4歳まで残る反射はどれ?―原始反射と姿勢反射を「消える・残る」で整理する
第107回医師国家試験 E問題 第17問
国試問題にチャレンジ
生来健康で成長・発達に異常を指摘されたことがない4歳の女児に認められる反射はどれか。
- a.吸啜反射
- b.Moro反射
- c.Landau反射
- d.手掌把握反射
- e.パラシュート反射
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
乳幼児の反射は、脊髄・脳幹レベルで統合され乳児期前半に消失する原始反射と、上位中枢の成熟に伴って出現し粗大運動を支える姿勢反射に大別されます。吸啜反射、Moro反射、手掌把握反射はおおむね生後3〜6か月ごろに消失し、姿勢反射であるLandau反射も2〜3歳ごろまでに消失します。これに対し、保護伸展反応であるパラシュート反射は生後6〜9か月ごろに出現して生涯持続するため、発達正常な4歳児に認められます。原始反射の残存や左右差、姿勢反射の出現遅延は脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う所見です。反射を「いつ出て、いつ消えるか」と運動発達のマイルストーンとあわせて理解することが、乳幼児健診での発達評価の基礎となります。
解答・解説
正解はeです
乳幼児の発達を評価するときに重要な反射は、原始反射と姿勢反射(立ち直り反射・平衡反応・保護伸展反応など)の2群である。 原始反射は、脊髄・脳幹レベルで統合される反射で、出生時から存在し、大脳皮質などの上位中枢が成熟してくるにつれて抑制され、多くは生後数か月で消失する。消失すべき時期を過ぎても残っている場合や、左右差がある場合は、脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う手がかりとなる。 一方、姿勢反射の多くは中脳・視床・大脳皮質レベルの成熟に伴って生後数か月以降に出現し、寝返り・座位・立位・歩行といった粗大運動の発達を支える。このうち保護伸展反応であるパラシュート反射は、一度出現すると生涯持続する。 本問は発達正常な4歳児なので、「4歳の時点で消失していない反射」を選べばよい。原始反射(吸啜反射、Moro反射、手掌把握反射)は乳児期前半に消失し、Landau反射も幼児期前半(おおむね2〜3歳まで)に消失する。生涯残るパラシュート反射が正解となる。
選択肢考察
- ×a. 吸啜反射
吸啜反射は、口の中に指や乳首を入れるとリズミカルに吸いつく原始反射で、哺乳を可能にする。出生時から存在し、生後3か月ごろから減弱して、おおむね生後4〜6か月ごろには随意的な吸う動作に置き換わって消失する。4歳の健常児では認められない。
- ×b. Moro反射
Moro反射は、仰臥位の児の頭部を急に後方へ落とすように支えを外したり、大きな音を与えたりすると、両上肢を伸展・外転して手指を開き(第1相)、続いて抱きつくように上肢を内転・屈曲させる(第2相)原始反射である。出生時から存在し、生後4か月ごろに消失し始め、遅くとも6か月ごろまでには消失する。6か月以降も残る場合や左右差がある場合(分娩麻痺、鎖骨骨折など)は異常である。4歳の健常児では認められない。
- ×c. Landau反射
Landau反射は、児を腹臥位のまま腹部を手で支えて水平に持ち上げると、頭部を挙上し、体幹と下肢を伸展して弓なりの姿勢をとる反射である。このとき頭部を他動的に前屈させると体幹・下肢が屈曲する。中脳レベルで統合される姿勢反射で、生後6か月ごろに出現し、1歳半〜2歳ごろから減弱し、おおむね2〜3歳までに消失する。4歳の健常児では認められない。
- ×d. 手掌把握反射
手掌把握反射は、児の手のひらを指で圧迫すると指を屈曲させて握りしめる原始反射である。出生時から存在し、生後3〜4か月ごろに消失して、随意的な把握(物に手を伸ばしてつかむ動作)へと移行する。生後6か月を過ぎても残る場合は異常とされる。4歳の健常児では認められない。なお、足の裏を圧迫すると趾が屈曲する足底把握反射は、歩行開始の時期(生後9〜12か月ごろ)まで残る。
- ○e. パラシュート反射
パラシュート反射は、児の体幹を支えて空中に保持し、急に頭部を下へ向けて落下させるように傾けると、両上肢を前方へ伸ばし手を開いて体を支えようとする保護伸展反応である。前方へのパラシュート反射は生後6〜9か月ごろ(一般に8か月前後)に出現し、続いて側方、後方の保護伸展反応が現れる。一度出現すると生涯持続し、転倒時に手をついて身を守る反応として成人にも残る。したがって発達正常な4歳児に認められる。出現が遅れる場合や左右差がある場合は、運動発達の遅れや片麻痺を疑う。
主な原始反射と消失時期(目安)
・吸啜反射、探索反射(口の周囲に触れるとその方向へ顔を向ける):生後4〜6か月ごろ消失 ・Moro反射:生後4〜6か月ごろ消失 ・手掌把握反射:生後3〜4か月ごろ消失 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR:顔を向けた側の上下肢が伸展し反対側が屈曲する):生後4〜6か月ごろ消失 ・足底把握反射:生後9〜12か月ごろ消失 ・Babinski反射(足底外側をこすると母趾が背屈し他の趾が開く):乳児期には陽性となり、歩行が確立する1〜2歳ごろに陰性化する
主な姿勢反射(姿勢反応)の出現時期(目安)
・Landau反射:生後6か月ごろ出現、2〜3歳ごろまでに消失 ・パラシュート反射(前方):生後6〜9か月ごろ出現、生涯持続 ・座位での側方・後方の保護伸展反応:生後7〜10か月ごろ出現、生涯持続 ・立ち直り反射、傾斜反応(平衡反応):乳児期後半〜幼児期に完成し、生涯持続
臨床的意義
原始反射が消失すべき時期を過ぎても残る、左右差がある、あるいは姿勢反射の出現が遅れる場合は、脳性麻痺などの中枢神経系の障害や末梢神経障害(分娩麻痺など)を疑う。反射の評価は、運動発達のマイルストーン(首すわり3〜4か月、寝返り5〜6か月、座位7か月前後、つかまり立ち9〜10か月、独歩1歳〜1歳半)とあわせて行う。
POINT
・原始反射(吸啜、Moro、手掌把握など)は乳児期前半に消失する。 ・Landau反射は生後6か月ごろ出現し、2〜3歳ごろまでに消失する。 ・パラシュート反射は生後6〜9か月ごろ出現し、生涯持続する。 ・原始反射の残存・左右差、姿勢反射の出現遅延は中枢神経障害を疑う所見である。
