StudyMed医師国家試験

赤ちゃんの検査値は「大人の物差し」で測れない―新生児で高くなる総ビリルビンとALP

第116回医師国家試験 F問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第28問

新生児期の基準値が成人期より高いのはどれか。2つ選べ。

  1. a.IgM
  2. b.総蛋白
  3. c.総ビリルビン
  4. d.クレアチニン
  5. e.アルカリフォスファターゼ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、新生児の検査値が成人と比べて高いか低いかを問う問題だよ。丸暗記しようとすると混乱しやすいけれど、「胎内から外界への環境の変化」「臓器の未熟さ」「急速な成長」という新生児特有の生理に結びつけると、ぐっと覚えやすくなる。まずは直感でいいから、高そうなものを挙げてみて。
医学生医学生
新生児黄疸があるので、総ビリルビンは高いと思います。あとは……赤ちゃんは免疫が弱いイメージがありますが、IgMは感染に最初に反応する抗体なので、もしかして高いのかなと迷いました。
ドクタードクター
ビリルビンはその通り。IgMのほうは逆なんだ。免疫学の講義で、胎盤を通過する免疫グロブリンはどれだと習ったかな。
医学生医学生
IgGだけです。IgMは五量体で大きいので通れない、と覚えました。
ドクタードクター
そう。だから母体由来のIgMは入ってこないし、胎内では抗原にさらされる機会が少ないので新生児自身が作るIgMもわずかだ。出生後に外界の抗原にさらされてから少しずつ増えて、幼児期から学童期にかけて成人レベルに近づく。つまり新生児期は成人より低い。
医学生医学生
逆に言えば、出生直後にIgMが高かったら、胎内で何かに反応したということですか。
ドクタードクター
鋭いね。臍帯血や出生直後のIgM高値は、トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルスなどのTORCH症候群、つまり先天感染を疑う手がかりになる。一方IgGは胎盤を通過するので出生時は成人並み。ただ母体由来のIgGは半減期に従って減り、自分の産生が追いつかないので、生後3〜6か月ごろに最も低くなる。これが生理的低IgG血症だ。
医学生医学生
それで、総蛋白も低めになるんですね。
ドクタードクター
その通り。総蛋白は成人と同程度か、やや低い。肝臓の蛋白合成能が未熟でアルブミンが少なく、自前のIgMやIgAも少ないからね。母体由来IgGが減る生後数か月ごろが一番低くなって、その後年齢とともに成人値へ上がっていく。では本題のビリルビン、なぜ新生児で高くなるのか説明できるかな。
医学生医学生
肝臓のグルクロン酸抱合が未熟だから、ですよね。
ドクタードクター
それが一つ。もう一つは材料が多いこと。胎児は低酸素の子宮内環境に適応するため赤血球が多い多血傾向で、胎児ヘモグロビンを含む赤血球は寿命も成人の約120日より短い。生まれて肺呼吸が始まり酸素が十分になると、余った赤血球が壊されて大量の間接ビリルビンができる。そこにUDP-グルクロン酸転移酵素の未熟さと、腸内細菌叢が未発達なための腸肝循環の亢進が加わる。これが生理的黄疸で、生後2〜3日に出て4〜5日ごろにピーク、2週ごろまでに消えるのが典型だ。
医学生医学生
クレアチニンはどうでしょう。新生児は腎機能が未熟だと習ったので、高いのかと思ってしまいます。
ドクタードクター
よくある誤解だね。確かに糸球体濾過量は成人より低い。でもクレアチニンは筋肉中のクレアチンの代謝産物で、血中濃度は筋肉量にほぼ比例する。出生直後は胎盤を介して母体の値を反映するけれど、数日〜2週間ほどで下がり、筋肉量の少なさに見合った低い値に落ち着く。だから成人より低い。体格の成長とともに上がり、思春期以降に成人値になるんだ。
医学生医学生
腎機能が未熟なのにクレアチニンは低く出る、というのは小児科実習で気をつけたいポイントですね。最後のアルカリフォスファターゼは、骨の成長と関係していますか。
ドクタードクター
その通り。ALPには肝型・骨型・小腸型などのアイソザイムがあり、小児では骨芽細胞が活発に作る骨型ALPが多い。新生児・乳児期には成人の数倍の値になる。その後いったん下がり、思春期の成長スパートで再び上がって、骨端線が閉じる頃に成人値へ戻る。
医学生医学生
乳児期と思春期の2回ピークがあるんですね。整理すると、新生児期に成人より高いのは総ビリルビンとアルカリフォスファターゼ。IgM、総蛋白、クレアチニンは低い、と。
ドクタードクター
正解。臨床での注意点も押さえておこう。まずALPは、小児で高いからといって肝・胆道疾患と決めつけず、必ず年齢別の基準値で判断すること。そして黄疸は、生理的なものと病的なものを見分けるのが大事だ。生後24時間以内に出る早発黄疸、総ビリルビンの急な上昇、生後2週以降も続く遷延性黄疸、直接ビリルビンの上昇があれば病的黄疸を疑う。
医学生医学生
血液型不適合による溶血や、胆道閉鎖症を考えるんですね。胆道閉鎖症は便の色が薄くなるので、母子健康手帳の便色カードでチェックすると習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ほかにも、出生直後はヘモグロビンや白血球数が高く、無機リンも骨の成長を反映して小児期は高めだ。ヘモグロビンは出生後に下がって生後2〜3か月ごろ最低になる。これが乳児の生理的貧血。どれも「なぜそうなるか」を生理から説明できれば、初見の項目でも推論できるよ。

