耳漏が出ない耳の病気はどれ?―「滲出源」で見抜く耳硬化症
第107回医師国家試験 E問題 第16問
国試問題にチャレンジ
耳漏をきたさないのはどれか。
- a.鼓膜炎
- b.耳硬化症
- c.側頭骨骨折
- d.外耳道真菌症
- e.真珠腫性中耳炎
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
耳漏は外耳道・鼓膜・中耳に炎症、外傷、腫瘍などの滲出源があり、それが外耳道へ出る経路があって初めて生じます。鼓膜炎、外耳道真菌症、真珠腫性中耳炎は炎症性疾患として耳漏をきたし、特に真珠腫性中耳炎では悪臭を伴う膿性耳漏が特徴的です。側頭骨骨折では血性耳漏に加え、硬膜損傷による髄液耳漏にも注意が必要です。一方、耳硬化症はアブミ骨底板が前庭窓に固着する骨の疾患で、鼓膜は正常で耳漏はなく、鼓膜所見が正常な伝音難聴の代表として耳小骨奇形や耳小骨連鎖離断とともに鑑別に挙げられます。「耳漏の滲出源はどこか」という原理から考えると、耳疾患の症状を体系的に整理できます。
解答・解説
正解はbです
耳漏(じろう)とは、外耳道から外へ流れ出てくる液体の総称である。性状によって膿性(うみ)、粘液性、漿液性(さらさらした滲出液)、血性、髄液性などに分けられる。耳漏が出るためには、外耳道・鼓膜・中耳(鼓室)のいずれかに、炎症、外傷、腫瘍などによって液体を生じる病変があり、それが外耳道へ出てくる経路が存在する必要がある。 したがって本問は、各疾患について「外耳道〜中耳に炎症・組織損傷などの滲出源があるか」を考えれば解ける。鼓膜炎、外耳道真菌症、真珠腫性中耳炎はいずれも外耳道・鼓膜・中耳の炎症性疾患であり、側頭骨骨折は外傷によって出血や髄液漏を起こしうる。一方、耳硬化症は中耳の奥にある骨(アブミ骨と内耳を包む骨)の病的な骨リモデリングによる固着が病態で、鼓膜や中耳粘膜に炎症は起こらず、鼓膜も正常であるため耳漏はきたさない。
選択肢考察
- ×a. 鼓膜炎
鼓膜炎は鼓膜の表層(外耳道側の上皮層)に生じる炎症である。細菌やウイルスの感染によって起こり、鼓膜表面にびらんや肉芽、水疱を形成する。炎症部位からの滲出により、膿性・漿液性の耳漏がみられ、肉芽やびらんからの出血で血性耳漏となることもある。水疱性鼓膜炎では水疱が破れて血性・漿液性の耳漏をきたす。したがって耳漏をきたす疾患である。
- ○b. 耳硬化症
耳硬化症は、内耳を包む骨(耳包)に異常な骨の吸収と新生(骨リモデリング)が起こる疾患で、典型的には前庭窓(卵円窓)の周囲に病変が生じ、アブミ骨の底板が前庭窓に固着して動かなくなる。その結果、音が内耳へ伝わらず伝音難聴をきたす。病変は骨にあり、鼓膜や中耳粘膜には炎症がなく、鼓膜所見はほぼ正常である。滲出液を生じる場がないため耳漏はきたさない。よって本問の正解である。
- ×c. 側頭骨骨折
側頭骨骨折では、外耳道の皮膚の裂創や鼓膜の穿孔を伴うことが多く、血性耳漏(耳出血)がみられる。骨折線が中耳・内耳に及び硬膜が損傷されると、髄液が中耳へ漏れ、鼓膜穿孔を通じて外耳道から流出する髄液耳漏(髄液漏)をきたす。受傷後に感染を合併すれば膿性耳漏となることもある。したがって耳漏をきたしうる。
- ×d. 外耳道真菌症
外耳道真菌症は、アスペルギルスやカンジダなどの真菌が外耳道に感染して起こる外耳道炎である。強いかゆみ、耳閉感とともに、漿液性あるいは膿性の耳漏がみられる。外耳道内には菌糸や胞子を含む白色〜黒色の綿状・膜状の付着物が観察されるのが特徴である。耳漏をきたす疾患である。
- ×e. 真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎は、角化した扁平上皮が中耳腔に入り込み、角化物(デブリ)を蓄積しながら増大して周囲の骨を破壊する疾患である。感染を伴いやすく、悪臭を伴う膿性耳漏が特徴的で、肉芽からの出血による血性耳漏もみられる。耳漏をきたす代表的な疾患の一つである。
耳漏の性状と主な原因
・膿性・粘液性耳漏:急性中耳炎(鼓膜穿孔後)、慢性化膿性中耳炎、外耳道炎、鼓膜炎など ・悪臭を伴う膿性耳漏:真珠腫性中耳炎(嫌気性菌の関与) ・漿液性耳漏:外耳道湿疹、外耳道真菌症など ・血性耳漏:外傷(側頭骨骨折、外耳道損傷)、水疱性鼓膜炎、中耳・外耳道の悪性腫瘍、肉芽からの出血 ・髄液耳漏:側頭骨骨折など頭蓋底の損傷で硬膜が破れた場合。透明でさらさらしており、糖を含むことが鑑別の手がかりとなる
耳硬化症の概要
・白人に多く、日本人では比較的まれ。女性に多く、20〜40歳代で発症することが多い。両側性が多い。 ・妊娠・出産を契機に進行することがある。家族歴を認めることもある。 ・症状は緩徐進行性の伝音難聴(進行すると内耳障害を加えて混合難聴)と耳鳴。 ・鼓膜は正常。活動期には岬角の粘膜が透けて赤く見えること(Schwartze徴候)がある。 ・純音聴力検査で骨導の2kHz付近の低下(Carhartの陥凹、Carhart notch)がみられることがある。 ・ティンパノメトリーはA型(ピークが低めのAs型)、アブミ骨筋反射は消失する。 ・治療はアブミ骨手術(アブミ骨底板に小孔をあけ人工耳小骨を挿入するstapedotomyなど)や補聴器。
鼓膜所見が正常な伝音難聴
耳硬化症のほか、耳小骨奇形、耳小骨連鎖離断などがある。耳漏や鼓膜の異常を伴わない伝音難聴をみたら、これらを考える。
POINT
・耳漏は、外耳道・鼓膜・中耳の炎症、外傷、腫瘍で生じる。 ・耳硬化症はアブミ骨底板が前庭窓に固着する骨の疾患で、鼓膜は正常、耳漏はない。 ・側頭骨骨折では血性耳漏に加え髄液耳漏がありうる。 ・真珠腫性中耳炎は悪臭を伴う膿性耳漏が特徴。
