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「技術的中核機関」は何をする?―精神保健福祉センターと精神医療審査会の深い関係

第119回医師国家試験 C問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第119回 C問題 第3問

精神保健福祉センターの業務はどれか。

  1. a.要介護認定
  2. b.障害年金の認定
  3. c.麻薬の取り締まり
  4. d.心神喪失者の精神鑑定
  5. e.精神医療審査会の事務

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、精神保健福祉センターという機関がどんな仕事を担っているかを問う問題だ。着眼点は、各選択肢の業務が「どの法律に基づいて、どの機関が担当しているか」を整理すること。公衆衛生の行政分野は、この「法律と担当機関」の対応で解ける問題が多いんだ。まず、精神保健福祉センターについて知っていることはあるかな。
医学生医学生
精神保健福祉法に基づいて設置される機関、というところまでは公衆衛生の講義で習いました。保健所とどう違うのかが、いまひとつあいまいです。
ドクタードクター
そこを整理しておこう。精神保健福祉センターは精神保健福祉法に基づき、都道府県と指定都市に置かれる精神保健福祉の専門機関だ。地域の精神保健福祉活動を技術面で支える「技術的中核機関」と位置づけられていて、保健所や市町村への技術指導・援助、職員の研修、普及啓発、調査研究、複雑・困難な事例の相談などを担っている。一方、保健所は地域保健法に基づく機関で、精神保健の相談や訪問指導、措置入院に関する事務など、より住民に近い現場の仕事をしている。
医学生医学生
センターは保健所の「後ろ盾」みたいな存在ということですね。でも、それだと選択肢のどれも当てはまらない気がしてしまいます。
ドクタードクター
いい疑問だね。実は技術支援のほかに、法律上センターにはっきり割り当てられた固有の業務がある。それが精神医療審査会の事務と、精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療(精神通院医療)に関する専門的な判定なんだ。だから正解は精神医療審査会の事務になる。
医学生医学生
精神医療審査会って、精神科の臨床実習で医療保護入院の患者さんを担当したときに、指導医の先生が「入院届は審査会でチェックされる」と話していたものですか。
ドクタードクター
まさにそれだよ。精神医療審査会は都道府県・指定都市に置かれ、医療保護入院の届出や、措置入院・医療保護入院の定期病状報告を審査する。さらに入院している本人や家族からの退院請求・処遇改善請求も審査する。本人の意思によらない入院が妥当かどうかを、第三者の立場から確認して人権を守る仕組みなんだ。センターはその審査に関わる事務を担当している。
医学生医学生
審査会のメンバーは精神科医だけなんでしょうか。
ドクタードクター
精神保健指定医に加えて、法律の学識経験者、精神障害者の保健・福祉に関する学識経験者が加わる合議体で審査する。医療の視点だけに偏らないようにしているわけだ。では、ほかの選択肢がなぜ違うかも確認しよう。まず要介護認定はどうかな。
医学生医学生
介護保険の保険者は市町村なので、市町村が認定するんでしたよね。一次判定がコンピュータで、二次判定が介護認定審査会でした。
ドクタードクター
その通り。主治医意見書も二次判定で使われる。精神保健福祉センターは関与しない。次に障害年金の認定はどうだろう。
医学生医学生
精神障害も障害年金の対象になると聞いたので、センターが関わりそうな気もします。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。障害年金は国民年金法・厚生年金保険法に基づく公的年金給付で、障害の程度の認定は日本年金機構が認定医の審査を踏まえて行う。センターが判定するのは精神障害者保健福祉手帳のほうだ。手帳と年金を混同しないように気をつけよう。
医学生医学生
麻薬の取り締まりはどうですか。センターは依存症の相談もしていると聞きました。
ドクタードクター
相談や回復支援は確かにセンターの大事な仕事だ。でも取り締まり、つまり捜査や摘発の権限はない。麻薬及び向精神薬取締法などに基づいて、地方厚生局麻薬取締部の麻薬取締官や都道府県の麻薬取締員、警察が中心となって行う。支援と取り締まりは別の機関、と覚えておくといい。
医学生医学生
心神喪失者の精神鑑定は、精神医学の講義で医療観察法とセットで習いました。あれは裁判所の仕事ですよね。
ドクタードクター
そう。刑事事件の精神鑑定は、裁判所や検察官の依頼・命令を受けた精神科医が鑑定医として行う。医療観察法でも裁判所が命じた鑑定医が鑑定し、その結果を踏まえて裁判官と精神保健審判員の合議体が入院や通院などの処遇を決める。鑑定するのは鑑定医、処遇を決めるのは合議体、と役割を分けて押さえておこう。
医学生医学生
結局、「精神」という言葉がついていても、センターの業務とは限らないということですね。
ドクタードクター
まさにそこが本問の教訓だね。臨床の注意点としては、医療保護入院や措置入院に関わる医師は、届出や定期病状報告がそのまま審査会で審査されることを意識しておく必要がある。記載が不十分だと、入院の妥当性を説明できないからね。また、患者さんや家族から退院したいと相談されたら、退院請求という権利があることを伝えるのも大切だ。措置入院の決定は都道府県知事(指定都市市長)で、精神保健指定医2名以上の診察結果の一致が必要という点もあわせて覚えておこう。
医学生医学生
届出書類は事務作業だと思っていましたが、患者さんの人権を守る仕組みの一部なんですね。

