StudyMed医師国家試験

表皮の見張り番―抗原提示細胞はLangerhans細胞ただ一つ

第107回医師国家試験 E問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第15問

表皮内にある抗原提示細胞はどれか。

  1. a.肥満細胞
  2. b.線維芽細胞
  3. c.グロムス細胞
  4. d.メラノサイト
  5. e.Langerhans細胞

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚を構成する細胞の問題だ。条件は2つ、「表皮内にある」ことと「抗原提示細胞である」こと。両方を満たす細胞を選べばいい。まず皮膚の層構造から確認しよう。
医学生医学生
外側から表皮、真皮、皮下組織ですよね。組織学実習で、表皮は重層扁平上皮だとスケッチしました。
ドクタードクター
その通り。表皮は深い方から基底層、有棘層、顆粒層、角層に分かれる。大部分は角化細胞だけど、ほかにメラノサイト、Langerhans細胞、Merkel細胞が混じっている。一方、真皮は膠原線維などの結合組織で、線維芽細胞や肥満細胞、マクロファージ、血管や神経がある。
医学生医学生
抗原提示細胞というと、免疫学で樹状細胞、マクロファージ、B細胞の3つを習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。抗原提示細胞は、抗原を取り込んで分解し、ペプチドをMHCクラスII分子に載せてヘルパーT細胞に提示し、獲得免疫を始動させる細胞だ。中でも樹状細胞が最も強力。では、表皮にいる樹状細胞といえば?
医学生医学生
Langerhans細胞です。でも、メラノサイトも樹状突起があるので、少し迷いました。
ドクタードクター
鋭い迷い方だ。メラノサイトは神経堤由来で表皮の基底層にあり、樹状突起を通じてメラニンを周囲の角化細胞に受け渡す。メラニンは紫外線を吸収してDNA損傷を防ぐ。表皮にいるという条件は満たすけれど、抗原提示細胞ではないんだ。形が樹状でも機能は全く違う。
医学生医学生
なるほど、「樹状」という見た目に引っ張られてはいけないんですね。肥満細胞はアレルギーに関わるので、免疫細胞として候補になりませんか。
ドクタードクター
肥満細胞は骨髄由来で、皮膚では主に真皮の血管周囲にいる。FcεRIに結合したIgEが抗原で架橋されると脱顆粒し、ヒスタミンなどを放出してI型アレルギーを起こす。蕁麻疹の膨疹がその代表だね。免疫に関わるけれど、役割は抗原提示ではなく、しかも表皮にはいない。
医学生医学生
線維芽細胞は真皮でコラーゲンを作る細胞なので、明らかに違いますね。
ドクタードクター
そう。膠原線維や弾性線維、ヒアルロン酸などの基質を産生し、創傷治癒や強皮症の線維化にも関わる。グロムス細胞はどうかな。
医学生医学生
名前は聞いたことがありますが、正直よくわかりません……。
ドクタードクター
グロムス細胞は真皮の動静脈吻合を取り巻く、平滑筋細胞が変化した細胞で、血流を調節して体温調節に関わる。指趾の末端、特に爪床に多い。ここから生じる良性腫瘍がグロムス腫瘍で、爪下に好発し、強い圧痛や寒冷時の痛みが特徴だ。もちろん表皮にはなく、抗原提示もしない。
医学生医学生
ということで、正解はLangerhans細胞ですね。表皮のどの層にいるんでしたっけ。
ドクタードクター
主に有棘層に網目状に分布している。表皮に侵入したハプテンや微生物成分を取り込むと、成熟しながら真皮を通ってリンパ管から所属リンパ節へ移動し、T細胞に抗原を提示する。アレルギー性接触皮膚炎、つまりIV型の遅延型過敏反応の感作で重要な役割を果たすんだ。
医学生医学生
皮膚科の実習でパッチテストを見学しました。あの反応の始まりにLangerhans細胞が関わっているんですね。
ドクタードクター
その通り。病理で押さえたいのはマーカーで、CD1a、S-100蛋白、ランゲリン(CD207)が陽性。電子顕微鏡ではテニスラケット状のBirbeck顆粒が見える。これはLangerhans細胞組織球症の診断でも重要だよ。骨病変、皮疹、尿崩症などをきたす疾患だね。
医学生医学生
CBTでBirbeck顆粒が出たのを思い出しました。Langerhans細胞は骨髄から来るんでしたか。
ドクタードクター
以前はそう教えられていたけれど、現在は胎生期に定着した前駆細胞が表皮内で自己複製して維持され、炎症などで失われると骨髄由来の単球から補充されると理解されている。ちなみに表皮のMerkel細胞は基底層にあって触覚に関わり、Merkel細胞癌の発生母地と考えられている。表皮の4種類の細胞は、層と機能をセットで覚えておこう。

