StudyMed医師国家試験

「可能性」か「確定」か―出生前遺伝学的検査を2つに分けて理解する

第116回医師国家試験 F問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第27問

出生前遺伝学的検査のうち確定的検査はどれか。2つ選べ。

  1. a.絨毛検査
  2. b.羊水検査
  3. c.超音波検査
  4. d.母体血清マーカー検査
  5. e.無侵襲的出生前遺伝学的検査〈NIPT〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は出生前遺伝学的検査の分類を問う問題だ。検査は「確定的検査」と「非確定的検査」に分けられる。何を調べているのか、どうやって検体を得ているのかに注目すると、すっきり整理できるよ。
医学生医学生
NIPTは精度が高いと聞くので、確定的検査に入るような気がしていました。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴だね。精度の高さと「確定できるかどうか」は別の話なんだ。確定的検査とは、胎児由来の細胞を直接採取して、染色体や遺伝子そのものを調べる検査のこと。結果は「異常がある/ない」という形で出る。
医学生医学生
胎児の細胞を直接とるとなると、子宮に針を刺す必要がありますね。
ドクタードクター
その通り。だから確定的検査は侵襲的で、流産・破水・感染などのリスクを伴う。一方の非確定的検査は、母体の採血や画像検査など胎児に触れずにできる非侵襲的な検査で、結果は「可能性が高い/低い」という確率や推定にとどまる。
医学生医学生
産婦人科の講義で、羊水検査は「確定診断のための検査」と習いました。羊水中の胎児細胞を調べるからですよね。
ドクタードクター
そう。羊水検査は超音波ガイド下に腹壁から羊水腔を穿刺して羊水を採り、浮遊する胎児由来細胞を培養して染色体を分析する。通常は妊娠15〜16週以降に行い、流産リスクはおよそ0.3%程度とされる。非確定的検査で陽性や高リスクとなったときの確認検査として最も広く使われているね。
医学生医学生
絨毛検査も同じく確定的検査ですか。胎盤の組織を調べるという点が少し気になります。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。絨毛検査は経腹的または経腟的に、胎盤の一部となる絨毛組織を採って染色体や遺伝子を調べる確定的検査だ。妊娠11〜14週ごろと早い時期にでき、羊水検査より早く結果が得られる。ただし流産リスクは羊水検査よりやや高いとされる。そして、まれに胎盤だけに染色体異常がある胎盤限局性モザイクがあり、その場合は羊水検査で再確認が必要になることがある。
医学生医学生
なるほど、胎盤由来ならではの注意点ですね。では超音波検査はどうでしょう。後頸部浮腫が厚いとダウン症を疑うと習いました。
ドクタードクター
超音波では胎児の形態異常や、妊娠初期のNTの肥厚、鼻骨の欠損など、染色体異常を疑わせるソフトマーカーを評価できる。でもそれは手がかりにすぎず、染色体そのものは見ていないから非確定的検査なんだ。
医学生医学生
母体血清マーカー検査も、お母さんの血液を測るだけなので非確定的検査ですね。
ドクタードクター
そう。妊娠15週以降の母体血でAFP、非抱合型エストリオール、hCGを測るトリプルマーカー、さらにインヒビンAを加えたクアトロマーカーがある。母体年齢などと組み合わせて、21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管欠損症の確率を算出する検査だ。結果はあくまで確率で示される。
医学生医学生
NIPTは母体血中の胎児のDNAを調べるのに、なぜ確定できないんですか。
ドクタードクター
大事な疑問だね。NIPTは妊娠10週以降の母体血漿中の細胞フリーDNAを解析して、21・18・13トリソミーの可能性を調べる。でも母体血中のDNAの大部分は母体由来で、胎児由来とされる部分も実際には主に胎盤由来なんだ。だから胎盤限局性モザイクや母体側の染色体異常、悪性腫瘍、双胎の一児死亡などで偽陽性が起こりうる。陽性なら羊水検査などで確認が必要だよ。
医学生医学生
胎児の細胞そのものを見ていない、という点が確定できない理由なんですね。陰性なら安心してよいのでしょうか。
ドクタードクター
陰性的中率は非常に高い。ただし陽性的中率は対象疾患の頻度に左右され、若い妊婦ほど相対的に低くなる。検査の性質と限界をきちんと説明することが欠かせないんだ。
医学生医学生
臨床実習で、検査の前に遺伝カウンセリング外来に回る妊婦さんがいました。そういう説明のためだったんですね。
ドクタードクター
その通り。出生前遺伝学的検査の結果は妊娠継続の判断に関わりうるから、検査の前後に遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーが意義や限界、結果がもたらす影響を理解したうえで自律的に決められるよう支援することが求められる。まとめると、胎児由来細胞を直接調べる侵襲的な絨毛検査と羊水検査が確定的検査、確率や推定にとどまる超音波検査、母体血清マーカー検査、NIPTが非確定的検査だ。
医学生医学生
非侵襲的な検査でスクリーニングして、陽性なら侵襲的な検査で確定する、という2段構えで覚えます。

まとめ

出生前遺伝学的検査は、胎児由来の細胞を直接採取して染色体や遺伝子を調べる確定的検査と、確率や推定にとどまる非確定的検査に分けられます。確定的検査には妊娠11〜14週ごろに行える絨毛検査と15〜16週以降に行う羊水検査があり、診断を確定できる一方で流産などのリスクを伴う侵襲的検査です。超音波検査、母体血清マーカー検査、NIPTは非侵襲的な非確定的検査で、NIPTは精度が高いものの主に胎盤由来のDNAを解析するため偽陽性がありうるため、陽性時には羊水検査などでの確認が必要です。検査の前後には遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーが検査の意義と限界を理解したうえで自律的に選択できるよう支援することが重要です。

