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赤い目が決め手―川崎病と猩紅熱を分ける「共通しない」症状

第120回医師国家試験 D問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第120回 D問題 第7問

川崎病に認め,猩紅熱に認めない症状はどれか。

  1. a.皮疹
  2. b.イチゴ舌
  3. c.膜様落屑
  4. d.頸部リンパ節腫大
  5. e.両側眼球結膜充血

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は川崎病と猩紅熱の鑑別の問題だ。この2つは発熱、発疹、イチゴ舌、落屑と、驚くほど症状が重なっている。だから「共通する症状」を消していって、川崎病にしかないものを見つけるのがコツだよ。
医学生医学生
小児科の講義で、川崎病の主要症状は6つと習いました。発熱、眼球結膜充血、口唇・口腔所見、発疹、四肢末端の変化、頸部リンパ節腫脹ですよね。
ドクタードクター
完璧だね。6つのうち5つ以上で診断し、4つ以下でも冠動脈病変などを考えあわせて不全型と診断されることがある。現在の手引きでは発熱の日数も問わなくなった。では猩紅熱はどんな病気だったかな。
医学生医学生
A群β溶血性レンサ球菌の感染で、咽頭炎に発疹が出る病気です。毒素が関係していた気がします。
ドクタードクター
そう、溶連菌が産生する発赤毒素によって全身に発疹が出る。学童期に多く、咽頭炎・扁桃炎に続いて細かい紅色丘疹が全身に広がるんだ。ではまず皮疹から比べてみよう。
医学生医学生
どちらにも皮疹はありますが、性状が違いますよね。猩紅熱は触るとザラザラしているとか。
ドクタードクター
その通り。猩紅熱はサンドペーパー様の発疹で、肘窩などのしわに沿った線状の点状出血、Pastia線もみられる。川崎病は麻疹様や多形紅斑様など形が一定しない不定形発疹で、BCG接種痕が赤くなるのが特徴的だ。性状は違うけれど、「皮疹がある」こと自体では区別できない。
医学生医学生
イチゴ舌も、川崎病の口腔所見と猩紅熱の両方に出てきますね。
ドクタードクター
そう。猩紅熱では最初に白い舌苔の間から赤い乳頭がのぞく白イチゴ舌、数日後に舌苔がはがれて赤イチゴ舌になる。川崎病でも口唇の紅潮や亀裂と一緒にイチゴ舌がみられる。これも共通だ。
医学生医学生
膜様落屑は川崎病の回復期の代表的な所見だと思っていたので、川崎病だけかと迷いました。
ドクタードクター
そう思う人は多いね。でも猩紅熱でも発疹が消えた後、発症1〜2週ごろに落屑が起こる。体幹ではぬか状、手掌や足底では膜状の大きな落屑になるから、これだけでは鑑別できないんだ。
医学生医学生
頸部リンパ節腫大も、溶連菌の咽頭炎なら腫れそうですね。
ドクタードクター
そうだね。猩紅熱では咽頭・扁桃の炎症に伴って前頸部リンパ節が圧痛を伴って腫れる。川崎病は急性期に片側性で非化膿性のことが多く、実は主要症状の中で出現頻度が最も低い。いずれにせよ両者に共通だ。
医学生医学生
そうすると残るのは両側眼球結膜充血ですね。猩紅熱で目が赤くなるイメージはありません。
ドクタードクター
正解。両側眼球結膜充血は川崎病の主要症状で、発症早期から高頻度にみられる。眼脂を伴わない非滲出性の充血で、白目の血管が浮き出るように赤くなるけれど、黒目の周りの輪部は充血しにくいのが特徴だ。猩紅熱は溶連菌の毒素による咽頭炎と発疹が主体で、結膜充血は典型的ではない。
医学生医学生
小児科実習で川崎病の子を診たとき、目やにがないのに真っ赤で、細菌性結膜炎とは違うと指導医に言われたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。そのほかの鑑別点として、猩紅熱では口囲蒼白や咽頭の迅速抗原検査陽性、ASO上昇があり、ペニシリン系抗菌薬で速やかに解熱する。川崎病は抗菌薬に反応しないから、抗菌薬を使っても熱が下がらないときは川崎病を思い浮かべてほしい。好発年齢も、川崎病は4歳以下、猩紅熱は学童期と少しずれている。
医学生医学生
治療も全然違いますよね。川崎病はIVIGとアスピリンでした。
ドクタードクター
そう、川崎病の治療目標は冠動脈瘤の形成を防ぐことだから、早期診断が非常に大切なんだ。猩紅熱はリウマチ熱予防のためにペニシリンを10日間しっかり飲みきること、そして後から急性糸球体腎炎が起こらないかにも注意する。似た見た目でも、見逃したときの代償がそれぞれ違うことを意識しておこう。

