StudyMed医師国家試験

肺癌は「組織型」で顔が変わる―頻度・喫煙・発生部位・治療反応性を一枚の表に

第120回医師国家試験 E問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第120回 E問題 第9問

原発性肺癌で正しいのはどれか。

  1. a.大細胞癌の頻度が最も高い。
  2. b.小細胞癌は化学療法の感受性が高い。
  3. c.扁平上皮癌は喫煙者には発生しにくい。
  4. d.腺癌は喀痰細胞診で早期発見されやすい。
  5. e.腺癌は治療標的となる遺伝子異常に乏しい。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は原発性肺癌の組織型ごとの特徴を問う知識問題だ。肺癌はひとくくりにされがちだけれど、組織型によって頻度、喫煙との関係、できやすい場所、見つかりやすい検査、効く治療がまるで違う。この「縦軸=組織型、横軸=特徴」の表を頭の中に作れているかが試されているよ。まず大枠として、肺癌はどう分類されるかな。
医学生医学生
小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分けて、非小細胞のほうに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌が入る、と呼吸器内科の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。この2分法は治療方針が大きく違うから生まれたものなんだ。では頻度から確認しよう。日本で一番多い組織型は何だと思う?
医学生医学生
腺癌ですよね。大細胞癌は名前のインパクトはありますけど、病理実習で見た記憶もほとんどないです。
ドクタードクター
正解。腺癌が半数以上を占め、扁平上皮癌が2〜3割、小細胞癌が1割程度、大細胞癌は数%とまれだ。大細胞癌は、腺癌・扁平上皮癌・小細胞癌のどの特徴も示さない未分化な非小細胞癌として、いわば除外的に診断される組織型なんだよ。だから「大細胞癌が最多」は誤りだね。
医学生医学生
次は喫煙ですね。扁平上皮癌が喫煙者に起こりにくい、というのは逆な気がします。
ドクタードクター
その感覚で合っている。扁平上皮癌は小細胞癌と並んで喫煙との関連が特に強く、患者の大半は喫煙者だ。たばこの発癌物質にさらされ続けた太い気管支の上皮が扁平上皮化生を起こし、異形成を経て癌化する、という流れで理解すると覚えやすい。だから肺門部、つまり中枢に多いんだ。
医学生医学生
なるほど、中枢にできるから痰に癌細胞が出やすい。ということは、喀痰細胞診で見つかりやすいのは腺癌ではなく扁平上皮癌ですか。
ドクタードクター
そこまでつながれば完璧だ。腺癌は肺野の末梢にできることが多く、剥がれた癌細胞は痰に混じりにくい。だから腺癌の発見には胸部X線やCTといった画像検査が中心で、CTでは淡いすりガラス影として見つかることもある。肺癌検診で、喫煙量の多い人に胸部X線に加えて喀痰細胞診を行うのは、中枢型の扁平上皮癌を拾うためなんだ。
医学生医学生
腺癌は遺伝子異常に乏しい、というのも違いますよね。病院実習で、外来の腺癌の患者さんが内服の分子標的薬を飲んでいました。
ドクタードクター
まさにそれ。腺癌はドライバー遺伝子異常が見つかりやすい組織型の代表だ。EGFR遺伝子変異は日本人の腺癌の約半数にみられ、ほかにもALK融合遺伝子、ROS1、BRAF、MET、RET、KRASなど、それぞれ対応する分子標的薬がある。だから進行期の非扁平上皮非小細胞肺癌では、治療前に複数の遺伝子をまとめて調べるのが推奨されている。EGFR変異は非喫煙者、女性、アジア人に多いことも押さえておこう。
医学生医学生
残るのが小細胞癌です。悪性度が高くて予後が悪いイメージなので、化学療法が効きやすいというのは少し意外でした。
ドクタードクター
そこが多くの人がつまずくポイントだね。小細胞癌は神経内分泌系の性質をもち、細胞分裂が盛んで増殖が速い。抗癌剤や放射線は分裂中の細胞を障害するから、増殖の速い癌ほどよく効くんだ。実際、プラチナ製剤とエトポシドの併用で初回は大きく縮小することが多い。だから「化学療法の感受性が高い」が正解になる。
医学生医学生
よく効くのに予後が悪いのは、早く転移して再発しやすいから、ということですか。
ドクタードクター
その理解でいい。診断時点ですでに遠隔転移していることが多く、効いても再発しやすい。だから小細胞癌は手術の対象がごく早期に限られ、化学療法が治療の中心になる。限局型では胸部放射線療法を同時に行い、よく効いた例では予防的全脳照射を考える。進展型では化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を上乗せするのが今の標準だ。
医学生医学生
小細胞癌といえば、SIADHやLambert-Eaton筋無力症候群みたいな腫瘍随伴症候群もCBTでよく出ました。
ドクタードクター
いいところを思い出したね。小細胞癌はSIADH、異所性ACTH産生、Lambert-Eatonを、扁平上皮癌はPTHrPによる高Ca血症や空洞形成を、とセットで覚えておくと臨床でも役立つ。腫瘍マーカーも、腺癌はCEA、扁平上皮癌はSCCやCYFRA、小細胞癌はProGRPやNSEと組織型で使い分ける。臨床では、低Na血症や高Ca血症の精査から肺癌が見つかることもあるから、電解質異常を見たら肺の画像を確認する習慣をつけておきたい。
医学生医学生
頻度、喫煙、部位、検出法、治療反応性、遺伝子異常、随伴症候群――全部を同じ表の横軸で整理すれば、どの選択肢にも対応できそうです。
ドクタードクター
その通り。一つの組織型を覚えるたびに、ほかの組織型との対比で記憶すると忘れにくいよ。

