StudyMed医師国家試験

関節だけじゃない関節リウマチ―眼・皮膚・肺に現れる「もう一つの顔」

第118回医師国家試験 A問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第118回 A問題 第14問

関節リウマチの関節外病変はどれか。3つ選べ。

  1. a.上強膜炎
  2. b.皮下結節
  3. c.間質性肺炎
  4. d.逆流性食道炎
  5. e.急速進行性糸球体腎炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチの関節外病変を問う問題だ。関節リウマチは関節の病気というイメージが強いけれど、実は全身の臓器に病変が及ぶことがある。ポイントは、選択肢の病変が「関節リウマチそのものに伴うものか」「別の膠原病や血管炎に特徴的なものか」を見分けることだよ。
医学生医学生
関節リウマチは滑膜の炎症で関節が壊れていく病気、という印象が強くて、関節外病変は正直あまり整理できていません。
ドクタードクター
多くの人がそうだね。まずは臓器ごとに整理しよう。眼なら上強膜炎や強膜炎、皮膚ならリウマトイド結節、肺なら間質性肺炎や胸膜炎、ほかに心膜炎、血管炎による多発単神経炎、慢性炎症による貧血や続発性アミロイドーシスなどがある。
医学生医学生
眼の病変というと、シェーグレン症候群のドライアイを思い浮かべました。
ドクタードクター
それも大事だね。二次性シェーグレン症候群による乾燥性角結膜炎は頻度が高い。そのうえで今回の上強膜炎は、結膜と強膜の間にある血管に富んだ層の炎症で、充血と軽い違和感が主体だ。関節炎の活動性が高い時期にみられやすく、多くは視力障害を残さず軽快する。
医学生医学生
より深い強膜炎になると重くなるんですよね。眼科の実習で、痛みの強さで上強膜炎と強膜炎を区別すると教わりました。
ドクタードクター
その通り。強膜炎は痛みが強く、壊死性強膜炎まで進むと視機能を脅かす。血管炎の合併を示唆する重い所見として扱うんだ。次は皮下結節、つまりリウマトイド結節だ。
医学生医学生
肘の伸側にできるしこりですよね。病理の講義でフィブリノイド壊死の周りを組織球が柵状に並ぶ像を見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。肘頭や前腕伸側、後頭部、アキレス腱部など、圧迫や摩擦を受けやすい部位にできる無痛性の結節で、関節外病変の中でも頻度が高い。リウマトイド因子陽性例や疾患活動性の高い例に多い。メトトレキサート投与中にかえって結節が増えることもあるから、覚えておくといい。
医学生医学生
間質性肺炎は、生命予後に関わるから特に重要だと聞いたことがあります。
ドクタードクター
まさにそこが大事なところだ。関節リウマチの肺病変で最も重要なのが間質性肺炎で、画像ではUIPパターンが比較的多く、NSIPパターンもみられる。喫煙歴のある男性や、リウマトイド因子・抗CCP抗体が高力価の例に多いとされ、関節症状より先に見つかることもある。
医学生医学生
でもリウマチの患者さんの肺に影があったら、メトトレキサートの副作用も心配になりませんか。
ドクタードクター
鋭いね。実臨床ではそれが一番悩ましい。病気そのものの間質性肺炎なのか、メトトレキサートによる薬剤性肺障害なのか、免疫抑制下のニューモシスチス肺炎などの日和見感染なのか、きちんと鑑別しなければならない。ここまでの3つが正解だ。では、逆流性食道炎はどうだろう。
医学生医学生
膠原病で食道といえば強皮症だと思います。
ドクタードクター
正解。全身性強皮症では食道平滑筋の線維化と萎縮で下部食道の蠕動が低下し、下部食道括約筋圧も下がるから胃酸が逆流しやすい。混合性結合組織病でも似た食道運動障害がみられる。関節リウマチ自体は食道の運動障害を起こさないんだ。
医学生医学生
急速進行性糸球体腎炎も、リウマチというよりANCA関連血管炎のイメージです。腎臓内科を回ったとき、半月体形成の腎生検標本を見せてもらいました。
ドクタードクター
その理解で合っている。急速進行性糸球体腎炎の原因は顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎が最も多く、ほかに抗GBM病やループス腎炎が代表的だ。関節リウマチの腎障害は、長年の慢性炎症によるAAアミロイドーシスや、薬剤による膜性腎症・間質性腎炎が中心になる。
医学生医学生
つまり、食道は強皮症、急速進行性糸球体腎炎は血管炎やSLE、と疾患ごとに特徴的な臓器病変をセットで覚えるのがコツですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、血管炎を中心とする重篤な関節外病変を伴い難治性となった関節リウマチを、わが国では悪性関節リウマチと呼び、指定難病になっている。リウマトイド因子が高値で補体が低下しやすく、多発単神経炎、強膜炎、皮膚潰瘍や指趾壊疽、心膜炎、腸管虚血などがみられる。
医学生医学生
関節の診察だけでなく、眼の充血や皮膚の潰瘍、しびれの訴えにも気を配る必要があるということですね。
ドクタードクター
そう。さらに頸椎の環軸椎亜脱臼による頸髄圧迫や、フェルティ症候群のような血液の異常もある。関節リウマチの診療では、関節を診ながら全身を見渡す視点が欠かせないんだ。

