「家庭に聞く」か「病院に聞く」か―国民生活基礎調査でわかる有訴者率と通院者率
第116回医師国家試験 F問題 第29問
国試問題にチャレンジ
国民生活基礎調査から求められる指標はどれか。2つ選べ。
- a.婚姻率
- b.受療率
- c.罹患率
- d.有訴者率
- e.通院者率
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
国民生活基礎調査は、無作為抽出した世帯とその世帯員を対象に、健康・医療・福祉・所得などを本人や世帯の申告で調べる厚生労働省の基幹統計調査で、3年ごとの大規模調査の健康票から有訴者率と通院者率(いずれも人口千対)が得られます。受療率は医療施設を対象とする患者調査(人口10万対)、婚姻率は届出に基づく人口動態調査から求められ、罹患率は全国がん登録や感染症発生動向調査などの登録・届出制度で把握されます。「世帯から聞くのか、医療機関から数えるのか、届出・登録を集計するのか」という情報の出どころで整理すると、各指標の出典を混同しにくくなります。自己申告の統計は受診していない人の健康状態も反映できる一方で診断の正確さには限界があるため、指標の性質を理解して使い分けることが、保健統計を正しく読み解く基本となります。
解答・解説
正解はd, eです
保健統計の各指標が、どの統計調査から得られるかを問う問題である。調査の「対象(誰に・どこで調べるか)」と「調べる内容」を押さえると判別しやすい。
国民生活基礎調査
厚生労働省が実施する基幹統計調査で、全国から無作為に抽出した世帯とその世帯員を対象に、保健・医療・福祉・年金・所得などの生活の基礎的事項を世帯単位で調べる。毎年行われ、3年ごとに大規模調査(世帯票・健康票・介護票・所得票・貯蓄票)、その間の年は簡易調査(世帯票・所得票)となる。健康票では、病気やけがなどの自覚症状の有無、通院の有無、日常生活への影響、健診受診状況などを本人(世帯)の申告で調べる。ここから有訴者率や通院者率が得られる。
ほかの調査との区別
・患者調査:医療機関(病院・診療所)を対象に、ある1日に受療した患者を調べる。受療率、推計患者数、平均在院日数などが得られる。 ・人口動態調査(人口動態統計):出生・死亡・死産・婚姻・離婚の届出をもとに集計する。婚姻率などが得られる。 ・罹患率は疾患ごとの登録・届出制度(全国がん登録、感染症発生動向調査など)から把握される。 国民生活基礎調査は「家庭(世帯)から調べる」調査、患者調査は「医療機関から調べる」調査と対比して覚えるとよい。国民生活基礎調査は自己申告であるため、医師による正確な診断名は得られない。
選択肢考察
- ×a. 婚姻率
婚姻率は人口動態調査(人口動態統計)から求められる指標である。人口動態調査は、市区町村に提出された出生・死亡・死産・婚姻・離婚の届出を集計するもので、婚姻率は1年間の婚姻件数を人口1,000人当たりで表したものである。国民生活基礎調査から求めるものではない。
- ×b. 受療率
受療率は患者調査から求められる指標である。患者調査は3年に1回、全国の医療施設を対象として、10月中の指定された1日に入院・外来で受療した患者を調べる調査である。受療率は、調査日に医療施設で受療した推計患者数を人口10万人当たりで表したものである。国民生活基礎調査で得られる「通院者率」(世帯員の申告に基づく通院者の割合)とは別の指標である点に注意する。
- ×c. 罹患率
罹患率は国民生活基礎調査からは求められない。罹患率は一定期間内に新たに疾病を発症した者の割合であり、算出には正確な診断に基づく新規発生数の把握が必要である。国民生活基礎調査は一般の世帯員の自己申告に基づく調査で、医師による診断名や発症時期を正確に把握できない。また、患者調査はある1日の受療状況の断面を調べるもので、新規発症数をとらえる調査ではない。がんの罹患率は全国がん登録、届出対象の感染症の発生状況は感染症発生動向調査などの登録・届出制度によって把握される。
- ○d. 有訴者率
国民生活基礎調査(大規模調査年の健康票)から求められる指標である。有訴者とは、世帯員(入院者などを除く)のうち、病気やけがなどで自覚症状のある者をいい、有訴者率は人口1,000人当たりの有訴者数で表す。症状別では、腰痛、肩こり、手足の関節が痛むなどが上位を占める。自覚症状に基づくため、診断の有無は問わない。
- ○e. 通院者率
国民生活基礎調査(大規模調査年の健康票)から求められる指標である。通院者とは、世帯員(入院者などを除く)のうち、病気やけがで病院・診療所、あんま・はり・きゅう・柔道整復師などに通院・通所している者をいい、通院者率は人口1,000人当たりの通院者数で表す。傷病別では高血圧症が最も多い。
主な保健統計と得られる指標
・人口動態調査:出生率、死亡率、死産率、乳児死亡率、周産期死亡率、婚姻率、離婚率、合計特殊出生率など(届出に基づく全数調査)。 ・国勢調査:人口、人口構成(5年ごと)。 ・国民生活基礎調査:有訴者率、通院者率、日常生活に影響のある者の率、健診受診率、介護の状況、世帯構造、所得など(世帯対象の標本調査、3年ごとに大規模調査)。 ・患者調査:受療率、推計患者数、平均在院日数、総患者数(医療施設対象、3年ごと)。 ・医療施設調査・病院報告:病床数、病床利用率など。 ・国民健康・栄養調査:栄養摂取量、身体状況、喫煙・飲酒などの生活習慣(健康増進法に基づく、毎年)。 ・全国がん登録:がんの罹患数・罹患率(がん登録推進法に基づく)。 ・感染症発生動向調査:感染症法に基づく届出・定点報告による発生状況。
有訴者率・通院者率と受療率の違い
有訴者率・通院者率は世帯員の自己申告に基づき、人口1,000人当たりで表す。受療率は医療機関側から把握した患者数に基づき、人口10万人当たりで表す。いずれも「医療とのかかわり」を表すが、情報の出どころと単位が異なる。
POINT
・国民生活基礎調査=世帯(家庭)から調べる調査:有訴者率、通院者率(いずれも人口千対)。 ・患者調査=医療施設から調べる調査:受療率(人口10万対)、推計患者数、平均在院日数。 ・人口動態調査:婚姻率・離婚率・出生率・死亡率など。 ・罹患率は登録・届出制度(全国がん登録など)で把握され、国民生活基礎調査からは得られない。