まとめ

川崎病と猩紅熱はいずれも小児にみられ、発熱、発疹、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、回復期の落屑など多くの症状が共通するため、臨床的に鑑別が問題となります。両側眼球結膜充血は川崎病の主要症状の一つで、眼脂を伴わず輪部が充血しにくいのが特徴であり、猩紅熱では通常みられません。猩紅熱ではサンドペーパー様発疹、Pastia線、口囲蒼白、溶連菌検査陽性が手がかりとなり、抗菌薬で速やかに解熱する点も川崎病と異なります。川崎病はIVIGとアスピリンで冠動脈瘤を予防し、猩紅熱はペニシリンの完遂でリウマチ熱を防ぐなど、治療と合併症も大きく異なります。共通する症状を整理したうえで特異的な所見を見抜く姿勢は、小児の発熱・発疹性疾患の診療全般に役立ちます。

解答・解説

正解はeです

川崎病と猩紅熱は、どちらも乳幼児から小児にみられる。発熱、発疹、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、回復期の落屑といった共通の症状が多く、臨床的に鑑別が問題になる組合せである。 川崎病は原因不明の全身性血管炎であり、主に4歳以下の乳幼児に起こる。最も重要な合併症は冠動脈瘤である。診断は「川崎病診断の手引き」の6つの主要症状に基づいて行う。6つの主要症状は、①発熱、②両側眼球結膜の充血、③口唇の紅潮・イチゴ舌、④発疹(BCG接種痕の発赤を含む)、⑤四肢末端の変化(急性期の手足の硬性浮腫・紅斑、回復期の指先からの膜様落屑)、⑥急性期の非化膿性頸部リンパ節腫脹である。 猩紅熱は、A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)が産生する発赤毒素(発熱毒素)によって起こる発疹性疾患である。主に学童期の小児にみられる。咽頭炎・扁桃炎に続いて、全身にびまん性の細かい紅色の発疹が広がり、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、口囲蒼白、回復期の落屑などがみられる。 本問では、5つの選択肢のうち4つが両者に共通する症状である。「川崎病の主要症状の中で、猩紅熱には通常みられないもの」を探せばよい。それが両側の眼球結膜充血である。

選択肢考察

  1. ×a.  皮疹

    誤り。両者に共通してみられる。川崎病の発疹は形が一定しない不定形発疹である。麻疹様、多形紅斑様、蕁麻疹様などさまざまな形をとり、水疱や痂皮はつくらない。BCG接種部位が赤く腫れることも特徴的である。猩紅熱では、頸部・腋窩・鼠径部から全身に広がる細かい紅色丘疹がみられ、触るとサンドペーパーのようにざらざらする。皮膚のしわ(肘窩など)に沿って線状の点状出血(Pastia線)がみられることもある。発疹の性状は異なるが、「皮疹がある」という点だけでは両者を区別できない。

  2. ×b.  イチゴ舌

    誤り。両者に共通してみられる。イチゴ舌とは、舌の乳頭が赤く腫れて、イチゴの表面のように見える状態である。川崎病では、口唇の紅潮・亀裂とともに主要症状の一つに含まれる。猩紅熱でも典型的な所見である。初期には白い舌苔の間から赤い乳頭がのぞく白イチゴ舌がみられ、数日後に舌苔がはがれて赤イチゴ舌となる。