まとめ

関節リウマチは滑膜炎による多関節炎が中心ですが、上強膜炎・強膜炎、リウマトイド結節(皮下結節)、間質性肺炎、胸膜炎、心膜炎、多発単神経炎、続発性アミロイドーシスなど多彩な関節外病変を伴います。なかでも間質性肺炎は生命予後を左右し、メトトレキサートによる薬剤性肺障害やニューモシスチス肺炎との鑑別が重要です。一方、逆流性食道炎は全身性強皮症に、急速進行性糸球体腎炎はANCA関連血管炎・抗GBM病・SLEに特徴的であり、関節リウマチの典型的な関節外病変ではありません。血管炎を伴う重症型は悪性関節リウマチとして指定難病に位置づけられます。膠原病ごとに特徴的な臓器病変をセットで整理しておくことが、鑑別と全身管理の両方に役立ちます。

解答・解説

正解はa, b, cです

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、滑膜の慢性炎症によって多関節炎と骨・軟骨破壊をきたす自己免疫疾患である。しかし病変は関節にとどまらず、全身の臓器に及ぶことがある。これを関節外病変(関節外症状)と呼び、眼・皮膚・肺・心膜・血管・神経・血液などに多彩な形で現れる。 本問は、選択肢の各病変が「RAそのものに伴う関節外病変として知られているか」、それとも「他の膠原病や血管炎に特徴的な病変か」を区別できるかを問うている。 考え方としては、次のように整理すると判断しやすい。 ・眼:強膜炎・上強膜炎、二次性シェーグレン症候群による乾燥性角結膜炎 ・皮膚:リウマトイド結節(皮下結節)、血管炎による皮膚潰瘍 ・肺:間質性肺炎、胸膜炎、肺内リウマトイド結節、細気管支炎 ・その他:心膜炎、多発単神経炎、貧血、続発性アミロイドーシスなど 一方、消化管運動障害による逆流性食道炎は全身性強皮症、急速進行性糸球体腎炎はANCA関連血管炎・抗GBM病・ループス腎炎などの代表的病態であり、RAの典型的な関節外病変ではない。

選択肢考察

  1. ○a.  上強膜炎

    上強膜炎は、結膜と強膜の間にある上強膜(強膜表層の血管に富む結合組織)の炎症で、充血と軽い眼痛・違和感を示す。RAの眼病変として代表的であり、関節炎の活動性が高い時期にみられやすい。多くは視力障害を残さず自然に、あるいは点眼治療で軽快する。より深い強膜炎は疼痛が強く、壊死性強膜炎(穿孔性強膜軟化症を含む)に進むと視機能を脅かすため、血管炎の合併を示唆する重い病変として扱う。なお、RAの眼病変としては二次性シェーグレン症候群による乾燥性角結膜炎の頻度も高い。

  2. ○b.  皮下結節

    RAの皮下結節はリウマトイド結節と呼ばれ、患者の20〜30%程度にみられる最も頻度の高い関節外病変の一つである。肘頭の伸側、前腕伸側、膝蓋部、後頭部、アキレス腱部など、圧迫や摩擦を受けやすい部位に生じる、硬め〜弾性のある無痛性の結節である。組織学的には中心部のフィブリノイド壊死を、柵状に並ぶ組織球(類上皮細胞)が取り囲む像を示す。リウマトイド因子(RF)陽性例、疾患活動性の高い例に多い。メトトレキサート投与中に結節が増加することもある(MTX結節症)。

