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いびきは「どこ」で鳴る?―上気道の狭さから原因を見抜く

第99回医師国家試験 D問題 第78問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第78問

いびきの原因とならないのはどれか。

  1. a.肥満
  2. b.飲酒
  3. c.小顎症
  4. d.副鼻腔炎
  5. e.気管支炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はいびきの原因を問う問題だ。考え方のカギはただ一つ、「いびきは気道のどこで、どうやって鳴っている音なのか」。そこがわかれば、選択肢がいびきの原因になるかどうかは自然に判断できるよ。
医学生医学生
いびきって、喉のあたりがブルブル震えている音ですよね。
ドクタードクター
その通り。睡眠中に上気道のどこかが狭くなり、そこを通る空気の流れで軟口蓋や口蓋垂、咽頭壁、舌根といった柔らかい組織が振動して鳴る音だ。だから「上気道、つまり鼻腔から咽頭を狭くする要因かどうか」で判断すればいい。
医学生医学生
起きているときはいびきをかかないのは、なぜなんでしょう。
ドクタードクター
いい疑問だね。睡眠中は咽頭を開いておく筋肉、たとえばオトガイ舌筋の緊張が下がる。さらに仰向けだと重力で舌や軟口蓋が後ろに落ちる。だから覚醒中は問題ない程度の狭さでも、眠ると気道が狭まって音が出るんだ。
医学生医学生
そうすると肥満はわかりやすいです。首回りに脂肪がつくと気道が狭くなりますよね。
ドクタードクター
そう、咽頭周囲や舌に脂肪が沈着して咽頭腔が狭くなる。腹部の脂肪で肺容量が減ると、咽頭がつぶれやすくなることも加わる。肥満はいびきと閉塞性睡眠時無呼吸の最大の危険因子の一つだ。
医学生医学生
飲酒は、酔って深く眠るから、という感じでしょうか。
ドクタードクター
もう少し踏み込むと、アルコールの中枢抑制作用と筋弛緩作用で上気道開大筋の緊張が落ち、舌根沈下が起こりやすくなるんだ。覚醒反応も鈍るから、飲んだ夜はいびきや無呼吸が悪化しやすい。睡眠薬や鎮静薬も同じ理屈だね。
医学生医学生
小顎症は太っていなくても関係するんですか。
ドクタードクター
大事なポイントだよ。下顎が小さかったり後退していると、舌を収める口腔のスペースが狭く、舌が後ろへ押しやられて咽頭に落ち込みやすい。日本人を含む東アジア人では、肥満がなくてもこの顎顔面形態がいびきや睡眠時無呼吸の重要な要因になる。先天的にはPierre Robin症候群などでみられるね。
医学生医学生
副鼻腔炎は鼻の病気なので、喉のいびきとは関係ないと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけやすいところ。副鼻腔炎では鼻粘膜の腫脹や鼻汁、鼻茸で鼻閉が起こる。鼻の抵抗が上がると吸気時に咽頭の陰圧が強まって柔らかい咽頭壁がつぶれやすくなるし、口呼吸になると下顎が下がって舌根も後退する。だから鼻閉を起こす病気はいびきの原因になるんだ。
医学生医学生
アレルギー性鼻炎や鼻中隔弯曲症も同じ扱いですね。そうなると、残る気管支炎が原因にならないもの、ということですか。
ドクタードクター
正解。気管支は声門より下の下気道で、いびきを生む軟部組織の振動が起こる場所ではない。気管支炎で生じるのは、聴診で聴かれる連続性ラ音や湿性ラ音といった肺の副雑音だ。
医学生医学生
でも呼吸器内科の講義で、低音性連続性ラ音を「いびき音」と習いました。紛らわしいです。
ドクタードクター
よく覚えているね。rhonchiの和名がいびき音だけど、それは音の性状を表す呼び名にすぎない。睡眠中に上気道で鳴るいびきとは、発生部位も機序もまったく別物だよ。ついでに、喉頭や気管の狭窄で主に吸気時に聴かれる吸気性喘鳴、stridorとも区別しておこう。
医学生医学生
上気道の狭窄ならいびきやstridor、気管支の狭窄なら連続性ラ音、と部位で整理すればいいんですね。
ドクタードクター
その通り。臨床で大切なのは、いびきが閉塞性睡眠時無呼吸の最も頻度の高いサインだということ。家族から「大きないびきが途中で止まって、あえぐように再開する」と言われたら要注意だ。診断は終夜睡眠ポリグラフ検査で、中等症以上ではCPAPが標準治療になる。
医学生医学生
小児の場合は原因が違いますか。
ドクタードクター
小児では口蓋扁桃肥大やアデノイド増殖症が主な原因で、摘出術が有効なことが多い。成人でも甲状腺機能低下症や先端巨大症で舌や咽頭の軟部組織が厚くなっていびきが出ることがあるから、全身疾患の手がかりとしても意識しておこう。

