65歳からのワクチン―A類とB類の違いで解く高齢者の定期接種
第119回医師国家試験 A問題 第14問
国試問題にチャレンジ
65歳以上で定期接種の対象となるワクチンはどれか。2つ選べ。
- a.風疹ワクチン
- b.B型肝炎ワクチン
- c.髄膜炎菌ワクチン
- d.肺炎球菌ワクチン
- e.インフルエンザワクチン
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
定期接種は予防接種法に基づき市町村が行うもので、集団予防を主目的とし主に小児が対象のA類疾病と、個人の重症化予防を主目的とし主に高齢者が対象のB類疾病に分けられます。65歳以上が対象となるのはB類で、インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症が代表であり、近年は新型コロナウイルス感染症と帯状疱疹も加わりました。風疹(MRワクチン)とB型肝炎は小児を対象とするA類、髄膜炎菌は任意接種です。B類には努力義務や接種勧奨がないため、本人の希望に基づいて接種します。高齢者ではインフルエンザ後の二次性細菌性肺炎が問題となるため、制度の枠組みとあわせて接種の意義を説明できることが、外来診療や公衆衛生の実践につながります。
解答・解説
正解はd, eです
予防接種法に基づく定期接種の対象疾病と、その対象年齢を問う問題である。
考え方
定期接種は、予防接種法に基づいて市町村が実施主体となって行う予防接種で、A類疾病とB類疾病に分けられる。 ・A類疾病:集団予防(流行の阻止)や重篤な疾患の予防を主な目的とする。主に乳幼児・小児が対象で、対象者には接種の努力義務があり、国・自治体は接種を勧奨する。費用は原則として公費負担である。 ・B類疾病:主に個人の発病・重症化の予防を目的とし、その積み重ねとして間接的に集団予防にも役立つものである。主に高齢者が対象で、努力義務や接種勧奨はなく、本人が希望する場合に接種する。費用は一部自己負担となることが多い。 65歳以上の高齢者が対象となるのはB類疾病であり、代表がインフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症である。そのほか、近年は新型コロナウイルス感染症(2024年度から)、帯状疱疹(2025年度から)もB類として高齢者の定期接種に加わった。選択肢の中ではd・eが該当する。
選択肢考察
- ×a. 風疹ワクチン
風疹はA類疾病で、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンとして定期接種が行われる。対象は第1期が1歳児、第2期が小学校就学前の1年間の幼児で、計2回接種する。先天性風疹症候群の予防を目的に、抗体保有率の低い世代の成人男性を対象とした期限付きの追加的対策(第5期)も行われたが、65歳以上の高齢者を対象とする定期接種ではない。なお、生ワクチンであるため妊婦には接種できない。
- ×b. B型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチンは2016年10月からA類疾病の定期接種に加わった。対象は1歳に至るまでの乳児で、通常は生後2か月から開始し、計3回接種する。母子感染予防(HBs抗原陽性の母親から生まれた児への出生直後の接種とHBIG投与)は健康保険で行われ、定期接種の枠外である。医療従事者などの成人が受ける接種は任意接種であり、65歳以上を対象とする定期接種はない。
- ×c. 髄膜炎菌ワクチン
髄膜炎菌感染症は予防接種法の定期接種の対象疾病に含まれておらず、髄膜炎菌ワクチンは任意接種である。脾臓摘出後や無脾症の患者、補体阻害薬(エクリズマブなど)の使用者、流行地への渡航者、寮などで集団生活を送る人などにハイリスク者として接種が推奨される。年齢を問わず定期接種の対象ではない。
- ○d. 肺炎球菌ワクチン
高齢者の肺炎球菌感染症はB類疾病に指定されており、65歳の者が定期接種の対象である。加えて、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能に、日常生活が極度に制限される程度の障害がある者も対象となる。以前は65歳を過ぎた世代にも5歳刻みで接種機会を設ける経過措置があったが、2023年度末で終了した。肺炎球菌は市中肺炎の最も頻度の高い起炎菌であり、高齢者の肺炎や侵襲性肺炎球菌感染症(菌血症・髄膜炎など)の予防を目的とする。なお、小児の肺炎球菌感染症はA類疾病として結合型ワクチンの定期接種が別に行われている。
- ○e. インフルエンザワクチン
季節性インフルエンザはB類疾病に指定されており、65歳以上の者、および60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはHIVによる免疫機能に高度の障害がある者が定期接種の対象である。毎年の流行株に合わせてワクチンが更新されるため、流行期前(通常10〜12月頃)に年1回接種する。高齢者では発病そのものより重症化・死亡の予防効果が重視される。小児のインフルエンザワクチンは定期接種ではなく任意接種である。
定期接種と任意接種
・定期接種:予防接種法に基づき市町村が実施する。健康被害が生じた場合は、同法に基づく予防接種健康被害救済制度の対象となる。 ・任意接種:対象疾病・対象年齢以外で希望者が受ける接種。費用は原則自己負担で、健康被害は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用被害救済制度の対象となる。
主な定期接種の対象疾病
・A類疾病(主に小児):ジフテリア、百日咳、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)、Hib(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、B型肝炎、ロタウイルス感染症、結核(BCG)、麻疹、風疹、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症など。ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・Hibは5種混合ワクチンとしてまとめて接種されるようになった。 ・B類疾病(主に高齢者):インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症、新型コロナウイルス感染症、帯状疱疹。いずれも原則65歳(以上)と、60〜64歳の一定の基礎疾患・障害を有する者が対象である(帯状疱疹の60〜64歳はHIVによる免疫機能障害を有する者)。
高齢者に定期接種を行う理由
高齢者は免疫機能の低下(免疫老化)により、感染症にかかりやすく重症化しやすい。インフルエンザ罹患後には二次性の細菌性肺炎(肺炎球菌や黄色ブドウ球菌など)を合併しやすく、肺炎は高齢者の主要な死因の一つである。そのため、インフルエンザと肺炎球菌のワクチンを組み合わせて接種することが勧められる。
POINT
・65歳以上が対象となる定期接種はB類疾病:インフルエンザ、肺炎球菌(高齢者)、新型コロナ、帯状疱疹。 ・B類は個人の重症化予防が主目的で、努力義務・接種勧奨はない。A類は集団予防が主目的で努力義務がある。 ・高齢者肺炎球菌は「65歳」と60〜64歳の高度障害者、インフルエンザは「65歳以上」と60〜64歳の高度障害者。 ・MR(1歳・就学前)、B型肝炎(1歳未満)は小児のA類。髄膜炎菌は任意接種。
