「今日はどうされましたか」の力―開放型の質問が引き出す患者の本音
第113回医師国家試験 B問題 第6問
国試問題にチャレンジ
医療面接で開放型の質問を用いる利点はどれか。
- a.医療面接を短時間で行える。
- b.システムレビューを省略できる。
- c.主訴以外の情報を網羅的に得られる。
- d.認知機能障害のある患者でも情報が得られやすい。
- e.患者が関心を持っている事項を把握しやすくなる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
開放型の質問は「今日はどうされましたか」のように答え方を限定しない問いかけで、患者の関心事や不安、解釈モデル、受診の本当の理由を把握しやすく、誘導が入りにくく信頼関係も築きやすいという利点があります。一方で、時間がかかる、患者が重要と思わない情報は漏れやすい、認知機能障害のある患者では情報を得にくいという短所があり、網羅的な情報収集はシステムレビューや閉鎖型の質問が担います。実際の面接では、中立的質問で導入し、開放型、焦点を絞った質問、閉鎖型へと絞り込む漏斗型の流れが基本です。それぞれの質問法の長所と短所を理解して使い分けることが、正確な診断と患者中心の医療の両立につながります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
医療面接で用いる質問法のうち、開放型の質問〈open-ended question〉が持つ長所を理解しているかが問われている。
開放型の質問とは
「今日はどうされましたか」「その痛みについてお話しいただけますか」のように、答え方を限定せず、患者が自分の言葉で自由に語れる問いかけである。これに対して閉鎖型の質問〈closed question〉は「熱はありますか」「何日前からですか」のように、「はい・いいえ」や一語で答えられる問いである。
開放型の質問の長所と短所
長所: ・患者が何を一番困っているか、何を心配しているか、病気をどう受け止めているか(解釈モデル)など、患者の関心事や考えが自然に語られる。 ・医師の先入観による誘導が入りにくく、予想していなかった情報が得られることがある。 ・患者が「話を聴いてもらえた」と感じやすく、信頼関係(ラポール)の形成に役立つ。 短所: ・話がまとまらなかったり脇道にそれたりしやすく、時間がかかる。 ・患者が重要と思っていない事項は語られないため、情報に抜けが出やすい。 ・言語能力や記憶・判断力が低下している患者では有効に機能しにくい。
考え方
開放型の質問は「患者の視点に立った情報を引き出す」ための方法であり、「効率よく網羅的に情報を集める」ための方法ではない。この違いを押さえれば、患者の関心事の把握を挙げた選択肢が正解とわかる。
選択肢考察
- ×a. 医療面接を短時間で行える。
誤りである。開放型の質問では患者が自由に話すため、診断には直接関係しない話題に広がったり、話が前後したりすることが多い。そのため、一語で答えが返ってくる閉鎖型の質問や、話題を絞った質問に比べて時間がかかるのが普通である。短時間で特定の情報を確認したいときには閉鎖型の質問が適している。
- ×b. システムレビューを省略できる。
誤りである。システムレビュー〈review of systems: ROS〉とは、全身状態、皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経系、精神面など、臓器・器官系ごとに症状の有無を順に確認していく方法である。開放型の質問で得られる情報は患者が自覚し気にしている事項に偏るため、患者が見過ごしている症状を拾い上げるにはシステムレビューが欠かせない。開放型の質問を用いたからといって省略できるものではない。
- ×c. 主訴以外の情報を網羅的に得られる。
誤りである。患者は多くの場合、主訴とそれに関連することに意識が向いており、それ以外の症状や情報を自分から漏れなく話すことはまれである。主訴以外の情報を網羅的に集めるのはシステムレビューや閉鎖型の質問の役割である。開放型の質問は思いがけない情報を引き出すことはあっても、網羅性を保証するものではない。
- ×d. 認知機能障害のある患者でも情報が得られやすい。
誤りである。開放型の質問に答えるには、出来事を思い出し、整理し、言葉で説明する能力が必要である。記憶障害や見当識障害、判断力の低下がある患者ではこれが難しく、まとまった情報を得にくい。こうした患者では「はい・いいえ」で答えられる閉鎖型の質問を用いたり、家族や介護者など周囲の人から情報を得たりする工夫が必要になる。
- ○e. 患者が関心を持っている事項を把握しやすくなる。
開放型の質問の利点として正しい。答え方が限定されないため、患者は自分にとって大切なこと、心配していることを中心に話すことになる。その結果、患者が最も困っている点、受診の本当の理由、病気に対する解釈や不安、期待している対応などを把握しやすくなる。こうした患者中心の情報は、診断の手がかりとなるだけでなく、患者の納得が得られる説明や治療方針の決定、良好な医師患者関係の構築にも役立つ。
医療面接で用いる質問法
・中立的質問: 氏名や生年月日など、答えが一つに決まる事実を尋ねる質問。面接の導入に用いる。 ・開放型の質問: 「どうされましたか」「ほかに気になることはありますか」など、自由に答えてもらう質問。 ・焦点を絞った質問: 「その痛みについて、もう少し詳しく教えてください」など、話題を医師が限定したうえで、内容は自由に答えてもらう質問。 ・閉鎖型の質問: 「吐き気はありますか」「何時ごろからですか」など、はい・いいえや短い語句で答えられる質問。 ・避けるべき質問: 答えを誘導する質問(「痛みは軽くなっていますよね」など)や、一度に複数のことを尋ねる質問。
面接の基本的な流れ
中立的質問で導入し、開放型の質問で患者の問題の全体像と関心事をつかむ。次に焦点を絞った質問で詳細を聴き、最後に閉鎖型の質問やシステムレビューで不足している情報を補い、要約して確認する。開放型から閉鎖型へと徐々に絞り込んでいく流れは「漏斗(じょうご)型」の質問法とも呼ばれる。
関連する面接技法
傾聴、促し(うなずき、相づち)、繰り返し、言い換え、要約、共感的な応答、沈黙の活用などがあり、開放型の質問とあわせて患者の語りを引き出すのに用いる。
POINT
・開放型の質問の利点: 患者の関心事・不安・解釈モデルがわかる、誘導が入りにくい、信頼関係を築きやすい。 ・欠点: 時間がかかる、情報に漏れが出る、認知機能障害のある患者では情報を得にくい。 ・網羅的な情報収集はシステムレビューと閉鎖型の質問で行う。 ・面接は開放型の質問から始め、焦点を絞った質問、閉鎖型の質問へと絞り込む。