まとめ

原発性肺癌は小細胞肺癌と非小細胞肺癌(腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌など)に大別され、日本で最も多いのは末梢に好発する腺癌で、大細胞癌は数%とまれです。扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙との関連が強く中枢に多いため、喀痰細胞診で見つかりやすいのは中枢型の扁平上皮癌であり、末梢の腺癌は画像検査で発見されます。腺癌にはEGFR変異やALK融合遺伝子など分子標的薬の対象となるドライバー遺伝子異常が多く、治療前の遺伝子検査が重要です。小細胞癌は増殖が速いため化学療法・放射線療法の感受性が高い一方、早期転移と再発により予後は不良で、SIADHやLambert-Eaton筋無力症候群などの腫瘍随伴症候群も特徴です。組織型ごとの特徴を対比して整理しておくことが、検診・診断・治療選択のいずれの場面でも判断の土台になります。

解答・解説

正解はbです

原発性肺癌の組織型ごとの特徴を問う基本問題である。 肺癌は治療方針の違いから、大きく小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC)と非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC)に分けられる。NSCLCには腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌などが含まれる。組織型ごとに、頻度、喫煙との関係、好発部位(中枢か末梢か)、発見されやすい検査、治療への反応性、標的となる遺伝子異常が異なるため、これらを表のように整理しておくと各選択肢を判断できる。 本問では、頻度が最多なのは腺癌であること、扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙との関連が強く肺門部(中枢)に多いこと、腺癌は末梢に多いこと、腺癌には分子標的薬の対象となるドライバー遺伝子異常が多いこと、小細胞癌は増殖が速く化学療法・放射線療法がよく効くことを押さえていれば、正解を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  大細胞癌の頻度が最も高い。

    誤り。日本の原発性肺癌で最も多い組織型は腺癌で、全体の約半数以上を占める。続いて扁平上皮癌が約2〜3割、小細胞癌が1割程度である。大細胞癌は数%程度とまれである。大細胞癌は、腺癌・扁平上皮癌・小細胞癌のどの特徴も示さない未分化な非小細胞癌として、除外的に診断される組織型である。

  2. ○b.  小細胞癌は化学療法の感受性が高い。

    正しい。小細胞癌は神経内分泌系の性質をもつ悪性度の高い癌で、細胞分裂が盛んで増殖が速い。そのため、細胞分裂中の細胞を障害する抗癌剤や放射線がよく効き、初回治療で腫瘍が大きく縮小することが多い。標準治療はプラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)とエトポシドなどの併用化学療法であり、限局型では胸部放射線療法を同時に行い、進展型では免疫チェックポイント阻害薬を上乗せする。ただし、早期から遠隔転移しやすく、治療が効いても再発しやすいため、全体としての予後は不良である。

