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血管が開きすぎたショック―4つの指標で見抜くアナフィラキシーの血行動態

第113回医師国家試験 B問題 第7問

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第113回 B問題 第7問

心拍出量増加,体血管抵抗減少,中心静脈圧低下および肺動脈楔入圧低下の血行動態を示すのはどれか。

  1. a.緊張性気胸
  2. b.出血性ショック
  3. c.心原性ショック
  4. d.心タンポナーデ
  5. e.アナフィラキシーショック

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はショックの分類と血行動態の問題だ。心拍出量、体血管抵抗、中心静脈圧、肺動脈楔入圧という4つの指標の組合せから、どのタイプのショックかを判別する。カギは「心拍出量と体血管抵抗がどちら向きに動いているか」だよ。まず、それぞれの指標が何を表しているか確認しておこう。
医学生医学生
中心静脈圧は右心系の前負荷、肺動脈楔入圧は左房圧の近似で左心系の前負荷、ですよね。生理学の講義でスワン・ガンツカテーテルの図を見ました。
ドクタードクター
完璧だ。体血管抵抗は主に細動脈の抵抗で、血管が収縮すれば上がり、拡張すれば下がる。平均血圧はおおよそ心拍出量×体血管抵抗だから、血圧を保つにはどちらかが頑張る必要がある。ではショックの4分類は言えるかな。
医学生医学生
循環血液量減少性、心原性、心外閉塞・拘束性、血液分布異常性の4つです。
ドクタードクター
そう。ここで大事な原則がある。最初の3つは、どれも心拍出量が下がり、それを補うために交感神経が緊張して血管が締まり、体血管抵抗は上がる。心拍出量が増えて体血管抵抗が下がるのは、血液分布異常性ショックだけなんだ。
医学生医学生
ということは、選択肢の中ではアナフィラキシーショックですね。でも、ショックなのに心拍出量が増えるというのがピンときません。
ドクタードクター
そこを理解するのが本題だ。アナフィラキシーでは、マスト細胞や好塩基球からヒスタミンやロイコトリエンなどが一斉に放出され、全身の血管が拡張する。後負荷が下がるので心臓は送り出しやすくなり、さらに代償性の頻脈も加わって、初期には心拍出量が増えるんだ。それでも血管が開きすぎているから血圧は保てない。
医学生医学生
中心静脈圧が下がるのは、血管が開いて血液の通りがよくなるからですか。
ドクタードクター
惜しいけど、そこは誤解しやすいポイントだね。拡張した静脈に血液がたまり込むことと、血管透過性亢進で血漿が血管外に漏れ出すことで、心臓に戻ってくる血液が減るんだ。だから中心静脈圧も肺動脈楔入圧も下がる。相対的な循環血液量減少と考えるといい。
医学生医学生
なるほど。では出血性ショックも前負荷が下がるので、中心静脈圧と楔入圧の低下は同じですよね。
ドクタードクター
その通り、そこまでは一致する。違うのは心拍出量と体血管抵抗だ。前負荷が減れば1回拍出量が減って心拍出量は下がり、交感神経が血管を締めて体血管抵抗は上がる。皮膚が蒼白で冷たくなるのはそのためだね。
医学生医学生
救急科の実習で、外傷の患者さんの手足が冷たくてびっくりしました。アナフィラキシーだと逆に温かいんですか。
ドクタードクター
血管が拡張しているから、皮膚は紅潮して温かいことが多い。敗血症の初期にみられるwarm shockも同じ考え方だ。次に心原性ショックはどうかな。
医学生医学生
ポンプが弱って心拍出量が下がって、血液が心臓の手前でうっ滞するので楔入圧が上がります。
ドクタードクター
正解。急性心筋梗塞などが代表で、楔入圧の上昇は肺うっ血につながる。右心不全を伴えば中心静脈圧も上がる。体血管抵抗は代償性に上昇するから、設問とはほぼすべて逆になるね。
医学生医学生
緊張性気胸と心タンポナーデは心外閉塞・拘束性ですね。頸静脈怒張があるので中心静脈圧は上がりそうです。
ドクタードクター
いいね。緊張性気胸は胸腔内圧の上昇で大静脈が圧迫されて静脈還流が妨げられ、心タンポナーデは心膜腔の液体で心臓が拡張できなくなる。どちらも心拍出量は下がり、体血管抵抗は上がり、中心静脈圧は上昇する。タンポナーデでは心膜腔の圧が全心腔にかかるので、中心静脈圧や楔入圧などの拡張期圧が等しい値に近づくのも特徴だ。Beckの三徴や奇脈も一緒に覚えておこう。
医学生医学生
血管が開くかどうか、前負荷が増えるか減るか、の2軸で整理すると覚えやすいですね。
ドクタードクター
その整理で大丈夫。最後に臨床の注意点だ。アナフィラキシーの第一選択はアドレナリン筋注で、成人なら0.3〜0.5mgを大腿外側に。あわせて大量の輸液を行う。血漿漏出が高度になると循環血液量が大きく減って、心拍出量も下がりうることは知っておきたい。また同じ血液分布異常性でも、高位脊髄損傷による神経原性ショックは交感神経が遮断されるので、頻脈ではなく徐脈を伴うのが特徴だよ。
医学生医学生
血圧が低いのに脈が遅かったら、神経原性ショックも考えるということですね。
ドクタードクター
その通り。数値の組合せから病態を読み解けると、救急の現場で治療の方向性を素早く決められるようになるよ。

