財布のメモが教えてくれた最優先検査―血小板減少患者の意識障害と頭部CT
第118回医師国家試験 E問題 第28問
国試問題にチャレンジ
An ambulance brought a 28-year-old man to the emergency room. He was found on the street unconscious. In his wallet, he had a memo stating, “I have thrombocytopenia from aplastic anemia. If I pass out, please obtain a CT scan to rule out intracranial hemorrhage immediately. Thank you in advance.” Which test should you order next?
- a.head CT
- b.brain MRI
- c.serum alcohol level
- d.serum ammonia level
- e.electroencephalogram
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
血小板減少など出血傾向のある患者に原因不明の意識障害が生じた場合は、まず頭蓋内出血を疑い、単純頭部CTで速やかに評価します。頭部CTは撮影が短時間で済み、急性期の出血を高吸収域として明瞭に描出できるため、MRIより初期評価に適しています。アルコール中毒、肝性脳症、てんかん発作なども意識障害の鑑別に入りますが、検査の優先順位は「検査前確率」と「見逃したときの重篤性・緊急性」で決めるのが原則で、飲酒があっても頭蓋内出血は否定できません。再生不良性貧血は造血幹細胞の減少による汎血球減少症であり、血小板が著しく減少すると致死的な出血を起こしうることを押さえておきましょう。英語問題では thrombocytopenia、aplastic anemia、intracranial hemorrhage などの基本語彙を確実に読み取ることが、正しい臨床判断への第一歩になります。
解答・解説
正解はaです
問題文の要旨
28歳の男性が路上で意識のない状態で見つかり、救急車で搬送された。財布の中には「再生不良性貧血による血小板減少がある。意識を失っていたら、頭蓋内出血を除外するためにすぐCTを撮ってほしい」という本人のメモがあった。次に行うべき検査を問う英語の臨床問題である。
所見の整理
・若年男性の意識障害(路上で発見、経過や目撃情報は不明) ・基礎疾患として再生不良性貧血があり、血小板減少をきたしている ・本人がメモで頭蓋内出血の危険性を自覚し、緊急の頭部CTを依頼している
診断に至るプロセス
再生不良性貧血は骨髄の造血幹細胞が減少し、赤血球・白血球・血小板がいずれも減る(汎血球減少)疾患である。血小板が著しく減ると、とくに数万/μL未満、さらに1万/μL前後以下では、外傷がなくても重い出血を起こしうる。中でも頭蓋内出血(脳内出血、くも膜下出血、硬膜下血腫など)は致死的になりやすく、血小板減少患者に起きた原因不明の意識障害ではまず考えなければならない。また路上で倒れた際に頭部を打っていれば、外傷性の頭蓋内出血も加わりうる。 意識障害の鑑別は幅広く(低血糖、アルコール・薬物中毒、肝性脳症、てんかん発作、脳梗塞など)、実際の救急診療ではABCの安定化と同時に血糖測定などの簡便な評価も並行して行う。しかし検査の優先順位を考えるときは、「起こりやすさ(検査前確率)」と「見逃したときの重篤性・緊急性」の両面から判断する。本例では頭蓋内出血がその両方で最上位に来るため、最初に確認すべきである。
設問への考え方
急性期の頭蓋内出血を短時間で確実に評価できる画像検査は単純頭部CTである。出血は撮影直後から高吸収域(白く写る)として描出され、撮影時間も数分以内と短く、全身状態の不安定な患者にも行いやすい。本人の希望とも一致しており、次に行うべき検査は頭部CTである。出血が確認されれば、血小板輸血や脳神経外科へのコンサルトなど、治療方針の決定に直結する。
