StudyMed医師国家試験

夜勤は禁止?―妊婦の就業制限は「一律禁止」と「請求で制限」を分けて覚える

第107回医師国家試験 E問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第14問

妊娠中の女性の就業が制限されていないのはどれか。

  1. a.著しく暑熱な場所における業務
  2. b.鉛を吸入するおそれのある業務
  3. c.交替制勤務が常態となっている業務
  4. d.20 kg以上の重量物を継続的に取り扱う業務
  5. e.墜落のおそれのある高さ5 m以上の場所での業務

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊娠中の女性を守る労働法規の問題だ。ポイントは、法律で「そもそも就かせてはいけない業務」と、「本人が請求したら制限される働き方」を区別できるかどうか。まずは就業制限の根拠となる法律から確認しよう。
医学生医学生
労働基準法だったと思います。公衆衛生の講義で母性保護の条文をまとめて習いました。
ドクタードクター
そう。労働基準法第64条の3が、妊産婦を妊娠・出産・哺育に有害な業務に就かせてはならないと定めている。具体的な業務は厚生労働省令の女性労働基準規則に列挙されていて、妊娠中の女性には24の業務が就業禁止とされているんだ。
医学生医学生
24個も覚えるのは大変そうです……。
ドクタードクター
丸暗記しなくても大丈夫。共通点は「母体や胎児に物理的・化学的な危険が明らかな業務」ということ。転倒・墜落、過度の身体的負荷、高温や寒冷、強い振動、有害物質の吸収、と分類して考えると整理しやすいよ。では選択肢を見ていこう。著しく暑熱な場所での業務はどうかな。
医学生医学生
熱中症や脱水が心配なので、禁止されていそうです。
ドクタードクター
正解。高温環境では脱水や体温上昇が起こりやすく、子宮胎盤血流の低下や母体の熱中症につながりうる。同じ理由で、著しく寒冷な場所での業務も禁止されている。次に鉛を吸入するおそれのある業務は?
医学生医学生
鉛は胎盤を通過すると習いました。胎児への影響を考えると、これも禁止ですね。
ドクタードクター
その通り。鉛は胎児に移行して、流産・早産や発育・神経発達への悪影響を及ぼしうる。水銀や有機溶剤なども同じ扱いだ。さらに2012年の規則改正以降、鉛や一部の有機溶剤など特定の化学物質を扱う一定の作業は、妊娠の有無にかかわらずすべての女性労働者で禁止されている。
医学生医学生
重量物と高所作業も、転倒や墜落の危険があるので禁止されていそうです。
ドクタードクター
いい推論だね。重量物は、満18歳以上の女性で継続作業20kg以上、断続作業30kg以上が対象。腹圧の上昇や転倒が流産・早産の誘因になりうる。高さ5m以上で墜落のおそれがある場所での業務も禁止で、足場の組立て・解体も含まれる。妊娠中はお腹が大きくなって重心が変わり、立ちくらみも起こりやすいからね。
医学生医学生
となると、残る交替制勤務が正解ですか。でも夜勤って妊婦さんにはきつそうで、禁止されている気もします。
ドクタードクター
そこが引っかけどころ。交替制勤務は24業務には含まれず、妊娠を理由に一律に禁止されてはいない。だから就業が制限されていないのは交替制勤務だ。ただし労働基準法第66条で、妊産婦が請求した場合は深夜業、時間外労働、休日労働をさせてはならない。つまり「本人の請求があれば制限される」仕組みなんだ。
医学生医学生
臨床実習で病棟を回ったとき、妊娠中の看護師さんが日勤だけにしてもらっていると聞きました。あれは本人が請求していたということですね。
ドクタードクター
まさにそう。第65条では、請求があれば他の軽易な業務へ転換させなければならないとも定められている。ここで関連する母性保護の規定もまとめておこう。産前休業は出産予定日の6週間前から、多胎なら14週間前から、本人の請求で取れる。
医学生医学生
産後はどうでしたっけ。請求しなくても休めるんでしたか。
ドクタードクター
産後8週間は原則として就業させてはならない、強制的な休業だ。ただし産後6週間を過ぎて本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務には就ける。また、生後1年未満の子を育てる女性は、1日2回各30分以上の育児時間を請求できる。
医学生医学生
「産前は請求、産後は強制」と覚えると混同しなさそうです。医師として関わる場面もありますか。
ドクタードクター
大いにある。男女雇用機会均等法により、事業主は妊婦健診の時間確保や、医師の指導に基づく通勤緩和・休憩・勤務時間短縮などの措置を講じる義務がある。医師の指導内容を事業主に伝える手段が「母性健康管理指導事項連絡カード」だ。産婦人科や産業医として、このカードを書く機会は意外と多いんだよ。