まとめ

新生児の検査値は成人の基準値をそのまま当てはめられず、胎内から外界への環境変化、臓器の未熟さ、急速な成長という生理から理解することが大切です。総ビリルビンは、多血傾向と短い赤血球寿命による出生後の赤血球破壊、グルクロン酸抱合酵素の未熟さ、腸肝循環の亢進により高値となり(生理的黄疸)、ALPは骨の成長を反映する骨型ALPが多いため成人の数倍に達し、思春期にも再上昇します。一方、IgMは胎盤を通過せず自己産生も少ないため低値で、出生時のIgM高値は先天感染を示唆します。総蛋白は肝の合成能の未熟さから同程度〜やや低く、クレアチニンは筋肉量が少ないため、腎機能が未熟であっても低値です。年齢別基準値を意識し、生理的変化と病的所見(早発黄疸、直接ビリルビン上昇など)を区別する視点は、小児診療の基本となります。

解答・解説

正解はc, eです

小児、とくに新生児の検査値は成人の基準値をそのまま当てはめることができない。値の高低は、新生児期特有の生理(胎内から胎外への環境変化、未熟な臓器機能、急速な成長)から理解すると覚えやすい。

成人より高くなる項目の考え方

・赤血球の破壊が多く、肝臓での処理能力が未熟なもの → ビリルビン(生理的黄疸)。 ・成長が盛んで代謝が活発なことを反映するもの → 骨型アルカリフォスファターゼ(骨の成長)。

成人より低くなる項目の考え方

・自分で作る量がまだ少ないもの → IgM・IgAなどの免疫グロブリン(IgGは胎盤を通過して母体から移行するため例外的に出生時は成人並み)、総蛋白・アルブミン(肝の合成能が未熟)。 ・体格・筋肉量に比例するもの → クレアチニン。 この観点から、新生児期に成人より高値となるのは総ビリルビンとアルカリフォスファターゼである。

選択肢考察

  1. ×a.  IgM

    新生児期は成人より低値である。IgMは五量体の大きな分子で胎盤を通過しないため、母体からの移行がない。胎児・新生児自身のIgM産生はわずかであり、出生後に外界の抗原にさらされることで徐々に増加し、幼児期から学童期にかけて成人レベルに近づく。このため、臍帯血や出生直後の新生児血でIgMが高値であれば、胎内で病原体に反応してIgMが作られたこと、すなわちTORCH症候群(トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスなど)などの先天感染を疑う手がかりとなる。

