赤い目が決め手―川崎病と猩紅熱を分ける「共通しない」症状
第120回医師国家試験 D問題 第7問
国試問題にチャレンジ
川崎病に認め,猩紅熱に認めない症状はどれか。
- a.皮疹
- b.イチゴ舌
- c.膜様落屑
- d.頸部リンパ節腫大
- e.両側眼球結膜充血
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
川崎病と猩紅熱はいずれも小児にみられ、発熱、発疹、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、回復期の落屑など多くの症状が共通するため、臨床的に鑑別が問題となります。両側眼球結膜充血は川崎病の主要症状の一つで、眼脂を伴わず輪部が充血しにくいのが特徴であり、猩紅熱では通常みられません。猩紅熱ではサンドペーパー様発疹、Pastia線、口囲蒼白、溶連菌検査陽性が手がかりとなり、抗菌薬で速やかに解熱する点も川崎病と異なります。川崎病はIVIGとアスピリンで冠動脈瘤を予防し、猩紅熱はペニシリンの完遂でリウマチ熱を防ぐなど、治療と合併症も大きく異なります。共通する症状を整理したうえで特異的な所見を見抜く姿勢は、小児の発熱・発疹性疾患の診療全般に役立ちます。
解答・解説
正解はeです
川崎病と猩紅熱は、どちらも乳幼児から小児にみられる。発熱、発疹、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、回復期の落屑といった共通の症状が多く、臨床的に鑑別が問題になる組合せである。 川崎病は原因不明の全身性血管炎であり、主に4歳以下の乳幼児に起こる。最も重要な合併症は冠動脈瘤である。診断は「川崎病診断の手引き」の6つの主要症状に基づいて行う。6つの主要症状は、①発熱、②両側眼球結膜の充血、③口唇の紅潮・イチゴ舌、④発疹(BCG接種痕の発赤を含む)、⑤四肢末端の変化(急性期の手足の硬性浮腫・紅斑、回復期の指先からの膜様落屑)、⑥急性期の非化膿性頸部リンパ節腫脹である。 猩紅熱は、A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)が産生する発赤毒素(発熱毒素)によって起こる発疹性疾患である。主に学童期の小児にみられる。咽頭炎・扁桃炎に続いて、全身にびまん性の細かい紅色の発疹が広がり、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、口囲蒼白、回復期の落屑などがみられる。 本問では、5つの選択肢のうち4つが両者に共通する症状である。「川崎病の主要症状の中で、猩紅熱には通常みられないもの」を探せばよい。それが両側の眼球結膜充血である。
選択肢考察
- ×a. 皮疹
誤り。両者に共通してみられる。川崎病の発疹は形が一定しない不定形発疹である。麻疹様、多形紅斑様、蕁麻疹様などさまざまな形をとり、水疱や痂皮はつくらない。BCG接種部位が赤く腫れることも特徴的である。猩紅熱では、頸部・腋窩・鼠径部から全身に広がる細かい紅色丘疹がみられ、触るとサンドペーパーのようにざらざらする。皮膚のしわ(肘窩など)に沿って線状の点状出血(Pastia線)がみられることもある。発疹の性状は異なるが、「皮疹がある」という点だけでは両者を区別できない。
- ×b. イチゴ舌
誤り。両者に共通してみられる。イチゴ舌とは、舌の乳頭が赤く腫れて、イチゴの表面のように見える状態である。川崎病では、口唇の紅潮・亀裂とともに主要症状の一つに含まれる。猩紅熱でも典型的な所見である。初期には白い舌苔の間から赤い乳頭がのぞく白イチゴ舌がみられ、数日後に舌苔がはがれて赤イチゴ舌となる。
- ×c. 膜様落屑
誤り。両者に共通してみられる。川崎病では、発症して10日目前後の回復期に、指趾の爪の周りから膜状に皮がむける(膜様落屑)。猩紅熱でも、発疹が消えた後の発症1〜2週ごろに落屑が起こる。体幹では細かいぬか状の落屑となり、手掌や足底では膜状の大きな落屑となる。したがって膜様落屑だけでは両者を鑑別できない。
- ×d. 頸部リンパ節腫大
誤り。両者に共通してみられる。川崎病では、急性期に片側の頸部リンパ節が腫れることが多く、化膿しない(非化膿性)のが特徴である。主要症状の中で出現頻度が最も低い症状でもある。猩紅熱では、溶連菌による咽頭・扁桃の炎症に伴い、前頸部のリンパ節が腫れて圧痛を伴う。
- ○e. 両側眼球結膜充血
正しい。両側眼球結膜の充血は川崎病の主要症状の一つで、発症早期から高い頻度でみられる。眼脂を伴わない(非滲出性の)充血であり、白目(眼球結膜)の血管が浮き出るように赤くなる。黒目の周りの縁(輪部)は充血しにくい。一方、猩紅熱は溶連菌の毒素による咽頭炎と発疹が主な病態で、眼球結膜の充血は典型的な所見ではない。したがって、本選択肢が「川崎病に認め、猩紅熱に認めない」症状に当たる。
川崎病の診断(川崎病診断の手引き 改訂第6版)
主要症状 ①発熱(現在の基準では、日数は問わない) ②両側眼球結膜の充血 ③口唇・口腔所見:口唇の紅潮、イチゴ舌、口腔咽頭粘膜のびまん性の発赤 ④発疹(BCG接種痕の発赤を含む) ⑤四肢末端の変化:急性期は手足の硬性浮腫、手掌・足底または指趾先端の紅斑。回復期は指先からの膜様落屑。 ⑥急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹 6つのうち5つ以上で川崎病と診断する。4つ以下でも、冠動脈病変など他の所見を考えあわせて、不全型として診断されることがある。 治療:免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)とアスピリンが基本である。目的は冠動脈瘤の形成を防ぐことにある。
猩紅熱
・病原体:A群β溶血性レンサ球菌(発赤毒素を産生する株) ・好発:学童期(3〜10歳前後) ・症状:発熱、咽頭痛・扁桃炎、全身のびまん性の細かい紅色丘疹(サンドペーパー様)、口囲蒼白、Pastia線、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、回復期の落屑 ・診断:咽頭の迅速抗原検査や培養、ASO(抗ストレプトリジンO抗体)の上昇 ・治療:ペニシリン系抗菌薬を10日間内服する。リウマチ熱を防ぐため、症状が消えても最後まで服用する。急性糸球体腎炎の合併にも注意する。
両者の鑑別点
・眼球結膜充血:川崎病ではみられ、猩紅熱では通常みられない。 ・BCG接種痕の発赤:川崎病に特徴的である。 ・口囲蒼白、Pastia線、咽頭の溶連菌検査陽性:猩紅熱に特徴的である。 ・抗菌薬への反応:猩紅熱は速やかに解熱する。川崎病は反応しない。 ・好発年齢:川崎病は4歳以下、猩紅熱は学童期に多い。
POINT
・川崎病の主要症状:発熱、両側眼球結膜充血、口唇・口腔所見(イチゴ舌)、発疹、四肢末端の変化(回復期の膜様落屑)、非化膿性頸部リンパ節腫脹 ・猩紅熱と共通する症状:発疹、イチゴ舌、膜様落屑、頸部リンパ節腫大 ・川崎病に特有で、猩紅熱にない症状:両側眼球結膜充血(眼脂を伴わない) ・猩紅熱の特徴:サンドペーパー様の発疹、口囲蒼白、Pastia線、溶連菌検査陽性
