水は燃えない―基礎代謝量を決めるのは「代謝する組織」
第120回医師国家試験 B問題 第25問
国試問題にチャレンジ
基礎代謝量に直接的に影響を与える因子で誤っているのはどれか。
- a.性別
- b.年齢
- c.筋肉量
- d.体表面積
- e.体内の水分量
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
基礎代謝量は、早朝空腹時に覚醒・仰臥位・安静の状態で測定される生命維持に必要な最小限のエネルギー消費量で、最も強く規定するのは筋肉など代謝活性の高い組織の量(除脂肪体重)です。性別(男性で高い)、年齢(加齢で低下)、体表面積(大きいほど高い)も代表的な影響因子であり、食事摂取基準の基礎代謝基準値も性・年齢別に設定されています。一方、体内の水分量は除脂肪体重と相関はするものの、水自体はエネルギーを消費しないため直接の規定因子ではありません。このほか甲状腺ホルモン、発熱、妊娠、寒冷、低栄養なども基礎代謝量を変化させます。「何がエネルギーを消費しているか」から考える視点は、栄養管理や代謝疾患の理解に直結します。
解答・解説
正解はeです
基礎代謝量(basal metabolic rate:BMR)とは、生命を維持するために最低限必要なエネルギー消費量である。心拍、呼吸、体温維持、各臓器の細胞活動など、意識的な身体活動を伴わない状態で消費されるエネルギーを指し、早朝空腹時(食後12時間以上経過)に、快適な室温のもとで、覚醒した状態のまま仰臥位で安静にして測定する。 基礎代謝量を決める最大の要因は、代謝活性の高い組織の量、すなわち除脂肪体重(体重から脂肪組織の重量を除いたもの。主に筋肉や臓器からなる)である。脂肪組織はエネルギー消費が少ないため、同じ体重でも筋肉の多い人ほど基礎代謝量は大きい。さらに、体表面積(体の大きさ)、性別、年齢といった因子も基礎代謝量を規定し、実際に基礎代謝量の推定式や基準値はこれらをもとに作られている。 本問は「誤っているもの」、すなわち基礎代謝量に直接影響しない因子を選ぶ問題である。性別・年齢・筋肉量・体表面積はいずれも基礎代謝量を左右する代表的な因子であるのに対し、体内の水分量は基礎代謝量を直接規定する因子として扱われない。したがって正解は e となる。
選択肢考察
- ×a. 性別
基礎代謝量に影響する因子であり、記述として正しい。一般に男性は女性より筋肉量(除脂肪体重)が多く体格も大きいため、基礎代謝量が高い。日本人の食事摂取基準でも、基礎代謝基準値(体重1kgあたりの基礎代謝量)は性別ごとに定められている。
- ×b. 年齢
基礎代謝量に影響する因子であり、記述として正しい。体重あたりの基礎代謝量は乳幼児期・成長期に最も高く、加齢とともに低下する。成人以降は筋肉量の減少や臓器の代謝活性の低下により、基礎代謝量は徐々に減少していく。このため基礎代謝基準値は年齢階級ごとに設定されている。
- ×c. 筋肉量
基礎代謝量に影響する因子であり、記述として正しい。骨格筋は脂肪組織に比べて安静時のエネルギー消費が大きいため、筋肉量(除脂肪体重)が多いほど基礎代謝量は高くなる。基礎代謝量の個人差を最もよく説明する因子であり、性差や加齢による変化も、その多くが筋肉量の違いで説明される。
- ×d. 体表面積
基礎代謝量に影響する因子であり、記述として正しい。体の表面からは常に熱が失われており、体表面積が大きいほど体温を維持するために多くの熱を産生する必要がある。古くから基礎代謝量は体表面積にほぼ比例するとされ、体表面積あたりの基礎代謝量(kcal/m²/時)で表されてきた。体表面積は身長と体重から推定されるため、体格の指標でもある。
- ○e. 体内の水分量
体内の水分量は基礎代謝量を直接規定する因子ではないため、本問の「誤っているもの」に該当する。水そのものはエネルギーを消費する組織ではなく、脱水や浮腫などで体内水分量が変化しても、それ自体が基礎代謝量を直接増減させるわけではない。なお、筋肉は水分を多く含むため体水分量と除脂肪体重には相関があるが、基礎代謝量を規定しているのはあくまで代謝活性をもつ組織の量である。
基礎代謝量の測定条件
・早朝空腹時(前日の食事から12時間以上経過) ・快適な室温(暑さ寒さを感じない環境) ・覚醒状態で仰臥位、精神的・身体的に安静 睡眠中は代謝量がやや低下するため、基礎代謝は「覚醒」状態で測定する点に注意する。
基礎代謝量に影響する主な因子
・体格・体組成:除脂肪体重(筋肉量)、体表面積、体重 ・性別:男性>女性 ・年齢:体重あたりでは小児期に高く、加齢で低下 ・ホルモン:甲状腺ホルモン(甲状腺機能亢進症で上昇、低下症で低下)、カテコールアミンなど ・体温:発熱時には体温上昇に伴って基礎代謝量が増える ・その他:妊娠(後期に増加)、季節・気候(寒冷環境で高くなる傾向)、栄養状態(低栄養や飢餓で低下)
基礎代謝量の推定
日本人の食事摂取基準では、基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×参照体重(kg)として推定する。基礎代謝基準値と参照体重は、いずれも性・年齢階級別に定められている。 さらに、推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量×身体活動レベル(PAL)で求められる。
エネルギー消費の内訳
1日の総エネルギー消費量は、基礎代謝量(約6割)、食事誘発性熱産生(食物の消化・吸収に伴う熱産生、約1割)、身体活動によるエネルギー消費(約3割)から構成される。
POINT
・基礎代謝量を最も強く規定するのは除脂肪体重(筋肉量) ・性別(男性で高い)、年齢(加齢で低下)、体表面積(大きいほど高い)も影響する ・甲状腺ホルモン、発熱、妊娠などでも変化する ・体内の水分量は基礎代謝量を直接規定する因子ではない ・基礎代謝量=基礎代謝基準値×参照体重(いずれも性・年齢別)
