血清クレアチニン1.0でも油断禁物―24時間蓄尿で読み解くクレアチニンクリアランス
第118回医師国家試験 C問題 第75問
国試問題にチャレンジ
血清クレアチニン値1.0mg/dL,24時間蓄尿の尿量1,200mL,蓄尿中クレアチニン濃度48mg/dL。 体表面積補正なしでクレアチニンクリアランス(mL/分)を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答:① ② mL/分
対話形式の解説
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ドクターまとめ
クリアランスは「1分間にその物質から完全に浄化された血漿量」を表し、C=U×V÷P(U:尿中濃度、V:1分間尿量、P:血清濃度)で求めます。24時間蓄尿量は1,440分で割って1分あたりに直す必要があり、本問では48×1,200÷1,440÷1.0=40mL/分となります。血清クレアチニンが正常に近くても、筋肉量の少ない人ではこのように腎機能が大きく低下していることがあるため、クリアランスやeGFRでの評価が欠かせません。Ccrは尿細管分泌の分だけGFRを過大評価し、正確なGFRにはイヌリンクリアランスを用いること、体表面積補正は×1.73÷体表面積で行うこと、薬剤投与量の調整には補正前の値を使うことも併せて押さえておきましょう。単位をそろえて式を正しく使う力は、腎機能評価だけでなく薬物投与設計など臨床のさまざまな場面で役立ちます。
解答・解説
正解は40 mL/分です
考え方
ある物質のクリアランスとは、その物質を単位時間あたりに尿中へ排泄した量が、何mLの血漿に含まれていた量に相当するかを表したものである。言い換えると「1分間に何mLの血漿がその物質から完全に浄化されたか」という仮想的な血漿量である。 クリアランス(mL/分)=尿中濃度(U)×1分間あたりの尿量(V)÷血漿(血清)中濃度(P) すなわち C=U×V/P で求める。クレアチニンに当てはめたものがクレアチニンクリアランス(Ccr)である。
計算過程
(1) 1分間あたりの尿量を求める。24時間は24×60=1,440分なので、 V=1,200mL÷1,440分≒0.833mL/分 (2) 式に代入する。尿中濃度と血清濃度はどちらもmg/dLで単位がそろっているので、そのまま割り算してよい。 Ccr=48(mg/dL)×0.833(mL/分)÷1.0(mg/dL) =48×1,200÷1,440÷1.0 =57,600÷1,440 =40mL/分
検算
1日に尿中へ排泄されたクレアチニン量は、48mg/dL=480mg/Lより、480mg/L×1.2L=576mg/日である。血清クレアチニン1.0mg/dL=10mg/Lなので、576mgを含む血漿量は576÷10=57.6L/日=57,600mL/日。これを1,440分で割ると40mL/分となり、一致する。 小数点以下は生じないため、解答は40mL/分である。
結果の解釈
体表面積補正前で40mL/分は、成人の基準(おおむね80~120mL/分程度)と比べて明らかに低く、腎機能が中等度以上に低下していることを示す。血清クレアチニンが1.0mg/dLと一見正常範囲に近くても、筋肉量の少ない人ではこのように腎機能が低下していることがある点に注意する。
クレアチニンクリアランスとGFR
クレアチニンは筋肉で産生される代謝産物で、糸球体で自由に濾過され、尿細管ではほとんど再吸収されない。そのためクリアランスが糸球体濾過量(GFR)の近似値となる。ただし尿細管からもわずかに分泌されるため、CcrはGFRより高めに出る(腎機能が低下するほど分泌の割合が増え、過大評価が大きくなる)。日本では、Ccrに0.715を掛けるとGFRに近い値になるとされる。GFRを正確に測定するには、尿細管で分泌も再吸収もされないイヌリンのクリアランスを用いる。
体表面積補正
体格による違いを除くため、標準体表面積1.73m2あたりに換算する。 補正Ccr=Ccr×1.73÷患者の体表面積(m2) 本問は「補正なし」の値を求めるので、この操作は不要である。一方、薬剤の投与量調整には、補正しない(その人の実際の)腎機能を用いるのが原則である。
蓄尿の注意点
24時間蓄尿は、尿の取り忘れや余分な尿の混入があると値が大きくずれる。1日の尿中クレアチニン排泄量は筋肉量に比例し、成人ではおよそ体重1kgあたり15~25mg程度であるため、これを目安に蓄尿が正しく行われたかを確認できる。
血清クレアチニンから推算する方法
・Cockcroft-Gault式(推算Ccr) 男性:(140-年齢)×体重(kg)÷(72×血清クレアチニン) 女性:上記×0.85 ・日本人のGFR推算式(eGFR、mL/分/1.73m2) 男性:194×血清クレアチニン^(-1.094)×年齢^(-0.287) 女性:上記×0.739 慢性腎臓病(CKD)の重症度分類にはeGFRを用いる。
POINT
・クリアランス=U×V÷P(U:尿中濃度、V:1分間尿量、P:血清濃度)。 ・24時間蓄尿量は1,440分で割って mL/分 にそろえる。 ・本問:48×1,200÷1,440÷1.0=40mL/分。 ・Ccrは尿細管分泌のためGFRをやや過大評価する。正確なGFRはイヌリンクリアランス。 ・体表面積補正は×1.73/体表面積。