まとめ

表皮内にある抗原提示細胞はLangerhans細胞で、主に有棘層に分布する樹状細胞として抗原を捕捉し、所属リンパ節へ移動してT細胞に提示します。CD1a、S-100蛋白、ランゲリン(CD207)陽性、電子顕微鏡でのBirbeck顆粒が特徴で、アレルギー性接触皮膚炎(IV型)の感作やLangerhans細胞組織球症の理解につながります。メラノサイトは表皮基底層にあってメラニンを産生しますが抗原提示細胞ではなく、肥満細胞(I型アレルギー)、線維芽細胞(膠原線維産生)、グロムス細胞(動静脈吻合での血流調節)はいずれも真皮の細胞です。皮膚の構成細胞を「どの層にいて、何をするか」で整理しておくことは、皮膚疾患の病態や病理診断を理解する土台になります。

解答・解説

正解はeです

本問は、皮膚を構成する細胞の種類・存在部位・機能を問う一般問題である。条件は「表皮内にある」ことと「抗原提示細胞である」ことの2点であり、両方を満たすものを選ぶ。

皮膚の構造と構成細胞

皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織の3層からなる。 ・表皮:重層扁平上皮で、深い方から基底層、有棘層、顆粒層、角層(手掌・足底ではさらに淡明層)に分かれる。大部分は角化細胞(ケラチノサイト)で、そのほかにメラノサイト、Langerhans細胞、Merkel細胞が存在する。 ・真皮:膠原線維や弾性線維などの結合組織からなり、線維芽細胞、肥満細胞、マクロファージ、真皮樹状細胞、血管・神経・付属器などを含む。

抗原提示細胞とは

抗原提示細胞は、外来抗原を取り込んで分解し、その断片(ペプチド)をMHCクラスII分子に載せてヘルパーT細胞に提示し、獲得免疫を始動させる細胞である。樹状細胞が最も強力で、ほかにマクロファージやB細胞がある。

解き方

表皮に存在する細胞のうち抗原提示能をもつのは、表皮に常在する樹状細胞であるLangerhans細胞である。メラノサイトは表皮に存在するが抗原提示細胞ではない。肥満細胞、線維芽細胞、グロムス細胞は主に真皮に存在し、いずれも抗原提示を本来の機能とする細胞ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  肥満細胞

    誤り。肥満細胞(マスト細胞)は骨髄由来の細胞で、皮膚では主に真皮の血管周囲に分布する。細胞表面の高親和性IgE受容体(FcεRI)にIgEが結合した状態で抗原が架橋すると脱顆粒し、ヒスタミンやロイコトリエンなどを放出してI型(即時型)アレルギーを起こす。蕁麻疹の膨疹はこの機序で生じる。抗原提示を主な役割とする細胞ではなく、また表皮内には存在しない。

  2. ×b.  線維芽細胞

    誤り。線維芽細胞は真皮の主要な細胞であり、膠原線維(コラーゲン)、弾性線維、基質(ヒアルロン酸などのプロテオグリカン)を産生して真皮の結合組織を形成・維持する。創傷治癒や瘢痕形成、強皮症などの線維化にも関わる。表皮には存在せず、抗原提示細胞でもない。

