35歳で「約300人に1人」―母体年齢とDown症候群の数字を機序から覚える
第107回医師国家試験 E問題 第18問
国試問題にチャレンジ
35歳の女性から21 trisomyの児が出生する確率に最も近いのはどれか。
- a.1/10
- b.1/300
- c.1/1,000
- d.1/3,000
- e.1/10,000
対話形式の解説
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ドクターまとめ
21トリソミー(Down症候群)の約95%は標準型で、主に母親の卵子形成における減数分裂時の染色体不分離によって生じるため、出生頻度は母体年齢とともに上昇します。目安は20歳で約1/1,500、30歳で約1/900、35歳で約1/300、40歳で約1/100、45歳で約1/30で、全出生児では約1/700〜1/1,000です。一方、転座型は母体年齢と関係が乏しく、親が均衡型転座保因者である可能性から両親の染色体検査が勧められます。出生前検査には非確定的検査と確定的検査があり、いずれも前後の遺伝カウンセリングが必須です。代表的な数字を機序とともに理解しておくことは、試験対策だけでなく、妊婦さんへの正確で中立的な情報提供の土台になります。
解答・解説
正解はbです
21トリソミー(Down症候群)は、21番染色体が3本存在することによって生じる、出生児で最も頻度の高い常染色体異数性である。原因の約95%は標準型トリソミーで、その大部分は母親の卵子形成過程における減数分裂時の染色体不分離(とくに第一減数分裂での不分離)によって生じる。卵母細胞は胎生期に第一減数分裂の前期で停止したまま排卵まで長期間保持されるため、母体年齢が高くなるほど不分離が起こりやすくなり、21トリソミー児の出生頻度は母体年齢とともに増加する。 出生時の頻度の目安は、母体年齢20歳で約1/1,500、25歳で約1/1,200、30歳で約1/900、35歳で約1/300〜1/400、40歳で約1/100、45歳で約1/30である。30歳代後半から急峻に上昇するのが特徴である。したがって35歳の女性から21トリソミー児が出生する確率として最も近いのは1/300である。 なお、年齢の数値は「出生時」の頻度か「妊娠中期(羊水検査時期)」の頻度かで異なる。妊娠中期の頻度は、その後の自然流産・死産の分が含まれるため出生時よりやや高い。国家試験では「35歳で約1/300、40歳で約1/100、全体で約1/1,000」という数値を押さえておけばよい。
選択肢考察
- ×a. 1/10
1/10は高すぎる。母体年齢45歳でも約1/30であり、1/10前後となるのは母体年齢が40歳代後半(約49歳)に達したときである。35歳女性の確率とはかけ離れている。
- ○b. 1/300
35歳の女性が21トリソミー児を出産する確率は約1/300(資料により1/350〜1/400程度)とされ、選択肢の中で最も近い。母体年齢35歳以上が「高年妊娠」と呼ばれ、出生前検査について情報提供を行う目安とされてきたのは、この年齢でリスクが明らかに上昇し始めるためである。
- ×c. 1/1,000
1/1,000は、母体年齢を問わず全出生児を対象としたときの21トリソミーのおおよその頻度(約1/700〜1/1,000)である。母体年齢別にみると、1/1,000前後は30歳前後の女性に相当する。35歳女性ではこれより約3倍高い。
- ×d. 1/3,000
1/3,000は低すぎる。最もリスクの低い20歳前後の若年女性でも約1/1,500であり、どの年齢層にも該当しない。
- ×e. 1/10,000
1/10,000はさらに低く、21トリソミーの頻度としては該当する年齢層がない。これはむしろまれな疾患の頻度の水準である。
21トリソミー(Down症候群)の核型
・標準型トリソミー(47,XX/XY,+21):約95%。母体年齢と相関する。 ・転座型:約3〜4%。多くはRobertson転座(21番染色体と13・14・15・21・22番などの端部着糸型染色体の融合)による。親が均衡型転座保因者のことがあり、次子の再発率が高くなるため、両親の染色体検査が勧められる。母体年齢との相関は乏しい。 ・モザイク型:約1〜2%。正常細胞と21トリソミー細胞が混在し、症状が軽いことがある。
主な臨床像
特徴的顔貌(眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、鼻根部平坦、舌の突出)、筋緊張低下、知的障害、単一手掌屈曲線(猿線)、先天性心疾患(約40〜50%。房室中隔欠損症、心室中隔欠損症など)、消化管奇形(十二指腸閉鎖、Hirschsprung病)、甲状腺機能低下症、白血病(一過性骨髄異常増殖症、急性巨核芽球性白血病、急性リンパ性白血病)、環軸椎不安定性、早期のAlzheimer病様変化など。
出生前検査と遺伝カウンセリング
・非確定的検査:母体血清マーカー検査、胎児超音波検査(後頸部浮腫〈NT〉の計測など)、母体血を用いた非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)。 ・確定的検査:羊水検査(妊娠15〜16週以降)、絨毛検査(妊娠11〜14週ごろ)。流産などのリスクを伴う。羊水検査に伴う流産率はかつて約1/200〜1/300(0.3〜0.5%)とされ、35歳女性の21トリソミー児出生確率とほぼ同じであることが、35歳を検査提示の目安とする根拠の一つとされた。近年の報告では0.1〜0.3%程度とより低く見積もられている。 ・いずれの検査も、実施前後に十分な遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーの自己決定を尊重することが必須である。
POINT
・21トリソミー児の出生頻度は母体年齢とともに上昇する(主に卵子の減数分裂時の不分離による)。 ・母体年齢別の目安:20歳約1/1,500、30歳約1/900、35歳約1/300、40歳約1/100、45歳約1/30。 ・全出生児では約1/700〜1/1,000。 ・転座型は母体年齢と関係せず、親の保因者検索が必要。 ・出生前検査の前後には遺伝カウンセリングが必須。
