便が白くなるのはなぜ?―ステルコビリンから読み解く灰白色便と閉塞性黄疸
第99回医師国家試験 D問題 第81問
国試問題にチャレンジ
灰白色便がみられるのはどれか。
- a.溶血亢進
- b.胆汁産生増加
- c.総胆管閉塞
- d.消化管運動亢進
- e.腸内細菌叢変化
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
便の茶褐色は、胆汁中のビリルビンが腸内細菌によってウロビリノゲン、さらにステルコビリンへと変化してできる色素によるものです。そのため灰白色便は胆汁が腸に届かない状態を示し、代表は総胆管結石や膵頭部癌などによる総胆管閉塞(閉塞性黄疸)で、小児では胆道閉鎖症が重要です。閉塞性黄疸では直接ビリルビン優位の上昇、ビリルビン尿、尿中ウロビリノゲン減少、脂肪便やビタミンK欠乏を伴います。溶血亢進や胆汁産生増加では胆汁排泄が保たれて便の色はむしろ濃くなり、消化管運動亢進や腸内細菌叢の変化では便が黄色〜緑色調になることはあっても灰白色にはなりません。ビリルビン代謝の流れを理解しておくと、便と尿の色から黄疸の病型を推測でき、日常診療の問診や身体所見の解釈に役立ちます。
解答・解説
正解はcです
便の茶褐色は、胆汁中に含まれるビリルビンが腸内で代謝されてできる色素によるものである。したがって「便が白っぽくなる(灰白色便、無胆汁便)」とは、胆汁が腸管内に届かなくなった状態を意味する。
ビリルビン代謝の流れ
老化赤血球のヘモグロビンが脾臓などで分解され、間接(非抱合型)ビリルビンができる。これが肝臓に取り込まれてグルクロン酸抱合を受け、直接(抱合型)ビリルビンとして胆汁中に排泄される。胆汁は胆管を通って十二指腸に流れ、腸内細菌によってウロビリノゲンに還元され、さらに酸化されてステルコビリン(便を茶褐色にする色素)となる。ウロビリノゲンの一部は再吸収されて腸肝循環に入り、一部は尿中に排泄される。
考え方
この流れのどこかで「胆汁が腸に出ない」状態が生じたときに灰白色便となる。代表は肝外胆管の閉塞(総胆管結石、膵頭部癌、胆管癌、乳頭部癌など)による閉塞性黄疸であり、ほかに高度の肝内胆汁うっ滞や、新生児・乳児の胆道閉鎖症でもみられる。選択肢の中で胆汁の腸管への流出を途絶させるものを選べばよい。
選択肢考察
- ×a. 溶血亢進
溶血が亢進すると間接ビリルビンの産生が増え、肝臓で抱合されて胆汁中へ排泄されるビリルビン量もむしろ増える(胆汁排泄路は保たれている)。そのため腸内のウロビリノゲン・ステルコビリンが増え、便の色はかえって濃くなり、尿中ウロビリノゲンも増加する。黄疸は間接ビリルビン優位の溶血性黄疸であり、灰白色便はみられない。
- ×b. 胆汁産生増加
胆汁の産生が増えても、胆道が開通していれば胆汁は腸管へ流れる。腸内に届く胆汁色素はむしろ増える方向であり、便が白くなる理由にはならない。灰白色便に必要なのは胆汁の「産生増加」ではなく「排泄の途絶」である。
- ○c. 総胆管閉塞
総胆管が結石や腫瘍などで閉塞すると、胆汁が十二指腸へ流れなくなる。腸内でビリルビンからウロビリノゲン、さらにステルコビリンが作られなくなるため便は色を失い、灰白色(粘土様)便となる。同時に、行き場を失った直接ビリルビンが血中に逆流して閉塞性黄疸をきたし、尿中に直接ビリルビンが出て濃い褐色尿(ビリルビン尿)となる一方、尿中ウロビリノゲンは減少〜陰性となる。また胆汁酸が腸に届かないため脂肪吸収が障害され、脂肪便や脂溶性ビタミン(特にビタミンK)の吸収低下をきたす。
- ×d. 消化管運動亢進
消化管運動が亢進して腸内の通過時間が短くなると、ビリルビン(あるいはその酸化産物であるビリベルジン)が細菌による還元を十分に受けないまま排出され、便が黄色〜緑色がかることはある。しかし胆汁自体は腸に届いているので、灰白色便にはならない。
- ×e. 腸内細菌叢変化
抗菌薬投与などで腸内細菌叢が変化すると、ビリルビンからウロビリノゲンへの還元が減り、便が黄色っぽくなることはある(腸内細菌が未発達な新生児の便が黄色いのも同じ理由)。しかし胆汁色素そのものは便に含まれているため、灰白色便とは区別される。
黄疸の病型と便・尿の所見
・溶血性黄疸(肝前性):間接ビリルビン優位。便の色は濃く、尿中ウロビリノゲン増加、尿中ビリルビン陰性(間接ビリルビンはアルブミンと結合し水に溶けにくいため尿へ出ない)。 ・肝細胞性黄疸:直接・間接ともに上昇。尿中ビリルビン陽性、尿中ウロビリノゲンは病期により増減する。 ・閉塞性黄疸(肝後性):直接ビリルビン優位。灰白色便、尿中ビリルビン陽性(褐色尿)、尿中ウロビリノゲン減少〜陰性。胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇、皮膚瘙痒感(胆汁酸の沈着による)を伴いやすい。
灰白色便をきたす主な疾患
・成人:総胆管結石、膵頭部癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌、原発性硬化性胆管炎、薬剤性の高度胆汁うっ滞など。 ・小児:胆道閉鎖症(生後早期から灰白色便と遷延性黄疸。母子健康手帳の便色カードで早期発見が図られている)、先天性胆道拡張症。
便の色と原因の目安
・黒色(タール便):上部消化管出血、鉄剤内服。 ・鮮血便:下部消化管出血。 ・灰白色便:胆汁の腸管流出途絶。 ・白色水様便:ロタウイルス腸炎(乳幼児)。コレラの米のとぎ汁様便も白色だが、機序は胆汁排泄障害とは異なる。
POINT
・便の茶褐色はステルコビリン(胆汁中ビリルビンの腸内代謝産物)による。 ・灰白色便=胆汁が腸に届かない状態=閉塞性黄疸(総胆管閉塞など)や胆道閉鎖症。 ・閉塞性黄疸では直接ビリルビン上昇、ビリルビン尿、尿中ウロビリノゲン減少、脂肪便・ビタミンK欠乏を伴う。 ・溶血では便の色はむしろ濃くなり、尿中ウロビリノゲンが増加する。