  3. ×c.  グロムス細胞

    誤り。グロムス細胞は、真皮にある動静脈吻合(Sucquet-Hoyer管)の周囲を取り巻く、平滑筋細胞が変化した細胞で、血流を調節して体温調節に関与する。指趾の末端(特に爪床)に多く、ここから発生する良性腫瘍がグロムス腫瘍(爪下に好発し、強い圧痛や寒冷時の疼痛を特徴とする)である。表皮には存在せず、抗原提示能もない。

  4. ×d.  メラノサイト

    誤り。メラノサイト(色素細胞)は神経堤由来で、表皮の基底層に存在し、メラニンを産生して樹状突起を通じて周囲の角化細胞へ受け渡す。メラニンは紫外線を吸収してDNA損傷から細胞を守る。表皮に存在する点は条件を満たすが、抗原提示細胞ではない。なお、真皮に存在するメラノサイト(真皮メラノサイト)もあり、蒙古斑や太田母斑の原因となる。

  5. ○e.  Langerhans細胞

    正しい。Langerhans細胞は表皮(主に有棘層)に網目状に分布する樹状細胞であり、表皮で唯一の専門的な抗原提示細胞である。表皮に侵入した抗原(ハプテンや微生物成分)を取り込むと、成熟しながら真皮を経てリンパ管から所属リンパ節へ移動し、抗原をT細胞に提示して免疫応答を開始させる。アレルギー性接触皮膚炎(IV型、遅延型過敏反応)の感作に重要な役割を果たす。電子顕微鏡でテニスラケット状のBirbeck顆粒を認め、CD1a、S-100蛋白、ランゲリン(CD207)が陽性となるのが特徴である。

表皮に存在する主な細胞

・角化細胞(ケラチノサイト):表皮細胞の大部分を占め、基底層で分裂して角層へと分化し、皮膚のバリアを形成する。 ・メラノサイト:基底層に存在。神経堤由来。メラニンを産生する。 ・Langerhans細胞:主に有棘層に存在。抗原提示細胞(樹状細胞)。 ・Merkel細胞:基底層に存在。触覚の受容に関わる。Merkel細胞癌の発生母地と考えられている。

真皮に存在する主な細胞

線維芽細胞、肥満細胞、マクロファージ(組織球)、真皮樹状細胞、形質細胞・リンパ球、血管内皮細胞、グロムス細胞など。

Langerhans細胞の要点

・由来:胎生期に定着した前駆細胞が表皮内で自己複製して維持されるが、炎症などで失われた際には骨髄由来の単球から補充される。 ・マーカー:CD1a、S-100蛋白、ランゲリン(CD207)。電子顕微鏡ではBirbeck顆粒。 ・機能:表皮での抗原捕捉→所属リンパ節へ遊走→T細胞への抗原提示。 ・関連疾患:Langerhans細胞組織球症(LCH)は、Langerhans細胞に類似した細胞がクローン性に増殖する疾患であり、骨病変、皮疹、尿崩症などをきたす。

皮膚の抗原提示細胞と疾患

皮膚の抗原提示細胞には、表皮のLangerhans細胞のほかに真皮樹状細胞がある。アレルギー性接触皮膚炎ではハプテンを取り込んだ樹状細胞がT細胞を感作する。乾癬では真皮の樹状細胞が産生するIL-23がTh17細胞を活性化し、IL-17による炎症が病態の中心となる。

POINT

・表皮の抗原提示細胞=Langerhans細胞(有棘層に存在する樹状細胞) ・Langerhans細胞のマーカー:CD1a、S-100、ランゲリン(CD207)、Birbeck顆粒 ・メラノサイトは表皮基底層にあるが抗原提示細胞ではない ・肥満細胞、線維芽細胞、グロムス細胞は真皮の細胞である ・接触皮膚炎(IV型アレルギー)の感作に関与する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。