まとめ

妊娠中の女性の就業禁止業務は、労働基準法第64条の3を根拠に女性労働基準規則第2条で24業務が列挙されており、著しい暑熱・寒冷、鉛などの有害物、継続20kg以上の重量物、高さ5m以上の墜落危険箇所などが代表例です。一方、交替制勤務や深夜業は一律に禁止されてはおらず、妊産婦が請求した場合に深夜業・時間外・休日労働が制限される(第66条)という位置づけです。あわせて、産前6週(多胎14週)は請求により休業、産後8週は原則就業禁止、軽易業務への転換や育児時間の請求といった母性保護規定も押さえておきましょう。「一律禁止」と「請求による制限」を区別して理解することは、母性健康管理指導事項連絡カードの作成など、医師として妊娠中の就労を支える場面に直結します。

解答・解説

正解はcです

本問は、妊娠中の女性労働者に対する法的な就業制限(母性保護)の知識を問う一般問題である。

就業制限の法的な枠組み

労働基準法第64条の3は、妊娠中および産後1年を経過しない女性(妊産婦)を、重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所での業務など、妊娠・出産・哺育に有害な業務に就かせてはならないと定めている。その具体的な業務の範囲は厚生労働省令である「女性労働基準規則」第2条に列挙されており、妊娠中の女性については24の業務が就業禁止とされている。 これらはいずれも、母体や胎児に対する物理的・化学的な危険(転倒・墜落、過度の身体的負荷、高温・低温、振動、有害物質の吸収など)が明らかな業務である。

解き方

選択肢のうち、暑熱な場所、鉛、20kg以上の重量物の継続的取扱い、5m以上の墜落危険箇所はいずれも24業務に含まれる。一方、交替制勤務はそれ自体が危険有害業務として禁止されているわけではない。ただし、妊産婦が請求した場合には、使用者は時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはならない(労働基準法第66条)。つまり、交替制勤務は「一律に禁止」ではなく「本人の請求により制限される」位置づけである点を区別する。

選択肢考察

  1. ×a.  著しく暑熱な場所における業務

    就業が制限されている。女性労働基準規則第2条に、妊娠中の女性を就かせてはならない業務として「多量の高熱物体を取り扱う業務」「著しく暑熱な場所における業務」が含まれる。高温環境では脱水や体温上昇が起こりやすく、子宮胎盤血流の低下や母体の熱中症を招くおそれがあるためである。同様に「著しく寒冷な場所における業務」も禁止されている。

  2. ×b.  鉛を吸入するおそれのある業務

    就業が制限されている。鉛、水銀、カドミウム、クロム、有機溶剤などの有害物質のガス・蒸気・粉じんを発散する場所での業務は、妊娠中の女性の就業禁止業務に含まれる。鉛は胎盤を通過して胎児に移行し、流産・早産、胎児の発育や神経発達への悪影響を及ぼしうる。なお、平成24年(2012年)の規則改正以降、鉛や一部の有機溶剤など指定された化学物質を扱う作業のうち一定の条件に該当するものは、妊娠の有無にかかわらずすべての女性労働者について就業が禁止されている。

  3. ○c.  交替制勤務が常態となっている業務

    就業が制限されていない業務であり、本問の正解である。交替制勤務(夜勤を含むシフト勤務)は、それ自体が女性労働基準規則の24業務には含まれず、妊娠を理由に一律に禁止されてはいない。実際に病棟の看護師など交替制で働く職種では、妊娠中も勤務を続ける人が多い。ただし、労働基準法第66条により、妊産婦が請求した場合は深夜業(午後10時〜午前5時)、時間外労働、休日労働をさせてはならず、また第65条により請求があれば他の軽易な業務へ転換させなければならない。すなわち「本人の請求があれば制限される」仕組みである。

