StudyMed医師国家試験

「つくる」のか「処理する」のか―肝臓の合成能を見抜く5つの物質

第120回医師国家試験 C問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第33問

肝臓で合成されるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.アルブミン
  2. b.アンモニア
  3. c.間接ビリルビン
  4. d.γ-グロブリン
  5. e.プロトロンビン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は肝臓の働きの基本を問う問題だ。肝臓には合成、代謝・解毒、胆汁の排泄、貯蔵といった役割がある。選択肢の物質が肝臓で「つくられる」ものか、ほかの場所でつくられて肝臓で「処理される」ものか、そこを区別するのが着眼点だよ。
医学生医学生
肝臓が関わる物質ばかりなので、全部肝臓でつくられているように見えてしまいます。
ドクタードクター
そう感じさせるのが出題のねらいだね。まずは確実に合成されるものから考えよう。アルブミンはどうかな。
医学生医学生
生化学の講義で、アルブミンは肝臓でしかつくられない血漿蛋白と習いました。血漿中で一番多い蛋白ですよね。
ドクタードクター
その通り。門脈から運ばれたアミノ酸を材料に肝細胞が合成する。膠質浸透圧を保ち、ビリルビンや脂肪酸、薬物を運ぶ役割もある。半減期が約3週間と長いので、肝硬変のような慢性的な合成能低下をよく反映する指標なんだ。
医学生医学生
消化器内科の実習で、肝硬変の患者さんが低アルブミン血症で腹水がたまっていました。
ドクタードクター
まさにその病態だね。膠質浸透圧が下がることが腹水や浮腫の一因になる。次にプロトロンビンはどうだろう。
医学生医学生
凝固第Ⅱ因子ですね。ビタミンK依存性の因子は肝臓でつくられると覚えています。
ドクタードクター
正解。プロトロンビンは肝細胞で合成され、ビタミンKを必要とするγ-カルボキシル化という修飾を受けて初めて機能をもつ。第Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子も同じ仲間だ。凝固因子は半減期が短く、特に第Ⅶ因子は数時間しかないから、急性の肝障害でもプロトロンビン時間がすぐ延長する。だから急性肝不全の診断や重症度評価にはPT-INRが使われるんだ。
医学生医学生
アルブミンが慢性、PTが急性の合成能を反映する、という使い分けですね。では、アンモニアは肝臓でつくられるのでは?肝性脳症で上がるので、肝臓と関係が深いイメージです。
ドクタードクター
関係は深いけれど、立場が逆なんだ。アンモニアは主に腸管で、食物中の蛋白質や腸管内の尿素が腸内細菌に分解されて生じ、門脈から肝臓に運ばれる。肝臓は尿素回路でそれを毒性の低い尿素に変える、つまり解毒する側だ。肝不全や門脈大循環シャントでは処理しきれずに全身へ回り、肝性脳症を起こす。
医学生医学生
だから肝性脳症の治療で、ラクツロースや腸管から吸収されにくい抗菌薬を使って腸でのアンモニア産生や吸収を抑えるんですね。
ドクタードクター
よくつながったね。間接ビリルビンも同じ構図だよ。どこでできるか覚えている?
医学生医学生
老化した赤血球が脾臓のマクロファージで壊されて、ヘモグロビンのヘムからできるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。水に溶けにくいのでアルブミンに結合して肝臓へ運ばれ、肝細胞でUDP-グルクロン酸転移酵素によってグルクロン酸抱合を受け、水溶性の直接ビリルビンとして胆汁中に排泄される。肝臓は抱合して処理する場であって、間接ビリルビンをつくる臓器としては扱わない。
医学生医学生
残るγ-グロブリンですが、肝硬変ではγ-グロブリンが増えると習ったので、肝臓がつくっているのかと迷いました。
ドクタードクター
そこが一番のひっかけだね。γ-グロブリンの大部分は免疫グロブリンで、B細胞が分化した形質細胞がつくる。肝臓ではない。肝硬変で増えるのは、腸管由来の抗原が肝臓で処理されずに全身に回り、免疫が刺激されることなどが理由だ。血清蛋白分画で言えば、アルブミンとα・β分画の大部分は肝臓由来、γ分画は形質細胞由来と整理するといい。
医学生医学生
肝硬変でアルブミンが下がってγ-グロブリンが上がるのは、肝臓の合成が落ちる一方で、免疫の反応が強まるから、ということですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。最後に臨床での注意点をまとめよう。肝機能検査は、ASTやALTが示す肝細胞障害、ALPやγ-GTP、直接ビリルビンが示す胆汁うっ滞、そしてアルブミン、PT、コリンエステラーゼ、総コレステロールが示す合成能の3つの軸で見るのが基本だ。ただしPTの延長は肝合成能の低下だけでなく、閉塞性黄疸による脂溶性ビタミンの吸収障害や長期の抗菌薬投与によるビタミンK欠乏、ワルファリン内服でも起こる。
医学生医学生
ビタミンKを投与してPTが改善すればビタミンK欠乏、改善しなければ肝臓そのものの合成能低下を疑う、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。数値の背景にある「つくれないのか、材料が足りないのか」を考える習慣が、肝疾患の診療ではとても大切なんだ。

