StudyMed医師国家試験

羊水は「胎児のおしっこ」―つくる量と消える量で解く羊水過少と羊水過多

第99回医師国家試験 E問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第2問

羊水過少症の原因とならないのはどれか。

  1. a.妊娠高血圧症候群
  2. b.妊娠糖尿病
  3. c.前期破水
  4. d.胎児発育不全
  5. e.胎児尿路奇形

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は羊水過少症の原因を問う問題だ。丸暗記に頼らず、羊水が「どこでつくられ、どこへ消えるのか」という流れを押さえれば、自然に答えが見えてくるよ。まず、妊娠中期以降の羊水の主な供給源は何か知っているかな。
医学生医学生
母体の血液から染み出してくるもの、というイメージでした。
ドクタードクター
妊娠初期はそれに近いんだけど、妊娠中期以降は胎児の尿が主な供給源になる。そして胎児がその羊水を飲み込み、肺や羊膜からも吸収される。つまり羊水量は「胎児の尿」と「胎児の嚥下・漏出」のバランスで決まるんだ。
医学生医学生
発生学の講義で、羊水を飲むことで胎児の消化管が発達すると習いました。だから消化管閉鎖で羊水過多になるんですね。
ドクタードクター
その通り。逆に羊水過少は、胎児の尿が減るか、羊水が外へ漏れるかのどちらかで起こる。この2本立てで選択肢を見ていこう。まず妊娠高血圧症候群はどうかな。
医学生医学生
血圧の病気なので、胎児の尿とは関係なさそうに思えますが……。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。妊娠高血圧症候群では胎盤の血管のリモデリングが不十分で、子宮胎盤循環が落ちて胎盤機能不全になる。胎児は低酸素に対応して脳や心臓へ血流を優先的に回すから、腎血流が減って尿量が減る。結果として羊水過少をきたすんだ。
医学生医学生
なるほど、胎児発育不全も同じ機序ですね。胎盤機能不全でbrain-sparingが起きて、腎臓が後回しになる。
ドクタードクター
よく繋がったね。胎児発育不全には羊水過少がしばしば合併し、羊水過少は胎児の状態が悪化しているサインの一つとして評価される。次に胎児尿路奇形はどうだろう。
医学生医学生
腎臓がなかったり尿路が詰まっていたりしたら、尿が羊水腔に出てこないので羊水過少です。小児科の講義でPotter症候群を習いました。
ドクタードクター
そう。両側腎無形成や後部尿道弁による下部尿路閉塞では高度の羊水過少になり、子宮壁からの圧迫でPotter顔貌や四肢変形、そして肺低形成を起こす。羊水は肺の発育にも必要だから、肺低形成のため出生後の予後は極めて不良なんだ。前期破水はどうかな。
医学生医学生
これは単純に羊水が漏れ出てしまうので減りますね。
ドクタードクター
正解。陣痛前に卵膜が破れ、羊水が腟から持続的に漏れる。羊水が少ないと臍帯が圧迫されやすく、胎児心拍数陣痛図で変動一過性徐脈が出やすくなる点も覚えておこう。では残る妊娠糖尿病は?
医学生医学生
母体が高血糖だとブドウ糖が胎盤を通過して胎児も高血糖になって……尿糖で浸透圧利尿が起きるから、むしろ尿が増えて羊水過多ですね。
ドクタードクター
その通り。だから羊水過少の原因とならないのは妊娠糖尿病だ。胎児の高インスリン血症による巨大児や、出生後の新生児低血糖も重要な合併症だよ。
医学生医学生
整理すると、尿が減るか漏れるかで過少、尿が増えるか飲めないかで過多、ということですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。臨床的な補足もしておこう。羊水量は超音波で評価し、最大羊水深度2cm未満やAFI 5cm以下で羊水過少、最大羊水深度8cm以上やAFI 24〜25cm以上で羊水過多と判定する。また、ACE阻害薬やARB、NSAIDsは胎児の腎機能を落として羊水過少を招くことがあるので、妊婦への処方では注意が必要だ。
医学生医学生
産婦人科の実習でも、妊婦さんに鎮痛薬を出すときに指導医の先生が週数を確認していました。
ドクタードクター
大事な視点だね。羊水量の異常は胎児からのメッセージでもある。数字だけで終わらせず、背景に何があるかを考える習慣をつけよう。

