かゆい目に効くのはどの目薬?―花粉症の既往と上眼瞼結膜が教えるアレルギー性結膜炎
第120回医師国家試験 A問題 第53問
国試問題にチャレンジ
18歳の女子。眼の搔痒感を主訴に来院した。既往歴に花粉症がある。両上眼瞼結膜の写真を下に示す。 この疾患に対して有効な点眼薬はどれか。

- a.抗菌薬
- b.人工涙液
- c.抗アレルギー薬
- d.副交感神経刺激薬
- e.炭酸脱水酵素阻害薬
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
眼のかゆみ、花粉症の既往、上眼瞼結膜の充血と細かな乳頭がそろえば、IgEを介するI型アレルギーによるアレルギー性結膜炎を考えます。治療の第一選択は抗アレルギー点眼薬で、即効性のある抗ヒスタミン薬と、肥満細胞からの化学伝達物質の放出を抑える遊離抑制薬があり、花粉飛散前からの初期療法も有効です。抗菌薬は細菌感染症、人工涙液はドライアイ、副交感神経刺激薬と炭酸脱水酵素阻害薬は緑内障の治療薬で、アレルギー反応そのものは抑えません。重症例ではステロイド点眼を短期間追加しますが眼圧上昇に注意し、巨大乳頭を伴う春季カタルなどでは免疫抑制点眼薬を用います。乳頭と濾胞、眼脂の性状といった結膜所見から病因を読み分ける力は、日常診療で頻度の高い「赤い目」の診療に直結します。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・18歳女性で、主訴は眼の搔痒感(かゆみ)である。かゆみはアレルギー性結膜疾患に最も特徴的な自覚症状で、感染性結膜炎では眼脂(めやに)、異物感、流涙が主体となり、強いかゆみは目立たない。 ・既往に花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)があり、I型アレルギー(IgE抗体を介する即時型反応)を起こしやすい体質がうかがえる。 ・写真は両眼の上眼瞼を翻転して上眼瞼結膜(瞼結膜)を観察したもので、両側に結膜の充血とびまん性の浮腫がみられ、表面は細かな乳頭(小さな隆起)でざらついている。眼脂はわずかで、粘液性の少量の付着にとどまる。巨大乳頭や偽膜はみられない。
診断
両眼性のかゆみ、花粉症の既往、上眼瞼結膜の充血と乳頭性変化から、アレルギー性結膜炎(花粉が原因であれば季節性アレルギー性結膜炎)と診断する。 鑑別として、細菌性結膜炎(膿性眼脂が多い)、ウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎では片眼から始まり、水様性眼脂、濾胞形成、耳前リンパ節腫脹、偽膜を伴うことがある)、春季カタル(上眼瞼結膜の巨大乳頭や角膜病変を伴う重症型)が挙がるが、いずれも所見が合わない。
設問の考え方
アレルギー性結膜炎は、結膜の肥満細胞上のIgEに抗原(花粉など)が結合し、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されて、かゆみ・充血・浮腫が起こる病態である。したがって治療の中心は、ヒスタミンの作用を遮断したり、化学伝達物質の放出を抑えたりする抗アレルギー点眼薬である。他の選択肢は、感染症、ドライアイ、緑内障などに用いる薬であり、アレルギー反応には作用しない。
選択肢考察
- ×a. 抗菌薬
抗菌薬点眼は細菌性結膜炎や角膜炎などの細菌感染症に用いる。細菌性結膜炎では黄色~緑色の膿性眼脂が多量に出ることが特徴であるが、本例の眼脂はわずかで、主訴もかゆみである。アレルギー性の炎症には効果がなく、不要な抗菌薬の使用は耐性菌を生む原因にもなる。
- ×b. 人工涙液
人工涙液は涙液を補充する点眼で、主にドライアイに用いる。アレルギー性結膜炎で眼表面の抗原を洗い流す補助として使われることはあるが、アレルギー反応そのものを抑える作用はなく、治療の中心にはならない。設問の「有効な点眼薬」として選ぶのは抗アレルギー薬である。