まとめ

肝臓で合成される代表的な物質は、アルブミンとプロトロンビン(第Ⅱ因子)をはじめとする凝固因子で、どちらも肝合成能の指標として臨床で用いられます。アンモニアは主に腸管で生じて肝臓の尿素回路で解毒され、間接ビリルビンは脾臓などで赤血球が分解されてでき、肝臓でグルクロン酸抱合を受けるため、いずれも肝臓で「処理される」物質です。γ-グロブリン(免疫グロブリン)は形質細胞がつくり、肝硬変で増加しても肝臓が合成しているわけではありません。アルブミンは半減期が長く慢性の合成能低下を、PT-INRは凝固因子の半減期が短いため急性の変化を鋭敏に反映し、PT延長ではビタミンK欠乏やワルファリンとの鑑別も必要です。「合成」と「処理」を区別して肝臓の機能を整理することは、肝機能検査を正しく読み解き、肝硬変や急性肝不全を評価するための土台になります。

解答・解説

正解はa, eです

肝臓には大きく分けて「合成」「代謝・解毒」「排泄(胆汁の生成)」「貯蔵」の働きがある。本問では、選択肢の物質が肝臓で「つくられる(合成される)」ものか、肝臓以外でつくられて肝臓で「処理される」ものかを区別することが求められている。 肝細胞は多くの血漿蛋白質を合成する。代表例がアルブミンと、凝固因子(フィブリノゲン、プロトロンビン〔第Ⅱ因子〕、第Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子など)である。これらは肝臓の合成能を評価する指標として臨床で使われる。 一方、アンモニアや間接ビリルビンは主に肝臓以外でつくられて肝臓に運ばれ、尿素への変換や抱合といった処理を受ける。γ-グロブリン(免疫グロブリン)は肝臓ではなく、形質細胞がつくる。 血清蛋白の主な成分のうち、アルブミンと多くのグロブリン(α・β分画の大部分)は肝臓由来、γ分画は形質細胞由来と整理すると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ○a.  アルブミン

    アルブミンは肝細胞だけで合成される、血漿中で最も多い蛋白質である。消化管から吸収されたアミノ酸が門脈を通って肝臓に運ばれ、材料として使われる。血漿の膠質浸透圧の維持や、ビリルビン・脂肪酸・薬物などの運搬を担う。血中半減期は約3週間と長いため、慢性的な肝合成能の低下(肝硬変など)を反映する。肝硬変で低アルブミン血症が起こると、腹水や浮腫の一因となる。

  2. ×b.  アンモニア

    アンモニアは主に腸管でつくられる。食物中の蛋白質や、腸管内に分泌された尿素が腸内細菌によって分解されて生じ、門脈を通って肝臓に運ばれる。ほかに腎臓や筋肉でアミノ酸の代謝からも生じる。肝臓は尿素回路(オルニチン回路)でアンモニアを毒性の低い尿素に変え、これが腎臓から排泄される。つまり肝臓はアンモニアを処理(解毒)する臓器である。肝不全や門脈大循環シャントでは処理されないアンモニアが全身に回り、肝性脳症の原因となる。