解答・解説

正解はa, bです

出生前遺伝学的検査は、その結果の性質によって「確定的検査」と「非確定的検査」の2つに分けられる。

確定的検査

胎児由来の細胞(絨毛細胞や羊水中の胎児細胞)を直接採取し、染色体や遺伝子そのものを調べる検査である。結果は「異常がある/ない」という形で得られ、診断を確定できる。ただし子宮内に針などを入れて検体を採取する侵襲的検査であるため、流産・破水・感染などのリスクを伴う。

非確定的検査

母体の採血や画像検査など、胎児に直接触れずに行える非侵襲的な検査である。結果は「可能性が高い/低い」という確率や推定にとどまり、陽性(高リスク)であっても確定には侵襲的な確定的検査が必要になる。スクリーニング的な位置づけの検査と考えるとよい。

考え方

選択肢のうち、胎児由来の細胞を直接得て染色体分析を行うのは絨毛検査と羊水検査であり、これらが確定的検査に該当する。超音波検査、母体血清マーカー検査、NIPTはいずれも非確定的検査である。

選択肢考察

  1. ○a.  絨毛検査

    確定的検査である。絨毛検査(絨毛採取、CVS: chorionic villus sampling)は、経腹的または経腟(経頸管)的に胎盤の一部となる絨毛組織を採取し、染色体分析や遺伝子解析を行う検査である。おおむね妊娠11〜14週ごろの比較的早い時期に施行でき、羊水検査より早く結果が得られる利点がある。一方、流産リスクは羊水検査よりやや高いとされる。また、絨毛は胎盤の組織であるため、まれに胎盤だけに染色体異常がみられる胎盤限局性モザイク(confined placental mosaicism)があり、その場合は羊水検査で再確認が必要になることがある。

  2. ○b.  羊水検査

    確定的検査である。羊水検査は、超音波ガイド下に母体腹壁から羊水腔へ穿刺針を進めて羊水を採取し、羊水中に浮遊する胎児由来細胞を培養して染色体を分析する検査である。通常は妊娠15〜16週以降に行われる。施行に伴う流産リスクはおよそ0.3%程度とされ、絨毛検査よりは低い。NIPTや母体血清マーカー検査で陽性・高リスクとなった場合の確認検査として最も広く用いられる。

  3. ×c.  超音波検査

    非確定的検査である。超音波検査では、胎児の形態異常や、妊娠初期の後頸部浮腫〈NT: nuchal translucency〉の肥厚、鼻骨の欠損など、染色体異常を疑わせる所見(ソフトマーカー)を評価できる。しかしこれらは染色体異常の可能性を推定する手がかりにすぎず、染色体そのものを調べていないため遺伝学的な確定診断は得られない。

  4. ×d.  母体血清マーカー検査

    非確定的検査である。母体血清マーカー検査は妊娠15週以降の妊婦の血液中のα-フェトプロテイン〈AFP〉、非抱合型エストリオール〈uE3〉、ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉(3項目:トリプルマーカー)、これにインヒビンAを加えた4項目(クアトロマーカー)を測定し、母体年齢などと組み合わせて、胎児が21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管欠損症(無脳症・二分脊椎など)である確率を算出する検査である。結果は確率で示されるため、確定診断には羊水検査が必要である。

  5. ×e.  無侵襲的出生前遺伝学的検査〈NIPT〉

    非確定的検査である。NIPT(non-invasive prenatal genetic testing)は妊娠10週以降に母体血を採取し、血漿中に含まれる胎児(主に胎盤)由来の細胞フリーDNA(cell-free DNA)断片を解析して、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの可能性を調べる検査である。感度・特異度は高いが、母体血中のDNAの大部分は母体由来であることや、解析対象が胎盤由来のDNAであることから偽陽性が起こりうる。そのため陽性の場合は羊水検査などの確定的検査で確認する必要がある。

出生前遺伝学的検査の分類

・確定的検査(侵襲的):絨毛検査(妊娠11〜14週ごろ)、羊水検査(妊娠15〜16週以降)。胎児由来細胞を直接分析し、診断を確定できる。流産などのリスクがある。 ・非確定的検査(非侵襲的):超音波検査(NTなど)、母体血清マーカー検査(トリプル/クアトロマーカー)、コンバインド検査(NT計測と妊娠初期の母体血清マーカーの組合せ)、NIPT。結果は確率・推定であり、陽性時は確定的検査で確認する。

検査を行う際の留意点

出生前遺伝学的検査は、胎児の疾患の有無を知ることが妊娠継続の判断などに関わりうるため、検査前後に遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーが検査の意義・限界・結果がもたらしうる影響を十分理解したうえで、自律的に受検を決定できるよう支援することが求められる。

NIPTの特徴

陰性的中率は非常に高いが、陽性的中率は対象疾患の頻度(母体年齢など)に左右され、若年妊婦では相対的に低くなる。偽陽性の原因として胎盤限局性モザイク、母体側の染色体異常や悪性腫瘍、双胎の一児死亡(vanishing twin)などが知られる。

POINT

・確定的検査=胎児由来細胞を直接調べる侵襲的検査:絨毛検査、羊水検査。 ・非確定的検査=確率・推定にとどまる非侵襲的検査:超音波検査、母体血清マーカー検査、NIPT。 ・非確定的検査で陽性(高リスク)なら、確定には羊水検査などが必要。 ・絨毛検査は羊水検査より早期に実施可能だが、流産リスクはやや高い。 ・検査の前後には遺伝カウンセリングが必要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。