StudyMed医師国家試験

蓄尿なしで1日の蛋白尿を知る―尿蛋白/クレアチニン比の「割り算ひとつ」の理屈

第120回医師国家試験 A問題 第74問

国試問題にチャレンジ

第120回 A問題 第74問

尿量1,200mL/日,比重1.015,蛋白1+,潜血1+,随時尿の尿蛋白濃度100mg/dL,随時尿の尿中クレアチニン濃度250mg/dL。 推定1日尿蛋白量を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合は,小数第3位を四捨五入すること。 解答:①.②③g/gCr

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、随時尿の検査結果から1日にどれくらい蛋白が尿に出ているかを推定する計算問題だ。数字がいくつも並んでいるけれど、実際に使うのは2つだけ。どれを使い、どれを捨てるか、そしてなぜその計算で1日量がわかるのかを考えていこう。
医学生医学生
1日尿量が書いてあるので、尿蛋白濃度に尿量を掛ければ1日量が出るのかなと最初は思いました。
ドクタードクター
そう考えたくなるよね。でもこの尿蛋白濃度は1回だけ採った随時尿のもので、1日分の尿をためた蓄尿の濃度ではない。随時尿の濃さは、水分摂取や時間帯で大きく変わるから、そのまま尿量を掛けても正確な1日量にはならないんだ。
医学生医学生
腎臓内科の実習では24時間蓄尿をしている患者さんがいましたが、外来では難しそうですね。
ドクタードクター
そうなんだ。蓄尿は手間がかかるし、ため忘れがあると不正確になる。そこで使うのが尿蛋白/クレアチニン比、つまり随時尿の尿蛋白濃度を尿中クレアチニン濃度で割った値だ。単位はg/gCrで表す。
医学生医学生
なぜクレアチニンで割ると1日量になるんですか。生化学の講義でクレアチニンは筋肉由来と習いましたが。
ドクタードクター
その知識がまさにカギだ。クレアチニンは筋肉のクレアチンから一定のペースでつくられ、成人では1日におよそ1gが尿に出て、日々あまり変わらない。だから「クレアチニン1gあたり蛋白が何g出ているか」を求めれば、それがほぼ「1日あたり蛋白が何g出ているか」に相当する、という理屈なんだ。
医学生医学生
なるほど。尿が濃くても薄くても、蛋白とクレアチニンは同じ割合で濃くなったり薄くなったりするから、比をとれば打ち消し合うわけですね。
ドクタードクター
その通り。だから尿量も比重も、この計算には使わない。では実際に計算してみよう。
医学生医学生
尿蛋白濃度100mg/dLを尿中クレアチニン濃度250mg/dLで割って、0.4です。単位をそろえなくていいんでしょうか。
ドクタードクター
両方ともmg/dLで同じ単位だから、割り算の答えは単位のない比、つまりmg/mgであり、g/gと同じことになる。そのまま0.4g/gCr、mg単位なら400mg/gCrだ。解答欄は小数第2位までなので0.40と書くことになる。
医学生医学生
試験紙の蛋白1+や潜血1+も計算には関係ないんですね。CBTの勉強のときは、試験紙の+の数で蛋白量を考えていました。
ドクタードクター
試験紙法はあくまで尿中の蛋白濃度を見ているだけだから、尿が濃縮されていれば強く、希釈されていれば弱く出る。それに試験紙は主にアルブミンに反応するので、多発性骨髄腫で出るBence Jones蛋白のような免疫グロブリン軽鎖は拾いにくい。定性はスクリーニング、定量はクレアチニン比と使い分けよう。
医学生医学生
0.40g/gCrというのは、臨床的にはどのくらいの蛋白尿なんですか。
ドクタードクター
正常はおおむね0.15g/gCr未満。糖尿病以外が原因のCKDでは、蛋白尿区分を0.15未満がA1、0.15から0.49がA2、0.50以上がA3と分けるから、今回はA2の軽度蛋白尿に相当する。ちなみに糖尿病性腎臓病では、尿アルブミン/クレアチニン比を使って30mg/gCr未満、30から299、300以上で区分する点も押さえておこう。
医学生医学生
ネフローゼ症候群の基準の3.5g/日以上も、この比で代用できるんでしたっけ。
ドクタードクター
そう、随時尿で3.5g/gCr以上でも代用できるとされている。ただし、この推定には弱点がある。前提は1日のクレアチニン排泄が約1gということだったよね。筋肉量が違う人ではどうなると思う?
医学生医学生
筋肉が少ない高齢の女性や寝たきりの人だとクレアチニンが1gより少ないので、分母が小さくなって蛋白量を多めに見積もってしまう……ということですか。
ドクタードクター
完璧だ。逆に筋肉量の多い若い男性やアスリートでは過小評価になる。推定値と臨床像が合わないとき、あるいは治療方針を左右するほど正確な値が必要なときは、24時間蓄尿で1日尿蛋白量を実測するのが確実だ。
医学生医学生
割り算ひとつでも、前提を知らないと数字の解釈を誤りそうですね。
ドクタードクター
その感覚が大切だよ。計算式を覚えるだけでなく、なぜその式で1日量が推定できるのか、どんな人で外れやすいのかまで理解しておけば、外来で検査値を見たときに自信を持って判断できるはずだ。

