StudyMed医師国家試験

同じビリルビン値でも答えは違う―光線療法の開始を決める「体重」と「日齢」の物差し

第99回医師国家試験 D問題 第119問

国試問題にチャレンジ

第99回 D問題 第119問

新生児黄疸の光線療法開始基準で重要なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.出生体重
  2. b.日齢
  3. c.活動性
  4. d.哺乳量
  5. e.排便回数

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児黄疸で光線療法を始めるかどうかを、何を軸に判断するかという問題だ。ビリルビンの値そのものだけでなく、「その赤ちゃんにとって、どのくらいの値が危ないのか」を決める因子は何か、という視点で考えてみよう。
医学生医学生
光線療法の目的は、核黄疸を防ぐことでしたよね。
ドクタードクター
その通り。血中で増えすぎた非抱合型、つまり間接ビリルビンは脂溶性で、血液脳関門を越えて大脳基底核などに沈着し、ビリルビン脳症を起こしうる。光線療法は青〜青緑色の光で皮膚の毛細血管内のビリルビンを光異性体に変え、胆汁や尿に排泄しやすくする治療なんだ。では、同じビリルビン値でも危険度が違うのはどんな子だと思う?
医学生医学生
NICUを見学したとき、小さく生まれた赤ちゃんほど早めに光を当てていた印象があります。
ドクタードクター
よく観察していたね。出生体重が小さい、つまり未熟性が強い児ほど血液脳関門が未熟で、血清アルブミンも低い。アルブミンはビリルビンを結合して脳への移行を防ぐ役割があるから、それが少ないとアルブミンに結合していないビリルビンが増えて、低い値でも脳障害が起こりうる。だから低出生体重児ほど開始基準の値は低く設定されているんだ。
医学生医学生
なるほど、体重は未熟性の指標なんですね。もう一つは何でしょう。
ドクタードクター
生まれてからの時間、つまり日齢だ。生理的黄疸は生後2〜3日目に出てきて、4〜5日目ごろにピークを迎える。生後早い時期に高い値の子は、まだ上がる余地があるし、そもそも早く上がること自体が溶血など病的な原因を疑わせる。
医学生医学生
だから日齢が若いほど、基準値が低くなるわけですね。小児科の講義で「生後24時間以内の黄疸は病的」と習ったのもつながりました。
ドクタードクター
まさにそこがつながるポイントだ。わが国で長く使われてきた村田の基準や、経皮ビリルビン値を使う井村の基準も、ビリルビン値を出生体重と日齢で区分した表で判定する仕組みになっている。したがって正解は出生体重と日齢の2つだ。
医学生医学生
でも、活気がないとか哺乳が弱いというのは、核黄疸の症状として大事じゃないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。活気の低下、筋緊張低下、哺乳力低下はビリルビン脳症の初期症状として非常に重要で、見られたら緊急に治療を考える。でも光線療法は、そういう症状が出る前に始めて脳障害を防ぐための治療だ。だから活動性は観察項目であって、開始基準を決める軸ではないんだ。
医学生医学生
哺乳量や排便回数はどうでしょう。母乳が足りないと黄疸が強くなると聞いたことがあります。
ドクタードクター
その知識は正しいよ。哺乳量が少なかったり胎便の排泄が遅れたりすると、腸管内のビリルビンが再吸収される腸肝循環が増えて黄疸は強くなる。ただ、それは黄疸の原因や増悪因子の評価に関わる背景であって、治療開始のラインを決める物差しにはならない。
医学生医学生
「黄疸を強くする因子」と「治療を始める基準の因子」を分けて考えるんですね。
ドクタードクター
そう、そこを区別できれば迷わない。臨床ではさらに、仮死、アシドーシス、低体温、低アルブミン血症、溶血、感染症といったビリルビン脳症の危険因子があれば、一段階低い基準値を使って早めに治療することもある。最近は在胎週数や修正週数に加えて、アルブミンと結合していないアンバウンドビリルビンも評価する基準も使われているよ。
医学生医学生
光線療法でも下がらないときは交換輸血ですよね。
ドクタードクター
その通り。光線療法の基準よりさらに高い値や急速な上昇、ビリルビン脳症の症状があれば交換輸血を考える。交換輸血の基準も、やはり出生体重と日齢で区分されている。それから光線療法の副作用として、不感蒸泄増加による脱水や発熱、下痢、発疹、網膜保護のためのアイマスク、そして直接ビリルビンが高い児に当てると皮膚が青銅色になるブロンズベビー症候群も押さえておこう。
医学生医学生
直接ビリルビンが高いなら、胆道閉鎖症のような別の病気も考えないといけませんね。
ドクタードクター
鋭いね。光線療法は間接ビリルビンに対する治療だから、直接型優位の黄疸や遷延する黄疸を見たら、胆道閉鎖症などの評価を忘れないことが大切だ。

まとめ

新生児黄疸の光線療法は、非抱合型ビリルビンが脳に沈着して起こるビリルビン脳症(核黄疸)を予防するための治療です。開始の判断は血清(または経皮)ビリルビン値を出生体重と日齢で区分した基準に照らして行い、出生体重が小さいほど(未熟でアルブミン結合能が低い)、日齢が若いほど(今後の上昇余地や病的原因の可能性が高い)低い値から治療を始めます。活動性の低下はビリルビン脳症の症状として重要な観察項目であり、哺乳量や排便回数は腸肝循環を介した増悪因子ですが、いずれも開始基準の軸ではありません。仮死や低アルブミン血症、溶血などの危険因子があれば基準を下げて早めに介入し、さらに高値なら交換輸血を検討します。「黄疸を強める因子」と「治療開始の物差し」を区別して理解することが、新生児医療での適切な判断につながります。

