、小児に特有の好発腫瘍としては髄芽腫の方が典型的である。
小児脳腫瘍の特徴
・小児の固形がんのなかで、脳腫瘍は白血病に次いで多い。 ・日本の小児に多い脳腫瘍:星細胞腫、胚細胞腫瘍(ジャーミノーマなど)、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫など。 ・テント下(小脳・脳幹)や正中部(第三脳室付近、松果体、トルコ鞍上部)に発生しやすい。 ・髄液の通り道をふさいで水頭症を起こしやすく、頭痛(特に朝)・嘔吐・うっ血乳頭などの頭蓋内圧亢進症状で見つかることが多い。乳児では頭囲拡大や大泉門の膨隆がみられる。
小児の後頭蓋窩腫瘍の鑑別
1. 髄芽腫:小脳虫部に発生し、第四脳室を占める。悪性で、髄腔内播種を起こしやすい。 2. 毛様細胞性星細胞腫:小脳半球に多く、嚢胞と壁在結節(嚢胞の壁にできたこぶ)の形が典型的である。良性で、全摘出できれば予後はよい。 3. 上衣腫:第四脳室の底から発生する。 4. びまん性正中神経膠腫(びまん性内在性橋神経膠腫):脳幹(橋)に発生し、脳神経麻痺を起こす。予後はきわめて不良である。
髄芽腫の治療
手術で可能な限り摘出したうえで、全脳全脊髄照射を含む放射線治療と化学療法を組み合わせる。近年は分子遺伝学的な分類(WNT型、SHH型、グループ3、グループ4)によって予後を予測し、治療の強さを調整する。WNT型は予後がよい。
成人に多い脳腫瘍
髄膜腫(最多)、神経膠腫(神経膠芽腫を含む)、下垂体腺腫、神経鞘腫(聴神経腫瘍)など。
POINT
・小児脳腫瘍は、テント下(後頭蓋窩)と正中部に多い。 ・髄芽腫は小児の小脳虫部に発生する悪性の胎児性腫瘍で、髄腔内播種を起こしやすい。 ・頭蓋咽頭腫は小児と中高年の二峰性で、石灰化、尿崩症、低身長が特徴である。 ・神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫は成人に多い。
