蕁麻疹は誰のサイン?―病態から読み解くショック4分類と症候の対応
第118回医師国家試験 E問題 第25問
国試問題にチャレンジ
ショックと症候の組合せで誤っているのはどれか。
- a.出血性ショック ―― 頻脈
- b.心原性ショック ―― 乏尿
- c.神経原性ショック ―― 徐脈
- d.敗血症性ショック ―― 蕁麻疹
- e.アナフィラキシーショック ―― 喉頭浮腫
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
ショックは組織への酸素供給が需要に見合わなくなった急性循環不全で、循環血液量減少性、心原性、血液分布異常性、心外閉塞・拘束性の4型に分けられます。多くのショックでは交感神経の代償により頻脈と末梢血管収縮が起こり、腎血流低下から乏尿となりますが、交感神経が遮断される神経原性ショックでは低血圧にもかかわらず徐脈と皮膚温暖を呈します。蕁麻疹や喉頭浮腫はマスト細胞由来のメディエーターによるアナフィラキシーの特徴であり、敗血症性ショックの症候ではありません。敗血症性ショック初期のwarm shockのように皮膚が温かいショックもあるため、血圧の絶対値だけでなく心拍数・意識・尿量・乳酸値などを総合して判断することが重要です。症候を病態と代償反応から導く考え方は、救急の現場で病型を素早く見極め、適切な治療につなげる土台になります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
ショックの各病型について、その病態から生じる典型的な症候を正しく結びつけられるかを問う問題である。「誤っているのはどれか」型なので、病態と合わない組合せを一つ選ぶ。
ショックの考え方
ショックとは、組織への酸素供給が需要に見合わなくなり、臓器の機能障害に陥った急性の循環不全である。血圧は「心拍出量×体血管抵抗」で決まり、心拍出量は「1回拍出量×心拍数」で決まる。どの要素が障害されるかによって、ショックは次の4型に分けられる。 ・循環血液量減少性ショック(出血性など):前負荷の低下 ・心原性ショック:心臓のポンプ機能の低下 ・血液分布異常性ショック(敗血症性、アナフィラキシー、神経原性):末梢血管の拡張による相対的な血液の偏在 ・心外閉塞・拘束性ショック(心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓症):心臓の外からの充満・駆出の障害
症候を考える手がかり
各病型の症候は、障害の原因と、それに対する生体の代償反応から導ける。多くのショックでは交感神経が亢進して頻脈・末梢血管収縮(冷汗・皮膚蒼白)が起こり、腎血流の低下によって乏尿となる。例外として押さえるべきなのは、交感神経そのものが遮断される神経原性ショック(徐脈・皮膚温暖)と、血管が拡張する敗血症性ショック初期(warm shock)である。また、皮膚症状(蕁麻疹)や喉頭浮腫はマスト細胞・好塩基球からのメディエーター放出によるアナフィラキシーに特徴的であり、ほかのショックの症候とは考えない。
選択肢考察
- ×a. 出血性ショック ―― 頻脈
正しい組合せである。出血で循環血液量が減ると静脈還流(前負荷)が低下し、1回拍出量が減る。圧受容器反射によって交感神経が亢進し、心拍数を増やして心拍出量を保とうとするため頻脈となる。頻脈は収縮期血圧が下がる前から現れることが多く、出血性ショックの早期徴候として重要である。あわせて末梢血管の収縮により皮膚蒼白・冷汗・毛細血管再充満時間の延長がみられる。
- ×b. 心原性ショック ―― 乏尿
正しい組合せである。心筋梗塞などで心臓のポンプ機能が低下すると心拍出量が減り、腎血流量と糸球体濾過量が低下する。さらに交感神経系やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化によりナトリウムと水が再吸収されるため、尿量が減少する(乏尿:1日400mL未満、あるいは0.5mL/kg/時未満が目安)。尿量は臓器灌流の指標であり、乏尿はショック全般にみられる所見である。