解答・解説

正解はa, bです

新生児黄疸の治療の目的は、血中で増えすぎた非抱合型(間接)ビリルビンが血液脳関門を越えて大脳基底核などに沈着し、ビリルビン脳症(核黄疸)を起こすのを防ぐことである。光線療法は、皮膚に青〜青緑色の光(波長およそ460〜490nm)を当てて皮膚の毛細血管内のビリルビンを光異性体に変え、胆汁や尿へ排泄しやすくする治療である。 光線療法を始めるかどうかは、血清総ビリルビン値そのものだけでなく、「その児にとってどの程度のビリルビン値が危険か」という点から判断する。この危険度を左右する主な因子が、出生体重(または在胎週数)と日齢(生後時間)である。 ・出生体重が小さい(未熟性が強い)ほど、血液脳関門が未熟で、アルブミンによるビリルビン結合能も低いため、低いビリルビン値でも脳障害が起こりうる。したがって基準値は低く設定される。 ・日齢が若いほど、ビリルビン値は今後さらに上昇する余地があり、また早期に高値となること自体が病的な溶血などを示唆するため、基準値は低く設定される。 わが国で長く用いられてきた村田の基準や井村の基準も、血清(または経皮)ビリルビン値を出生体重と日齢で区分した表で判定する仕組みである。 よって、光線療法開始基準で重要な因子は出生体重と日齢の2つである。活動性、哺乳量、排便回数は黄疸の程度や増悪因子の評価には関係しても、開始基準を決める軸ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  出生体重

    出生体重は未熟性の指標であり、低出生体重児ほど血液脳関門が未熟で、血清アルブミンも低くビリルビンを結合する力が弱い。そのため脳へ移行しうる非結合型ビリルビンが増えやすく、より低い血清ビリルビン値から光線療法を始める必要がある。基準表は出生体重ごとに区分されており、開始基準を決める主要な因子である。

  2. ○b.  日齢

    生理的黄疸は生後2〜3日目に出現し、4〜5日目ごろにピークを迎える。生後早い時期にビリルビン値が高い児は、その後さらに上昇する可能性が高く、溶血性疾患などの病的な原因も疑われる。このため基準値は日齢が若いほど低く、日齢が進むにつれて高く設定されている。日齢は出生体重と並ぶ開始基準の軸である。

  3. ×c.  活動性

    活気の低下や筋緊張低下、哺乳力低下は、ビリルビン脳症の初期症状(第1期)として重要な観察項目であり、見られれば緊急の治療を考える。しかし、光線療法を開始するかどうかを定める基準の因子ではない。症状が出る前に治療を始めることが光線療法の目的である。

  4. ×d.  哺乳量

    哺乳量が少ないと腸管の動きが乏しくなり、腸管内のビリルビンが再吸収される腸肝循環が増えるため、黄疸は増強しやすい(母乳摂取不足に伴う黄疸)。したがって黄疸の原因や増悪因子の評価には関係するが、光線療法の開始基準そのものを決める因子ではない。

  5. ×e.  排便回数

    胎便の排泄が遅れると腸肝循環を介してビリルビンが再吸収され、黄疸が強くなることがある。しかし排便回数は黄疸の増悪に関わる背景因子にとどまり、光線療法の開始基準には用いられない。

新生児黄疸の分類

・生理的黄疸: 生後2〜3日に出現し、4〜5日ごろにピーク、正期産児では1〜2週間で消える。胎児赤血球の寿命が短いこと、赤血球量が多いこと、肝臓でのグルクロン酸抱合能(UDP-グルクロン酸転移酵素)が未熟であること、腸肝循環が盛んであることによる。 ・病的黄疸: 生後24時間以内に出現する早発黄疸、血清ビリルビン値が異常に高い黄疸、2週間以上続く遷延性黄疸、直接ビリルビンが高い黄疸(胆道閉鎖症などを疑う)など。原因として血液型不適合による溶血性疾患、頭血腫などの閉鎖腔出血、多血症、感染症などがある。

光線療法の開始基準の考え方

血清総ビリルビン値を、出生体重(または在胎週数)と日齢ごとに定められた基準値と照らし合わせて判定する。わが国では出生体重と日齢で区分した村田の基準や、経皮ビリルビン値を用いた井村の基準が広く用いられてきた。近年は、在胎週数や修正週数、日齢に加え、アルブミンと結合していない非結合型(アンバウンド)ビリルビン値も評価する神戸大学の基準も用いられている。 さらに、仮死、アシドーシス、低体温、低アルブミン血症、溶血、感染症などビリルビン脳症の危険因子があれば、1段階低い基準値を用いるなど、より早めに治療を始める。

交換輸血

光線療法の基準値よりさらに高い値や、急速な上昇、ビリルビン脳症の症状がみられる場合は交換輸血を行う。交換輸血の基準も同様に出生体重と日齢で区分されている。

光線療法の主な副作用

発熱、不感蒸泄の増加による脱水、下痢、発疹、網膜障害の予防のためのアイマスクの必要性、直接ビリルビン高値の児に行うと皮膚が青銅色になるブロンズベビー症候群などがある。

POINT

・光線療法の開始基準は、血清総ビリルビン値を出生体重(在胎週数)と日齢で判定する。 ・出生体重が小さいほど、日齢が若いほど、低いビリルビン値で治療を開始する。 ・仮死、アシドーシス、低アルブミン血症、溶血などの危険因子があれば基準を下げる。 ・治療の目的はビリルビン脳症(核黄疸)の予防である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。