まとめ

ショックは循環血液量減少性、心原性、心外閉塞・拘束性、血液分布異常性の4つに分類され、前3者はいずれも心拍出量低下と代償性の体血管抵抗上昇を示します。心拍出量が増加し体血管抵抗が低下するのは血液分布異常性ショックだけで、アナフィラキシーではヒスタミンなどのメディエーターによる血管拡張と血管透過性亢進により、静脈還流が減って中心静脈圧・肺動脈楔入圧も低下します。前負荷の指標は、出血性ショックでは低下し、心原性ショックや緊張性気胸・心タンポナーデでは上昇するため、心拍出量・体血管抵抗と組み合わせれば鑑別できます。アナフィラキシーの治療はアドレナリン筋注と大量輸液が基本で、同じ血液分布異常性でも神経原性ショックは徐脈を伴う点が特徴です。各指標の意味を理解して血行動態を読み解く力は、救急・集中治療での迅速な判断の土台になります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

ショックの4分類それぞれに特徴的な血行動態(心拍出量、体血管抵抗、中心静脈圧、肺動脈楔入圧)を理解し、示された組合せからショックの種類を判別できるかが問われている。

各指標の意味

・心拍出量〈CO〉: 心臓が1分間に送り出す血液量。心拍数×1回拍出量で決まる。 ・体血管抵抗〈SVR〉: 全身の末梢血管(主に細動脈)の抵抗。血管が収縮すると上昇し、拡張すると低下する。平均血圧≒CO×SVRの関係がある。 ・中心静脈圧〈CVP〉: 上大静脈〜右房付近の圧で、右心系の前負荷(右室に戻ってくる血液の量・圧)の指標である。正常はおよそ5〜10cmH2O。 ・肺動脈楔入圧〈PAWP/PCWP〉: 肺動脈カテーテル(スワン・ガンツカテーテル)の先端のバルーンで肺動脈の枝を閉塞したときの圧で、左房圧、すなわち左心系の前負荷を近似する。正常はおよそ6〜12mmHg。

ショックの4分類と血行動態

1. 循環血液量減少性ショック(出血、脱水など): 前負荷が減るためCVP・PCWPが低下し、COも低下する。代償として交感神経が緊張し、SVRは上昇する。 2. 心原性ショック(急性心筋梗塞など): ポンプ機能が低下してCOが低下し、血液が心臓の手前にうっ滞するためPCWP(右室梗塞などではCVPも)が上昇する。SVRは代償性に上昇する。 3. 心外閉塞・拘束性ショック(緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓症): 心臓への流入または心臓からの流出が物理的に妨げられ、COが低下する。上流の静脈圧であるCVPは上昇し、SVRも代償性に上昇する。 4. 血液分布異常性ショック(敗血症、アナフィラキシー、神経原性): 末梢血管が拡張してSVRが低下する。血液が拡張した血管内にとどまり(相対的な循環血液量減少)、血管透過性亢進による血漿の漏出も加わってCVP・PCWPは低下する。一方、後負荷の低下と代償性の頻脈により、COは初期には正常〜増加する(hyperdynamic state)。

考え方

4分類のうち、COが「増加」しSVRが「低下」するのは血液分布異常性ショックだけであり、他の3つはいずれもCO低下・SVR上昇を示す。設問の組合せはこれに一致し、選択肢中の血液分布異常性ショックはアナフィラキシーショックである。

選択肢考察

  1. ×a.  緊張性気胸

    該当しない。緊張性気胸は、胸膜の損傷部が一方向弁として働いて胸腔内に空気がたまり続け、胸腔内圧が著しく上昇した状態である。高い胸腔内圧と縦隔の偏位により大静脈が圧迫・屈曲され、静脈還流が妨げられて心臓に血液が戻らなくなる(心外閉塞・拘束性ショック)。その結果COは低下し、SVRは代償性に上昇する。心臓の手前で血液がうっ滞するためCVPは上昇し、頸静脈怒張がみられる。PCWPも胸腔内圧上昇の影響を受けて高値を示し、設問の血行動態とは逆になる。治療は直ちに胸腔穿刺による脱気と胸腔ドレナージである。