  3. ×c.  扁平上皮癌は喫煙者には発生しにくい。

    誤り。扁平上皮癌は小細胞癌とともに喫煙との関連が特に強い組織型であり、患者の大半は喫煙者である。たばこの煙に含まれる発癌物質に長期間さらされた太い気管支の上皮が扁平上皮化生を起こし、異形成を経て癌化すると考えられている。そのため肺門部(中枢)の気管支に発生しやすい。

  4. ×d.  腺癌は喀痰細胞診で早期発見されやすい。

    誤り。腺癌は肺野の末梢に発生することが多い。末梢の病変から剥がれた癌細胞は痰に混じりにくいため、喀痰細胞診で早期に見つかることは少ない。腺癌の発見には胸部X線や胸部CTといった画像検査が有用で、CTでは淡いすりガラス影として見つかることもある。喀痰細胞診が役立つのは、太い気管支に発生して痰に癌細胞が出やすい中枢型の扁平上皮癌である。肺癌検診で、喫煙量の多い人に胸部X線に加えて喀痰細胞診を行うのはこのためである。

  5. ×e.  腺癌は治療標的となる遺伝子異常に乏しい。

    誤り。腺癌は、癌の発生と増殖を直接担うドライバー遺伝子異常が見つかりやすい組織型である。代表例はEGFR遺伝子変異(日本人の腺癌では約半数)で、そのほかにALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異、RET融合遺伝子、KRAS G12C変異、HER2変異、NTRK融合遺伝子などがある。いずれも対応する分子標的薬があるため、進行期の非扁平上皮非小細胞肺癌では、治療開始前に複数の遺伝子を同時に調べる検査が推奨されている。EGFR変異は非喫煙者・女性・アジア人に多い。

原発性肺癌の組織型の整理

・腺癌:最多(半数以上)。末梢に多い。非喫煙者や女性にも発生する。ドライバー遺伝子異常(EGFR、ALKなど)が多く、分子標的薬の対象になりやすい。腫瘍マーカーはCEA。 ・扁平上皮癌:約2〜3割。喫煙との関連が強い。中枢(肺門部)に多いが、末梢にも発生する。喀痰細胞診で見つかりやすい。病変の中心が壊死して空洞を作ることがある。PTHrP(副甲状腺ホルモン関連蛋白)による高Ca血症をきたすことがある。腫瘍マーカーはSCC、CYFRA。 ・小細胞癌:1割程度。喫煙との関連が強い。中枢に多い。増殖が速く、早期から転移する。化学療法・放射線療法の感受性が高い。SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)、異所性ACTH産生、Lambert-Eaton筋無力症候群などの腫瘍随伴症候群を伴うことがある。腫瘍マーカーはProGRP、NSE。 ・大細胞癌:数%とまれ。末梢に多く、増殖が速い。

治療の大枠

・非小細胞肺癌:病期が早ければ手術が中心となる。進行期では、ドライバー遺伝子異常があればその分子標的薬を使う。異常がなければ、PD-L1の発現状況などを参考に、免疫チェックポイント阻害薬や化学療法を使う。 ・小細胞肺癌:手術の対象になるのはごく早期に限られ、化学療法(プラチナ製剤+エトポシドなど)が治療の中心である。限局型では胸部放射線療法を併用し、治療がよく効いた例には脳転移予防のための予防的全脳照射を考慮する。進展型では化学療法に免疫チェックポイント阻害薬を加える。

POINT

・原発性肺癌で最も多いのは腺癌である(大細胞癌はまれ)。 ・小細胞癌は化学療法・放射線療法の感受性が高いが、再発しやすく予後は不良である。 ・扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙との関連が強く、中枢に多い。 ・喀痰細胞診で見つかりやすいのは中枢型の扁平上皮癌であり、末梢に多い腺癌は画像検査で見つける。 ・腺癌にはEGFR、ALKなどの治療標的となるドライバー遺伝子異常が多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。