選択肢考察
- ○a. head CT
頭部CTは急性期の頭蓋内出血を高い感度で描出でき、撮影が数分で終わり、多くの救急外来ですぐに実施できる。血小板減少患者の意識障害では頭蓋内出血の有無を最優先で確かめる必要があり、その結果が血小板輸血や外科的処置の判断に直結するため、次に行うべき検査として最も適切である。
- ×b. brain MRI
MRIは急性期脳梗塞(拡散強調像で早期から描出される)や小さな病変の検出に優れる。しかし撮影に時間がかかり、意識障害で不安定な患者の監視や対応が難しく、金属類の確認も必要であるため、救急の初期検査には向かない。超急性期の出血の評価ではCTが第一選択である。28歳の血小板減少患者で、頭蓋内出血より先に脳梗塞を疑う根拠もない。
- ×c. serum alcohol level
急性アルコール中毒は路上で発見される意識障害の原因として重要な鑑別疾患である。しかし本例では血小板減少という出血のリスクが明らかであり、致死的な頭蓋内出血の除外を優先すべきである。また飲酒していても頭蓋内出血を合併していることは珍しくなく、血中アルコールが高値でも出血を否定できない。
- ×d. serum ammonia level
血中アンモニアの上昇は肝硬変などによる肝性脳症や、バルプロ酸による高アンモニア血症の評価に用いられ、意識障害の鑑別には入る。しかし本例には肝疾患や該当する薬剤の情報がなく、頭蓋内出血より先に調べる理由はない。
- ×e. electroencephalogram
脳波は非けいれん性てんかん重積状態など、脳波に特徴的な異常が現れる意識障害の診断に役立つ。しかし頭蓋内出血の有無は脳波では判断できず、準備や記録にも時間がかかる。頭部CTで構造的病変を除外した後に必要に応じて行う検査である。
再生不良性貧血の概要
造血幹細胞が減少して骨髄が低形成となり、汎血球減少をきたす疾患である。多くは免疫機序(T細胞による造血幹細胞の傷害)によると考えられている。症状は貧血による動悸・息切れ、好中球減少による感染症、血小板減少による出血(皮下出血、鼻出血、歯肉出血など)であり、重症例では頭蓋内出血が死因となりうる。治療は重症度に応じて、免疫抑制療法(抗胸腺細胞グロブリン、シクロスポリン)、トロンボポエチン受容体作動薬(エルトロンボパグ、ロミプロスチム)、同種造血幹細胞移植、輸血などの支持療法を組み合わせる。
意識障害の鑑別の考え方
原因の覚え方として「AIUEOTIPS」がよく使われる。A:アルコール、I:インスリン(低血糖・高血糖)、U:尿毒症、E:内分泌・電解質異常・脳症(肝性脳症など)、O:薬物・低酸素、T:外傷・体温異常、I:感染症、P:精神疾患、S:脳卒中・てんかん発作・ショック。実際には頭部CT、血糖、血液ガス、血液検査などを短時間で並行して進めるが、病歴から検査前確率が高く、かつ見逃すと致命的な原因を最優先で確認するのが原則である。
頭部CTとMRIの使い分け
・頭部CT:短時間で撮影でき、急性期の出血は高吸収域として明瞭に写る。頭部外傷や意識障害の初期評価に用いる。 ・頭部MRI:急性期脳梗塞(拡散強調像)、脳幹や後頭蓋窩の病変、脳炎などの評価に優れる。撮影時間が長く、重症患者の初期評価には不向きである。
血小板減少と頭蓋内出血
血小板数が少ないほど自然出血の危険は高まり、とくに1万/μL前後以下では重い出血を起こしやすい。頭蓋内出血が判明した場合は、血小板輸血による血小板数の補正と、脳神経外科的評価を急ぐ。
POINT
・血小板減少など出血傾向のある患者の意識障害では、まず頭蓋内出血を疑う。 ・急性期頭蓋内出血の第一選択の検査は単純頭部CTである(短時間で撮影でき、出血は高吸収域として写る)。 ・意識障害の検査の優先順位は「検査前確率」と「見逃したときの重篤性・緊急性」で決める。 ・英語の語彙:thrombocytopenia=血小板減少症、aplastic anemia=再生不良性貧血、intracranial hemorrhage=頭蓋内出血、pass out=意識を失う。