まとめ

妊娠中期以降の羊水は主に胎児尿でつくられ、胎児の嚥下や肺・羊膜からの吸収で失われるため、羊水量の異常は「産生と消失のバランス」で整理できます。羊水過少は胎児尿の減少(妊娠高血圧症候群や胎児発育不全などの胎盤機能不全、胎児尿路奇形)か羊水の漏出(前期破水)で生じ、一方で妊娠糖尿病は胎児高血糖による浸透圧利尿で羊水過多の原因となります。羊水過多にはもう一つ、消化管閉鎖や無脳症による胎児の嚥下障害という機序があります。胎児尿路奇形による高度羊水過少はPotterシークエンスと肺低形成を招き予後不良であり、ACE阻害薬・ARB・NSAIDsなどの薬剤性羊水過少にも注意が必要です。機序から理解しておけば、初見の選択肢にも応用が利き、超音波で羊水量の異常を見たときの原因検索にも直結します。

解答・解説

正解はbです

羊水の量は「つくられる量」と「失われる量」のバランスで決まる。妊娠中期以降、羊水の主な供給源は胎児の尿であり、主な排出経路は胎児による羊水の嚥下(飲み込み)と、胎児の肺・羊膜を介した吸収である。したがって、羊水量の異常は次のように整理すると理解しやすい。

羊水過少(羊水が少なくなる)の機序

・胎児の尿が減る: 胎盤機能不全(妊娠高血圧症候群、胎児発育不全、過期妊娠など)で胎児が低酸素になると、脳や心臓への血流を優先するために腎血流が減り、尿量が減少する。腎無形成や尿路閉塞などの胎児尿路奇形では、尿がつくられないか羊水腔に出てこない。 ・羊水が外へ漏れる: 破水(前期破水)。

羊水過多(羊水が多くなる)の機序

・胎児の尿が増える: 母体の糖尿病・妊娠糖尿病で胎児が高血糖となり、浸透圧利尿で多尿になる。双胎間輸血症候群の受血児なども同様である。 ・胎児が羊水を飲み込めない: 食道閉鎖、十二指腸閉鎖などの上部消化管閉鎖、無脳症など嚥下運動が障害される中枢神経系異常、筋疾患など。 選択肢のうち、妊娠糖尿病だけは羊水過多の原因となり、ほかはいずれも羊水過少の原因となる。よって「原因とならない」のは妊娠糖尿病である。

選択肢考察

  1. ×a.  妊娠高血圧症候群

    羊水過少の原因となる。妊娠高血圧症候群では胎盤の血管の形成・リモデリングが不十分で、子宮胎盤循環が低下し胎盤機能不全となる。胎児は低酸素に対応して血流を脳・心臓などへ再分配し、腎への血流が減るため尿量が減少し、羊水過少をきたす。胎児発育不全を合併することも多い。

  2. ○b.  妊娠糖尿病

    羊水過少の原因とはならず、本問の正解である。母体が高血糖になるとブドウ糖は胎盤を通過して胎児も高血糖となり、胎児の尿中に糖が出て浸透圧利尿が起こり、尿量が増える。このため妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠では羊水過多をきたしやすい。なお、胎児高インスリン血症による巨大児や、新生児低血糖なども重要な合併症である。

