肝臓につながる「4本の管」―生体肝移植で胆囊管をつながない理由
第99回医師国家試験 D問題 第109問
国試問題にチャレンジ
生体肝移植で再建しないのはどれか。
- a.肝動脈
- b.肝静脈
- c.門脈
- d.胆管
- e.胆囊管
対話形式の解説
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ドクターまとめ
肝移植では、グラフトを機能させるために肝臓に直接出入りする4本の管、すなわち流出路の肝静脈、流入路の門脈と肝動脈、胆汁の排出路である胆管を再建します。胆囊はドナー側でグラフトに含めず、レシピエント側でも全肝摘出時に摘出されるため、胆囊管は再建しません。一般的な再建順は肝静脈、門脈、血流再開、肝動脈、胆管で、細い肝動脈は顕微鏡下に吻合され、胆管は胆管-胆管吻合またはRoux-en-Yによる胆管空腸吻合で再建します。肝動脈血栓症や胆管合併症は重要な術後合併症であり、胆管の血流が肝動脈に依存することと合わせて理解しておくと役立ちます。「肝臓に出入りする管は何か」という解剖の基本に立ち返ることが、移植手術の理解の近道になります。
解答・解説
正解はeです
肝移植では、移植する肝臓(グラフト)をレシピエント(移植を受ける人)の体内で機能させるために、肝臓に出入りする管をすべてつなぎ直す必要がある。肝臓に出入りする管は、流入路である門脈と肝動脈、流出路である肝静脈、そして肝臓で作られた胆汁を排出する胆管の4つである。したがって、肝移植で再建する脈管はこの4つであり、これを押さえれば正解が導ける。 生体肝移植では、健康なドナー(臓器提供者)の肝臓の一部(右葉、左葉、外側区域など)を切除してグラフトとする。胆囊は肝臓の下面に付着しているが、グラフト採取時にドナー側で胆囊摘出を行い、グラフトには含めない。またレシピエント側でも、病気の肝臓を摘出(全肝摘出)する際に胆囊も一緒に摘出される。したがって、移植後の体内には胆囊が存在せず、胆囊と胆管をつなぐ胆囊管を再建する意味はない。 一般的な再建の順序は、肝静脈 → 門脈 → (血流再開)→ 肝動脈 → 胆管 である。まず流出路と門脈をつないでグラフトに血流を再開させ、温阻血・冷阻血時間を短くすることが優先される。
選択肢考察
- ×a. 肝動脈
再建する。肝動脈は肝臓への血流の約25〜30%を担い、酸素供給の多くを担う流入路である。特に胆管の血流は肝動脈にほぼ依存するため、肝動脈の再建がうまくいかない(肝動脈血栓症など)と、胆管の壊死・胆汁漏・胆管狭窄やグラフト不全を招く。生体肝移植のグラフトの動脈は直径2〜3mm程度と細いため、手術用顕微鏡を用いた微小血管吻合で再建されることが多い。
- ×b. 肝静脈
再建する。肝静脈は肝臓から下大静脈へ血液を戻す流出路である。流出路が確保されないとグラフトがうっ血し、肝機能障害をきたすため、通常は最初に吻合される。右葉グラフトでは右肝静脈に加え、必要に応じて中肝静脈の枝や下右肝静脈も再建し、うっ血領域が生じないよう工夫される。
- ×c. 門脈
再建する。門脈は腸管・脾臓などからの静脈血を肝臓へ運ぶ流入路で、肝血流の約70〜75%を占める。門脈血には栄養素や肝再生を促す因子が含まれ、グラフトの機能と再生に不可欠である。肝静脈に続いて吻合され、門脈吻合の完了後に血流を再開するのが一般的である。
- ×d. 胆管
再建する。胆管はグラフトで産生された胆汁を腸管へ流すための経路であり、再建しなければ胆汁を排出できない。再建法には、グラフトの胆管とレシピエントの胆管を直接つなぐ胆管-胆管吻合(duct-to-duct吻合)と、Roux-en-Y法で挙上した空腸とつなぐ胆管空腸吻合がある。胆道閉鎖症の小児例やレシピエント胆管が使えない場合には胆管空腸吻合が選ばれる。胆管合併症(胆汁漏・吻合部狭窄)は生体肝移植の主要な術後合併症の一つである。
- ○e. 胆囊管
再建しない。胆囊管は胆囊と総胆管(総肝管との合流部)をつなぐ細い管で、胆汁の胆囊への出入りの通り道にすぎず、肝臓そのものに直接出入りする脈管ではない。生体肝移植ではドナーのグラフト採取時に胆囊を摘出してグラフトに含めず、レシピエントも全肝摘出の際に胆囊が摘出される。移植後に胆囊は存在しないため、胆囊管を再建する必要も意義もない。
肝臓に出入りする脈管
流入路: 門脈(肝血流の約70〜75%)、肝動脈(約25〜30%) 流出路: 肝静脈(右・中・左肝静脈 → 下大静脈) 胆汁の排出路: 胆管(右・左肝管 → 総肝管 → 胆囊管と合流して総胆管 → 十二指腸乳頭) 門脈・肝動脈・胆管の3つは肝門部で肝臓に出入りし、グリソン鞘として一緒に走行する。肝静脈は肝臓の頭側(後上面)から下大静脈に流入する。
生体肝移植の概要
健康なドナーの肝臓の一部を切除してレシピエントに移植する方法である。日本では脳死ドナーが少ないため、肝移植の多くを生体肝移植が占めてきた。肝臓は再生能力が高く、ドナーの残肝もレシピエントのグラフトも数か月でほぼ元の大きさ近くまで回復する。 成人間では右葉または左葉、小児ではより小さい外側区域がよく用いられる。グラフトが小さすぎると過小グラフト症候群(small-for-size syndrome)を起こすため、グラフト重量がレシピエント標準肝容積の一定以上(おおむね35〜40%以上)となるよう評価する。
主な適応疾患
小児: 胆道閉鎖症(最多)、代謝性肝疾患、急性肝不全など 成人: 肝硬変(ウイルス性・アルコール性・代謝機能障害関連など)、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、劇症肝炎(急性肝不全)、ミラノ基準内の肝細胞癌など
主な術後合併症
血管合併症(肝動脈血栓症、門脈血栓症、肝静脈流出障害)、胆管合併症(胆汁漏、吻合部狭窄)、拒絶反応、感染症(免疫抑制に伴うサイトメガロウイルス感染など)。
POINT
・肝移植で再建するのは、肝臓に直接出入りする4本の脈管: 肝静脈・門脈・肝動脈・胆管 ・胆囊はグラフトに含めず、レシピエントでも全肝摘出時に摘出されるため、胆囊管は再建しない ・一般的な再建順: 肝静脈 → 門脈 → 血流再開 → 肝動脈(顕微鏡下吻合)→ 胆管 ・胆管再建は胆管-胆管吻合または胆管空腸吻合(Roux-en-Y)