- ×c. 神経原性ショック ―― 徐脈
正しい組合せである。頸髄や上位胸髄(おおむねT6より上)の損傷では、そこから出る交感神経の経路が遮断される。末梢血管の緊張が失われて血管が拡張し血圧が低下する一方、心臓への交感神経刺激も失われ、迷走神経(副交感神経)の作用が相対的に優位になるため、低血圧にもかかわらず徐脈となる。皮膚は血管拡張のため温かく乾燥していることが多い。低血圧と頻脈がそろわない点が、ほかのショックとの鑑別で重要である。
- ○d. 敗血症性ショック ―― 蕁麻疹
誤った組合せであり、これが正解である。敗血症性ショックは感染に対する生体反応の調節不全によって起こり、炎症性メディエーターや一酸化窒素による末梢血管拡張と血管透過性亢進が主病態である。初期には末梢が温かいwarm shock(高心拍出量・低血管抵抗)を呈し、発熱、頻脈、頻呼吸、意識障害、乳酸値の上昇などがみられる。進行すると末梢が冷たいcold shockに移行する。蕁麻疹はIgE介在性のマスト細胞からのヒスタミン放出などによる皮膚症状であり、アナフィラキシーに特徴的な所見で、敗血症性ショックの症候ではない。
- ×e. アナフィラキシーショック ―― 喉頭浮腫
正しい組合せである。アナフィラキシーでは、マスト細胞や好塩基球からヒスタミン、ロイコトリエンなどが放出され、血管拡張と血管透過性亢進が全身で起こる。喉頭や咽頭の粘膜に浮腫が生じると、嗄声、吸気性喘鳴(stridor)、上気道閉塞をきたし、窒息の危険がある。治療の第一選択はアドレナリン筋注(成人0.3~0.5mgを大腿前外側に)であり、気道閉塞が切迫していれば気管挿管や輪状甲状靱帯切開による気道確保を行う。
ショックの4分類と主な症候
・循環血液量減少性(出血、脱水、熱傷):頻脈、皮膚蒼白・冷汗、頸静脈虚脱、乏尿 ・心原性(急性心筋梗塞、重症不整脈、心筋炎):頻脈(または徐脈性不整脈)、冷汗、頸静脈怒張、肺うっ血による呼吸困難・湿性ラ音 ・血液分布異常性 敗血症性:発熱(または低体温)、頻脈、頻呼吸、初期は皮膚温暖(warm shock) アナフィラキシー:蕁麻疹・紅斑・血管性浮腫、喉頭浮腫、喘鳴、消化器症状、皮膚温暖 神経原性:徐脈、皮膚温暖・乾燥、損傷レベル以下の運動・感覚麻痺 ・心外閉塞・拘束性(心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓症):頸静脈怒張、頻脈、奇脈(タンポナーデ)、呼吸音の左右差・気管偏位(緊張性気胸)
ショックの5P
古典的なショック徴候として、蒼白(pallor)、虚脱(prostration)、冷汗(perspiration)、脈拍触知不能(pulselessness)、呼吸不全(pulmonary insufficiency)が知られる。ただし、血液分布異常性ショックでは皮膚が温かく、冷汗や蒼白を欠くことがある。
血圧だけで判断しない
ショックは低血圧を伴うことが多いが、代償期には血圧が保たれていることもある。普段の血圧が高い患者では「正常範囲」の血圧でもショックのことがあるため、平常時の血圧との比較、心拍数、意識状態、皮膚所見、尿量、乳酸値などを総合して判断する。ショック指数(心拍数÷収縮期血圧)は出血量の推定に用いられ、1.0前後で約1L(循環血液量の約20%)の出血が目安とされる。
POINT
・ショックの多くは交感神経亢進による頻脈と、腎血流低下による乏尿を伴う ・神経原性ショックは交感神経遮断により「低血圧+徐脈+皮膚温暖」となる ・敗血症性ショックの初期はwarm shock(末梢血管拡張、皮膚温暖) ・蕁麻疹・喉頭浮腫はアナフィラキシーの特徴であり、治療はアドレナリン筋注 ・ショックの判断は血圧の絶対値だけでなく、平常時との比較や臓器灌流所見で行う