  3. ×c.  前期破水

    羊水過少の原因となる。前期破水は陣痛が始まる前に卵膜が破れることで、羊水が腟を通じて持続的に体外へ漏れ出すため羊水が減少する。羊水が少なくなると臍帯が子宮壁と胎児の間で圧迫されやすくなり、胎児心拍数陣痛図で変動一過性徐脈が出現しやすい。妊娠中期の早い時期に破水して羊水過少が長く続くと、胎児の肺低形成や四肢の拘縮を招くことがある。

  4. ×d.  胎児発育不全

    羊水過少の原因となる(またはしばしば合併する)。胎盤機能不全による胎児発育不全(FGR)では、胎児は低酸素・低栄養状態に対して脳などへの血流を優先し(brain-sparing effect)、腎血流が減って尿量が低下する。そのため羊水過少を伴うことが多く、羊水過少は胎児の状態が悪化しているサインの一つとして評価される。

  5. ×e.  胎児尿路奇形

    羊水過少の原因となる。両側腎無形成、両側の多嚢胞性異形成腎、後部尿道弁などによる下部尿路閉塞では、尿がつくられないか羊水腔に排出されないため、高度の羊水過少となる。羊水過少が続くと、子宮壁からの圧迫による特徴的な顔貌(Potter顔貌)、四肢変形、肺低形成をきたす(Potter症候群、Potterシークエンス)。特に肺低形成のため出生後の予後は極めて不良である。

羊水の基本

・羊水量は妊娠週数とともに増え、妊娠30週台前半に約700〜800mLで最大となり、その後はやや減少する。 ・妊娠中期以降の主な産生源は胎児尿、ほかに胎児肺からの肺胞液がある。主な消失経路は胎児の嚥下と、胎盤・卵膜を介した吸収である。 ・羊水は胎児の運動を助け、肺の発育に必要であり、外力や臍帯圧迫から胎児を守る。

羊水量の評価(超音波)

・羊水ポケット(最大羊水深度: 子宮内で胎児や臍帯を含まない最大の羊水腔の垂直径): 2cm未満で羊水過少、8cm以上で羊水過多。 ・AFI(amniotic fluid index: 子宮を4区画に分けて各区画の最大羊水深度を合計した値): 5cm以下で羊水過少、24〜25cm以上で羊水過多。

羊水過少の主な原因

・胎児側: 腎無形成、多嚢胞性異形成腎、尿路閉塞(後部尿道弁など)、胎児発育不全、染色体異常 ・胎盤・母体側: 胎盤機能不全(妊娠高血圧症候群など)、過期妊娠、破水、薬剤(ACE阻害薬、ARB、非ステロイド性抗炎症薬〔NSAIDs〕など、胎児の腎機能を低下させる薬)

羊水過多の主な原因

・胎児の嚥下・通過障害: 食道閉鎖、十二指腸閉鎖、無脳症、神経筋疾患 ・胎児尿の増加: 母体糖尿病・妊娠糖尿病、双胎間輸血症候群の受血児 ・その他: 胎児水腫、胎盤腫瘍(絨毛血管腫)など ・原因不明(特発性)も多い。

羊水過少による胎児への影響

臍帯圧迫による変動一過性徐脈、胎児機能不全、肺低形成、四肢拘縮、Potter顔貌(扁平な鼻、下顎後退、耳介低位)など。

POINT

・羊水過少は「胎児尿の減少」か「羊水の漏出」で起こる。胎盤機能不全(妊娠高血圧症候群、胎児発育不全、過期妊娠)、胎児尿路奇形、前期破水が代表的な原因である。 ・妊娠糖尿病は胎児の高血糖による浸透圧利尿で羊水過多の原因となる。 ・羊水過多のもう一つの機序は、消化管閉鎖や無脳症による胎児の嚥下障害である。 ・胎児尿路奇形による高度羊水過少は肺低形成をきたし(Potterシークエンス)、予後不良である。 ・判定基準: 羊水過少はAFI 5cm以下または最大羊水深度2cm未満、羊水過多は最大羊水深度8cm以上またはAFI 24〜25cm以上。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。