  3. ×c.  膜様落屑

    誤り。両者に共通してみられる。川崎病では、発症して10日目前後の回復期に、指趾の爪の周りから膜状に皮がむける(膜様落屑)。猩紅熱でも、発疹が消えた後の発症1〜2週ごろに落屑が起こる。体幹では細かいぬか状の落屑となり、手掌や足底では膜状の大きな落屑となる。したがって膜様落屑だけでは両者を鑑別できない。

  4. ×d.  頸部リンパ節腫大

    誤り。両者に共通してみられる。川崎病では、急性期に片側の頸部リンパ節が腫れることが多く、化膿しない(非化膿性)のが特徴である。主要症状の中で出現頻度が最も低い症状でもある。猩紅熱では、溶連菌による咽頭・扁桃の炎症に伴い、前頸部のリンパ節が腫れて圧痛を伴う。

  5. ○e.  両側眼球結膜充血

    正しい。両側眼球結膜の充血は川崎病の主要症状の一つで、発症早期から高い頻度でみられる。眼脂を伴わない(非滲出性の)充血であり、白目(眼球結膜)の血管が浮き出るように赤くなる。黒目の周りの縁(輪部)は充血しにくい。一方、猩紅熱は溶連菌の毒素による咽頭炎と発疹が主な病態で、眼球結膜の充血は典型的な所見ではない。したがって、本選択肢が「川崎病に認め、猩紅熱に認めない」症状に当たる。

川崎病の診断(川崎病診断の手引き 改訂第6版)

主要症状 ①発熱(現在の基準では、日数は問わない) ②両側眼球結膜の充血 ③口唇・口腔所見:口唇の紅潮、イチゴ舌、口腔咽頭粘膜のびまん性の発赤 ④発疹(BCG接種痕の発赤を含む) ⑤四肢末端の変化:急性期は手足の硬性浮腫、手掌・足底または指趾先端の紅斑。回復期は指先からの膜様落屑。 ⑥急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹 6つのうち5つ以上で川崎病と診断する。4つ以下でも、冠動脈病変など他の所見を考えあわせて、不全型として診断されることがある。 治療:免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)とアスピリンが基本である。目的は冠動脈瘤の形成を防ぐことにある。

猩紅熱

・病原体:A群β溶血性レンサ球菌(発赤毒素を産生する株) ・好発:学童期(3〜10歳前後) ・症状:発熱、咽頭痛・扁桃炎、全身のびまん性の細かい紅色丘疹(サンドペーパー様)、口囲蒼白、Pastia線、イチゴ舌、頸部リンパ節腫大、回復期の落屑 ・診断:咽頭の迅速抗原検査や培養、ASO(抗ストレプトリジンO抗体)の上昇 ・治療:ペニシリン系抗菌薬を10日間内服する。リウマチ熱を防ぐため、症状が消えても最後まで服用する。急性糸球体腎炎の合併にも注意する。

両者の鑑別点

・眼球結膜充血:川崎病ではみられ、猩紅熱では通常みられない。 ・BCG接種痕の発赤:川崎病に特徴的である。 ・口囲蒼白、Pastia線、咽頭の溶連菌検査陽性:猩紅熱に特徴的である。 ・抗菌薬への反応:猩紅熱は速やかに解熱する。川崎病は反応しない。 ・好発年齢:川崎病は4歳以下、猩紅熱は学童期に多い。

POINT

・川崎病の主要症状:発熱、両側眼球結膜充血、口唇・口腔所見(イチゴ舌)、発疹、四肢末端の変化(回復期の膜様落屑)、非化膿性頸部リンパ節腫脹 ・猩紅熱と共通する症状:発疹、イチゴ舌、膜様落屑、頸部リンパ節腫大 ・川崎病に特有で、猩紅熱にない症状:両側眼球結膜充血(眼脂を伴わない) ・猩紅熱の特徴:サンドペーパー様の発疹、口囲蒼白、Pastia線、溶連菌検査陽性

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。