- ○c. 抗アレルギー薬
アレルギー性結膜炎の第一選択は抗アレルギー点眼薬である。抗アレルギー点眼薬には、ヒスタミンH1受容体を遮断してかゆみや充血をすばやく抑える抗ヒスタミン薬(エピナスチン、オロパタジン、レボカバスチン、ケトチフェンなど)と、肥満細胞からの化学伝達物質の放出を抑える遊離抑制薬(クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラスト、トラニラストなど)がある。花粉症のように時期が予測できる場合は、飛散開始前から点眼を始める初期療法が症状の軽減に有効である。効果が不十分な重症例では副腎皮質ステロイド点眼を短期間追加するが、ステロイドでは眼圧上昇(ステロイド緑内障)に注意する。
- ×d. 副交感神経刺激薬
副交感神経刺激薬(ピロカルピンなど)は瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳を起こし、隅角を開いて房水流出を促すため、急性原発閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作)などの眼圧下降に用いる。結膜のアレルギー反応には作用せず、本症には無効である。
- ×e. 炭酸脱水酵素阻害薬
炭酸脱水酵素阻害薬は毛様体での房水産生を抑えて眼圧を下げる薬で、点眼薬(ドルゾラミド、ブリンゾラミド)は緑内障や高眼圧症に、内服・静注薬(アセタゾラミド)は急性緑内障発作などに用いる。アレルギー性結膜炎には効果がない。
アレルギー性結膜疾患の分類
・アレルギー性結膜炎:増殖性変化(巨大乳頭など)を伴わない。季節性(花粉が原因)と通年性(ハウスダスト・ダニなどが原因)に分ける。 ・アトピー性角結膜炎:アトピー性皮膚炎に合併する慢性の角結膜炎。 ・春季カタル:学童期の男児に多い重症型。上眼瞼結膜の巨大乳頭(石垣状乳頭)や輪部の腫脹(トランタス斑)、角膜のシールド潰瘍を伴うことがある。 ・巨大乳頭結膜炎:コンタクトレンズや義眼などの機械的刺激で上眼瞼結膜に巨大乳頭を生じる。
結膜所見による鑑別
・乳頭:中心に血管をもつ小隆起で、アレルギー性結膜疾患でよくみられる(細菌性結膜炎でもみられる)。 ・濾胞:リンパ球の集簇による半球状の隆起で、ウイルス性結膜炎(アデノウイルスなど)やクラミジア結膜炎に特徴的である。 ・眼脂の性状:アレルギー性は粘液性・少量、細菌性は膿性・多量、ウイルス性は水様性~漿液性である。
アレルギー性結膜疾患の治療の段階
1. 抗原からの回避(花粉飛散時の眼鏡・ゴーグル着用、帰宅時の洗顔、人工涙液による洗眼など) 2. 抗アレルギー点眼薬(抗ヒスタミン薬、化学伝達物質遊離抑制薬):第一選択 3. 副腎皮質ステロイド点眼薬:重症例に短期間。眼圧上昇、白内障、感染症の誘発に注意する 4. 免疫抑制点眼薬(シクロスポリン、タクロリムス):春季カタル、アトピー性角結膜炎など増殖性変化を伴う重症例に用いる
緑内障治療薬の整理(選択肢d、eの関連)
・房水産生を抑える:β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、α2刺激薬 ・房水流出を促す:プロスタグランジン関連薬、副交感神経刺激薬(ピロカルピン)、ROCK阻害薬
POINT
・眼のかゆみ+花粉症の既往+眼瞼結膜の充血・乳頭はアレルギー性結膜炎を示す。 ・アレルギー性結膜炎の第一選択は抗アレルギー点眼薬(抗ヒスタミン薬、化学伝達物質遊離抑制薬)である。 ・重症例ではステロイド点眼を追加するが、眼圧上昇に注意する。春季カタルなどには免疫抑制点眼薬を用いる。 ・乳頭はアレルギー性、濾胞はウイルス性・クラミジア性結膜炎の特徴である。 ・副交感神経刺激薬と炭酸脱水酵素阻害薬は緑内障治療薬、人工涙液はドライアイ、抗菌薬は細菌感染症に用いる。