まとめ

精神保健福祉センターは精神保健福祉法に基づき都道府県・指定都市に設置される精神保健福祉の技術的中核機関で、保健所や市町村への技術支援、人材育成、普及啓発、困難事例の相談などを担います。法律上の固有業務として、精神医療審査会の事務と、精神障害者保健福祉手帳・自立支援医療(精神通院医療)の判定があります。精神医療審査会は、医療保護入院や措置入院の届出・定期病状報告、退院請求・処遇改善請求を第三者の立場で審査し、非自発的入院を受ける人の人権を守る機関です。要介護認定は市町村、障害年金は日本年金機構、麻薬の取り締まりは麻薬取締部や警察、精神鑑定は裁判所などの依頼を受けた鑑定医が担うため、センターの業務ではありません。「どの法律に基づき、どの機関が担うか」を整理する習慣は、公衆衛生の行政分野全般を理解し、臨床で書類や制度を正しく扱うための基礎になります。

解答・解説

正解はeです

精神保健福祉センターは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第6条に基づき、都道府県と指定都市に設置される精神保健福祉の専門機関である。地域の精神保健福祉活動を技術面で支える「技術的中核機関」と位置づけられ、保健所や市町村に対する技術指導・援助、人材育成、普及啓発、調査研究、複雑・困難な事例の相談などを担う。 さらに、法律上この機関に割り当てられた固有の業務として、(1)精神医療審査会の事務、(2)精神障害者保健福祉手帳の交付申請と自立支援医療(精神通院医療)の支給認定に関する専門的な判定、がある。 本問は、各選択肢の業務を「どの法律に基づき、どの機関が担当するか」で整理すると解ける。要介護認定は介護保険法(市町村)、障害年金は国民年金法・厚生年金保険法(日本年金機構)、麻薬の取り締まりは麻薬及び向精神薬取締法など(麻薬取締部・警察など)、精神鑑定は刑事手続や心神喪失者等医療観察法(裁判所・検察官の依頼を受けた鑑定医)の領域であり、精神保健福祉法上のセンター業務に当たるのは精神医療審査会の事務だけである。

選択肢考察

  1. ×a.  要介護認定

    要介護認定は介護保険法に基づき、保険者である市町村(特別区を含む)が行う。訪問調査の結果をコンピュータで処理する一次判定と、主治医意見書などを加味して市町村に置かれる介護認定審査会が行う二次判定を経て、市町村が認定する。精神保健福祉センターは関与しない。