  2. ×b.  出血性ショック

    該当しない。出血性ショックは循環血液量減少性ショックの代表である。血液が失われて静脈還流が減少するため、CVP・PCWPはともに低下する点は設問と一致する。しかし前負荷の減少により1回拍出量が減り、COは低下する。さらに血圧を保とうとして交感神経が緊張し、末梢血管が収縮してSVRは上昇する(皮膚の蒼白・冷感がみられる)。CO増加・SVR減少という設問の条件に合わない。

  3. ×c.  心原性ショック

    該当しない。心原性ショックは、急性心筋梗塞、重症心筋炎、重症不整脈、急性の弁膜症などにより心臓のポンプ機能自体が低下して起こる。COは低下し、代償的にSVRは上昇する。左室から血液を送り出せないため左房圧が上昇してPCWPは上昇し(典型的には18mmHg超)、肺うっ血をきたす。右心不全を伴えばCVPも上昇する。設問の血行動態とはすべて逆である。

  4. ×d.  心タンポナーデ

    該当しない。心タンポナーデは、心膜炎、心破裂、急性大動脈解離、外傷などで心膜腔に液体や血液が貯留し、心臓が外から圧迫されて拡張できなくなった状態で、心外閉塞・拘束性ショックに分類される。心室に血液が十分に充満できないためCOは低下し、SVRは代償性に上昇する。心膜腔の圧が全心腔に等しくかかるため、CVP・右室拡張期圧・PCWPが上昇してほぼ等しい値に近づく(拡張期圧の等圧化)のが特徴である。Beckの三徴(血圧低下、頸静脈怒張、心音減弱)や奇脈がみられ、治療は心嚢穿刺である。

  5. ○e.  アナフィラキシーショック

    設問の血行動態に一致する。アナフィラキシーでは、主にIgEを介した即時型反応などによりマスト細胞や好塩基球が活性化され、ヒスタミン、ロイコトリエン、血小板活性化因子などが一斉に放出される。これらのメディエーターにより全身の末梢血管が拡張してSVRが低下する。同時に血管透過性が亢進して血漿が血管外へ漏れ出し、さらに拡張した静脈に血液がたまるため、心臓へ戻る血液が減ってCVPとPCWPは低下する。一方、後負荷(SVR)の低下と代償性の頻脈によって、COは初期には増加する。この「CO増加・SVR低下・前負荷低下」の組合せが血液分布異常性ショックの特徴である。なお、血漿漏出が高度になると循環血液量が大きく減り、COも低下しうる。治療の第一選択はアドレナリン筋注(成人0.3〜0.5mg、大腿外側)であり、大量の輸液を併用する。

ショックの分類と血行動態の一覧(↑上昇・増加、↓低下・減少)

・循環血液量減少性(出血、脱水、熱傷): CO↓、SVR↑、CVP↓、PCWP↓ ・心原性(心筋梗塞、心筋症、不整脈): CO↓、SVR↑、CVP↑(または正常)、PCWP↑ ・心外閉塞・拘束性(緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓症): CO↓、SVR↑、CVP↑、PCWPは疾患により異なる(タンポナーデ・緊張性気胸では↑、肺塞栓症では左心への流入減少により正常〜↓) ・血液分布異常性(敗血症、アナフィラキシー、神経原性): CO↑(初期、または正常)、SVR↓、CVP↓、PCWP↓

血液分布異常性ショックの各病態

・敗血症性ショック: 初期は末梢が温かいwarm shock(CO増加、SVR低下)を呈し、進行すると心機能低下を伴うcold shockに移行することがある。 ・アナフィラキシーショック: 皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、血管性浮腫)、喘鳴や上気道閉塞、消化器症状を伴うことが多い。 ・神経原性ショック: 高位の脊髄損傷などで交感神経が遮断され、血管拡張によりSVRが低下する。交感神経による心拍数増加が起こらないため、頻脈ではなく徐脈を伴うのが特徴であり、COは増加しないことが多い。

フォレスター分類との関連

急性心筋梗塞後の心機能評価には、心係数(2.2L/分/m2)とPCWP(18mmHg)を境界とするフォレスター分類が用いられる。心原性ショックは低心係数・高PCWPのサブセットIVに相当する。

POINT

・CO増加かつSVR低下を示すショックは血液分布異常性ショック(敗血症、アナフィラキシー)である。 ・他の3分類(循環血液量減少性、心原性、心外閉塞・拘束性)はCO低下・SVR上昇。 ・CVP/PCWPの低下は前負荷減少(循環血液量減少性、血液分布異常性)、上昇は心原性・心外閉塞性で起こる。 ・CVPは右心系、PCWPは左房圧(左心系)の前負荷を反映する。 ・神経原性ショックは血液分布異常性だが徐脈を伴う点が特徴。 ・アナフィラキシーの第一選択治療はアドレナリン筋注。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。