真っ白な便は「胆汁が来ていない」サイン―便色カードで見つける胆道閉鎖症
第116回医師国家試験 F問題 第6問
国試問題にチャレンジ
母子健康手帳の便色カードを下に示す。 生後1か月時に便色が1番を呈した場合考えられる疾患はどれか。

- a.母乳性黄疸
- b.胆道閉鎖症
- c.乳糖不耐症
- d.ビタミンK欠乏症
- e.新生児乳児消化管アレルギー
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
便の色は胆汁中のビリルビンが腸内でステルコビリンなどに変化することで生じるため、灰白色便は胆汁が腸管に届いていない閉塞性胆汁うっ滞を意味し、乳児ではまず胆道閉鎖症を考えます。胆道閉鎖症は直接ビリルビン優位の遷延性黄疸、灰白色便、濃黄色尿、肝腫大を呈し、胆汁うっ滞に伴うビタミンK吸収障害から頭蓋内出血で見つかることもあります。母乳性黄疸は間接ビリルビン優位で便色は正常であり、乳糖不耐症や消化管アレルギーも便色を白くはしません。治療は葛西手術で、生後60日以内の手術が目標とされるため、母子健康手帳の便色カードで1〜3番に近い便を見つけたら速やかに受診することが重要です。「便の色の由来」から病態を逆算する考え方は、乳児黄疸の鑑別全体に通じる基本となります。
解答・解説
正解はbです
便色カードとは
母子健康手帳には、乳児の便の色を7段階の色見本と照らし合わせる「便色カード」が綴じ込まれている。番号が小さいほど色が薄く、1〜3番は淡黄色〜灰白色の異常便色、4〜7番は黄色〜緑色の正常便色に相当する。1番は最も白に近い灰白色である。
便の色が決まるしくみ
便の黄色〜緑色〜茶色は、胆汁中に含まれるビリルビン(ヘモグロビンが分解されてできる黄色い色素)とその代謝産物に由来する。肝臓で抱合(グルクロン酸抱合)を受けた直接ビリルビンは胆汁として胆管から十二指腸へ排泄され、腸内でステルコビリン(ステルコビリノゲンが酸化されたもの)などに変化して便に色をつける。したがって、胆汁が腸管に届かなくなると便は色を失い、灰白色(白っぽいクリーム色)になる。
考え方
生後1か月で灰白色便がみられるということは、「胆汁が腸に流れていない=閉塞性の胆汁うっ滞がある」ことを意味する。乳児期にこの状態をきたす代表的な疾患が胆道閉鎖症である。選択肢のうち、胆汁の腸管への排泄が途絶える病態を持つものを選べばよい。黄疸があるかどうかではなく、胆汁が腸に届いているかどうかが判断の軸になる。
選択肢考察
- ×a. 母乳性黄疸
母乳中の成分(β-グルクロニダーゼ活性による腸肝循環の亢進などが想定されている)により、間接(非抱合型)ビリルビン優位の黄疸が生後1〜2か月ほど遷延する病態である。肝臓での抱合と胆汁排泄そのものは保たれているため、胆汁は腸管へ流れ、便は正常な黄色〜緑色を示す。灰白色便は生じない。全身状態や体重増加が良好であることも特徴である。
- ○b. 胆道閉鎖症
胆道閉鎖症は、肝外胆管が炎症性に破壊・閉塞し、胆汁が肝臓から腸管へ排泄されなくなる疾患である。腸管にビリルビンが届かないため便の着色が失われ、便色カード1〜3番に相当する淡黄色〜灰白色便を呈する。あわせて直接ビリルビン優位の遷延性黄疸、濃い黄色(濃褐色)の尿、肝腫大がみられる。生後1か月の灰白色便という所見に最もよく合致する。
- ×c. 乳糖不耐症
小腸刷子縁の乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性低下により乳糖を分解・吸収できず、未消化の乳糖が大腸で浸透圧性下痢や腸内細菌による発酵(酸臭のある水様便、腹部膨満、ガス)を引き起こす。重症例では体重増加不良をきたす。胆汁の排泄には影響しないため、便の色調は保たれ、灰白色便とはならない。
- ×d. ビタミンK欠乏症
ビタミンK依存性凝固因子(II、VII、IX、X)が不足し、出血傾向をきたす。新生児・乳児では母乳栄養児(母乳中のビタミンK含量が少ない)に起こりやすく、生後1〜2か月ごろの頭蓋内出血が問題となるため、ビタミンK2シロップの予防投与が行われる。ビタミンK欠乏症そのものは便色を白くしない。ただし、ビタミンKは脂溶性で吸収に胆汁を必要とするため、胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞は二次的にビタミンK欠乏を招き、頭蓋内出血の危険を高める。原因と結果の関係を取り違えないこと。
- ×e. 新生児乳児消化管アレルギー
主に牛乳由来の人工乳(ミルク)などに含まれるタンパク質に対し、IgEを介さない細胞性の機序で消化管に炎症が起こる疾患である。嘔吐、下痢、血便、腹部膨満、体重増加不良などを呈する。胆汁の排泄は障害されないため、灰白色便はみられない。
胆道閉鎖症の概要
・肝外胆管が閉塞し、放置すると胆汁うっ滞から胆汁性肝硬変へ進行する。わが国ではおよそ1万人に1人の頻度で発生し、女児にやや多い。 ・症状は遷延性黄疸(直接ビリルビン優位)、灰白色便、濃黄色尿、肝腫大。胆汁うっ滞によりビタミンKの吸収が障害され、頭蓋内出血で発見されることもある。 ・検査では血清直接ビリルビンやγ-GTPの上昇、腹部超音波でのtriangular cord sign(肝門部の索状物)や胆嚢の萎縮・欠如、十二指腸液検査での胆汁欠如、肝胆道シンチグラフィでの腸管への排泄欠如などが手がかりになる。確定診断は術中胆道造影による。 ・治療は肝門部の閉塞した索状組織を切除し、空腸を肝門部に吻合する肝門部空腸吻合術(葛西手術)である。手術時期が早いほど減黄(黄疸消失)が得られやすく、生後60日以内の手術が目標とされる。減黄が得られない例や術後に肝硬変が進行した例では肝移植が必要となる。
便色カードの意義
胆道閉鎖症の早期発見のため、2012年度から母子健康手帳に便色カードが全国一律で掲載されている。1〜3番に近い色の便がみられた場合は、1か月健診を待たずに速やかに医療機関を受診するよう保護者に指導されている。
新生児・乳児の黄疸の鑑別の視点
・間接ビリルビン優位:生理的黄疸、母乳性黄疸、溶血性疾患(血液型不適合など)、甲状腺機能低下症など。便色は正常。 ・直接ビリルビン優位:胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、新生児肝炎、Alagille症候群など。便色が淡くなることがあり、特に胆道閉鎖症で顕著となる。
POINT
・便色カードの1〜3番(淡黄色〜灰白色)は異常、4〜7番は正常。 ・灰白色便=胆汁が腸管に届いていない状態であり、乳児では胆道閉鎖症をまず考える。 ・胆道閉鎖症は直接ビリルビン優位の黄疸、灰白色便、濃黄色尿、肝腫大を呈し、早期の葛西手術(生後60日以内が目標)が予後を左右する。 ・母乳性黄疸は間接ビリルビン優位で便色は正常。 ・胆汁うっ滞はビタミンK吸収障害を招き、頭蓋内出血の原因となりうる。