  2. ×b.  障害年金の認定

    障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)は国民年金法・厚生年金保険法に基づく公的年金給付であり、障害の程度の認定は日本年金機構が医師(認定医)の審査を踏まえて行う。精神障害も対象となるが、センターは関与しない。なお、センターが判定を行うのは精神障害者保健福祉手帳であり、障害年金と混同しないよう注意する。

  3. ×c.  麻薬の取り締まり

    麻薬の取り締まりは、麻薬及び向精神薬取締法などに基づき、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部の麻薬取締官、都道府県の麻薬取締員、警察が中心となって行う。水際対策には税関や海上保安庁なども関与する。精神保健福祉センターは薬物依存症に関する相談や回復支援を行うことはあるが、取り締まり(捜査・摘発)の権限はない。

  4. ×d.  心神喪失者の精神鑑定

    刑事事件における精神鑑定は、裁判所や検察官などの依頼・命令を受けた精神科医(鑑定医)が行う。また心神喪失者等医療観察法では、裁判所の命じた鑑定医が鑑定を行い、その結果を踏まえて裁判官と精神保健審判員(精神科医)の合議体が入院・通院などの処遇を決定する。いずれも精神保健福祉センターの業務ではない。

  5. ○e.  精神医療審査会の事務

    精神保健福祉法第6条で、精神医療審査会の事務は精神保健福祉センターの業務と定められている。精神医療審査会は都道府県・指定都市に置かれ、医療保護入院の届出や措置入院・医療保護入院の定期病状報告の審査、入院者や家族からの退院請求・処遇改善請求の審査を行い、本人の意思によらない入院の妥当性を第三者の立場から確認して人権を守る機関である。センターはその審査に関わる事務を担う。

精神保健福祉センターの主な業務

・企画立案(都道府県の精神保健福祉施策への提言) ・技術指導・技術援助(保健所、市町村、関係機関へ) ・人材育成(関係職員への研修) ・普及啓発 ・調査研究、統計資料の収集・整理 ・精神保健福祉相談(複雑・困難な事例、依存症、ひきこもり、自殺対策など) ・組織育成(家族会、当事者団体など) ・精神医療審査会の審査に関する事務 ・精神障害者保健福祉手帳の交付申請および自立支援医療(精神通院医療)の支給認定に関する判定

精神医療審査会

・設置:都道府県・指定都市 ・構成:精神保健指定医、法律に関し学識経験を有する者、精神障害者の保健または福祉に関し学識経験を有する者からなる合議体で審査する。 ・審査対象:医療保護入院の入院届、措置入院・医療保護入院者の定期病状報告、退院請求・処遇改善請求

精神保健福祉センターと保健所の違い

・精神保健福祉センター:精神保健福祉法に基づく。都道府県・指定都市に設置。精神保健福祉の技術的中核機関。 ・保健所:地域保健法に基づく。都道府県・指定都市・中核市などに設置。地域保健の広域的・専門的・技術的拠点として、精神保健福祉相談、訪問指導、措置入院に関する事務などを行う。

関連する機関と業務の整理

・措置入院の決定:都道府県知事(指定都市市長)。精神保健指定医2名以上の診察結果の一致が必要。 ・要介護認定:市町村(介護認定審査会) ・障害支援区分の認定:市町村(市町村審査会) ・障害年金:日本年金機構 ・医療観察法の処遇決定:地方裁判所の合議体(裁判官+精神保健審判員)

POINT

・精神保健福祉センターは精神保健福祉法に基づき、都道府県・指定都市に設置される技術的中核機関。 ・センター固有の業務:精神医療審査会の事務、精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療(精神通院医療)の判定。 ・精神医療審査会は非自発的入院(医療保護入院・措置入院)の妥当性、退院請求・処遇改善請求を審査する。 ・要介護認定は市町村、障害年金は日本年金機構、麻薬取締りは麻薬取締部・警察、精神鑑定は裁判所等の依頼を受けた鑑定医と区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。