SpO2が正常でも油断禁物―「呼吸数」が教えてくれる体の異変
第116回医師国家試験 B問題 第15問
国試問題にチャレンジ
成人の安静時所見のうち異常なのはどれか。
- a.腋窩体温36.2℃
- b.脈拍96/分,整
- c.血圧112/70mmHg
- d.呼吸数24/分
- e.SpO2 97%(room air)
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
成人の安静時バイタルサインの目安は、腋窩温36〜37℃程度、脈拍60〜100/分、正常血圧120/80mmHg未満、呼吸数おおむね12〜20/分、SpO2 96〜99%(室内気)であり、呼吸数24/分は頻呼吸として異常です。呼吸数は敗血症、肺炎、心不全、代謝性アシドーシスなどで早期から増加する鋭敏な指標で、qSOFAでは22/分以上が1項目に含まれます。SpO2が正常でも呼吸数が増えていれば、呼吸努力で酸素化を代償している可能性があり、急変の前触れとなりえます。測定時は患者に意識させないよう脈拍測定に合わせて観察し、数だけでなく深さやリズムも評価することが大切です。見落とされやすい呼吸数を確実に測り解釈する習慣は、病棟での急変の早期発見に直結します。
解答・解説
正解はdです
成人のバイタルサイン(生命徴候)の基準範囲を問う基本問題である。バイタルサインとは体温・脈拍・血圧・呼吸数に意識状態などを加えた、生命維持の状態を示す指標であり、近年は経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)も含めて評価されることが多い。 各値をそれぞれの基準範囲と照らし合わせればよい。成人安静時の目安は、腋窩体温がおおむね36〜37℃、脈拍60〜100/分、血圧120/80mmHg未満(正常血圧)、呼吸数12〜20/分程度、SpO2 96〜99%(室内気)である。選択肢のうち呼吸数24/分だけが基準範囲を超えており、頻呼吸と判断される。 呼吸数は測定が省略されやすいが、敗血症や心不全、肺炎、代謝性アシドーシスなどで早期から増加する鋭敏な指標である。SpO2 が保たれていても呼吸数が増えていれば、呼吸努力で酸素化を代償している可能性があり、見逃してはならない所見である。
選択肢考察
- ×a. 腋窩体温36.2℃
正常である。成人の腋窩温はおおむね36〜37℃が基準範囲である。体温は測定部位によって異なり、腋窩温<口腔温<直腸温の順に高くなる(腋窩温と直腸温の差はおおよそ0.5〜1℃)。また体温は早朝に最も低く夕方に最も高い日内変動を示し、その幅は通常1℃以内である。
- ×b. 脈拍96/分,整
正常である。成人の安静時脈拍は60〜100/分が基準範囲であり、100/分を超えると頻脈、60/分未満を徐脈とする。96/分は基準範囲の上限に近いが範囲内で、リズムも整(規則的)であるため異常とはいえない。なお、運動習慣のある人では50/分台の徐脈が生理的にみられることもある。
- ×c. 血圧112/70mmHg
正常である。日本高血圧学会の分類では、診察室血圧で収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満を正常血圧とする。高血圧の基準は診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上である。低血圧に明確な統一基準はないが、一般に収縮期血圧100mmHg未満を目安とすることが多く、112/70mmHg はこれにも該当しない。
- ○d. 呼吸数24/分
異常であり、これが正解である。成人の安静時呼吸数はおおむね12〜20/分(教科書により14〜20/分)であり、これを超える24/分は頻呼吸(呼吸数の増加)にあたる。頻呼吸は発熱、肺炎・気胸・肺塞栓症などの呼吸器疾患、心不全、敗血症、代謝性アシドーシス(呼吸による代償)、不安・疼痛などで生じる。敗血症のスクリーニングに用いられる qSOFA(quick SOFA)では呼吸数22/分以上が1項目とされ、呼吸数が重症度の重要な指標であることがわかる。
- ×e. SpO2 97%(room air)
正常である。room air とは酸素投与をしていない室内空気吸入下を意味する。健常成人の SpO2 は96〜99%程度であり、97%は正常範囲内である。SpO2 90%は動脈血酸素分圧(PaO2)およそ60Torr に相当し、これを下回る状態が呼吸不全の目安となる。高齢者では健常でも PaO2 がやや低下するため、SpO2 も若年者より若干低めになりうる。
成人の安静時バイタルサインの目安
体温:腋窩温36〜37℃程度(37.5℃以上を発熱とすることが多い) 脈拍:60〜100/分(100/分超で頻脈、60/分未満で徐脈) 血圧:120/80mmHg未満が正常血圧。診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上で高血圧 呼吸数:12〜20/分程度(それを超えると頻呼吸、12/分未満で徐呼吸) SpO2:96〜99%(90%未満は呼吸不全の目安)
呼吸数の測定のコツ
患者が自分の呼吸を意識すると呼吸数が変化するため、脈拍を測るふりをしながら胸郭や腹部の動きを観察し、30秒〜1分間数える。呼吸数だけでなく、リズム・深さ・呼吸補助筋の使用の有無も観察する。
異常な呼吸パターンの例
クスマウル呼吸:深く速い規則的な呼吸。糖尿病ケトアシドーシスなどの代謝性アシドーシスでみられる。 チェーン・ストークス呼吸:無呼吸と、次第に深くなりまた浅くなる呼吸を周期的に繰り返す。重症心不全や脳血管障害でみられる。 ビオー呼吸:不規則な無呼吸をはさむ呼吸。脳幹障害や髄膜炎でみられる。
早期警告スコアとの関係
qSOFA(呼吸数22/分以上、意識変容、収縮期血圧100mmHg以下のうち2項目以上で敗血症を疑う)や、NEWS(National Early Warning Score)のように、呼吸数は急変の予兆を捉える指標として重視されている。
POINT
・成人の安静時呼吸数はおおむね12〜20/分であり、24/分は頻呼吸で異常である。 ・脈拍60〜100/分、正常血圧120/80mmHg未満、腋窩温36〜37℃程度、SpO2 96〜99%を基準値として覚える。 ・高血圧の基準は診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上。 ・呼吸数は急変・敗血症の早期指標であり(qSOFA では22/分以上)、必ず測定する。