まとめ

いびきは、睡眠中に上気道(鼻腔・咽頭)が狭くなり、軟口蓋・口蓋垂・舌根などの軟部組織が振動して生じる音です。原因は、肥満による咽頭周囲の脂肪沈着、飲酒や睡眠薬による上気道開大筋の緊張低下と舌根沈下、小顎症など骨格の狭さ、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる鼻閉と整理できます。一方、気管支炎は下気道の疾患で、聴診で聴かれる連続性ラ音などの副雑音は生じても、いびきの原因にはなりません。いびきは閉塞性睡眠時無呼吸の重要なサインであり、終夜睡眠ポリグラフ検査やCPAP、小児では扁桃・アデノイド摘出といった診療につながります。異常な呼吸音を「どこで鳴っているか」で整理する考え方は、耳鼻咽喉科と呼吸器内科の両方で役立ちます。

解答・解説

正解はeです

いびき(鼾声)は、睡眠中に上気道のどこかが狭くなり、そこを通過する空気の流れによって軟口蓋・口蓋垂・咽頭壁・舌根などの軟部組織が振動して生じる音である。したがって「いびきの原因になるか」は、「上気道(鼻腔~咽頭~喉頭)を狭くする要因かどうか」で判断すればよい。 上気道の狭窄を起こす要因は、大きく次の3つに整理できる。 1. 気道の周囲や内部の組織が大きい: 肥満による咽頭周囲の脂肪沈着、扁桃肥大・アデノイド増殖症、巨舌など 2. 気道を囲む骨格が小さい: 小顎症・下顎後退などの顎顔面形態 3. 睡眠中に気道を広げておく筋の緊張が低下する: 飲酒、睡眠薬・鎮静薬、加齢、仰臥位での舌根沈下など さらに、鼻腔が詰まって鼻呼吸がしにくくなると、吸気時に咽頭内が強い陰圧となって咽頭が虚脱しやすくなり、また口呼吸になって下顎と舌根が後退するため、鼻疾患もいびきの原因となる。 これに対し、気管支は声門より下の下気道にあり、軟部組織が振動していびきを生じる部位ではない。下気道の狭窄や分泌物で生じる音は、聴診で聴かれる連続性ラ音(wheezes・rhonchi)や湿性ラ音などであり、睡眠中のいびきとは発生部位も機序も異なる。

選択肢考察

  1. ×a.  肥満

    肥満では咽頭周囲(副咽頭間隙など)や舌に脂肪が沈着し、咽頭腔が狭くなる。さらに頸部の脂肪による外側からの圧迫や、腹部の脂肪による肺容量の低下(気管が下方へ牽引されにくくなり咽頭が虚脱しやすくなる)も加わる。いびきおよび閉塞性睡眠時無呼吸の最大の危険因子の一つであり、いびきの原因となる。

  2. ×b.  飲酒

    アルコールには中枢神経抑制作用と筋弛緩作用があり、睡眠中に咽頭を開いておく働きをもつオトガイ舌筋などの上気道開大筋の緊張が低下する。その結果、仰臥位では舌根や軟口蓋が後方に落ち込み(舌根沈下)、咽頭が狭くなる。また覚醒反応が鈍くなることもあって、飲酒後はいびきや無呼吸が悪化しやすい。いびきの原因となる。