  4. ×d.  20 kg以上の重量物を継続的に取り扱う業務

    就業が制限されている。満18歳以上の女性について、断続作業では30kg以上、継続作業では20kg以上の重量物を取り扱う業務が禁止の対象となる(年少者ではより低い基準が定められている)。重い物を持つ作業は腹圧の上昇や転倒の危険を伴い、流産・早産の誘因となりうるため、妊娠中の女性の就業が禁止されている。

  5. ×e.  墜落のおそれのある高さ5 m以上の場所での業務

    就業が制限されている。「足場の組立て、解体または変更の業務(地上または床上における補助作業を除く)」とともに「高さが5m以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務」は、妊娠中の女性の就業禁止業務に含まれる。妊娠中は腹部の増大による重心の変化や、めまい・立ちくらみなどによりバランスを崩しやすく、墜落事故の危険が高まるためである。

女性労働基準規則第2条による妊娠中の女性の就業禁止業務(24業務)の主なもの

・一定以上の重量物を取り扱う業務(満18歳以上:断続作業30kg以上、継続作業20kg以上) ・ボイラーの取扱い、溶接の業務 ・クレーン、デリック、揚貨装置の運転の業務 ・運転中の原動機や動力伝導装置の掃除・給油・検査・修理の業務 ・動力による土木建築用機械、船舶荷扱用機械の運転の業務 ・丸のこ盤、帯のこ盤などに木材を送給する業務 ・操車場構内における軌道車両の入換え、連結・解放の業務 ・蒸気・圧縮空気により駆動されるプレス機械、鍛造機械を用いる金属加工の業務 ・岩石・鉱物の破砕機・粉砕機に材料を送給する業務 ・土砂崩壊や落下物のおそれがある場所での業務 ・高さ5m以上で墜落のおそれのある場所での業務、足場の組立て・解体の業務 ・胸高直径35cm以上の立木の伐採の業務 ・鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンなどの有害物のガス・蒸気・粉じんを発散する場所での業務 ・多量の高熱物体を取り扱う業務、著しく暑熱な場所での業務 ・多量の低温物体を取り扱う業務、著しく寒冷な場所での業務 ・異常気圧下における業務 ・さく岩機、鋲打機など身体に著しい振動を与える機械器具を用いる業務

労働基準法による主な母性保護規定

・産前休業(第65条第1項):出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から、本人の請求により休業できる。 ・産後休業(第65条第2項):産後8週間は就業させてはならない。ただし産後6週間を経過し、本人が請求して医師が支障ないと認めた業務には就かせることができる。 ・軽易業務への転換(第65条第3項):妊娠中の女性の請求により、他の軽易な業務に転換させなければならない。 ・妊産婦の労働時間等(第66条):妊産婦の請求により、変形労働時間制の適用制限、時間外・休日労働および深夜業の禁止。 ・育児時間(第67条):生後1年未満の子を育てる女性は、1日2回各30分以上の育児時間を請求できる。

男女雇用機会均等法による母性健康管理

事業主は、妊産婦が保健指導や健康診査を受けるための時間を確保し、医師等の指導事項を守れるよう、通勤緩和や休憩、勤務時間の短縮などの措置を講じなければならない。医師の指導内容を事業主に伝える手段として「母性健康管理指導事項連絡カード」が用いられる。

POINT

・妊娠中の女性の就業禁止業務は女性労働基準規則第2条に24業務が列挙されている(根拠は労働基準法第64条の3) ・代表例:重量物(継続20kg以上/断続30kg以上)、有害物(鉛など)、著しい暑熱・寒冷、異常気圧、強い振動、高さ5m以上の墜落危険箇所 ・交替制勤務・深夜業は一律禁止ではなく、妊産婦の請求により制限される(労働基準法第66条) ・産前6週(多胎14週)は請求により休業、産後8週は原則就業禁止(6週経過後は本人請求+医師の許可で就業可)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。