まとめ

随時尿の尿蛋白濃度を尿中クレアチニン濃度で割った尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)は、成人の1日尿中クレアチニン排泄量がおよそ1gで一定であることを利用して、蓄尿なしに1日尿蛋白量を推定する指標です。本問では100mg/dL÷250mg/dL=0.40g/gCrとなり、尿量・比重・試験紙の定性結果は比をとることで影響が打ち消されるため計算に用いません。0.40g/gCrはCKDの蛋白尿区分A2に相当し、ネフローゼ症候群の基準である3.5g/日も3.5g/gCrで代用できます。一方、筋肉量が少ない人では過大評価、多い人では過小評価となるため、必要に応じて24時間蓄尿で実測します。式の背景にある前提まで理解しておくことが、検査値を正しく臨床判断に生かすための土台になります。

解答・解説

正解は0.40g/gCrです

考え方

1日に尿へ出る蛋白の量を正確に知るには24時間蓄尿が必要だが、外来では手間がかかり不正確にもなりやすい。そこで、1回分の尿(随時尿)で尿蛋白濃度と尿クレアチニン濃度を同時に測り、その比(尿蛋白/クレアチニン比、単位 g/gCr)を求めて1日尿蛋白量の推定値とする。 この方法は「成人が1日に尿中へ排泄するクレアチニンはおよそ1gで、ほぼ一定である」という前提に立っている。クレアチニン1gあたりの蛋白量を求めれば、それがおおよそ1日(=クレアチニン約1g分の尿)あたりの蛋白量になるという理屈である。 尿の濃さ(濃縮・希釈)は蛋白とクレアチニンの両方に同じように影響するため、比をとることで尿量や比重の影響が打ち消される。したがって、問題文中の尿量1,200mL/日、比重1.015、試験紙法の蛋白1+・潜血1+は計算には用いない。

計算過程

推定1日尿蛋白量(g/gCr)= 随時尿の尿蛋白濃度 ÷ 随時尿の尿中クレアチニン濃度 = 100mg/dL ÷ 250mg/dL = 0.4(mg/mg、すなわち g/g) 両者が同じ単位(mg/dL)なので、割り算の結果はそのまま「クレアチニン1gあたりの蛋白のg数」となる。mg/gCrで表せば400mg/gCrである。 小数第3位を四捨五入して小数第2位まで示すと 0.40 となり、解答欄①.②③には ①=0、②=4、③=0 が入る。 【答】0.40g/gCr(推定1日尿蛋白量 約0.4g/日)

尿蛋白/クレアチニン比の注意点

・クレアチニンは筋肉で産生されるため、尿中排泄量は筋肉量に比例する。 ・筋肉量の少ない高齢者・女性・やせた人・長期臥床者では1日のクレアチニン排泄量が1gを下回るため、実際の1日尿蛋白量より推定値が大きく出る(過大評価)。 ・筋肉量の多い若年男性やアスリートでは逆に推定値が小さく出る(過小評価)。 ・より正確な評価が必要なときは24時間蓄尿で1日尿蛋白排泄量(g/日)を実測する。

尿蛋白の評価の目安

・正常:0.15g/gCr未満 ・CKD(慢性腎臓病)重症度分類の蛋白尿区分(糖尿病以外の原疾患):A1 0.15未満、A2 0.15〜0.49、A3 0.50以上(g/gCr) ・糖尿病では尿アルブミン/クレアチニン比で評価し、A1 30mg/gCr未満、A2 30〜299mg/gCr(微量アルブミン尿)、A3 300mg/gCr以上とする。 ・ネフローゼ症候群の診断基準の蛋白尿は3.5g/日以上(随時尿の尿蛋白/クレアチニン比3.5g/gCr以上でも代用可)。 本問の0.40g/gCrはA2(軽度蛋白尿)に相当する。

試験紙法との関係

試験紙法(蛋白1+、2+など)は尿中の蛋白「濃度」をみているにすぎないため、尿が濃縮されていれば過大に、希釈されていれば過小に出る。また試験紙は主にアルブミンに反応し、Bence Jones蛋白などの免疫グロブリン軽鎖は検出しにくい。定量評価にはクレアチニン比を用いるのが原則である。

POINT

・推定1日尿蛋白量(g/gCr)= 随時尿の尿蛋白濃度 ÷ 尿中クレアチニン濃度(同じ単位で割る) ・前提は1日尿中クレアチニン排泄量が約1gで一定であること ・尿量・比重・試験紙の定性結果は計算に使わない ・筋肉量が少ないと過大評価、多いと過小評価となる ・本問:100 ÷ 250 = 0.40g/gCr(CKD蛋白尿区分A2に相当)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。