  3. ○c.  間質性肺炎

    間質性肺炎(間質性肺疾患)はRAの肺病変のなかで最も重要なものであり、生命予後を左右する。病理・画像パターンとしては通常型間質性肺炎(UIP)パターンが比較的多く、非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンもみられる。喫煙歴のある男性、高力価のRF・抗CCP抗体陽性例に多いとされ、関節症状に先行して発見される例もある。さらにRA患者の肺病変を評価する際には、治療薬であるメトトレキサートによる薬剤性肺障害や、免疫抑制下でのニューモシスチス肺炎などの日和見感染との鑑別が必要となる。

  4. ×d.  逆流性食道炎

    RA自体は食道の運動障害をきたさず、逆流性食道炎はRAの関節外病変とはされていない。逆流性食道炎を高率に合併する膠原病は全身性強皮症であり、食道平滑筋の線維化・萎縮によって下部食道の蠕動が低下し、下部食道括約筋圧も低下するため胃酸が逆流しやすくなる。混合性結合組織病(MCTD)でも強皮症様の食道運動障害がみられる。なお、RAに血管炎を伴う重症型(悪性関節リウマチ)では腸管虚血や消化管出血がみられることはあるが、逆流性食道炎とは別の病態である。

  5. ×e.  急速進行性糸球体腎炎

    急速進行性糸球体腎炎(RPGN)は、数週〜数か月の経過で腎機能が急速に低下し、病理学的には多数の糸球体に半月体を形成する症候群である。原因としては顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎が最も多く、ほかに抗GBM病、ループス腎炎(SLE)などが代表的である。RAでみられる腎障害は、長期の慢性炎症によるAAアミロイドーシス(続発性アミロイドーシス)や、薬剤(金製剤、ブシラミン、NSAIDsなど)による膜性腎症・間質性腎炎などが主体であり、RPGNはRAの関節外病変として扱われない。

RAの主な関節外病変

・全身症状:発熱、全身倦怠感、体重減少 ・皮膚:リウマトイド結節、血管炎による皮膚潰瘍・指趾壊疽、紫斑 ・眼:上強膜炎、強膜炎(重症では壊死性強膜炎)、乾燥性角結膜炎(二次性シェーグレン症候群) ・肺:間質性肺炎、胸膜炎(胸水は滲出性で糖低値が特徴)、肺内リウマトイド結節、細気管支炎、気管支拡張症 ・心臓:心膜炎、弁膜病変、冠動脈疾患リスクの上昇 ・神経:多発単神経炎(血管炎による)、手根管症候群などの絞扼性神経障害、環軸椎亜脱臼による頸髄圧迫 ・血液:慢性炎症に伴う貧血、血小板増加、フェルティ症候群(RA+脾腫+好中球減少) ・腎:AAアミロイドーシス、薬剤性腎障害 ・骨:骨粗鬆症

悪性関節リウマチ

RAに血管炎を中心とする重篤な関節外病変を伴い、難治性・予後不良となった病態を、わが国では悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis:MRA)と呼び、指定難病となっている。罹病期間が長く喫煙歴のある例に多い。RFが高値で、免疫複合体の沈着が病態の中心と考えられ、血清補体価の低下、免疫複合体の上昇を伴いやすい。臨床的には発熱・体重減少などの全身症状に加え、多発単神経炎、強膜炎、皮膚潰瘍・指趾壊疽、心膜炎、胸膜炎、間質性肺炎、消化管出血・腸管虚血などがみられる。

膠原病ごとの特徴的な臓器病変(比較)

・全身性強皮症:皮膚硬化、逆流性食道炎(食道蠕動低下)、間質性肺炎、強皮症腎クリーゼ、肺高血圧症 ・SLE:ループス腎炎、漿膜炎、中枢神経ループス、血球減少 ・ANCA関連血管炎:急速進行性糸球体腎炎、肺胞出血、多発単神経炎

POINT

・RAの関節外病変:リウマトイド結節、上強膜炎・強膜炎、間質性肺炎、胸膜炎、心膜炎、多発単神経炎、続発性アミロイドーシスなど。 ・間質性肺炎はRAの生命予後を左右する。MTXによる薬剤性肺障害やニューモシスチス肺炎との鑑別も重要。 ・逆流性食道炎は全身性強皮症に特徴的。 ・急速進行性糸球体腎炎はANCA関連血管炎・抗GBM病・SLEの代表的病態であり、RAの腎病変はAAアミロイドーシスと薬剤性腎障害が中心。 ・血管炎を伴う重症型RAは悪性関節リウマチ(指定難病)と呼ばれる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。