  3. ×c.  間接ビリルビン

    間接ビリルビン(非抱合型ビリルビン)は、寿命を迎えた赤血球のヘモグロビンが主に脾臓のマクロファージで分解されてできる。ヘムがビリベルジンを経てビリルビンになる。水に溶けにくいためアルブミンと結合して血中を運ばれ、肝細胞に取り込まれる。肝細胞ではUDP-グルクロン酸転移酵素によってグルクロン酸と結合(抱合)され、水溶性の直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)となって胆汁中へ排泄される。肝臓は間接ビリルビンを抱合して処理する場であり、間接ビリルビンをつくる臓器としては扱わない。

  4. ×d.  γ-グロブリン

    γ-グロブリンの大部分は免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)である。B細胞が抗原刺激を受けて分化した形質細胞がつくり、形質細胞は骨髄、リンパ節、脾臓などに存在する。肝臓ではつくられない。なお肝硬変では、腸管由来の抗原が肝臓で処理されずに全身に回ることなどから、γ-グロブリンが増えることが多い。アルブミンが低下しγ-グロブリンが増えるのは肝硬変の典型的な所見であるが、これは肝臓がγ-グロブリンを合成するという意味ではない。

  5. ○e.  プロトロンビン

    プロトロンビンは凝固第Ⅱ因子で、肝細胞で合成される。合成の際、ビタミンKを必要とする翻訳後修飾(グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化)を受けて初めて機能をもつ。同じくビタミンK依存性の凝固因子として第Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子があり、これらも肝臓で合成される。肝合成能が低下するとプロトロンビン時間(PT)が延長し、PT-INRの上昇として現れる。凝固因子は半減期が短く(特に第Ⅶ因子は数時間)、急性の肝障害でも速やかにPTに反映されるため、劇症肝炎(急性肝不全)の診断や重症度の評価に用いられる。

肝臓の主な機能

・合成: アルブミン、凝固因子(フィブリノゲン、第Ⅱ・Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅺ因子など)、アンチトロンビン、プロテインC・S、コリンエステラーゼ、コレステロール、リポ蛋白、胆汁酸、トランスフェリン、ハプトグロビン、CRPなどの急性期蛋白。 ・代謝・解毒: アンモニアを尿素に変える(尿素回路)、ビリルビンのグルクロン酸抱合、薬物やホルモンの代謝。 ・排泄: 胆汁の生成と分泌(抱合型ビリルビン、胆汁酸、コレステロールなど)。 ・貯蔵: グリコーゲン、ビタミンA・D・B12、鉄など。

肝機能検査の見方(3つの軸)

・肝細胞障害: AST、ALTの上昇。 ・胆汁うっ滞: ALP、γ-GTP、直接ビリルビンの上昇。 ・合成能: アルブミン、PT(PT-INR)、コリンエステラーゼ、総コレステロールの低下(PTは延長)。 アンモニアの上昇は、肝の解毒能低下や門脈大循環シャントを反映し、肝性脳症の評価に使われる。合成能とは別の視点として整理する。

肝合成能の指標の使い分け

アルブミンは半減期が長く(約3週間)慢性の合成能低下を示す。PTは凝固因子の半減期が短いため急性の変化を鋭敏に示す。ビタミンK欠乏(閉塞性黄疸による脂溶性ビタミン吸収障害、長期の抗菌薬投与など)やワルファリン内服でもPTは延長するため、ビタミンK投与でPTが改善するかどうかが肝合成能低下との鑑別に役立つ。

POINT

・肝臓で合成: アルブミン、凝固因子(プロトロンビン=第Ⅱ因子、フィブリノゲンなど)、コリンエステラーゼ、コレステロール。 ・肝臓で処理されるが合成ではない: アンモニア(尿素に変換)、間接ビリルビン(抱合して直接ビリルビンに)。 ・γ-グロブリン(免疫グロブリン)は形質細胞がつくる。 ・肝合成能の指標はアルブミン(慢性)とPT-INR(急性に鋭敏)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。