  3. ×c.  小顎症

    小顎症(下顎の低形成)や下顎後退では、舌を収める口腔の容積が小さく、舌が相対的に後方へ押しやられるため、舌根が咽頭腔へ落ち込みやすい。肥満がなくても上気道が狭いため、日本人を含む東アジア人では、この顎顔面形態がいびき・閉塞性睡眠時無呼吸の重要な要因とされる。先天的にはピエール・ロバン(Pierre Robin)症候群やトリーチャー・コリンズ(Treacher Collins)症候群などでみられる。いびきの原因となる。

  4. ×d.  副鼻腔炎

    副鼻腔炎では、合併する鼻粘膜の腫脹、鼻汁や後鼻漏、鼻茸(鼻ポリープ)によって鼻閉が生じる。鼻腔の抵抗が上がると吸気時に咽頭内の陰圧が強まり、柔らかい咽頭壁が虚脱しやすくなる。また口呼吸になると下顎が下がって舌根が後退し、咽頭がさらに狭くなる。このため鼻閉を起こす疾患(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症など)はいびきの原因となる。

  5. ○e.  気管支炎

    気管支炎は声門より下の下気道の炎症であり、いびきを生じる上気道(鼻腔・咽頭)の狭窄を起こさない。気管支炎で生じる異常音は、気管支の分泌物や狭窄による連続性ラ音(低音性のrhonchi、高音性のwheezes)や湿性ラ音であり、聴診で聴取される肺の副雑音である。低音性連続性ラ音は日本語で「いびき音」とよばれることがあるが、これは音の性状を表す呼び名にすぎず、睡眠中に上気道の軟部組織が振動して生じるいびきとは別物である。したがって、いびきの原因とならないのは気管支炎である。

いびきの発生部位と機序

いびきは主に軟口蓋・口蓋垂・咽頭側壁・舌根部の振動で生じる。睡眠中は覚醒時に比べて上気道開大筋の緊張が低下し、さらに仰臥位では重力で舌や軟口蓋が後方へ移動するため、覚醒時には問題のない程度の狭さでも睡眠中に気道が狭まり、いびきが出る。

いびきの主な原因の整理

・鼻腔: アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻茸、鼻中隔弯曲症、アデノイド増殖症(上咽頭) ・口腔・中咽頭: 口蓋扁桃肥大、軟口蓋・口蓋垂の過長、巨舌 ・顎顔面形態: 小顎症、下顎後退 ・全身因子: 肥満、加齢(筋緊張低下)、飲酒、睡眠薬・鎮静薬、甲状腺機能低下症(舌・咽頭粘膜の浮腫)、先端巨大症(巨舌・軟部組織肥厚) ・体位: 仰臥位で悪化し、側臥位で軽減する。

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)との関係

上気道の狭窄が進んで完全に閉塞すると無呼吸となる。睡眠中の10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や低呼吸が1時間あたり5回以上(無呼吸低呼吸指数AHI≥5)あり、日中の過度の眠気などの症状を伴うものが睡眠時無呼吸症候群である。いびきはOSAの最も頻度の高い症状で、家族から「大きないびきが途中で止まり、あえぐように再開する」と指摘されることが多い。診断は終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で行い、中等症以上では持続陽圧呼吸療法(CPAP)が標準治療となる。小児では口蓋扁桃肥大・アデノイド増殖症が主因で、摘出術が有効である。

上気道性の音と下気道性の音の区別

・いびき: 睡眠中、上気道(主に咽頭)の軟部組織の振動 ・吸気性喘鳴(stridor): 喉頭・気管など太い気道の狭窄。主に吸気時に聴かれる(例: クループ、喉頭蓋炎、気道異物) ・連続性ラ音(wheezes, rhonchi): 気管支の狭窄。主に呼気時に聴かれる(例: 気管支喘息、COPD、気管支炎)

POINT

・いびきは上気道(鼻腔・咽頭)の狭窄により、軟口蓋・口蓋垂・舌根などの軟部組織が振動して生じる。 ・原因: 肥満、飲酒・睡眠薬(筋緊張低下と舌根沈下)、小顎症(骨格の狭さ)、鼻閉(副鼻腔炎・鼻炎・鼻中隔弯曲症)、扁桃肥大・アデノイドなど。 ・気管支炎などの下気道疾患はいびきの原因とならない。下気道では連続性ラ音など、聴診上の副雑音が生じる。 ・いびきは閉塞性睡眠時無呼吸の重要なサインである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。