蓄尿なしで1日の蛋白尿を知る―尿蛋白/クレアチニン比の「割り算ひとつ」の理屈
第120回医師国家試験 A問題 第74問
国試問題にチャレンジ
尿量1,200mL/日,比重1.015,蛋白1+,潜血1+,随時尿の尿蛋白濃度100mg/dL,随時尿の尿中クレアチニン濃度250mg/dL。 推定1日尿蛋白量を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合は,小数第3位を四捨五入すること。 解答:①.②③g/gCr
対話形式の解説
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ドクターまとめ
随時尿の尿蛋白濃度を尿中クレアチニン濃度で割った尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)は、成人の1日尿中クレアチニン排泄量がおよそ1gで一定であることを利用して、蓄尿なしに1日尿蛋白量を推定する指標です。本問では100mg/dL÷250mg/dL=0.40g/gCrとなり、尿量・比重・試験紙の定性結果は比をとることで影響が打ち消されるため計算に用いません。0.40g/gCrはCKDの蛋白尿区分A2に相当し、ネフローゼ症候群の基準である3.5g/日も3.5g/gCrで代用できます。一方、筋肉量が少ない人では過大評価、多い人では過小評価となるため、必要に応じて24時間蓄尿で実測します。式の背景にある前提まで理解しておくことが、検査値を正しく臨床判断に生かすための土台になります。
解答・解説
正解は0.40g/gCrです
考え方
1日に尿へ出る蛋白の量を正確に知るには24時間蓄尿が必要だが、外来では手間がかかり不正確にもなりやすい。そこで、1回分の尿(随時尿)で尿蛋白濃度と尿クレアチニン濃度を同時に測り、その比(尿蛋白/クレアチニン比、単位 g/gCr)を求めて1日尿蛋白量の推定値とする。 この方法は「成人が1日に尿中へ排泄するクレアチニンはおよそ1gで、ほぼ一定である」という前提に立っている。クレアチニン1gあたりの蛋白量を求めれば、それがおおよそ1日(=クレアチニン約1g分の尿)あたりの蛋白量になるという理屈である。 尿の濃さ(濃縮・希釈)は蛋白とクレアチニンの両方に同じように影響するため、比をとることで尿量や比重の影響が打ち消される。したがって、問題文中の尿量1,200mL/日、比重1.015、試験紙法の蛋白1+・潜血1+は計算には用いない。
計算過程
推定1日尿蛋白量(g/gCr)= 随時尿の尿蛋白濃度 ÷ 随時尿の尿中クレアチニン濃度 = 100mg/dL ÷ 250mg/dL = 0.4(mg/mg、すなわち g/g) 両者が同じ単位(mg/dL)なので、割り算の結果はそのまま「クレアチニン1gあたりの蛋白のg数」となる。mg/gCrで表せば400mg/gCrである。 小数第3位を四捨五入して小数第2位まで示すと 0.40 となり、解答欄①.②③には ①=0、②=4、③=0 が入る。 【答】0.40g/gCr(推定1日尿蛋白量 約0.4g/日)
尿蛋白/クレアチニン比の注意点
・クレアチニンは筋肉で産生されるため、尿中排泄量は筋肉量に比例する。 ・筋肉量の少ない高齢者・女性・やせた人・長期臥床者では1日のクレアチニン排泄量が1gを下回るため、実際の1日尿蛋白量より推定値が大きく出る(過大評価)。 ・筋肉量の多い若年男性やアスリートでは逆に推定値が小さく出る(過小評価)。 ・より正確な評価が必要なときは24時間蓄尿で1日尿蛋白排泄量(g/日)を実測する。
尿蛋白の評価の目安
・正常:0.15g/gCr未満 ・CKD(慢性腎臓病)重症度分類の蛋白尿区分(糖尿病以外の原疾患):A1 0.15未満、A2 0.15〜0.49、A3 0.50以上(g/gCr) ・糖尿病では尿アルブミン/クレアチニン比で評価し、A1 30mg/gCr未満、A2 30〜299mg/gCr(微量アルブミン尿)、A3 300mg/gCr以上とする。 ・ネフローゼ症候群の診断基準の蛋白尿は3.5g/日以上(随時尿の尿蛋白/クレアチニン比3.5g/gCr以上でも代用可)。 本問の0.40g/gCrはA2(軽度蛋白尿)に相当する。
試験紙法との関係
試験紙法(蛋白1+、2+など)は尿中の蛋白「濃度」をみているにすぎないため、尿が濃縮されていれば過大に、希釈されていれば過小に出る。また試験紙は主にアルブミンに反応し、Bence Jones蛋白などの免疫グロブリン軽鎖は検出しにくい。定量評価にはクレアチニン比を用いるのが原則である。
POINT
・推定1日尿蛋白量(g/gCr)= 随時尿の尿蛋白濃度 ÷ 尿中クレアチニン濃度(同じ単位で割る) ・前提は1日尿中クレアチニン排泄量が約1gで一定であること ・尿量・比重・試験紙の定性結果は計算に使わない ・筋肉量が少ないと過大評価、多いと過小評価となる ・本問:100 ÷ 250 = 0.40g/gCr(CKD蛋白尿区分A2に相当)