  2. ×b.  総蛋白

    新生児期は成人と同程度か、やや低値である。肝臓での蛋白合成能が未熟であり、アルブミンや自己産生の免疫グロブリン(IgM・IgA)も少ないためである。出生後しばらくは、母体から移行したIgGが半減期に従って減少する一方で自己のIgG産生がまだ追いつかないため、生後数か月ごろに総蛋白が最も低くなり、その後年齢とともに上昇して成人値に達する。

  3. ○c.  総ビリルビン

    新生児期は成人より高値となる。胎児は低酸素環境に適応するため赤血球数が多く(多血傾向)、胎児ヘモグロビン〈HbF〉を含む赤血球の寿命も成人(約120日)より短い。出生後、肺呼吸が始まって酸素環境が改善すると余剰の赤血球が破壊され、大量の間接ビリルビンが生じる。さらに、肝臓でビリルビンをグルクロン酸抱合する酵素(UDP-グルクロン酸転移酵素)の活性が未熟であることや、腸内細菌叢が未発達で腸肝循環によるビリルビン再吸収が多いことも加わり、血中の間接ビリルビンが上昇する。これが生理的黄疸であり、通常は生後2〜3日に出現し、4〜5日ごろにピークとなって、2週ごろまでに自然に消退する。

  4. ×d.  クレアチニン

    新生児期は成人より低値である。クレアチニンは筋肉中のクレアチンの代謝産物であり、血中濃度は筋肉量にほぼ比例する。出生直後の値は胎盤を介して平衡していた母体のクレアチニン値を反映するが、その後数日〜2週間ほどで低下し、新生児・乳児の筋肉量の少なさに見合った低い値となる。以後、体格の成長に伴って年齢とともに上昇し、思春期以降に成人値に達する。なお、新生児の腎機能(糸球体濾過量)自体は未熟で成人より低いが、筋肉量の少なさのため血清クレアチニンは低く出る点に注意する。

  5. ○e.  アルカリフォスファターゼ

    新生児期は成人より高値となる。アルカリフォスファターゼ〈ALP〉には肝型・骨型・小腸型などのアイソザイムがあり、小児では骨の成長に伴って骨芽細胞が活発に産生する骨型ALPが多い。このため新生児・乳児期は成人の数倍の高値を示す。その後いったん低下し、身長が急速に伸びる思春期(成長スパート)に再び上昇し、骨端線が閉鎖する頃に成人値へと低下する。小児のALP高値を肝・胆道疾患と誤解しないよう、年齢別の基準値で判断することが重要である。

新生児・小児の検査値の主な特徴(成人との比較)

・高値:総ビリルビン(生理的黄疸)、ALP(骨型、成長期)、ヘモグロビン・赤血球数・ヘマトクリット(出生直後)、白血球数(出生直後)、無機リン(骨の成長を反映し小児期は高め)。 ・低値:IgM・IgA(自己産生が少ない)、総蛋白・アルブミン、クレアチニン(筋肉量が少ない)、糸球体濾過量。 ・出生時は成人並み:IgG(胎盤を通過して母体から移行)。生後3〜6か月ごろに最低となる(生理的低IgG血症)。

生理的黄疸と病的黄疸の見分け方

生後24時間以内に出現する早発黄疸、血清総ビリルビンの急速な上昇、遷延性黄疸(生後2週以降も持続)、直接ビリルビンの上昇などは病的黄疸を疑う所見であり、血液型不適合による溶血、感染症、胆道閉鎖症などの検索が必要である。

Hbの推移

出生時は多血傾向でHbは高値だが、出生後は赤血球の破壊とエリスロポエチン産生低下により低下し、生後2〜3か月ごろに最低となる(乳児の生理的貧血)。

POINT

・新生児期に成人より高い:総ビリルビン(生理的黄疸)、ALP(骨型、骨の成長)。 ・新生児期に成人より低い:IgM、総蛋白、クレアチニン。 ・IgMは胎盤を通過しないため、出生時のIgM高値は先天感染を示唆する。 ・IgGは胎盤を通過するため出生時は成人並み。 ・ALPは乳児期と思春期の2回高値となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。